その際、私は開けた事なかった父母の部屋の天袋の中から、小さな箱を見つけた。
中には封筒が入っていて、それを開けてると、母が後ろから覗き込んで「あらー見つかった」と言った。
「なにこれ」と封筒を見ると差出人の所には私の名前があった。
「あんたの書いたラブレターじゃないの」と言われ、・・・あー、そういや書いたわなと記憶がよみがえった。
私が小学校高学年の時、扁桃腺炎をこじらせて入院した際、ある男の子に出会った。
何だったかの難病だとかで、「生まれてこのかた1回しか家に帰ったことのないんだ」と言ってた。
病弱がそうさせるのか、同じ歳なのに大人びていて物静かでいつも微笑んでいて、線の細い感じの子だった。
入院で落ち込んでる私に、何かと話しかけてくれた。話はいつも面白かった。
入院している間に彼とたくさん話したが、入院は半月で終わったため、家に帰ってから彼を思い出して寂しくなった。
それを母に話すと、母はニヤニヤして便箋をくれた。
「仕事行くついでに病院に寄って届けてきてあげる。手紙書きなさい」と言われ、書いたのがその手紙だった。
「で、なんでこれがここにあるのさ。届けたって言ったじゃん。私あの頃いつ返事くるかなって待ってたのに」
と母に言ったら、
「行ったのよ。預かって一週間後くらいかな。そしたらさ、その子、あんたが退院したすぐ後亡くなったんだって。
看護婦さんに聞いたのよ。
でもさーあんたそんなこと言ったらショックじゃない?で、ここにね隠しておいたの。捨てるのもさー」
と言われた。
思わず高齢の母に、「お母さんの馬鹿!!」と怒鳴ってしまった。
まあ引っ越しは無事片付いて、手紙はなんとなくだが持ち帰った。
開けてみると、
『うちは庭に桜の木があります。とても大きいです。メジロがたくさん来ます。燕も来ます。
とてもとても賑やかです。生きてるモノは賑やかです』とか、どうでもいいことが延々書いてあった。
『賑やかなのは楽しいです。○○君にも見せてあげたいです。元気になって一緒に遊べるのをずっと待ってます』
とも書いてて、私は嘘つきだなーと落ち込んだ。
手紙は結局捨てた。
フィギュアの羽生君を見てると何となくその子を思い出して辛い。
母のライトなノリが衝撃ってこと?
羽生君は確かに病弱そう
アスリートだからそんなはずないんだが
ちゃんと教えてくれていたら、お墓参りに行ったり自分の気持ちに整理付けられたでしょうよ
今まで回復して生きてると思ってた人間が実は死んでました。あれが最期の会話でした。って言われたら、どうしようもない感情にもなるでしょ
「実はね…~~だったの。ごめんね、ショックうけると思って…」
って感じだったら違ったような気がしなくもない
さもどうでもいい適当な話題のように出されたら
私も怒ると思うわー…。
気遣いは有難いけど、なんか違うよね。
それを怒鳴りつけるなんてどうかしてる