当時仲良しグループにいたA子は、ちょっと変な所がある子だった。
一見穏やかな知的キャラで腰も低いんだけど、行儀はあまりよくなかったし、
時折言葉遣いも悪くなったりと、ちょっと裏がある子だった。
まあ私含め他メンバーも全く欠点が無い訳では無いので、それも個性だと思い
それなりに仲良くはしてたんだけど、旅行も終盤に差し掛かった海辺のホテルで、
「スケッチブックが無い!」と騒ぎ始めたんだよね。
実は彼女、絵を描くのが好きなのかよくスケッチブックを持ち歩いており、
旅先にも持って来ており、それが無くなったのだと言う。
「良いから、早く探してよ!」と普段の大人しめな感じとはまるで違う様子に
とまどいつつも手分けして探したんだけど、どうしても見つからなかった。
「どうして無いの?」「もう知らないよ!」などと泣きじゃくり、
慰めようとしても「放って置いて!」と言われる始末。
この辺りで、せっかく楽しい旅行の予定を一部キャンセルして
スケッチブック探しに付き合ってるのに八つ当たりまでされてるのかと、
段々腹が立ってきたというか、どうでも良くなってきた。
それは一緒に探してくれていたB子ら旅行グループの面々も同じだったみたい。
ただ、A子が騒いでたのが海の近くの低めの崖だった事が災いして、
騒ぎながらふらふらと海に誘われる様に近づいていき、足を滑らせたのか海に落ちていった。
Aを助けようと思う気持ちはあったけど、もう彼女なんてどうなったって良いやって気持ちが
混じってしまい、少し離れた所から様子を見ていた人に声をかけられるまで、
ぼけーっと突っ立っていた。
その後、声をかけてくれた女性に促される形で警察や病院に通報した。
別の子はAを探しにいった所、たまたま下で泳いでいた人にあっさり救助されており、
命にも別状は無かった。
その後の警察の取り調べでは、「お前が彼女を突き落としたんじゃないのか?」としつこく聞かれたけど、
A子自身が「パニックになっていて気がついたら落ちてしまってた」と証言した事や、
声をかけてくれた女性が、A子が一人で落ちて行った事を証言してくれたお陰で、
何とか厳重注意で済んだんだけど、A子両親には「うちの子を見捨てて!」と
家に乗り込まれて騒がれるわ、学校でもしばらくヒソヒソされたりと散々だった。
A子も気まずいのか自分から私達グループから離れていき、結局それっきり。
今思えば、スケッチブックに異常に執着したり、その割には描いてある絵も
あまり上手くなかったり、変な所でいきなり上から目線になったりと、
何らかの精神的な障害(アスペルガーとか、コミュ障害とか)を抱えた子だったのかな。
でも見捨てるのはいくら何でも残酷だし、下手をすれば私達が何らかの罪に問われてたかもしれない。
そう考えると寒気がするし、人によっては神経分からんと言われるかもしれない。
それぐらいの事をやってしまったんだと今では後悔している。
昨日グループの一人と久々にあってA子の話題が出て思い出したので、
吐き出しつつ書いてみた。
ちなみに、スケッチブックはあっさり見つかった。
A子がトイレか何かに置き忘れる→別の人が拾うも急用があったので
フロントに預ける前に自室に置いて出かける、といった形で、
スケッチブックはA子の手元に戻ってきたんだけど、その時も
拾った人を泥棒呼ばわりして、ちょっとしたトラブルになったらしい。