夜勤から帰ってきて、ひと眠りしようかと思っていたら、けたたましい音がしだした。
火事かと窓から見てみると、団地の人たちも外に出てきているところだったんだが、
しばらく見ていると、その人たちがひとつの部屋の前に集まっていった。
炎や煙は見えないけれどブザーは鳴り続けている。
んで、なんじゃらホイと思ったんで出てみたわけだ。
顔見知りの人に聞いてみたところ、この時点で判明したことは、
・鳴っているのは独居老人(ジジイ)の部屋である
・玄関は施錠されカーテンも閉まっているから中の様子はわからないがエアコンは動いている
・呼びかけても返事がない
そうこうしているうちに消防車とパトカーが到着した。
(消防車を要請すると警察にも連絡がいくらしい)
とりあえず火は出ていないみたいだから誤作動なのかもしれないってことなんだが、
なんにせよ鳴りっぱなしってわけにもいかないので入ってみるしかないかな、と。
消防の人がベランダの柵をよじ登ってカーテンの隙間から中を覗こうとしたら、カーテンがサッと開いた。
(隊員さんが「ウヒャッ」と悲鳴みたいな声をあげたことは秘密だ)
顔を出したのは住人のジジイで「なんだアンタは!?」って、えらい剣幕。
で、ジジイの言いぶん。
・報知器が正常に作動するかどうか試したら、鳴ったはいいが止め方を知らなかった
・しかたないから耳をふさいで電気が切れるのを待つことにした(死ぬまででも待つ気だったのか?)
・カーテン越しに人影が見えたので泥棒かと思って出てみた
いやもう脱力するしかないんだが、そのあとのジジイのセリフが火に油。
「こんなおおげさにすることないんだよ」
おのれがおおげさにしたんだろうが、と。
団地の人たちはカンカンになったし、消防の人や警察官も怒っていた。
まあね、火事でもなければ、死んだりしてたわけでもなくてよかったけど、
仕事よりもグッタリと疲れた。
ちなみに警報の止め方は「紐をひっぱるだけ」だそうだ(うちのもおなじだな)
俺はジジイのことをよく知らないんだが、
去年、奥さんが亡くなってからは近所づきあいもしなくなってたらしい。