嘘をついた話を告白。
高校の漫画研究部ではまあまあ上手いほうで、ゲーム雑誌の常連はがき職人だった。
俺は調子に乗って「色んな編集部から仕事頼まれてる」「ジャンプから連載の話持ちかけられてる」
とかふかしまくってた。
ちなみに画力は今で言うとPIXIVでも「あー勘違いしちゃったんだね・・w」みたいな感じのレベル。
下手な上に寒い感じの絵柄。
(ちなみに今現在は絵は書かない。車の販売)
そんな俺には毎週楽しみにしているものがあった。
若手の声優がMCを務めるラジオ番組だ。
当時はその番組自体が初のメディア出演、みたいな感じで
リスナーと声優が二人三脚でやってる感じがとても良かった。
俺はその番組にも毎週リクエストはがきを出し、
毎回気合を入れたカラーイラストを添えていた。
コピックで色を塗っていたが、必ずイラストの横に「今カラーインク切れてて・・・雑ですいませんw あー画材ほし~」と書いていた
番組開始半年くらいのある日。
声優『えーでは次のリクエストは、おっ常連さんですねー! この方は毎回気合の入ったイラストを描いてくれてますっ!ありがとー!』
ゲスト『わーすごーい!かっこいいー!』
声優『東京都・”闇夜の孤独なる狂い演奏者、って美化しすぎ~~~!!??”さん!いつもありがとうございます!!』
俺は耳を疑った。俺だ!!俺の事だ!!
「読んでくれてありがとうございます!応援してます! あー書きすぎて手首痛えw」というメッセージを再び投稿した。
リクエスト曲はエヴァの挿入歌か何かだ。
翌週、信じられない事が起きた。
声優はまた俺のイラストに触れた。
声優「またまた力作ですねー!もしかして闇夜さんプロの方でしょうか、すごい慣れた感じですねー」
俺は心臓がグワングワンなって、ベッドに倒れた。たぶん本当に心不全になりかけてたとガチで思う。
俺は再びはがきを手に取り、絵を書いた。
今回は何故か下書きをラフな感じに。
そして、こう書き添えた。
「実はプロです・・・w とある雑誌の連載の合間に書いてますwあ~寝てね~」
翌週、どえらい事が起こることも知らず、俺ははがきを投函した
(この時の事がきっかけで、俺はクロノトリガーを見ると赤面する体質になった)
電話が鳴る。
「はい、もしもし」
?「○○さんのお宅ですか?」
「あ、はい、僕ですが・・・?」
?「あ、どうもですっ!○○放送○○のディレクター、S口と申します~いつもはがきありがとうございます!」
「え!!??あっはいっ・・・!!!はじめまして・・!!ええっ!?」
ちなみにこの当時のはがき職人は住所と電話番号もはがきに書いていたのだ。まさにこういう展開を夢見て
ディレクター「あのーいつもイラスト拝見しておりまして、○○さんは漫画家さん、という事で・・・」
俺「あの、あ、あのーー全然ね、あのーも、全然マイナーなね!!あのーかろうじて漫画家みたいな空気ですよ!!」
俺はクソテンパッた。
ディレクター「なるほど~!実はちょっと製作で相談してまして、もしよければ次の公開放送のとき、ちょっとその辺りのお話を声優と直接お話したり
していただけませんか・・・?」
俺「えっ、あのーマイナー、あのーも、ぜんぜ、マイナーもね~あの~」
ディレクター「wwww大丈夫です!ちょっとだけ告知なんかもしていただいて大丈夫ですので!!ww」
俺は嘘だと言えず、その日の電話を終えた。一月後の公開放送に俺が招待されるという話になったのだ。
そしてあえて割愛したが、俺はこの会話の中である漫画家の名前を出し、
それが自分であると嘘をついてしまった。
当時は17歳の中二病。
「ラジオに出れる・・・漫画家として招待された・・・連載作家・・・えっ、俺ってもしかして
すでに週刊○○の関係者・・・??」
俺は異常な精神状態に陥っていた。
漫画研究会の部室でも「いやーやべーわ、これ言っていいのかなー、ラジオ呼ばれたわー」と
吹聴し、周囲を騒がせまくっていた。
土曜日。
○○放送関係者ゲート。
ディレクター「あ、俺さんですか!」
俺「ういwwwチャスwww」
ディレクター「うわお若いですねーww!!ではこちらへ!」
入館証をもらい、警備員の前を通り中に入る。放送局は妙に入り組んだ作りだったのを覚えてる。
会議室的な部屋。ディレクターと、スタッフ数人。机の上にはお菓子や飲み物、
そして俺が騙った作家の単行本がきれいに並んでいる。
ディレクター「○○先生です」
スタッフ「オー オー」
俺「チャスwwww」
公開放送の収録は一時間、その中で10分ほど俺の時間が取られ、
ホワイトボードに絵を書いたり話したりするらしい。
スタッフ「そんな感じです!よろしくお願いしますね!」
俺「チャスウワーカラー画材ないと自信ないなーチャウワ、タy-」
するとドアが開き、声優が入ってきた。
声優「はじめまして!!わーすごい感激ですー!!私漫画家さんとお会いするの初めてですー!」
俺「wwwチャス!!wwwウッワセイユーサン、!!!www!!声優!!」
スタッフ「wwwwwww!!とりあえず俺さんだけ一応マイク失礼しますね!」
俺は声が張れない可能性があるので、マイクをつけられる。尻ポケットに電池みたいなのを入れられる
俺「うわーすごいなー!」
胸についたマイクをとんとんと叩くと、音声の人がすごく怖い声で
「あ、それやめてください」と俺に言った。
俺は控え室で皆が用意する様子をニヤニヤしながら見ているが、
心の裏側でもう一人の自分が叫び始めているのを自覚していた
『お前何やってるんだ!!!!』
開始まで5分。スタジオに、30人ほどのリスナーが入ってきた。
皆、床に体操座りで座る。
俺は無意識のうちに席を立ち、通路に出た。
腕を組み、足をクロスさせ、目を閉じる。
意味のないポーズで無表情。
ディレクター「ちょwwwwwwwwwwなにしてんすか!!www
もうはじまるんで!だいじょうぶすかwwww!!」
俺「あのーーwwwあのー嘘なんでwwwあのーwwwちゃ、あのwww」
ディレクター「え?www」
俺「うそなんですよwwww」
ディレクター「え?wwいや、大丈夫です!!wwwしゃべるのも一言でOKですから!www」
俺「いや、wっわのチャ。。。。。www俺、漫画家っていうの嘘なんですwwwwあのーー」
ディレクター「・・・・」
ディレクターは瞬間的に近くにいたADの腕を掴み、何かささやく
ADはエッという顔で機材がある部屋に駆け込む。
俺が見たのはそこまでだ。ディレクターが俺の肩をつついて、「あの、ちょっとそっちで」と
控え室的な部屋に連れて行かれた
ディレクター「え、と・・・・。あのースタッフを担がれた、という事でしょうかー・・・?」
俺「あの、そうですねっ!!wwwwあれ友達が書いたんですよwww」論点はそこではないが俺はもう正気を失っていたのだろう
ディレクター「・・・」
俺「ふざけてる奴なんですよwwwwうわーおれだけ恥かいたなーーーwwww!!!うわーーーえーーー!?wwえーーー!?」
ディレクター「あーそですかー、はい、わっかりましたーー」
ディレクターは俺の顔も見ずに席を立ち、2分後、ADが入ってきた
AD「あ、じゃあこちらへ」
俺「チャス!!wwww」
出口
AD「じゃあ入館証お返しいただきますね」
俺「あwwwこれ返すんですねwwww」
AD「そですよー、じゃあ失礼します!」
俺「あのwww今日交通費もらえるって聞いててーーーwwww」
AD「えっ、そうなんですか?」
俺「交通h、交通、、、、wwww」
AD「ちょっとすぐ確認してきますんで!」
俺「・・・・・www ・・・・・・wwww
・・・・・・・・・wwwwwww」
俺はその場から走って逃げた。
駅から家までの切符代430円。
往復860円。
俺は今でも860円という数字を直視できないでいる
次でおわりです
寝れねーwww
普通に詐欺だからな
相手も悪かったんちゃう?
こういうのはちゃんと所属してるとことかに話しを通すべきだし
その日の放送がどうなったのか、俺は聞く事ができなかったので分からない。
もしかしたら「えー、トラブルがありましたがーw」みたいな一言で会場が
笑いに包まれたのかもしれないが、おそらくそうではないだろう。
何もなかった事になっていただろう。
二回ほど、ディレクターの番号から着信があったが出ていない。
おそらく交通費の清算のことだろう。
それ以降連絡はない。
エイプリルフールに投下しましたが、
実は全部ガチです。
一箇所だけある改変をしてますが、それ以外が全て実話です。
僕はそれがきっかけで声優アレルギー、漫画アレルギーになり、
書店の漫画コーナーに行くと今でもその作家さんの作品を見かけては
「wwwwwwチャ、 wwwwセーユー、サースネwwwwwwチャ・・・・wwwww」
みたいになります
エイプリルフールだからこそ、あえて言いたいですが、嘘は恥しか呼ばないものです。
4月1日だからと言って、嘘にはついてはいけない嘘もある。
これを読んで「何故か恥ずかしいwww」という反応くれた方もいましたが、
それはこの話が日常から隣り合わせのところにある話だからだと思います。
嘘はだめです。
以上です
そこは割愛したが、
「担当にバレると仕事さぼってるのばれる!」
D「では仮面の漫画家という事でwww!!!」
「サーwwwwチョサwwww」
みたいな感じになった。
声優が売り出し中だったから、ひとつでも何か面白いエピソードが欲しかったんだと思う。
分かると思います。
あれ以来はがきを出さなかったのが、僕の反省だと思っていただければ幸いです・・・。
交通費も謹んで辞退いたします。
最後に、出口まで案内してくれたADの方、
事情を察してなんとなく僕を慰める空気でエレベーターの中で話してくれた事だけが
この思い出の救いです、ありがとうございました。
では失礼します
よかったね
言葉ってすげぇわ