前記事⇨上官「腕立て伏せ!用意!!…早くしろゴラァ!」俺「うぉぉぉ!!」→メンヘラの俺が自衛隊に入った結果wwwwww【3/6】
カレーとか結構メジャーなものだった。
うまい・・・!
疲れもぶっ飛ぶ美味しさ。
山麓で食う飯がここまでとは・・・!
ガツガツと一気に平らげてしまった。
さて。
用意したのはスコップとトイレットペーパー。
仮設トイレはあるっちゃある。
でも結構混むし衛生的にもよろしくなかった。
埋設。地雷と表現される排泄物。
うっかりふんでしまったらもう目も当てられない。
排泄スポットでは最新の注意を払い場所を選定した。
カッコー・・・カッコー・・・
よくわからん鳥の鳴き声。
全体的に霧がかかっていてなんか神秘的だった。
涼しくて気持ちもいい。
ペットボトルに組んだ水を使い、持ってきたひげ剃りで顔の手入れ。
鏡持ってくりゃよかったなぁ
剃り残ししまくり。
後半にもなれば髭なんてもうそらなかった。
完全にゲリラ兵の風貌と化していたと思う。
これを歩き切らないと修了したことにならないと俺は聞いていたのでモチベーションをあげていた。
主に下着類をジップロックにいれ、水没防止し準備完了。
班長方が荷物の点検をする。
不正や誤魔化しは一切きかない。
食べ物の持ち込みもNGだ。
同時に最後の意気込み検査。
「歩き切れるな!?」「はい!」
「同期が倒れそうになってたらどうすんだ!?」「助けます!!」
「できるんだな!?」「はい!」
一人一人回っていく班長方。
もちろんこの行軍は班長方も一緒に実施する。
新隊員が倒れた時や限界の時は二人分の荷物を背負い、行軍せねばならない。
全くの暗闇でのモノの見え方。
物音を立てない歩き方。
打ち上げられる照明弾。
早朝に歩哨訓練。
二人一組になり天幕の周りを巡回。
不審なものがいないかをチェック。
「誰か!」
猶予は三回まで。
三回までにこちらの納得する答えが帰ってこない場合は。
刺または射杀殳する。
俺らはこういう動作、理論を座学で頭に入れ訓練で体に覚えさせている。
杀殳るか杀殳られるか。その日の覚悟を持つことは大事だ。
「誰か!」
「山」
「誰か!」
「か、川?」
「誰か!」
「え!う、うみ?」
ズドーン
そんな感じw
エンタイ構築。
陸自の代名詞穴掘りだ。
穴を掘り銃座をつくる。
詳しくは言えないけど、銃に対応したそれぞれの穴は全て長さ広さ深さが決まっていて、それに合わせて掘る。
この穴掘り。めちゃくちゃ重労働。
特に腰が痛い。ザックザックと掘り進む。
輸送科はトラック一台を隠すため穴を掘るらしい。人力で。凄まじい・・・
訓練の最終日から一日前に25km行軍は実施された。
10km行軍でもだいぶ辛かったのに、それに+15km。
でも、もうなんとかなるだろうっていう自信がついてた。
目覚ましが鳴り響く。
天幕の中は当然真っ暗。ライトを照らし装備品を確認し、装着。
半長靴の靴紐をしっかり結び、とりあえずの準備完了。
外も当然真っ暗で、目を凝らながら僅かな光を頼りに銃を受領しにいく。
総重量15kg。一体何時間歩くのだろう。
二列の縦隊に並びいざ出発。
会話などない。ザッザという音だけがあたりに響く。
俺はこの日すこし体調が悪かった。
歩き始めてそうそう、気持ちの悪さを感じめていた。。
途中の休憩地点で支給された飯を食うのだが、全く喉を通らない。
気休めのウィダーゼリーを流し込みつつ不安を感じていた。
実は出発前、危なくなったら食えと渡されていたものがあった。
それは梅塩を錠剤化したもの三粒。
陸自では梅が兵糧丸の役割を果たしているらしく、事あるごとに梅を食う。
足がつっても梅。倒れても梅。気持ち悪くても梅。
食堂ではクエン酸が常に出されていた。
大事なものをこんなに早く使ってしまった… 不安。
しばらくの休息後また出発。
幸い早朝は涼しいのでその点は助かった。だが気持ち悪さは一向に引かない。
ザ。ザ。ザ。ザ。
フゥーフゥー・・・
時に山の中。時に道路を交互に繰り返す。
会話などないので、徐々に意識が自分の内へ向かっていく。
思い出すのはやっぱりこの三ヶ月間のことばかりだった。
本当に色々あって。でもこの時は楽しい思い出ばかりが次々に浮かんできていた。
苦痛を少しでも紛らわすためだったのかもしれない。少しニヤけていたかも。
気持ちの悪さももうナイ。
慣れてしまったといったほうが正しいのかもしれないけど。
・・・・・・・・・・・・・・
途中で戦車が走ってるのを見たり、馬小屋を見たり。
視点が確実に下に下がってたけど、いい気分転換。
歩く。歩く。歩く。
足の感覚はもうない。
あるのは気力だけ。ただゴールに向かって。
次の休息地点に到着。助かった。
だが水筒の水はもうあと少しと迫っていた。
み、水・・・!
不安要素が次から次へと沸いてくる。
飲みたい。けど……
その時。
飲めよ
差し出される水筒。
同期だった。全力で断ったのだが相手も引かない。
遠慮すんなよ 俺ら同期だろ?
目頭が熱くなってくる。
同期。なんとありがたいものだろうか。
俺は出来るだろうか?こんな風に自分を犠牲にして助けることが出来るだろうか?
この三ヶ月間、思えば助けられてばかりだった。俺がしてあげれたことなんて・・・
ほんの少しだけ頂いて、また歩き出す。
「「「「対空警報!!!」」」」
挺電により伝わってくる状況。
緊張が走る。敵機がこちらへ向かっているらしい。
急いで林の中へ隠れ銃を構える。
「「「「「状況ガス!!」」」」」
なんと毒ガスもあたりに散布されているとのこと。
ガスマスクを袋から取り出し、フゥッーフゥーッー。
よし。装着完了。
ちなみにリミットは8秒以内。迅速かつ的確な装着が求められる。
ただでさえ体力も限界に近いのにこれは・・・
銃を構え身を潜める。
額から汗が流れ落ちているのがわかった。
「「「「「対空警報解除」」」」」
ホッ。どうやら敵機は去ったらしい。
でも依然としてガスはそこらに漂う。
ガスマスクを装着したまま、行軍再開。
ぜー・・・ハー・・・・(シュコー)
暑い。息がしづらい。視界もぼやける。
でも歩みは止めない。気合だ。
そのうちガス警報も解除された。
マスクを外す。
はぁー・・・!
かなり涼しく感じられる。
あと少し。あと少しのはずだ。
銃をしっかりと握りしめ一歩一歩踏みしめる。
もう勘弁してください・・・なんて言えるわけもなく。
グゥ・・・!
もう気力だけで持ってるようなもの。
歩ききらねば。歩ききらねば・・・!!
同期同士で励ましあい、時に馬鹿話して。
ながーい坂道を超える。
天幕が見えた。もうすぐそこだ・・・!!
こころなし早くなっていく歩調。
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ!
宿営地に近づくにつれ聴こえてくる音。
「おめでとう!!」「よく頑張った!!」パチパチパチパチ!!
今回の野営に参加していただいた教官たちだった。
盛大な出迎え。両脇から割れんばかりの拍手。
「あああ・・・あああああ!!!」
わからない。わからないけれど涙が止まらない。
あの時の感情は何だったんだろう?
一番近いのは俺でも。こんなおれでもやり遂げることができたんだ・・・!!
っていう気持ちだったのかな?
多分これだと思うけど、いろんな感情が一気に湧いてきて止まらなかった。
拍手の音が聞こえ始めたあたりから、そこらかしこですすり泣く声が。
歩みを止めてすべての装備を外す。
でも余韻はまだまだ収まりそうにない。
同期たちと抱き合って泣いた。
大声を上げて。男達が泣いていた。
・・・
・・
・
ひとしきり泣いたあとストレッチ。
体の各部が悲鳴を上げている。特に足。
あとで確認したけど、皮がめくれてボロボロ。悲惨だった。
あと、肩も地味にダメージがでかかった。リュックが食い込んで食い込んで・・・
アクエリアスが支給される。
うわー何日ぶりだろう・・・!!
同期たちと回しのみ。ぬるいけどそれがまた体に良い。
結局、9時間ぐらい歩いてたことになる。
次の日にみんなで宿営地の撤収作業。
分担して一気に。とはなかなかいかないけれど、そこそこに。
トラックにすべての荷物を積み込み、乗車。
当然、中では皆爆睡だった。
・・・・・
駐屯地に到着。
荷物をおろし、営内にそれを運び込む。
たった5日間だけだったのに、もう何日もいなかったような。
ベッドの感触。蛇口。スイッチ。
何もかも懐かしい。無意味にカチカチしてみたりw
あぁ、戻ってきたなぁ
妙に感慨深い。
キレイにして、未来の後輩へ。
道具一つ一つを整備していくに連れて、それぞれに思い出が蘇ってくる。
いちいち洗濯してたら大変だろ?と支給された代用戦闘服。
泥まみれあたり前で、雨の日でも外でタワシでゴシゴシして、泥を落としたっけなぁ。
銃。ほんとにこの三ヶ月間、この64とずっと一緒だった。
正直、なれてくるとただの重い物体だったけれど。
それでも、一番最初の俺の銃。愛着も湧いてた。
スコップ。ヘルメット。弾入れ。サスペンダー。弾帯。
ひとつひとつを確かめるように磨き、拭き上げ、油をさしていく。
返していくたびに、否応がなしにも、別れの日が迫ってきていると自覚させられる。
でも、それは誰も口には出さない。
いつものように日常をこなしていく。
その間にも、職種の発表や、各種試験もあってそこそこに忙しい。
そんな感慨に浸っている時間もなかったのかもしれない。
それでも、その日の迫りを認めないかの如く。
俺達は以前にもまして、よく会話をしじゃれ合った。
ついにその日を向かた。
いままで一般人だった俺達は今日。晴れて自衛官となる。
階級章を縫い付け、少し誇らしい。
全員が舎後に集合。
もう一度服務の宣誓を読み上げた。
営内へ戻る。
・・・
誰も口を開かない。開けなかった。
最後の昼飯を全員で食べに行き、もう一度営内へ。
配属される部隊ごとに、出発する時間は違っている。
だから、みんなで一斉に別れるわけではない。
部屋から一人。また一人と荷物を持って出ていく同期。
じゃあ。また何処かで。元気でな。
固く握手を交わす。
別れ際の言葉なんて、案外シンプルだ。
もう。おおくを語らなくてもわかってるということかもしれない。
人で溢れかえっていた。
ゆずの栄光の架橋が流され、それぞれのトラックの前で整列する同期。
部隊ごとに迎えが来ているのだ。
待っている間に少しだけ世間話。
ブロロロロ・・・
きた。きてしまったか・・・
それじゃあ。また。
「じゃあなああああ!何処かで会おうなあああ!!」「元気でなー!!」
トラックの荷台から、目に涙を浮かべ最後まで手を振り続ける同期たち。
こちらも、全力でそれに答える。
部隊に配属されたらもう基本的には会うことはない。
それぞれの部隊で、また新たな出逢いと別れを繰り返す。
キョロキョロとあたりを見渡し、その人を探す。
いた。
俺のベッドバディ。
最初はどうにも苦手で、一番一緒に作業してたのに、なかなか打ち解けられなかった。
でもそんな俺にも気をかけてくれて。
いろいろと企画してくれて。
整列して乗り込む順番を待っているバディの元に走っていく。
あの・・・!
あれ?言葉がで、て、こない。
な、ん、で? うぁ・・・!
握手を交わした状態で。
俺は号泣していた。どの別れよりも一番泣いた。
いろいろと伝えたいことがあったのに。
こみ上げてくるなにかがとまらない。
なにか会話した気もするけれどよく覚えていない。
どこかで会えたなら。恥ずかしいけどもう一度感謝の気持ちを伝えたいと思う。
新しい同期たちとトラックに乗り込む。
ブロロロロ・・・
最後にいままで過ごしてきた教育隊の門を荷台から見送り、俺の前期教育は終了した。
以上です。読んでくれた方々ありがとうございました。
出来るだけ自分の記憶を頼りに再現したつもりです。
あの三ヶ月は自分でも経験したことのない激動の三ヶ月でした。
まるで高校球児のような・・・そんな熱い日々。
青春って自分で言うと恥ずかしいけど、これがそうだったのかなぁって思います。
書いてる最中にもいろいろと記憶が蘇り懐かしくなるとともに、何もかもが新鮮だった初心を思い出せた気がします。
このあとは後期の教育を終了し、無事に部隊に配属されますが、そこでもいろいろと苦労しました。。。(主に無愛想w)