前記事⇨ぼっち俺「うぉぉ!!高校行ったら仲間と楽しい日々が送れる!!」→ピカピカの青春物語が始まると思っていたら…【2/6】
今思うと金は持ってるはずなのに佐倉先生は本当にけちな人だった
「お前友達いねーのによく学校毎日くるなww」
とか反応にこまること言われたのは良い思い出だ
そんな感じで長く色々あった一学期は終わり、高校一年の夏が始まった
佐倉先生は暑いからパスと言って電話一本よこしてこない日もあったが、俺は毎日部活に行った
長期休暇のため自宅からの通学だったが構わなかった、今思うと何が楽しかったんだろうと思うが
他に生徒がいない校舎で屋上で昼寝したり望遠鏡で人を観察したりするのは結構楽しかった
この季節に見える星等も調べたかったが、佐倉先生が「綺麗ならそれでいい」というので計画は主に昼間の過ごし方に重点を置くことになった
ご飯は皆で作るとして、昼間は何をするか
冬ならスキーが楽しめるらしいのだが生憎季節は真夏、雪どころか雨すら珍しかった
仕方がないから各自遊び道具を持って現地で何をするか決めることになった
吉井と田村さんには俺が連絡することになり、俺はこの夏初めて携帯電話を買った
当時の俺はアドレス帳にある三件の家族以外の連絡先を見て良くニヤついていた
そんな感じでドキドキしながら七月は過ぎ、相変わらず佐倉先生としか会わないまま合宿の当日を迎えた
前の日はワクワクして眠れなかった
何回も荷物を確認して、今日の服装がへんじゃないかもチェックした
なんせ家族以外と休日に外に出るなんて小学生ぶりだ、服も妹に頼んで買い物に付き合ってもらった
三十分も待つと一人目の参加者が現れた
吉井だ
吉井は馬鹿みたいに真っ白なワンピースから馬鹿みたいに太い四肢を出してのそのそとこちらに這ってきた
額からは汗がだらだらと垂れてまるで蒸気機関車のようであった
天使じゃん
俺は紳士的に控えめに手を振り返した
確かに服は可愛い、服は可愛い
しかしまて、その服はお前でないと俺に言っている「今すぐ脱ぎ捨ててジャージを纏え!」
本心ではこう言いたかったが、天文部のために休日を潰してまで参加してくれた吉井を部長として丁重に扱う義務が俺にはあったので
「可愛い服だね、吉井さんはせんすがいいなぁ」
と適当にほめておいた
田村さんは魔女の宅急便の絵描きの人みたいな恰好をしていて、正直ごちそうさまでした
残りの二人は、一人はハリセンボンのタヒ神に似てて、もう一人はいまどきの普通の女の子だった
確認
吉井、デブ
田村さん、声優の後藤沙緒里さんみたいな感じ、あんなに美人ではないが
木村、タヒ神
内田、普通
佐倉先生は「すまん、ジブリが」とか言い訳してたけど、珍しくジュースとお菓子を買ってきてくれたから許した
言い忘れたが今回の旅行は佐倉先生の運転で行くことになっていた
正直子供みたいな先生に命を任せるのは心配ではあったが大丈夫と言い張るので車で行くことにした次第だ
俺は先生の命令で助手席に座らされて先生の話し相手になっていたから参加はできなかったが
他の女性陣達は後ろでトランプなどを行いすっかり打ち解けたみたいであった
観察していると、どうやら田村さんの友達は良い人みたいで特にタヒ神は明るくトークが中々に面白く見直した
吉井も案外話を聞いていると普通の女の子だった、デブだが
全員一個上
まぁ、車の中はそんな感じで特に何もなかった
佐倉先生の運転してる様子がやけに一生懸命で可愛かったとか、高速で届かなくて大変だったとか
出来事と言えばそのくらいだ
なんだかんだで佐倉先生としか会話しないまま車は長野に到着した
都会のゴミゴミした空気とは違い空気が澄んでいるよう気がして、急に気持ちまで大きくなって
佐倉先生の事をさくちゃんて呼んできた、当然すねを蹴られた
田村さんに聞いたのだが、二年女子の間では佐倉先生はさくちゃんとよばれているらしい
中に入ると少し埃っぽくて止まるには少しあれな感じだった
そこでお昼も近いこともあり登板を決めて掃除と買い出しをすることになった
話しあった結果女の子に買い出しに行かせるのは危ないと俺と吉井が買い物に行くことになり
その他のメンバーで合宿所を掃除することになった
お店がある所まで徒歩で片道二十分、吉井がいることを考えると四十分はかかると思われた
佐倉先生が車を出せば早いのではと提案したが「疲れた」と言われた
疲れたなら仕方がない俺はそう思った、この頃には俺は佐倉先生の言うことなら大体許す程度には佐倉先生との上手い付き合い方を身につけていた
かくして、デブを引き連れての従軍が始まった
特に会話の内容も思いつかなかったし吉井と仲良くしたいとも思っていなかったからだ
意外だったのは吉井が案外テキパキと軽快な足取りで歩くことだった、額からは滝のような汗を流しているし
ワンピースも少し透けてて見苦しいのだが、吉井はペースを落とすことなく俺の歩くペースについてきていた
普段なら吉井に気を使うことなんてしないのだが俺は思わず吉井に話しかけていた
俺のいきなりの問いかけに吉井はフゴっとびっくりしたのか鼻を鳴らした
「いや、汗すごいしきついなら少し休憩する?」
立ち止まると吉井はさらに凄い量の汗を垂らしたので、俺は少しびっくりしてつい優しく接してしまった
「ず、ずごじだげ!!」
なんかもう吉井も必タヒだったので俺たちか木陰に行き休憩することにした
あまりに汗が凄かったので、俺はまだ開けていない水のペットボトルを吉井に渡した
水を受け取ると吉井はお礼を言い水を貪るように飲みほした、俺はなんだか申し訳がない気持ちになって吉井にペースを提げて歩く提案をし
それからはなるべく吉井に話しかけるようにした
なんというか、吉井はデブはデブでも好かれるデブのようだった
俺が驚いたのは吉井が自分はデブであることを自覚していて、デブであることを陽気に話してくる明るい人間だったことだ
こいつ生まれる国が違えばもてたのかもしれないなとか考えるぐらいには吉井の事を見なおした、デブだけど
買い物を済ませ往復する頃には吉井とも大分打ち解けたように思えた
そして、もうじきコテージにつくと思われた頃吉井が自分の事を話し始めた
吉井は人には言いにくい内容を俺に話してくれた
それから俺の事を普段誰とも喋ってないから不良なのかと思ってたと笑いながら言った
そんな俺の目に吉井はやけに輝いて写った
多少の違いはあれど似た境遇にも関わらず、笑顔で笑いながら人と関わっていく吉井を見て自分がひどく小さい人間に思えた
また泣きたかったけど吉井がいるから泣くのだけは我慢した
一応一年の学園祭までは書く気でいるけど眠い
仕方ないので佐倉先生の持ち場を手伝いに行くと、先生は「どうだった、どうだった?」
とまるで中学生みたいなお出迎えをしてくれたので俺の涙は引っ込んで佐倉先生に呆れてしまった
それから皆で掃除を済ませ、買ってきた食材を吉井とタヒ神が先頭に立ち料理して皆で食べた
食べた後、佐倉先生は一人でお昼寝をしてしまった
俺たちは持ち寄った遊び用具の中から俺の人生ゲームを選んで静かに楽しんだ
長野なのにやってることは普段の天文部とあんまり変わらなくて少し笑った
今21、身長は当時は170位で体重は痩せてた
佐倉先生のこだわりでご飯は飯盒炊飯にしたんだけど、当番の佐倉先生がやり方を知らず
ぼっちな俺も過去の学校での知識が全くないため天文部二人組は大人しくテレビを見て待っていることになった
佐倉先生は「あんなもん大人になりゃつかわねーよ」と言っていたが失敗して少し気を落としていたのを俺は見落としていない
先生が落ち込むのは初めて見たけど、カレーを食べる頃にはすっかり機嫌が直っていたので単純あ人だなーと思いあんまり深く考えるのをやめた
カレーは普通に上手かった