俺「あの、どうかしましたか?」
嫁「oh……」車内表示を指差し
俺「?」
嫁「△△?」
俺「あー……No,next stationは○○。終t……last stop」
嫁「え、マジで!?」
俺「日本語喋れたんかい」
ちょっと殺伐としてきたスレに嫁とのほのぼの邂逅を
ほう、初めての会話スレではなくこっちに投下したということはわかっているなkwskだ
詳しくね。
当時、俺は塾講師をしてた
と言っても河合さんとか代々木さんみたいなでっかいのじゃなくてちっちゃな所だけどね
だから科目も英語以外(自慢じゃないが英語は評定3以上を取ったことがない)は全部教えるみたいな感じだったんだ
そんなんだから毎日クッタクタだったんだけど、その日は二週間に一回位のペースで来る眠気半端ない日で
電車内で思わず爆睡……そのまま降りる駅乗り過ごして、気がついたのは後2、3駅で終点って所だった
俺が乗ってた車両は、俺、後の嫁さん、おばあさんの三人だけだった
それで何ともなしに嫁さん見てたんだ、ぼーっとしたまま
終点の一個前でおばあさんが降りて車内は俺と嫁の二人になった
そこでさっきの会話があったんだ
当然日本語なんて喋れないと思ってたら「え、マジで!?」だから、びっくりした
咄嗟に言ったみたいだったし、イントネーションも普通だったし
取り敢えず、英語がからっきしな俺は内心ホッとしてた
俺「マジですよ。ほら」
嫁「おぅ……まいったな」
まいったなって……
あんまりにも自然に言うもんだからちょっと笑ってしまった
嫁「?この電車はもう△△行かない?」
俺「いや、反対側の電車に乗り換えれば」
嫁「……反対?」
俺「あー……実は俺も戻らなくちゃいけないから、案内しますよ」
そう言うと、初対面にも関わらず「案内?よろしくお願いです」ってニコニコしながら嫁さんはついて来た
俺も、寝起きで頭回ってなかったせいか、よく考えずに行動してた
でもって、反対側のホームに移動して電車に乗り込んだ
それで嫁さんが降りるまで、隣同士に座って
俺「改めて……初めまして」
嫁「あたためる?」
みたいに話してた
嫁さんの日本語は覚えてる内容にものすごく偏りがあると言うか……
さっきの「まいったな」みたいな口語調の言葉はよく覚えているんだけど
嫁「ありがとうございます。とっても助かりました」
俺「いえいえ、そんな」
嫁「まだ漢字はよく読めなくて、あなたいなかったら危なかったです」
ただものすごく流暢だった
挨拶の延長位の簡単な会話だったけど、日本人と話してるのと全然変わらない
「日本に来てどの位なんですか?」と聞こうとしたとき、△△駅に着いた
俺「どういたしまして」
△△駅に連れ立って降りた
俺の降りる駅じゃなかったけど降りた
せっかく知り合ってすぐにお別れは残念だなぁと思いながらも
俺「それじゃあ、夜遅いですし気をつけて」
嫁「はい……あの、これどうぞ」
挨拶すると、唐突に渡されたのは一枚の名刺だった
そこには名前の他にメアドと電話番号が書いてある
嫁「また会いましょう!またです!」
嫁「mailしてください、約束!」
俺「は、はい!」
俺が思わずテンションにつられて大きく返事すると、嫁さんはまたニコニコ笑いながら、手を振って改札へ歩いて行った
「約束!約束!」と連呼しながら
これが嫁さんとの初めての出会い
もっとkwskお願いしてもいい?
そこまで書いたなら最後までkwsk
最後までとなると、プロポーズまでか……長くなってしまいそうですが書いていきますわ
嫁さんの後ろ姿見送って、また電車に乗り込んだ
自分の降りる駅まで乗ってる間、なんだか今の二十分位の出来事がなんだか実際の事じゃなかった様な変な気分だった
でも思わず自分の鞄確かめると、やっぱり貰った名刺は入ってるし、「約束!」の声はまだはっきり耳に残ってる
今日は乗り過ごしてラッキーだったなとか考えながら家に帰った
もちろん家帰ってからそのまま爆睡
翌朝
目が覚めてから支度している内に段々と昨晩の事を思い出して「もしかして俺ってば中々貴重な体験をしたんじゃないだろうか」と
結構可愛い人だったし……なんてニヤニヤしてた
名刺の番号に電話……はいきなり過ぎるか
取り敢えずメール……を朝からするのもなぁ
と結局、その事は夜帰ってから考えようと思って出勤
「もしかしたら奇跡的に同じ電車にまた乗り合わせるかも」とか調子乗った妄想したけど勿論そんな事は起きず
その日の夜は乗り過ごすことなくスムーズに家に帰った
だけど、次の日にやる小テストの準備だなんだで忙しくて「メールは……また明日でいいか、うん」ってなって
その次の日は残業で……
その次はただ単に疲れて寝て……
ズルズルと気が付けば、嫁との邂逅から10日位経ってた
「いや、あれは社交辞令だったんだよ多分」と無理矢理な理由付けで先延ばし先延ばしにしてしまった
その日は久しぶりの二連休初日で、当時の俺は仕事人間だったから休みといってもやる事が無いし思いつかない
昼から一人で酒盛りでもするかって時に嫁さんの事を思い出した
チャンスだ、今の俺は珍しく超絶暇だからこれは大チャンスだ
急いで携帯を鞄から取り出してメールを送った
『おはようございます。お久しぶりです。まえにでんしゃでお会いした俺です』
漢字が苦手と言っていたので、俺の勝手な基準で平仮名多めに打って送った
まぁ、平日の午前だし、何よりあれからそれなりに日が経ってる
今日の夜にでも返ってくれば万々歳だ……ちょっとドキドキしながら返信を待った
五分くらいでメールが返ってきた
最初はあまりの速さに、「職場からか」と思って開いたら嫁さんからだった
メールにはただ一言
『お早う御座います。電話番号を送って下さい』
漢字使いこなしてるじゃねぇか
そう内心つっこみながら、携帯の番号を打って返信した
ごめんなさい、次から気をつけるよ
今度は五分も経たない内に電話が来た
俺「もしもし」
嫁『もしもし』
俺「あの……」
嫁『おそいでしょ!』
俺「え、あ……すみません」
まだ電話の相手が嫁さんかの確証もない内から説教された
声を聞いてすぐに分かってはいたけど
嫁『今日はどうした?』
俺「いえ、今日仕事がお休みになったので……」
嫁『やすみ?』
俺「はい」
嫁『おうちにいる?』
俺「はい、家にいます」
嫁『わたしも!じゃあ、じゃあね――』
本当にマシンガンの様にずっと喋っていて俺は殆ど「はい」位しか喋らなかったけど
アグレッシブな嫁さんは、あっという間に俺と二人で今日遊ぶ約束をとりつけた
明日は四時起床なので……
次はなるべく書き溜めてから投下します
気にすることないですよ。この焦らされ感が個人的には好きです。…でも、最後まで期待しています。
嫁が言うには、取り敢えず一緒にご飯を食べましょうって事で、その後は適当に決めようと
こちらから連絡するのが遅れた負い目もあって、俺が嫁の最寄り駅である△△駅まで迎えに行きますと提案した
嫁「わたしのこと覚えてますか?見つかりますか?」
俺「良く覚えていますよ、大丈夫です」
嫁「ふふっ、わたしもです」
お互い妙にテンションが高かった
嫁さんは「ちこくは、はりせんまんです!またです」と大声でいって電話を切った
俺は、家庭の事情もあって高校入った位からバイトと弟妹の世話でアホみたいに忙しかったせいで女とデートどころか、飯を食いに行った事も殆ど無かった
彼女が出来ても忙しくて時間が取れないからすぐに別れてた
そんな訳で、殆ど初対面の女性とあっという間にデートが決まって、誘ってきた嫁にも即決した自分にもびっくりしてたんだ
今思うと、この時点で気づかないうちに意識してたのかもしれない
約束の駅で待っていると、遠くの方からこちらに向かってくる金髪を見つけた
俺がずっと視線をぶつけていたら向こうも気づいたみたいで、途端に陸上選手みたいに綺麗なフォームで爆走してきた
髪がバッサバッサしてたけどおかまいなしで走ってて思わず吹き出しそうになった
嫁「おはようございます!」
俺「おはようございます」
嫁「ごめんなさい、先かと思いましたわたし」
俺「いえ、こちらこそ。足速いんですね」
嫁「ニンジャはしりです!」
俺「なるほど」
忍者はそんな走り方しない……という言葉は飲み込んだ
息切らしながらもニコニコしてる嫁さんがとても可愛かったので
嫁さんの国籍や、フルネームを聞いたり……
歳は意外な事に嫁の方が年上だった(とは言っても二歳ほどだったけれど)
「わたしお姉さんですか」って嬉しそうだった
そして話が進むにつれて、何故日本に来たのかという話題になった時、俺は驚愕の事実を知った
なんと嫁さん、国の内戦でご両親を亡くしてたんだ
父方の家族もいなくて……お母さんのお姉さん、つまり伯母さんが日本に渡って結婚していたから頼れないかと日本に来た
所が、いざ来てみればその伯母は離婚していて日本にいなかった……
どうしようかと思っていたら、伯母さんの別れた旦那さんが見かねてオーナーをやってるアパートに住まわせてくれ、今に至るのだと
「日本語は、オーナーの奥さん(再婚した)におしえてもらいました。まだへたっぴですけど」と笑う嫁さん
俺は社会専攻だったから、外見や名前を聞いたときに何となくどの辺りの出身かは予想ついてたけど、まさか戦争に巻き込まれて天涯孤独の身とは……
それにしても、何で知り合ったばかりの俺にそんな事を話してくれたのか
思い切って聞いてみたら
嫁「あなたなら良いかなと思いました」
俺「どうしてです?」
嫁「よくわかりません、あはは」
結局、その喫茶店に五時間近くも居座ってしまったのでその後は何処に行くでもなく近くを散歩して夕方になって別れた。
別れ際に「何かあったら何時でも連絡下さい。力になります」と言って、自分の名刺を渡した。
もう既に連絡先は交換してあったけども
嫁「わぁ……きょう、mailしてもいいですか?」
俺「勿論です。是非してください」
嫁「よっしゃ!」
それから、ほぼ毎日メールするようになったとさ
いつの間にか俺がマッサンになっているww
うちはウイスキー飲む専です
嫁さんは>>593の言う通り旧ユーゴスラビア系ですしね
嫁さんとのメールのやり取りはそれからほぼ毎日
ほぼと言うのは、俺が忙しくて返せないと日を跨ぐことがあったから
毎回毎回、一生懸命長文のメールを送ってきてくれるのが何だか申し訳なくて、二ヶ月位してから『電話にしませんか?』と提案してみた
勿論、申し訳ないという気持ちだけじゃなくて嫁さんの声が聞けたら良いなという下心もあったんだけど
『いいのですか!』
即可決されて、すぐに電話がかかってきた
その日からメールの代わりに電話が日課になった
電話をする様になってから、更にお互いの事を詳しく知ることが出来た
例えば、嫁さんは日本に来てから友達を作ることが出来ておらず、まともに話をするのはオーナーの家族位しかいないとか
仕事は、オーナーの知り合いを通じて簡単な翻訳の仕事を細々とやっていること等々……
そんなある日、いつものように今日は何があったなかったの話が一段落ついた時に、唐突に嫁さんが言ったんだ
『わたしたち、はじめて会った日おぼえてますか?忘れてないですか?』
『あなたの着ていた服の柄までしっかり覚えていますよ』
『ふふ……今日ですよ?』
『?』
『3か月前、今日あいました』
『なるほど』
日記兼用の手帳を確認すると、確かにそうある
『きねんひです』
『きねん“び”です。でも残念ですね、ちゃんと覚えておけば食事でも誘えたんですけど……』
『!』
この時、俺は特に深い意味もなくそう言ったんだけども
『ごはん!これからですか?』
『え?あ、いや……』
『いいですよ!わたしまだCUP NOODLES食べてません!』
今日の夜ご飯はカップメンのつもりだったのね……
こうして急遽、出会って三ヶ月目記念を祝ってのディナーが決まった
夜遅くに出歩かせるのも良くないと思って、「今日は止めて明日にしませんか」と提案するも秒速で却下される
仕方なく俺が迎えに行くことになった(家の場所は、前に遊びに行った帰りに送って行って知っている)
嫁さんの家の前で無事合流
夜目でもはっきり分かるくらいおめかししていてとても綺麗だった
横に立っていたオーナーの奥さんに「この子のこと、宜しくお願いしますね」と言われ軽くビビる俺(なにせこの時オーナーの奥さんと初対面)
何故かずっと無口なおめかし嫁さん
いつもと少し空気が違うのを感じていた
二人で会う時によく利用するファミレスに入って席についても、中々喋り出さない嫁さん
いつもの饒舌さは何処へ行ったのか、ついさっき電話していた時は元気だったのに……
もしや気づかない所で俺はやらかしてしまったのだろうか
交際の経験値が低い俺は何か彼女の機嫌を損ねるような真似を……
嫁「あの、あのですね?」
俺「は、はい」
嫁「今日はきねんひですね」
俺「きねん“び”ですね」
嫁「だから、その」
俺「はい」
嫁「おつきあいしたいです」
俺「はい……え?」
突然告白された
オーナーの奥さんに「『出会って三ヶ月の記念日だ』と言ったら食事に誘われた。行ってくる」と話すと「丁度いい機会だ、告白してこい」と言われたこと。
初めて会って話をした時から気になっていて、メールや電話したり、一緒に遊ぶ内に好きになったということ(個人的にはここが一番恥ずかしかった)
その事を相談していたからオーナーの奥さんは全部知っていて、それで今日がいいチャンスだと言って服を仕立ててくれたこと
「『お付き合いして下さい』と一言言えば、後はどうにかなる(この台詞はちょっと間違えてた)
メールを見た感じ、向こうも気になってるに違いない、一発かまして来い」と送り出されたと
メール見られてたのかよ……と、正直あまりの急展開で頭がおっつかなかったけど、目の前で赤くなってる嫁さんを見ていたらどうでも良くなった
嫁「それで、だから」
俺「すみません。俺からもお願いがあります」
嫁「お?」
俺「告白お受けいたします。俺と付き合ってください」
返事の代わりに「なーー!」という謎の歓声と共にキスが返ってきた
嫁「マジか!?」(嫁は興奮するとマジを連発する)
俺「マジですよ」
嫁「わたしの好き?」
俺「はい、好きです」
嫁「ほひょう!わたし!わたしも!」
こうして、深夜のファミレスで騒がしい一組のカップルが誕生した
明日にでもプロポーズまで書ききります
何日もグダグダと申し訳ない……
気にすんな!律儀に書いてくれるだけでありがたいんだから
のんびりまったり書いてくれよー
パンツ履いたから気にすんなお仕事お疲れさん
ゆっくり休んでくれ
自分で言うの恥ずかしいですね……
仕事が長引いて遅くなっていしまいました
急いで書いたので相変わらず雑だし、最後駆け足になってしまいました
投下します
めでたくカップルになった……とは言っても、現時点で毎日連絡を取り合っているし、二週間に一回くらいの頻度で遊びにも行っている
そこまで関係に大きな変化はないだろう……なんて思っていた俺は甘かった
その日は「緊張しましたので疲れました」という彼女を家まで送り届けて、オーナーの奥さんが出迎えてくれた目の前でさよならのキス
めちゃくちゃ恥ずかしかったけれど、終始ご機嫌で本当に嬉しそうだったので結果オーライか……なんて考えながら帰った次の日から嫁の進撃が始まった
朝、眠い目をこすりながら駅を向かうとなんと俺の最寄の駅に嫁さんが
まだ寝ぼけてるのかと何度目を擦っても、やっぱりいる
俺「どうしたんですか?朝早くからなんで……」
嫁「なんだかきのうからワクワクしてねむれなかったです。はやく起きたのできちゃいました!」
俺「それはそれは……」
それでわざわざここまで一人で……驚きはしたものの、朝から会えたのは純粋に嬉しかったので「ありがとう」と言うといってらっしゃいのキスをしてくれた
夜、家に帰ってから『見送ってくれるのは嬉しいですけど、毎朝こっちまで来てもらうのは忍びない。気持ちだけで充分です』と電話で言うと
『でもそうしないと会えないです……』と小さい声で言う嫁さんに「それでも来ないで下さい」とは言えず悩んでいたら
嫁『じゃあお家、あいに行ってもいいですか?』
俺『家に、ですか?』
嫁『ダー!!』
初めて泊まりに来た日、パンパンに膨らんだリュックを背負った彼女はまるで山登りの達人の様だった
その内泊まりに来る日も増えて、付き合い始めて一ヶ月過ぎたくらいの時に初めてセクロス。
腰から太ももにかけてはっきり残った傷があって、「瓦礫で怪我をした傷をちゃんと治療もしないでいたら残ってしまった」と説明された
改めて、とんでもない経験をしてきた人なんだなと思うと同時に、「これからはとことん幸せになってほしい。いや自分がしてあげないと」と強く思った
嫁「ごめんなさい、きたないですね」
俺「汚くなんてありませんよ、あなたが頑張って生きてきたしるしです。あなたはとっても綺麗ですよ」
嫁「……うん、ありがとうです。だいすき」
俺「俺もです」
この時の嫁さんの涙を流しながら笑った顔を俺は一生忘れないだろう
次の日、唇から首の根元につけられた大量のキスマークで首がかぶれたみたいになって、同僚にえらく心配された
その頃には、もう既に嫁さんは月の大半を俺の家で過ごしてたまにオーナーのマンションに帰って仕事をもらってくる……みたいなほとんど同棲生活サイクルになっていた
家に帰ると嫁さんが「おかえり」と出迎えてくれるのが心地よかった
「ごはんとおふろとわたしですね?」「え、全部?」みたいなお約束の変化球も覚えて、毎日の生活を楽しんでいるみたいで何よりだった
二人でいる時間が増えてから分かったことだけど、嫁さんはめちゃくちゃ甘えん坊だった
前にちょろっと書いたけど、まだ10歳位の時に国の内戦で両親を失った嫁さんはそれから20歳まで教会の孤児院、それからしばらく国内で働くも失業し日本に来て俺と出会った
人生の半分以上、家族のいない生活を送っていた訳だ
その反動なのか、家に二人でいる時はずっと俺にくっついて離れなかった……結果一人の時間はほぼゼロに
まぁ、元々大した趣味も無かった俺は特に気にすることも無かったし、俺も嫁と一緒にいる時間が好きだった
しかし、ここまで関係が進展した以上はそろそろ男としてけじめをつけなければ……つまり結婚だ
出会ってから二年を過ぎた俺は決意した
それには先ずプロポーズをしなければいけない……ならば場所は何処で?
指輪も用意しなければ……いや、待て。向こうの人のプロポーズはどうやるんだろう?
仕事の昼休みに頑張って情報収集した
訳を話すと塾の同僚達も手伝ってくれた
そんな中、一人の同僚が「やっぱり、プロポーズするとなると彼女さんのご両親に挨拶に行くんですよね?」と……
嫁さんの両親が亡くなってることは伏せてたんだけど……そうか!
俺の中でプロポーズの案がほぼ固まった瞬間だった
家に帰ってすぐに嫁さんに提案した
俺「サシャ!この冬、二人で旅行に行こう!」
嫁「ほ!?」
(サシャは二人の時だけ呼んでいる嫁の愛称。実名とはあんま関係ない)
12月某日、嫁さんと二人で空港について一番の感想は「寒い」だった
最初、旅行だ旅行だ!と騒いでいた嫁は俺が「行き先は……」と故郷の名前を告げると、更に驚いて「だいすきー!」と言いながら飛びついてきた
忌まわしい過去がある場所なだけに、正直「行きたくない……」と言われるかもしれないと内心ビクついていたけれど杞憂に終わった
やはり祖国への想いと言うのは、強いものなんだね
その日の夜から彼女はスーパーハイテンションで旅行の支度を始めた(俺の膝の上で)
俺「今からそんなにはしゃいでたら行く前に疲れちゃうよ?」
嫁「その時は、ダーリンにだっこしてもらう!」
俺「大変だ。体を鍛えておかないと」
嫁「えへへ」
二人で初旅行、それも海外とあってワクワクが止まらない嫁さんの裏で、俺もきっちりと婚約指輪を購入
お互い、色んな意味でドキドキワクワクしながら三泊四日の旅へ向かった
空港を出るとゆっくり深呼吸して「……懐かしいにおいだよ」と嫁さん
そのまま予約していたホテルまで、町並みを見ながらゆっくり行って、夕飯食べて就寝
二日目は朝から元気MAXな嫁さんに引っ張られて観光(俺は時差ぼけで眠かった)
そして運命の三日目
俺は「行きたい所があるんだよ」と行き先を内緒にして嫁さんと電車に乗った
嫁さんの育った町は、以前詳しく聞いていたので事前に入念な下調べの上道順を頭に叩き込んでいた
電車から見える風景が段々と見覚えのあるものに変わっていって、嫁さんが無口になる
恐らくこの時点で、俺が行こうとしてる先が何処だか気づいていたに違いない
初めはその沈黙が怖かった……もしかして怒っているんじゃないかと思ったから
でも、嫁さんの故郷がいよいよ近くになると俺の腕を抱きながら
嫁「あれ!あれ!」
俺「ど、どれ?」
嫁「あそこ!わたし小さい時遊んだよ!」
大きな目をキラキラさせてそう言う嫁さん顔を見て胸を撫で下ろした
彼女が生まれ育った町……そう思うとなんだか感慨深い
久しぶりの帰郷となった嫁さんの方はどうかと言うと「わお……」を連発しながら俺の手を引っ張ってあちこち歩き回っていた
まぁ、しばらく好きに歩かせようと思っていたら
嫁「ダーリン、来たかったのここ?」
俺「簡単に言うと、そうですね」
嫁「お?」
俺がこの言い回しをする時は、まだ何か隠している……ということを経験上知っている嫁さんは「どこ?どこ?」と俺の目を真っ直ぐ覗き込みながらマシンガンクエスチョン
俺「えっと、サシャのいた教会ってあそこ?」
嫁「おー……うん!」
教会まで来ると、すぐ傍に慰霊碑があった
俺「ねぇ、サシャのお母さんとお父さん。どれか教えてくれる?」
嫁「う、うん……ここ」
俺はその刻まれた二人の名前に静かに祈りをささげた
横にいた嫁さんもつられて一緒に
祈りと同時に決意を告げる
今からあなた達の娘さんにプロポーズをします……どうか見守っていて下さい、と
俺「今日来たかったのは、ここです」
嫁「そうだったか……びっくりした」
俺「ここに来たかったのは、サシャとの事をお二人に話しておきたかったから」
嫁「へへ、わたしも『ダーリンができたよ』ていいました」
俺「……それでね、もう一つ。今度はサシャに言いたいことがあるんだ」
嫁「?」
不思議そうにしている嫁さんの手の上に、大事にポケットにしまっていた箱を取り出して静かに乗せた
この時、緊張のあまり手がちょっと震えていたのはご愛嬌
俺「俺はね、これから先の人生ずっとあなたと一緒にいたいと思っています」
俺「楽しい時も、大変な時も、泣く時も、笑う時もずっとずっと、傍にあなたがいて欲しい」
俺「全部の力を持って、あなたを幸せにする事をここで。あなたのご両親に誓います。だからサシャ……俺と結婚してください」
ちゃんと全部の言葉が伝わるように、彼女の目をみてゆっくりとそう伝えた
「傍にいて欲しい」のあたりから顔真っ赤にして目うるうるさせてた嫁さんは、俺が言い終えると同時に声を出して泣き出した
そのまま俺に抱きついて何度も頭を縦に振りながら
嫁「はい……はい……わたしも結婚したいです」
と返事をくれた
良かった……
思わず安堵で膝から崩れ落ちそうだったけど、なんとか踏ん張った
周りに集まってきていた人たちも、日本語の会話だったから何が何やら分からないみたいだったけど俺が箱を開けて指輪を彼女の指にはめた瞬間、「オォォ!」と歓声をあげて拍手してくれた
嫁「結婚したぞー!ダーリンですよー!」
と通じる訳も無いのに日本語で言いながらギャラリーに俺と指輪を見せて泣きながらはしゃぐ嫁さんを見て、この上なく幸せな気分だった
おしまい
実は今年が結婚十年目の記念の年で、思わず出会いをポロっと書いてしまったのがまさかここまで続くとは……
当時の写真や日記なんかを引っ張り出してあれこれ思い出しながら書いたので、文章も滅茶苦茶で恥ずかしい
後半スレチになってしまったのも申し訳ない
今も幸せだろうけど
さらに幸せになるように呪いをかけといた
俺も泣いた。いつまでもお幸せにね。