あれは俺がまだ将来に夢を見ていたピカピカの高校生の時の話
俺は当時本当に馬鹿な子供で、中学では友達すらいなかったのに高校に入ればSOS団みたいな仲間と楽しい日々が送れると夢見ていた
そんな夢見る子供だった俺は新しい日々を過ごすため地元から電車で二時間の学校への進学をすることにした
春休みは毎日が楽しかった
隣の席に美少女、放課後の教室、楽しい部活、中学時代に友達がいなかった俺の頭に同性との青春を考える能力はなく妄想の多くはまだ見ぬ彼女とのキャッキャウフフを妄想していた
そんな感じで春休みはすぐに終わり、なんか四月になり入学式を迎えた
通学路で見る同じ学校の制服の生徒をみるとさらにワクワクしたのを今でも覚えている
教室にむかうとさらに興奮して少しブヒブヒしてしまった
なぜなら、見渡す限り
女子!女子!女子!
女子のバーゲンセールだったからだ
そう、高校で友達を作る予定がなかった俺は男女比1対9のほぼ女子高に入学したのであった
今思うとこのニヤニヤが原因でクラスで浮き始めたのかもしれないが当時の俺は気づきもしなかった
だってお前ら、クラスに女子が40人もいるのに男子は三人だぜ?
しかも俺の他はガリガリなチビとただのデブ
これはまじでキョンになれると俺は思った
そんでニヤニヤしているうちに入学式は終わった
午前中は自己紹介とクラス委員の取り決めと学校の説明だった記憶がある
入学式当日はよく観察できなかったが、観察をしてみると我が一年F組は結構レベルの高いクラスだということが判明した
特に高山さんと山下さんは可愛かった
隣の席は吉井さんというデブだった
自己紹介は明るく爽やかにこなし、委員会は保険委員に立候補した
同性に興味がなかった俺はとりあえずクラスに溶け込もうと隣の吉井さんと話をすることにした
吉井さんは見た目は本当にただのデブで、常にかたあげポテトを食べているようなデブだったが、紳士としてクラスの全員に分け隔てなく交流を持った方が良いと思ったので先ずは吉井さん話しかけた
別に可愛い子に話しかけるのが怖かったわけではない
その一件以来、俺がクラスの女子と関わることはなかった
途中で見てみたらクラスの男子デブとチビが楽しそうにアドレスを交換しているのが見えた
少し泣いた
そんな感じで午後の部活紹介を迎えた
上級生が寸劇をしたり、自分達の作品や活動内容を説明するだけの陳腐で退屈なだけの部活紹介だった
憂鬱のハルヒもこんな気持ちだったのかなぁ、とか考えながら俺は可愛い先輩がいる部活探しに精を出していた
しかし部活紹介も終盤に近づいた頃
俺の人生を大きく変えることになったその部活紹介は地味な感じに始まった
推定身長145センチの幼児先生が壇上の隅にちょこんといた
少し辺りがざわついたが先生は構わずに部活紹介を始めた
「天文部です、部員は0、活動内容は未定、活動予定も未定、入れば即部長」
「以上です!」
さらっとなんか凄いことを10秒ぐらいで簡潔にまとめてカッコよく言い放って壇上を去って行った
その瞬間体中に電撃が走った、もうなんかその時はすごく感動した
放課後、俺はルーズリーフに入部とだけ書いて職員室にかけてった
いや冷静になったらあの先生の名前を俺は知らんかった
てか入学二日目で職員室に入るとか俺の器ではハードルが高すぎる
あともっと冷静になると俺は通学に片道2時間かかるから部活動が物理的に無理なことにそこで気がついた
俺はルーズリーフをゴミ箱に捨てて家に帰った
下校中、少し泣けた
校門で部活勧誘の上級生にまったく勧誘されなくて泣いた
上級生に勧誘されなかったとか気にすんなよwww
向こうだって選ぶ権利があるだけなんだから
「通学二時間てなんだよ!」
「疲れるんじゃボケェ…」
と入学前にしっとけ的な内容を喚き散らしながら足をバタバタさせながらわんわん泣いた
頭の中では子供先生の以上!がリピートされまくってわけがわからないことになっていた
ふ、消失のキョンもこんな気持ちだったのかな…
俺は所詮光ある世界にはいけないのか…
なんて悲劇の主人公を気取ったりもした
後で聞いた話だが、中学時代にいじめを受けていた際それすらを楽しんだ俺が奇声をあげていたので家族は本当に心配をしたらしい
母親が気持ち悪いくらい優しい声で俺に訪ねてきた
「なんもねーよ!!」
鼻水垂らしながら全く説得力のないことを叫びまくった
いや言えるわけないだろ、ラノベを夢見て遠くの学校に進学したらすごく遠くて通学きついし、女子に話しかけて勝手に傷ついて、一人で寝たフリをして、友達できなくて、通学時間長くて部活できないとかとか
まるで俺が馬鹿みたいじゃねーか
黒板に大量にタヒねと書かれたらけさずに残してクラスの雰囲気を悪くしたり、机の上の花は育てたり、靴の画鋲はポスターに使えるし、なぐられたらランボーごっこできるし
教師が来る前に犯人が消したりするんだろうか
「お母さんには内緒にしとくから簡単に話してみ?」とか言って慰めてくれた
俺は鼻水垂らしながら妹に
「学校遠いの…」
って言った
直後に妹が爆笑したから部屋に帰りまた泣いた
そわそわするけど消さないよ
基本そのまま先生が来て気まずくなる
熱血先生だと学級会議、腑抜けだとなにもなかった体で授業
俺はどっちでも高みの見物
それから三時間ぐらい家族との争いがあり、なんか色々あって学校まで三十分のばあちゃんの家に居候することになった
これから三年もの間、親と不仲で捨てられて遠い親戚の家で孤独に暮らす少年という設定を俺が貫き通したのは言うまでもない
引っ越しといっても、同じ県内でお互いの家も近いので荷物は学習道具と衣類と僅かな生活必需品だけという簡単なものであった
ちなみに実家には毎週の土日と連休、夏休みなどの大型連休は帰るという約束をした
悩みが無くなった俺は月曜日ワクワクしながら学校に登校した
放課後までが本当に辛かった、相変わらず友達はいなかったし休み時間は寝たフリをしてしのいだ
ガリデブはなぜかすごく仲良くなってて教室の隅でお昼休みに遊戯王をしていた
俺は飯をすぐに済ませ、図書室で火の鳥かブラックジャックを読んだと思う
教室から俺の居場所が無くなっていくの肌に感じた
よう5か月前の俺
特に部活動を一緒に見て回るような友達も彼女もいなかったから少し教室に残ってみた
ラノベとかだとここでヒロイン候補の一人でも出てくる所だけれど、誰も来ないし二十分で秋田
そして俺は少しだけ丁寧に名前とクラスを書いたルーズリーフを持って子供先生がいるであろう職員室にむかった
中に入って先生を探すと窓際にちょこんと先生はいた
先生の前まで行って
「すみません、天文部の入学希望です!」
と早口でいった、今思うと自分からなにかを始めようとしたのはこれが初めてだったような気がする
噛まずに言い終えて安心していると先生が俺の入部届けを見ながら
「んーあーお前部長な」
と興味なさそうに俺につげた
俺は天文部初の男子部員で初の男子部長になった
部室は屋上へのドアの前の踊り場にあった、広さは大体教室の半分くらいで中には色々機材があったけど誇りを被っていた
話を聞くと天文部は三年間部員がいないらしい、先生の名前は佐倉らしいことも分かった
先生は部室の鍵と屋上へのカギを俺に渡して掃除とか済ませたらなと言って一人で帰った
部室の鍵とかおもらってなんか本当にラノベの主人公にでもなったみたいでテンションが上がった
その日は満足したので帰った
部室を掃除してSOS団みたいに色々持ち込んだりするのを妄想したり、後から女の子の部員が入部してきて消失長門的な展開がくるかもwww
みたいな受動的な妄想を楽しんでいた
今思うと自分から行動もしないで幸せが来るのを待ってるのがダメだったんだと思う
放課後、佐倉先生は来る気配がないので一人で部室の掃除をした
昔の天文部の写真とか出てきてまた輝かしい未来を妄想した
部員は来なかった
クラスのやつらは大分仲が良くなったみたいだった
放課後、掃除が済んだので佐倉先生を呼びに行った
先生は部室を見るとくつろげるようにリフォームしろといって部費をおいて職員室に戻っていった
家に帰ってからどんな部室にしようか考えた、しかし部費は三万円なので悩むほど余裕はないことに気がついて寝た
相変わらずクラスでは話す人もいないし昼も一人で食べて図書室で火の鳥を読む生活を送った
放課後は部室に行き今までの活動記録とか資料とか読んだりしながら過ごした
佐倉先生は部室に一回も来なかった
新入部員も一人も来なかった
お菓子、ティッシュなどはばあちゃんの家からいくらでも持っていけるので他のものを買うことにした
考えに考えぬいた結果、ポット、ミニ冷蔵庫、コップを買うことにした
あとは妹のセンスで小物を少し買ったゴミ箱とか
そんな感じで月曜は大荷物を持って学校にむかった
俺は少し恥ずかしかったけど普段通りに過ごした
お昼火の鳥を読み終えたのではだしのゲンを読み始めた
そして放課後、荷物を抱えて走って部室に向かった
楽しくて少し叫んだら少し変な眼で見られたのは御愛嬌、俺は部室につくと早速リフォームを始めた
まあ、もって来た物を置いて荷物を整理しただけなんだけど凄い満足した
結構いい感じの部室になった感じがしたので佐倉先生を呼びに行った
佐倉先生は「おー、あとはソファーとDVDが見れれば合格だな」と言って職員室に帰ってしまった
DVDはともかくソファーは買えないし運べないので途方に暮れてしまった
なんか疲れたから帰った
入部希望者ははその日も来なかった
クラスでは話す人が相変わらずいない、俺を取り残して皆が仲良くなっていった
ガリデブコンビが女子とお昼を食べてるのを見たときは図書室に駆け込んで泣いた
手にゲンを持っていたから相当キモかったと思う
放課後、部室でも特に変化はなかった
家からPS2をもって来て一人でDVDを見る日々が続いていた
佐倉先生は部室に来なかった
入部希望者も来なかった
気が付いたら仮入部期間が終わっていた
いつものようにクラスで寝たフリをしていたら佐倉先生が俺を訪ねてきた
昼間に誰かに話しかけられることなんて皆無だったから先生でも嬉しかった
「放課後駐車場に来い、以上」
佐倉先生は簡潔に述べるとすぐに去って行った
そのあとワクワクしながら放課後まで過ごした
ゲンがはげた
行くとなんか軽トラがあって荷台にはちと古いソファーが乗ってた
「友達呼んできてこれ部室まで運べ」
佐倉先生は笑顔でそういった
「(いや、いねーし!)」
俺は渋い顔をした、佐倉先生も黙る俺を見て俺の状態に気がついたのか渋い顔をした
結局ソファーは佐倉先生と運んだ、屋上の前だから大変だった
佐倉先生は凄い暴言吐きながら運ぶし、体力ないしとにかく大変だった
なんだかんだで部室にソファーが置かれてなんか部室が更に快適になった
てか入部一ヶ月でまだ天文部らしい活動をなに一つしてなかったけど言いだせなかった
佐倉先生は満足げにソファーに座りながら俺の買ったオレンジジュースを飲んで一人帰って行った
少し楽しかった
その日はニヤニヤしながら帰った
ばあちゃんは赤飯炊いた
ニヤニヤしてたからかw