高校を出て7年間、妻は俺の祖母の兄が営む田舎町の店舗に勤めていた。
その店舗はあまり利益が上がらず畳む予定であった。
そこで再就職先を紹介する代わりに俺との縁談を持ち込んだのであった。
あまり期待はしてなかったがそれでも妻を見た段階では正直言って断ろうと思った。
こけし人形を思わせる風貌で化粧しなれてませんと文字通り顔に描いてあった。
とても若い女性とは思えない感じのファッションセンスも気持ちを萎えさせた。
だが贅沢もいえないと思い直し適当に話を合わせていた。
しばらくしてここは若い二人でという感じで放置された。
妻はモジモジしていたが何かを決心したように核心を聞いてきた
妻「前の奥さんに逃げられたって本当ですか?」
俺「、、はい、そうですよ」
妻「男作られたって聞いてるんですけれど」
俺「、、そうなりますね」
妻「職場の人に言い寄られたんですよね?」
随分不躾な事を言い出す奴だと思った。空気が読めないのかなって気がした。
俺が答えずに居ると細い目を思いっきり開けて俺を見詰めて、
俺「何がです?」
妻「私は今まで男の人に一度も口説かれた事ないんです」
俺「一度も全く?」
妻「そうです、共学だったし知り合う機会も何度かあったのに」
俺「?」
妻「んだから安心できますよ!」
妻はドヤ顔をしてた。俺は笑ってしまった。
男に相手にされない事が何で自慢になるんだろうと思った。
でも妻のアピール?は俺の心へのピンポイント攻撃になった。
浮気の可能性がないというより、こいつと居ると面白いんだろうなと。
3ヶ月後には同棲をはじめ直ぐ籍を入れた。
妻は必要ないと言ったが半年後花嫁姿を見たいであろう御両親の事を考え
身重な妻と親族だけの神前結婚式を上げる事にした。
裕福ではないが純朴な御両親は俺側の親族の前で何度も頭を下げ妻を宜しくと言っていた。
「いい子です、自慢の娘です、高校しか行かせられなかったけど大事に育てました」
それを見て妻は大泣きをした(飄々としている妻が泣いたのを見たのはこの時だけである)
化粧が崩れたのを補正するために式が始まる直前に志村けんの馬鹿殿並みの白塗りをした。
変でないかと不安そうに小声で尋ねる妻に何度も「綺麗だよ」と言った。
本当にとても綺麗に見えた。
いつもどこかずれている妻と一緒になって十年余、
子供3人もちょっとアレな感じだが結構幸せである。
>>変でないかと不安そうに小声で尋ねる妻に何度も「綺麗だよ」と言った。
本当にとても綺麗に見えた。
ここでちょっとうるっときてしまった。疲れてるのかな。
いい話をありがとう。
んん もうっw
人生いろいろあるだろうけど結果オーライじゃん
奥さんに愛してるといってやれ
そして飄々とした奥さんを泣かせてみせろ
波乱万丈で非常にリアリティーがあり、感動出来た。
お幸せに。
長文ありがとう。