遅くなりました。
そろそろ投下を始めますので
よろしくお願いします。
冬休みに入ると、彼女は冬期講習で受験の最終の仕上げに入るわけです。
だからボクは彼女がいるにもかかわらず、クリスマスも正月も独りなわけでした。
仕方がないんで、バイトしてましたよ。
レンタルビデオ屋で。ほぼ毎日。ずーっとね。
ホラーとか純愛モノのビデオを大量に借りていきましたね。
あれだけの量を観るんですから、クリスマスの予定はないんだろうなあ
とか思いましたよ。言いませんけど。
なんだか怒ってるというよりは、困ってるような雰囲気はありましたけど。
でも、もうどーでもいいですわ。赤の他人ってことです。
今さら誤解を解いたところで、何が変わるわけでもないですし。
滑走路を走る飛行機に例えるなら、既にV1速度(離陸決心速度)を
超えてますからね。もう元には戻れないんですよ。ボクとミドリは。
なので、以降は名前で呼ぶことにします。ユウコ(仮名)さんです。
ユウコさんと会えない冬休みは、ほぼ毎日メールしてました。
ちょっとだけ会ったりもしました。そして一緒に帰るだけ。
先輩の頃とは、180度趣の違う清い交際です。
彼女のエネルギーは、全力で目の前の受験に向かってましたからね。
ボクへ向ける分は残ってなかったんでしょう。
続いたようです。
バレンタインの時期も会えませんでした。ちょうど私立の試験と発表の間の
時期で、とてもそんな気分ではなかったようですからね。
さすがに、その時期はメールすらできなかったですし……
この時期、辛かったことでしょう。
そして、試験の出来に一喜一憂しながらも、志望校のひとつに合格したようで
無事卒業式を迎えました。
だから、今以上に会えなくなるのは確実でした。
そういえば、合格発表があってからもデートとかするヒマがなかったです。
彼女は下宿先探し、引越し、オリエンテーション、おまけに合宿免許と
イベントづくしで、超忙しかったみたいでしたから。
残念ながら、先輩とのようなコトは、何ひとつお世話にはなれませんでしたが
ちょっとした仕草とか、メールの文章とかにスゴく惹きつけられるんです。
もうね、純真な男子高校生の心を、ガッツリ鷲掴み状態です。
ユウコさんは都会の大学、ボクは地方の高校での遠距離恋愛のスタートです。
さすがに、これはもうダメかなと思いましたね。
都会のイケメン大学生になんて太刀打ちできませんから。
甘いキスのひとつくらいは、させてもらってもエエんじゃないんすか?
くらいは考えてました。若干、諦めモードに入ってましたね。
そうそう、あのクラブボックスでのやつはナシですよ。
あんなのは回数のうちには入らんです。キッパリ。
「週末にデートしよう!」でした。
そこには運転免許を取得したこと、家の車を借りてくることが
書いてあり、ドライブデートに行くことになりました。
付き合い始めて約半年、念願の初デートです。
しかもドライブですからね、初っ端から二人きりですし!!!
もうね、期待で胸が膨らむだけじゃなく、余計なところも全力で
膨らんじゃいましたよ。
車ですからね、国道沿いの建物に突入しやすそうじゃないですか――
いや、突入なんてしなくても、車の中でもある程度は……妄想ニヤニヤ
コースを走ります。
春の日差しは気持ちよく、ちょうど咲き始めた桜が風に揺れる公園の
駐車場に車を停めると、まったりとした気分が二人を包みます。
なんとも甘い空気感が二人の間に流れて――
「山下くんって、私のことどう思ってる?」
「好きですよ。スゴく。会えないことが続いたけど
その分これから二人で頑張ればいいかと」
「二人で頑張れば……か」
ボクはそれが何を意味するのか分からず、黙ってました。
しばらく二人は沈黙……そして……
甘い展開を期待していたボクですが、これは何か違うんじゃないのか?
とか思ったです。
同じ表情をしていたからです。鋭い両眼から怒りのオーラが放たれてました。
「二人で頑張ればですって? は? なめてんの?」
罵詈雑言ではありませんが、いたいけな男子高校生を傷つけるには
必要十分だったです。
途中からは自己防衛本能が働いて、何も聞こえなくなりましたから。
まだ怒っていたんです。
そして、復讐としてボクを同じ目に遭わせてやると決心していたようです。
半年間の長期に渡る、執念の復讐劇でした。
上で別れてやると。
そんなわけだから、デートもしないし、何もしない。
ただただ、ボクを焚き付けることに専念したとのこと。
ぶつけることができたことらしいです。
おかげで、自分の偏差値よりもランクの高い大学に受かったと高笑い
されてしまいました。
決別を告げるXデーと……
ボクは、とても悲しかったです……
傷ついた心に、まったく気づけなかった自分が悲しかったです。
彼女はボクに復讐することで、傷ついた心を必タヒで癒そうとしていた
ということを、つい今さっき知ったという事実でした。
ハズなのに泣いています……
怒りの感情は既に消え去り、ただただ泣いています……
ボクは罪悪感でいっぱいです……彼女の本当の気持ちも知らずに
恋人気分で一人盛り上がったりして……ホテル突入妄想とか……
なんという最低男……
そうすれば、こんな展開にならずに済んだかもしれなかったのに。
そして最後は、二人で号泣という悲しい最後……
これが、ボクの聞いた最後の言葉でした。
「山下君、悪いけど私を一人にして欲しいの……」
ボクは黙って車を降ります……彼女の車は静かに去っていきました。
徐々に、今の自分の状況が不安になってきたんですよ。
(いったいここはどこだ?)
なんとかマップみたいな便利機能もない時代でしたから、帰宅は困難を極めました。
太陽の方向から東西南北を考えるとか、何のサバイバルよ?
心に湧き上がってくる後悔と悲しさと不安の入り混じった感情でシクシクと
泣いていたのを覚えてます。情けない男です。
(確か、彼女と喧嘩して車から降ろされた、とか言ったと思います)
帰宅方向へのバス停まで送ってもらいました。
帰宅したのは終電近い時刻でした。
なんだかスゴーく疲れて、晩御飯も食べず、風呂にも入らずに泥のように眠りました。
叩き起こされることもなく、グダグダしてます。
一日中ベッドの中で、去年からの自分の行動を振り返ってました。
いったい何が悪かったのかなぁーとか
嫌がらせをしたわけでもないのに、みんなに嫌われるとか辛いよなぁーとか
彼女のことは意識的に心の底に沈めてましたから、いつの頃からか
名前すら浮かんでこなかったんですが、その日は頻繁に登場します。
遂に彼女は、今頃どーしてるのかな?
とか考えるように、なってしまいました。
が、ボクの後ろには“山本コージ”とかいうメガネ属性.
少しおとなしめの奴が緩衝材として座っていたせいで、直接彼女に
接することなく過ごしていたんです。
貪るだけの一日に、なってしまいました。
翌日、なぜか部活のメンバー全員が、ボクの破局を知っていましたね。
大方、ユウコさんが現在のマネージャー経由で暴 露したんでしょう。
なんでホッとしたかというと、もうこれで“略奪愛の主人公”という
センセーショナルな肩書きが、なくなるからですかね。
マネージャー群は…… 全員が「氏ねよお前」です。
きっと、あることないこと吹き込まれてるんでしょう。
もうエエですわ。弁解する気力もないっす……
部活と、いまだに和解できていないミドリと同じクラスでの授業、という
針のムシロのような日々が続きます。
もっと詳細を書こうと思ったんですが、思い出せないんですよ。
特にマネージャーさんに言われた言葉とか、あの時の感情が全く
出てこないのが困りましたね。
嫌な記憶というものは、時間が経つと無意識に消されていくようです。
さて第三部から、ようやくミドリとの話になります。
これだけのことを経験して拗ねた印象を与えない>>1の人柄に惚れるわ〜
続きは明日なのか?
ほぼ寝落ちしてましたです。
続きは、明日投下させていただきます。
おやすみなさい。
おつです!楽しみにしてる!