大学生のころ、住んでたアパートで毎晩夜泣きの声が聞こえていた。
私の実家は田舎で、私が実家にいた頃から兄一家も一緒というか敷地内の離れに住んでいたから、子供の泣き声には慣れていて特に迷惑とかは感じてなかった。
ただ毎日大変だなーくらい。
お父さんはたぶんいなくて、シングルマザー。
ある日深夜に帰ったら、ものすごい泣き声がしばらく止まなかった。
他の部屋の人も様子見に出てくるレベル。
赤ちゃんのお母さんが、赤ちゃんを部屋に残して一人で半泣きで謝りに出てきた。
赤ちゃんはまだ室内で泣いてる。
そしたら一人のおばちゃんが「元気でかわいいわねぇ、ちょっとだっこさせて。私、子供三人育てたけど、皆もう大人になっちゃって。かわいい赤ちゃん時代が懐かしくってね」みたいなことを言って、だっこを代わろうとしていた。
お母さん恐縮して断るんだけど、おばちゃんはひかない。
大丈夫よ、お母さんも少し寝なさいよみたいなこといってそのまま部屋に入ろうとした。
私も便乗して、私も甥っ子たち預かったこと何度もあるし、明日は休みなので一緒に見ますよとか言いながらお母さんを説得。
申し訳ないからを繰り返すお母さんに、「いいのよー私が赤ちゃんだっこしたいだけなの」とおばちゃん。
それから名前はとか月齢はとかいう話になり、預かる感じになったのでよかったと思いながら、おばちゃんと部屋にはいったら、凍りついた。
赤ちゃんなんていなかった。スピーカーにした携帯から、ずっと泣き声が流れているだけ。
その場で固まってしまって、え…とかあ…とかしか言えなくなった。
お母さんは、普通に「いつも泣いてばかりですみません」とか言うし。
おばちゃんが、ようやく「このくらいの赤ちゃんはそんなもんよ、じゃあまたあとで迎えに来て」と言って引っ張られて部屋を出た。
おばちゃんにあんた一人暮し?ちょっとうちに来てと言われ、そのままおばちゃんの家へ。
通報した方がいい?でもどこに通報?とか話しつつ、結局怖くて朝までおばちゃんの部屋で過ごした。
そのあとは友達の家に泊めてもらって、親にお金だしてもらってすぐ引っ越したから、どうなったかはわからないんだけど。
狂ってる?人を見たのははじめてで、今でも強烈に覚えている。
乙です
代理ミュンヒハウゼン症候群になるのかな。
赤ちゃんを作り上げて同情してもらいたい可哀想な自分でいたいみたいな?
おばちゃんも機転が効いてて良かったね
今はもう私がおばちゃんなんだけど、あのときのおばちゃんの冷静な対応、本当に感謝しかない。
うちらが赤ちゃんは本当はいないってことに気づいたことで何かされたらって当時は思って引っ越したけど、あのお母さんの中では、本当に存在を疑ってなかった感じだったな。
うちらが部屋に入ってからも普通だったし。
見た目は本当に普通のお母さんで、挨拶とかも普通、むしろ優しそうな感じだったから、どんな気持ちで毎晩携帯で泣き声を流してたんだろうと思うと悲しい。
しかも、その事件まで約半年くらい、ほぼ毎日そんな感じで泣き声が聞こえてきてた。