10年ほど前、まだ俺が高校生だった頃の話だ。
子供の頃から仲が良かったので家族ぐるみの付き合いがあり、お互いの家にはよく遊びに行った。
そのせいもあって、先輩の妹(A)と付き合い始めた。
2人とも初めての交際で、何もかもが手探りで不器用で初々しい関係だった。
部長だった先輩は、事故の報告の為に呼び出されていた。
俺も付いて行って、先輩に事故の原因が無いことを先生方に一緒に説明しようとしたのだが、
「心配してもらわなくても、そのくらいの事は一人で出来るよ。それより、渡す物があるから、
今日は先に家に行っておいてくれないか?」 と家の鍵を渡された。
先輩の家は共働きで、今までにも何度かそうして鍵を預かったことがあったので、その日も
何の疑いもなく先輩の家にお邪魔した。
玄関にはAが学校に履いていくローファーが脱ぎそろえてあり、どうやら既に帰宅している模様。
脅かしてやろうと、ノックもせずに 「A、もう帰ってたの?」 とAの部屋の扉を開けると、
服無し状態の男女がイチャイチャしてたw
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \ と爆笑して、貸してあったCDや本を、
相手が服を着ている間に勝手に回収し、
「んじゃ、これは返してもらうよ。俺の部屋にあるAの物は、後で先輩に渡しておくから。では、お幸せに」
と、Aが浮気発覚の時にはお決まりの「違うの!」とか「信じて!」とか言ってるのを尻目に
部屋を出たのだが、その余裕のある態度が相手のプライドを傷つけたらしく、翌日呼び出された。
「お前の冷たい態度で、Aがどれだけ傷ついたか分かってるのか?」
「お前みたいな奴なら、捨てられて当然だ!」
「お前が悪い! Aに謝れ!」
と、一方的に捲し立てるB。俺も頭に血が上りかけたが、
「まあ、落ち着け。この場合、傷つくのは俺だろ? 浮気されたんだから」
「うるさい! お前が構ってやらないから、そうなったんだ!」
「確かに部活は忙しかったけど、昼休みはずっと一緒だったし、塾も同じ。時間のある時は、
昨日みたいにお互いの家に行って話してたわけだよ。それは君も知ってるだろ?」
「足りなかったんだよ!」
「そうだね。俺とAで擦れ違っていた部分があるのだろうね。俺はそれに気が付けなかった
事を反省して、Aは俺にそれを伝えなかった事を反省すればいいと思うよ。
お互い初めての恋愛だったのだから、今回学んだ事を次に活かせればいいんじゃないかな?」
「見下して言うな! お前が傷つけたんだから謝れ! 昨日だって、何であんなに落ち着いてたんだよ!」
分かるよ。で、現状でどう? まったく逆だろ?w」
「笑うな!」と、胸倉に掴みかかるB。
「Tシャツ伸びるからやめてくれない?w」
「バカにするなって言ってるだろ!」
更に逆上して殴りかかるBを軽くいなして、手首の関節を逆に極める俺。
「あのさ、帰宅部のチャラ男と10年選手の剣道部が相手になると思ってるの?
実力考えようよ。こんな細い腕と薄い胸板でさ、特別な技術もないのに、
運動部員にかなうわけないだろ。俺のことバカにしてる?」
「うるさい! コロしてやる!」
「・・・・・・あのね、俺も根拠のない言いがかりをつけられて、いいかげん頭にきてるんだけどね。
君も冷静に考えればわかるだろ? 俺が誰かにこの事話してる? 自分に有利になるように
周りを味方につけるのは簡単なんだよ。本当のこと話すだけでいいんだから。
でもさ、それをやるとAが悪者になるだろ? 家でも学校でも孤立することになるし、
そうさせたくないから、誰にも言わずにいるんだよ。その事考えたことある?」
「・・・・・・・・・・・・」
俺の落ち度じゃないしね」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺のことは悪役にしてもいいから、Aと二人で悪口言って盛り上がってくれよ。
ただ、デマとばして、周囲にウソついてまわるのなら、俺も本当のこと言うよ。
Aのことを本当に好きなのなら、それは理解しとけ」
「・・・・・・・・・・・・分かった」
「Aはもう彼女じゃないけどさ、大事な幼馴染だから大切にしてやってくれよ。
お前が泣かしたら、俺は容赦しないよ。それじゃ、俺は部活あるから」
と、その日はそれで終わった。
可愛がってもらっていた。
そのAが、自宅で俺を裏切って浮気相手としてたとなると、ご両親にも先輩にも
辛いことだろうし、Aも自分の家で居場所がなくなるだろうから、この事は先輩にも話さずに
自分の胸のうちにしまっておいたが、やはり、妹の様子がおかしいことを不審に思った先輩が
問い詰める形でAから聞き出し、3人で話し合うことになった。
今までにも兄弟喧嘩はあったにせよ、本気で殴り倒したのは、それが始めてだったらしい。
温厚で人望の厚い先輩が、人に手を上げるのは見たことがなかったし、
これには俺も度肝を抜かれたが、呆然としている俺に、いきなり先輩が土下座をして
「すまん! Aも出来心だったと言っている。何とか許してやってくれないか」
どう返事をしていいか分からず、俺が黙ったままでいると
「A! 黙ってないで謝れ! お前のことだろうが!」
と、先輩がAの頭を押さえて土下座させた。
「ごめんなさい・・・ 私がわるかったの・・・」
嗚咽しながら、ようやくそれだけの言葉を搾り出したAの様子に、俺も落ち着きは取り戻したが、
テンパった先輩と恐怖で竦んでいるAを見て、「ここでも俺が冷静にならなきゃならんのか」
と、orz な心境だったw
そう言われて頭を上げたAの顔は真っ青。
「まあ、男女のことですから、すれ違いがあれば心は離れますし、二人とも今回のことを
活かしてお互い成長すればいいかと」
「・・・・・・違うの・・・C(俺)のことが好きなの」
「いやね、Aも今は罪悪感もあってそう思ってるだろうけどね」
「Cしかいないの!」
「・・・・・・落ち着いて。これからも付き合うとなると、俺はAのことをずっと疑わなければならないし、
Aも俺に監視されながらの生活なんて息が詰まるだろ?」
「いや、Aはそれだけの事をしたんだから、Cが気が済むようにしてくれ」
先輩はそう言うが、本当にしたいのは綺麗に別れることなんだよ・・・・・・
ずっと疑っていくよ。で、Aもそれに耐えられる性格じゃないだろ?
最初は自分が悪いからと我慢していても、じきに、こんなに頑張っている自分を許さない
俺を恨むようになるよ。こういうのは健全な関係じゃない」
「最初から決め付けないでよ」
「Aも落ち着いて考えれば分かるよ。今ね、信頼はゼロじゃなくてマイナスなんだよ。
これを挽回するのは大変だよ。それに、どこまでいっても元には戻らない。
今までだって俺のことを上手く騙していたのだし、Aがどういう態度でいたって、
その裏で何をやっているのか俺には分からないもの」
「・・・・・・・・変わるから」
「うん、でも、変わったっていうことが分からない。心って目に見えるものじゃないから」
「・・・ひどいよ ・・・私がどう言っても別れる気なんだ」
「ね? もう俺に責任転嫁してるだろ? だから無理だって」
Aの涙よりも、こちらを悲しそうな目で見ている先輩の姿の方が辛かった・・・
「Cと別れるのは仕方ないけど、私がこれからもCのこと好きなのはかまわないよね?」
正直迷惑だと思った。
Aがそれを態度で表さずにすむとは思えなかったし、これからも浮気云々を隠していく以上、
別れても俺のことを好きな元カノがいながら、他の女と付き合うというポジションが
他の人の目にどう映るのか考えれば、Aを捨てて他の女と付き合うことは、俺の性格上
耐えられないと分かっていたから。
Aも俺の性格はよく分かっているから、そうやって誰とも付き合わせないようにして
復縁を狙っているのも分かった。長い付き合いだから、Aのそういうズルいところはよく知っている。
それでも、先輩の顔を立ててその場を収めるには、それを受け入れるしかなかった・・・
AとBは付き合わなかったし、Aも表立っては彼氏を作ってはいなかった。
(バイト先の店長と不倫してたのは、何年も過ぎてから分かった・・・ orz)
あの時の話し合い以降、先輩の家を訪れることもなくなり、進学した大学が離れていた
せいもあって、一生付いていくと慕っていた先輩とも疎遠になってしまった。
盆や正月に帰省した時も、特に一緒に遊ぶということもなく、偶然会えば話をする程度の関係。
Aの浮気がなければ、俺の人生もかなり変わったのだろうなと思う。
こういう顔の見えない場所は、胸の奥にしまっておいたモヤモヤする感情を
吐き出すのにいいですね。おかげでスッキリしました。
Aは現在も独身で、聞いた話だと上司と不倫して奥さんと修羅場ったとか、
学生時代に2ま*で修羅場ったとか、いろんな武勇伝があるようですw
いくつになっても変わらない奴だw
そうゆう被害妄想な人には、「あなたも~だと辛いから」ってんじゃなくて、
「自分があなたといると辛い。あくまでも自分の問題なのであなたにはどうしようもない」
ってハッキリ伝えたほうがスパッと別れられるよ。
でも先輩の手前それは無理だったのかもしれないけど
乙です!大変でしたね。
AがBに惹かれたのは、まずイケメンだったところだろうねw
俺は、当時髪にもそれほど気を遣わず短くして立てている程度、
服もこざっぱりした物は選んでいても、こだわりは持ってなかった。
Bはビジュアル系を意識していたのか、ロン毛でアクセを
ジャラジャラさせたような奴で、メイクもしていたように思う。
俺もモテなかったわけじゃないが、俺のような優等生タイプと
Bのような夜遊びをよく知っていて、高校生にしては顔の広いタイプでは、
別の魅力があるのは確かだと思う。
俺とAが付き合い始めたのは、恋愛に対する好奇心から、
お互いに手が届きやすい所で、周囲の評価も高い相手を選んだという
側面があるので、Aが他のタイプの男に興味を持ったのも分からないではない。
ただ、それは別れてからやって欲しかったんだけどねw
それでは、俺も名無しに戻ります。