なので4人で歩いて行く。
母ちゃんとホンダ母は
ケラケラと笑いながら歩いている。
「あっついわね〜。お肌によくないね。」
「もう年だし、お手入れ欠かすと、即響くもんね」
なんて、どっかに買い物に行くような顔して
ズンズンと突き進んでいく。
俺と本田は、一度虐待オヤジの恐怖を味わっている。
二人とも口には出さないが怖かった。
怖かったんだが・・・
あまりにも普通な母親の背中を見てたら
なんか行ける気がしてくるから不思議だ。
俺「・・・なんか母ちゃんとおばさん・・・すげえな・・
怖くねえのかな?」
本田「なぁ・・・なんであんな平気な顔してるんだろ?
大人になったらああなれんのかな?」
俺らは不思議な感覚と奇妙な安堵感を抱えながら
母親の背中を追いかけていった。
俺と本田はぐっと緊張感が高まる。
しかし母ちゃん二人は世間話をしたまま
二階へと上って行く・・・・
俺「・・・あ・・あの二人・・・
作戦会議とか・・しねえのかな・・?
普通に上って行ってるけど・・・」
本田「わ・・・わかんねえ・・・
けど・・行こう。なんとか・・なるんじゃねえかな?」
あまりに大きくうつる母親の背中。
女は強い!もとい母親は強い!と印象付けられる背中を今も覚えている・・・
扉の前に立つと俺の母ちゃんは即座にノックする。
一瞬で緊張が走る・・・・
中には・・中には・・あのオヤジはいるのか・・・?
オヤジ「なに〜!?1の母だ〜!そこで待ってろ!」
部屋の中から、もはやバカなんじゃないか?と
思うくらいでかい声でオヤジが叫んだ。
あの空気を震わせ地面を揺らすような低音のどなり声・・・
聞いただけで足が・・・
本田母「大丈夫だよおまえら。あたしらがいるから」
子供は父親より母親の方が接する時間が圧倒的に長い。
潜在的にどこかで母親を信用しきってるところがあるのだろうか?
本田母は他人の母親だけどその一言で震えそうな足が
ピタっと止まった。
ガチャ・・・・
ご迷惑をかけて申し訳ございません。」
オヤジ「てめえが母親か〜!てめえはガキにどんな躾をしてんだコラァ!」
母ちゃん「返す言葉がございません。きちんとお詫びはさせて頂きたいと思います。
1!本田!おいで!」
え・・・謝るの・・・?俺達聞いてない・・・
俺たちを・・坂倉を助けてくれるんじゃなかったの?
なんで・・謝るんだ・・?母ちゃん・・・?
母ちゃん「ほら!おまえらは悪い事をしたんだ!
きちんと謝りなさい!」
俺・本田「す・・すいませんでした・・」
オヤジ「すいませんじゃねえだろガキャ〜!
謝ってすむ問題か!てめえらはな!犯罪者なんだぞ!」
なんで・・こんなに偉そうにされなきゃいけねえんだ・・・
俺がやってきたことは・・正解だって言ってたじゃねえか・・・
なのに・・・なんで・・・なんで・・・
母ちゃん「よし。おまえらはきっちり謝罪した。
ではオヤジさん。うちの子と本田に謝ってもらえますか?」
オヤジ「は・・?バカか!?なんで俺が謝るんだよ!」
母ちゃん「あんた子供を本気で蹴り飛ばしたらしいですね?
男として最低だす。子供に暴力振るうなんて。
人間として最低だから謝れって言ってるんです!」
誰に向かって口利いてんだコラァアアアア!」
母ちゃん「大声を出さないでもらえますか?」
オヤジ「てめえらああああ!舐めてるとぶっころ「お願いですから静かに!迷惑です!」
オヤジ「なんでてめえらに指示されなきゃいけねえんだ〜!
引きずりまわすぞコラアアアアアア!」
母ちゃん「わかりました・・・では・・・」
母ちゃんの頭は徐々に下へと降りて行く・・・
え・・・?母ちゃん・・・どうした・・・・
やっぱ・・男には勝てないの?ビビって謝っちゃうの?
俺は・・さっきまで強気でかっこよかった母ちゃんしか・・
見たくない!
クソワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww
そこから手がさらに下へと伸びていく・・・
地面に何か落とした物を拾うのかと思うほど下に急降下した腕が
再び上昇気流に乗り上昇していく。
手の形はパー。指と指の間から抜ける空気・・・
空気を切り裂きながらさらに加速を開始し
男の男たるシンボルの下へと迫っていく・・・
男は母の頭しか見ていない。
予測は一切できていない。
急接近した手のひらの存在に気付かない男は
腕組みをし仁王立ちしている。
その刹那、空気を切り裂きながら上昇してきた手のひらが
男の股間を強烈にすくいあげる。
男の袋はそれほど軽く、しかし確実にダメージを受ける部位。
感触が伝わらぬほどの速度ですくいあげた腕は
さらなる上昇を続け、男のアゴの手前でようやく停止した。
その美しいまでのフォロースルーの長さが
いかに腕と手首に力を込め一切の妥協のない
乾坤一擲に値する一撃だったかを物語る。
母親は髪をなびかせ、静かに微笑んだ・・・・
もしこのシーンをグラップラーバキの作者
板垣氏が見ていたらどう描いただろうか?
私はきっとこの母親の背なには
鬼の筋肉を浮かび上がらせて描いたと予測する。
それほどの説得力と力強さが加わった一撃だった。
カエルに似た叫び声を男が上げる。
その母親が放った乾坤一擲は
腰から背中を通り脳天まで響き渡り
あまりに重い一撃に呼吸器官が麻痺し
声ができらず息が抜けてしまい
カエルのような叫び声になったと予測できる。
膝が崩れ地面に両膝をつき
組んでいた腕は両方股間へとシフトする。
それを目撃していた1と本田も
そのあまりの説得力ある打撃を目撃し
わが身に受けたと錯覚し
同時に股間に手をやってしまったのも必然と言える。
(ふざけた表現ですまん。
この玉打ちだけは表現遊びたかったんだ・・・)
当時はうちの母ちゃんは
石野真子?に似てるって言われてた。
俺も少し似てたと思う。
オヤジ「フホーー!フホーー!ケコオオーー!」
母ちゃん「そう、やればできるじゃない♪
おとなしく話し合いましょう。ね?」
オヤジ「フホーー!フホーー!フホーー!」
まるで会話になっていない・・・
おそらくオヤジの意識はどこか遠くへ飛んでいることだろう・・・
俺はオヤジに蹴られた恨みを持っていたが
この一撃だけで気分は晴れ、同時に同情を覚えた・・・
はい、あんたらも上がっちゃって〜♪」
母ちゃんはカエルのようなうめき声をあげ
カエルのように潰れているオヤジの髪を引きずりながら
部屋の中へと入って行った・・・
母ちゃんに続いて俺も部屋へと入って行く・・・
俺は部屋へあがって驚愕した・・・
部屋は3人で住んでるだけあり
6畳が二間ある12畳のアパートだった。
玄関から入った部屋は恐らくダイニングキッチンなんだろうが
部屋中に雑誌と新聞とゴミが散らばり
ゴミの上にゴミが乗ってるような状況。
台所だけは料理をするためか
キレイに片づけてあったが
他の場所は散々だった・・・
それ意外に表現しようがないほどの汚い部屋・・
その奥に扉があり、俺はその扉を開ける・・・・
そこには・・・坂倉が・・坂倉がいた!
しかし坂倉は壁の方に顔を向け
さらに目隠しをされ気をつけをさせられていた。
それを母親は何も気にせずいたのだろう。
寝そべったままの恰好で入ってきた俺たちに目を向け
キョトンとした顔をしていた。
テレビはついていた。子供をこんな状況にして
平気な顔をしてテレビを見ていたのか・・・・
本田母が続いて入ってくる・・・
坂倉母「な・・なによあんたたち!」
坂倉母は俺たちを問いただすが
本田母は表情一つ変えず坂倉母に近づき
寝そべって下にあった顔をつま先でけり上げる・・・
「ぷるあぁ!」と聞いたこともない叫び声が響くと
即座に馬乗りになり本田母は静かにしゃべった。
本田母「大声あげたら鼻を折る。それでも叫んだら首を絞める。わかったな?」
いきなりの事でパニック気味だった坂倉母だったが
その圧倒的な迫力で声もあげられない様子だった。
首を激しく上下に振り、理解したというジェスチャーを繰り返す。
俺達が昨日、何もできなかったオヤジを一撃で沈め
あっという間にこの家を占領してしまった。
俺と本田は顔を見合わせた・・・
俺・本田「すげえ・・・」
すぐに俺と本田は坂倉の目隠しを取り
「もう大丈夫だ!」と声をかける。
坂倉がこちらに振り返ると
目をパチクリさせていた。
音は聞こえていたはずだと思うが
目の前にある現実をなかなか受け止められなかったんだろう。
俺「大丈夫だ。もう大丈夫だ。」
何か声をかけなきゃ!と出てきた言葉は「大丈夫だ」
これしかなかったが俺が伝えたかった事は無事に伝わり
端正な顔を崩して泣き崩れた坂倉・・・
相当・・・きつかったんだろうな・・・
オヤジ「フホーーー!フホーーー!」
母ちゃん「無理だったら返事してください〜?」
オヤジ「フホーー!フホーー!」
おい・・病院連れて行った方がいいんじゃねえか?
渡っちゃいけない河を渡り切りそうだけど・・・?
坂倉母「・・・・な・・なんですか?」
母ちゃん「あんた。なんで自分の子供を守らないの?」
坂倉母「か・・関係ないじゃないですか!
私の子供をどうしようと関係な・・「子供はてめえのおもちゃじゃねえ!!!」
あちこちにはねまわる。
それほど響き渡った声に母ちゃん以外の
誰もが身震いした・・・
私の子供?口を引き裂かれてえのか!
てめえはこの子に何をしてやった?
てめえはこの子に何をしてきた!?
答えてみろ!!!!」
坂倉母「・・・・・・・・・・・・」
母ちゃん「なんとかいえコラ!
てめえみたいな奴が大嫌いなんだよ!
てめえはこの子を産む時に一生育てる覚悟をしたんじゃねえのか?
大きくなるまで一生守るって決めたんじゃねえのか?」
坂倉母「・・・・・・・・」
母ちゃん「私はな、子供が生まれた時は何があっても
守るって決めた。覚悟を決めた。
母親ってのはそういうもんだろ?
腹痛めて必タヒこいて産んで誰もが覚悟を決めるはずだ。
てめえは決めなかったのか!?」
坂倉母「・・・・・・・・・・・・・・」
あああの迫力のないやつか
みんな覚悟を決めて母親になってるのに!
クソみたいな覚悟で「私の子」なんて言うんじゃねえ!
この子はてめえの子なんかじゃねえ!
てめえみたいな奴は母親として認めねえ!」
坂倉母「・・・・・・・・・・・・・・」
母ちゃんはそれを言うとすくっと立ち上がった。
扉から出ていく母ちゃん。
皆が固まる中、数秒後に手に何かを持って帰ってきた。
それは包丁だった・・・
母ちゃんは包丁を坂倉母が座るテーブルに突き刺す!
最低だすが面白すぎる
母ちゃん「てめえ・・・タヒねよ。今すぐここで。
この包丁で自分でノドを突いてタヒね!!」
背筋が凍りついた・・・・
本田母でさえも表情はやや曇っていた。
本田はくちをあんぐりあけて腰を抜かしていた。
や・・やばい・・さすがにこれはやばすぎる・・・
母ちゃん・・・刹すつもりだ・・・・
間接的に・・自刹に追い込むつもりだ・・・・
とと・・ととと・・・止めなきゃ!
止めなきゃやばい!
しかし足が動かない・・・
自分の母ちゃんなのに・・・こええ・・・
オヤジ「フホーーーー!フホーーーー!」
オヤジも坂倉母もどっちも言葉を失っている・・・
だ・・誰か・・誰か止めてくれ・・!!
本田母「はいはい。ちょっとやりすぎよ。
さすがに自刹を迫ったら犯罪よ。」
母ちゃん「・・・・・・・・・」
本田母「あんたやりすぎ。怒るのはいいけど
刹すのはダメ。自刹を迫るのもダメ。
熱くなりすぎだから。」
母ちゃん「・・・・・・・ごめん」
おい!てめえ!」
坂倉母「ひっ!!!」
本田母「てめえは男にすがって生きたいのか?
働かないくそ男でも相手してくれるのが嬉しくて
一生男にすり寄って生きていくのか?」
坂倉母「・・・・・・・・・・・」
本田母「お前はわかってんのか。
この子にはな、お前しかいねえんだよ。
この子が世の中で唯一頼れるのがお前しかいねえんだよ。
お前しかこの子を甘やかせてあげられねえんだよ!!」
坂倉母「・・・・・・・・・・・・」
本田母「この子たちはまだ小学6年生だ。
うちの子もバカで成績悪くて口を開けば生意気言って
腹も立つけどまだ子供だ。
まだまだ甘えたい子供なんだ。」
坂倉母「・・・・・・・・・・」