集団心理の怖さを知った衝撃的な事件だった。
いじめられていた子が不登校になり窃盗も働いて、それで発覚した事件で、クラスの半分近くがいじめに加わっていたということで、何度か保護者と先生と懇談があった。
異常なのは、いじめの中心にいた生徒たちが、発覚後も悪びれることなく、いじめを行ったことを認めた上で、自分たちは正しいと開き直っていたことだった。
「元はといえば自分たちはA(いじめられていた子)の被害者であり、Aは罪を犯しているのだから、当然のこととして制裁をうけるべきであり、自分たちは何も悪くない」…という理屈を自信満々に語っていたらしい。
異様な雰囲気だったので児童相談所とか当時まだ珍しかったカウンセラーとかも入った。
分かったことは、いじめグループはAに対して「裁判ごっこ」をしており、それが高じて「Aは罪人」「自分たちは正しい」と思い込むようになったということだった。
Aは、家庭環境に問題があってネグレクト気味で育ってきており、知的障害ではない(今思えば精神や発達障害はあったかも)が言動や行動が変なことがあり、服装も不潔で時々悪臭もするという感じで、周りからは気持ち悪がられていた子だった。
その不愉快さをいじめの加害者側はいじめの理由にしており、それを正当化し補強するためにいじめ中心グループが「裁判ごっこ」を開催し、ほかの子を巻き込んでAを責め立てていたらしい。
そういうことを繰り返す中で集団で催眠にかかったようになっていたようだった。
うちの息子は、いじめに直接参加はしていなかったものの、いじめた側に同調的な傍観者、という立場だったので、先生から個別に経緯を説明され、家で夫と一緒に何度も話し合った。
自分にとって不愉快というだけで、相手を「罪」と断定したり制裁を加えることには道理がなく、他人にそんなことをする権利はない、ということを最終的には分かってくれたが、そこで息子が見せてくれたのが、いじめに加わった子から渡されたという「裁判」の「議事録」だった。
わざわざテープ起こしをしたもののようで、ワープロ打ちで、Aがいかに不愉快な存在で
みんなが迷惑しているか、クラスに恥をかかせているかを「論告」していて、「弁護人」役までいた。
そして、Aに対して「被告人は居るだけで不愉快であって『存在の罪』だ」「健全な学校生活を汚している」と言って「懲役刑」とか「慰謝料支払い」の「判決」を出していた。
いじめグループに物知りな感じの子がいて裁判ごっこを主導して、「議事録」を息子のように同調的な生徒に渡して、いじめへの協力を呼びかけていたらしい。
それに誘われ、裁判ごっこやその後のいじめに参加した子もいたらしい。
あまりに念の入ったやりかたに夫も私も寒気を感じたが、「存在の罪」とか中二病っぽく稚拙だと思うし、難しい大人びた言葉を使い、いかめしい場所を演出して、みんなで一人を攻撃するという高揚感で「自分は正しい」と陶酔してこんなことになったんだろうと思う。
ただ、被害者のAは別に児相が入ったとかで、結局学校に戻ってこなかった。
取材はあったらしいが、地元新聞とかには出なかったのも、被害者の複雑な状況ゆえかも知れない。
何年かまえに、「『ファシズムによる支配とは』ということを高校生に教えるためにクラス内でロールプレイさせたら、子供たちが集団心理で恐ろしいことになった」という
実話をもとにした外国映画がちょっと話題になったけど、私は息子のこの件をまず連想した。
もし、そのまま社会に出てたら、と想像するとゾッとする
不登校までは行かなかったけど…
でも先生はそれに気付いていても注意したり改善しようとした事なんて一度もなくて(どの先生も)、見て見ぬふりの完全放置が普通だった
>>513を見て、今の学校は先生も保護者もきちんと対応してくれるんだなあ、と羨ましく思った
時代なのか、地域性なのか(大人になって分かったけど、私の育った学区は結構アレな場所だった)
学校側が加害者を今回も守っているし、何のおとがめもない。
被害者がいなくなって、憑き物が落ちたなんて、まるで元凶扱いの512も息子同様に怖い。
被害者の子が、泥棒しなかったら問題は発覚しなかったし、向き合いもしなかった。
その子が自殺するまで、イジメられていただろう。
担任はAのネグレクトぶりと学校生活を見て知っているんだから、助けなきゃいけない立場なんだけどねぇ…。
集団心理でラリ状態だったのがカウンセリングとかで一気に覚めたってことだろ。間違いを自覚させてるんだからましだよ。
担任が気付くのが遅いというのはそうだけど。