祖母の葬式の際、祖母の介護はさくっと無視したくせに臆面もなくやってきた叔母が
「従妹ちゃんの成人式だから、大伯母さんの振袖ちょうだい」。
大伯母の誂えた振袖は従妹に譲って当然、と言い出した。
私の振袖は、着物道楽だった大伯母が、亡くなる直前に私のために生地から誂えて
くれたもの。いわば大伯母の形見で、たとえ誰であってもあげるわけにはいかない、と
突っぱねた。
だいたい、叔父夫婦は30年近く大伯母所有の不動産に家賃も梨で住んでて、
お小遣いも貰い放題、大伯母の形見分けではちゃんと宝石とバッグをもってったのに、
「ズルイ」といわれる筋合いはない。
そしたら今度は「成人式一日だけだからカセカセ」ときた。
長いので続く。
いい加減イライラきていた私、「カセカセ」叔母に言った。
「メンテナンスをきちんとしていただけるんなら、お貸ししてもいいですよ。
大伯母さんの形見なんだから、おろそかにするわけにはいきませんものね」
世間には「大伯母を大切にしてきた出来た嫁」を装ってきた叔母は、
こう言えば「もちろんよ、お手入れ代はこちらでもちます」と答えるしかない。
そこでおもむろに私、「ではメンテナンス代14万円を先に支払っていただけます?」
内訳は、振袖洗い張り6万+金銀箔1万+絞り1万、長襦袢洗い張り3万、
帯丸洗い1万、半衿+帯揚げクリーニング1万、バッグ&草履の手入れ1万。
「このほか、しみができたときは別途染みぬき代がかかりますから」と、
大伯母が永年懇意にしてきた呉服屋の料金表を叔母に見せつけた。
(まあ、実際はお得意様価格でもっと安くしてくれるし、他にいくらでも安い業者はあるが、
着物に興味のない叔母はそんなこと知らない)
洋服のクリーニングをイメージしてせいぜい1万円くらいと思っていたらしい叔母は、
「それじゃレンタルしたほうがずっと安いじゃない!」とプチキレたが、当り前だろう、
レンタルとはモノが根本から違うんだ。
「そうですよ、大伯母さんの形見ですから、おろそかに扱うようならお貸しできません」
以後、この言葉を繰り返し、撃退成功。
その後送られてきた従妹の成人式の振袖写真は、どう見ても売れない演歌歌手だったorz