一番酷い時には甘いお菓子なんかにもにも塗り込んでいた。
豆板醤漬けの飯を連日はやめろと言ったらそれからしばらく白飯と白湯だけの食卓が続き、
「私のご飯が嫌なら味のないモノだけ喰ってろ。ただし娘も同罪だ」と言い放った。
娘は「わがまま言わないから味のある物欲しい」と泣いて元嫁はそら見たことか、と言わんばかりにふんぞり返った。
そんな元嫁の態度に我慢の限界が来てしまい、「娘に豆板醤塗れの劇物みたいなもの食わすな、殺す気か」と言ったら
娘のお気に入りの茶碗を叩き割って「だったら自分で作ってみろ、娘が口にできるものをあんたが作れんのか?」と。
その事が元嫁の神経を逆撫でしたらしく、「この裏切者!」って絶叫してから冷蔵庫のドアを蹴り壊して家を飛び出していってしまった。
もうこの嫁はだめだ、って思って離婚を決意した。
翌日重い気分で義実家に電話したら「大丈夫だったか?」って返されてびっくりした。てっきり甲斐性無しとか罵られると思ってたし。
というのも元嫁が家を飛び出してからすぐに義実家に電話して「私の食事を『喰えたものじゃない』と侮蔑される」と言うので、詳細を聞いたら豆板醤塗れ。
それはいくらなんでも変、と言ったら「あんた達も私を裏切るのか!」と発狂してガチャ切りされたそうだ。
「何を言っても聞く耳を持たない、もう離婚しないと娘を守れない」と告げたら
「そうした方がいい。孫が一番心配だし君も心配だ。最早あれはかつての娘とは思えない」と言われた。
まず娘の安全確保が大事だなと思ったので、義実家に電話した後で恥を忍んで義弟に事情を話し、しばらく娘を匿ってほしいと頼んだ。
義弟は元嫁の事をかなり嫌っていて仲が悪く、プライドが恐ろしく高い元嫁は義弟相手に下手に出ることはないだろう、と踏んだからだ。
幸いなことに義弟は即OKの返事をくれた。「とりあえず当座の着替えとか持ってきてくれ。後は何とかする」と。
義弟家に行って、義弟と義弟嫁に詳細な事情を話したら「何でそこまで我慢するんだ、義兄さんもそうだけど娘ちゃんが一番悲惨じゃないか」と叱られた。
義弟嫁は「味のないご飯ばかり食べされられたんでしょう、可哀想に」と泣いてた。
「全て解決するまで面倒見るから心配ない、任せておけ」と太鼓判を押してくれた義弟に後押しされて、
本格的な離婚の準備に入ろうとした矢先、元嫁から電話があった。たった二言「許さないから。覚悟しとけ」とだけ。
俺は何をされようと別に問題ない。離婚して娘の無事を確保できれば慰謝料だろうが賠償金だろうがくれてやる、と思ってたんだけど、
娘を避難させたその日の午後に、義弟から「義弟嫁が誘拐容疑で警察に連れてかれた」と連絡があった。元嫁の仕業だった。
元嫁は俺が義弟家に娘を預ける事をあらかじめ予測してたみたいで、警察に「娘がいなくなっている。誰かに連れて行かれたのかも」と言ったらしい。
で、義弟嫁が娘と一緒にその日の夕食を決めようと一緒に買い物してたところを確保された、ってことだそうだ。
申し訳ないが、俺が娘を義弟家に預けたという証明をしてくれって連絡が俺に来たので、慌ててすっ飛んで警察に事情を説明した。
それから義実家に「元嫁が娘を取り返して消えてしまった」って連絡したら、義父から「急げ、元嫁が『孫と心中する』と言ってる」って聞かされた。
元嫁曰く「私と娘に優しくないこの世界に未練はありません。天国で娘と二人幸せになります」とか恐ろしいことほざいて電話を切り、以後着拒されたそうだ。
大慌てで嫁の携帯に電話しようとしたが、俺の形態も義弟の形態も着拒されてた。
何が「私と娘に」だ、どっからどう見てもテメエの事しか考えてねえじゃねェかとブチギレそうになるのを何とか堪えて、とにかく元嫁と娘を探した。
結局元嫁と娘は俺の実家に居たことが翌日明らかになった。
俺達が2人を探している間、元嫁は俺の両親に「自分の料理を貶されまくり、身も心も限界。お力を貸してほしい」と吹き込んでて、
タチの悪い事に両親がそれを完璧に信じていて、実家に到着した瞬間に俺は親父から殴り飛ばされた。
それで、後から現れた元嫁は俺の目の前に立ち、「どう、反省した?」だってさ。
もう我慢の限界が来て、このバカを一発ブン殴ってやらないと気が済まないと思った矢先、嫁が義母の893キックで吹っ飛んだ。
「黙って聞いてりゃ何様だお前は?何が『反省』だ。それはお前の方だろうが!」とすんごい罵声を浴びせかけた。
流石土佐の人。怖ェ怖ェ。
「嫁さんに何てことを!」と憤慨する俺両親に義両親と義弟夫婦が事情を説明したが、
俺両親は「元嫁さんがそんな事するか!絶対に俺が悪い!」と話にならない。
「孫が身体を壊してもいいのか!小さい子供に豆板醤付けor白飯オンリーの二択なんてムチャクチャだろうが!」
って俺が抗議したら「嘘をつくな!」と再度親父に殴られた。
「じゃあ娘ちゃんに聞けば?それでどっちが本当か分かるでしょう」と義弟嫁が言い出して、証人の娘に話を聞くことにした。
「ママのご飯とパパのご飯とどっちが美味しかった?」と聞く義弟嫁に、娘は「パパ。ママのは辛いからヤ」と即答してくれた。
元嫁が大々発狂して「みんな殺してやる」と急須を振り回すが、義父の正拳で吹っ飛んで撃沈した。
義母は「この大馬鹿(元嫁)はもう二度と娘には会わせない。私達が全力で阻止する。こいつに組したあなた達(俺の両親)も同じだ」と断言。
「何の権利があって」とか「私達を陥れるつもりか」とかがなり立てる元嫁と俺両親に、
義弟が「じゃあ裁判する?今までのやり取りぜーんぶ録音してあるから。勝ち目ないよ?」。
義弟は多分元嫁は俺のDVをでっち上げようとするから、万が一を考えて携帯と仕事で使ってる録音機の2つを使って録音してくれていたらしい。
慰謝料と財産分与の件で「全部自分達によこせ」とごねる暴れるの元嫁&なお嫁の味方する俺両親を相手に調停を始めて、1年かけてやっと完全勝利を掴み取る事ができた。
元嫁の凶行の数々の記録と、義弟の録音があったので調停員は俺側の味方になってくれた。
なお、娘に関しては元嫁は調停の間で関心をすっぱり無くし、「こんな恩知らずもう顔も見たくない。面会しないから養育費も払わない」とほざきやがった。
頼まれたところで会す気など無いけどな。
手助けをしてくれた義弟夫婦と義両親にはどれだけ感謝しても足りないくらいだ。
唯一、元嫁の心中狂言と義弟嫁を誘拐で犯罪者扱いにしようとしやがった事が「育児疲れで心身猛弱状態だった」
という嫁の言い分が認められて罪に問えなかった事だけが無念でならない。
さっき娘が甘いクリスマスケーキを口にして「辛くないね」と笑って、過去のトラウマがちょっと蘇って身震いしたのは秘密だ。
……失礼を承知で聞くけど本当に人間か、その元嫁?
はっきり言って猛獣の方がまだマシだぞそれ
自分もあ然として一瞬言葉を失ってしまった
元嫁とお前の両親は一体どうなってしまったんだ宇宙人に改造でもされたのか