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:名も無き被検体774号+ 2013/04/09(火) 13:23:48.06 ID:7yKr5nIG0 いよいよサヤカは東京に行くことになった。
新幹線の時間を聞いていたので俺はサヤカを駅まで見送りにいくことにした。
「え?ゆうすけ!学校は?」
「お腹痛いから遅刻することにしたwww」
「見送りに来てくれたの?」
「まぁそんなところだ。」
「あ、そうだゆうす」
「おわーアヤちゃん!!相変わらず綺麗だねー」
「ふふっありがと~。」
「…………」
サヤカからの突き刺さるような視線
「うっ…。さ、サヤカ一緒に写真撮ろうよ」
「は?やだよ。なんでゆうすけと撮んなくちゃいけないの?」
「まぁいいじゃん!今まで撮ったことなんてなかったしさ。」
「あ、じゃあ、私が撮ってあげる」
「おわー!アヤちゃんサンキュー」
「………」
「二人とももっと寄ってー。サヤカもっと笑顔でwwゆうすけくんはそれ以上はやりすぎだから笑わなくていいよww」
「…ばかゆうすけ」
「撮るよ~はいチーズ!」
パシャリ
サヤカ。君が不機嫌だった理由、本当はちょっと気付いてたんだ。けど、君の言葉を聞いてしまったら笑顔で送り出せない気がしたから逃げてしまった。
ごめんな。
サヤカとアヤはとある芸能プロダクションに移籍という形でタレントとして活動していくことになった。
二人で寮というか賃貸アパートというか、ルームシェアをしてくことになったのである。
初めは二人ともタレント活動は順調だった。
イベントが中心だったが、それなりに仕事ももらえた。
けどその稼ぎだけじゃどうやっても生活していくのは困難だった。
『あー今月もやばい…このままじゃ服も買えないよ…』
「本当だよね。。なんかいい仕事ないかな?」
『アヤこれ見て!』
時給2000円以上保証日払い可
「キャバクラってやつだよね?事務所には言えない…でしょ」
『話だけ聞きに行ってみない?』
こうして二人は面接を受けに行くことにした。
アヤはすでに18歳になっていたが、サヤカはまだ16歳だった。
店側も未成年を雇うのはまずいっていいながら敬遠してたものの、二人ともスカウトを通さず来てくれた上玉だったため、手放すのはもったいないってことで雇ってもらうことが出来た。
何かあった時のために偽の保険証も渡された
「本当に大丈夫かなぁ…」
さっそく一日体験ってことで二人は働くことになった。
「おーなになに?新人??二人とも可愛いねー!」
『ありがとうございまぁす(ニコニコ)』
先輩からは今日は座ってニコニコしながら相槌打ってれば大丈夫とのことだったので二人はそれに徹した。
「サヤカちゃんレギュラーになりなよ!俺そしたらめちゃくちゃ遊びにくるわ!」
『ありがとございまぁす(ニコニコ)』
着く客着く客みんな口を揃えてこう言った。
仕事を終えるとさっそく店長がすり寄ってきた。
「二人ともお疲れ様!!!いやーやっぱ僕の目は間違ってなかったよ。お客様たちみーんな二人を大絶賛!!時給このくらいあげるからさ、、ぜひうちで働いてよ!ねっ!!」
サヤカとアヤは顔を見合わせた。
二人で同時に「はい!」って返事をした。
ここから夜の世界に染まるまではそんなに時間がかからなかった。
今まで食べたことのないような美味しいものを食べることができたり、自分では買えないようなプレゼントを貰ったり、ある会社の社長から愛人にならないかって申し出まであった。
サヤカもアヤも事務所に遅れて行くことが多くなった。
朝早い現場なんかではお酒の匂いを漂わせたまま行くこともあった。
事務所は二人に厳重注意をしたが、改善はされずもはや解雇するしかないところまで来ていた。
「サヤカしっかり頑張ってかなー」
俺はサヤカの邪魔になったら悪いと思ってあまり連絡をしていなかった。
…まぁ本当は心配で仕方なくて連絡しまくった末「ウザい」の一言でバッサリ切られたんだがww
「たまには連絡してもいいだろ。」
pururururu
「はい」
「よぉ。元気にしてたか?」
「うん。なに?」
「いや、芸能活動の方はどうかなって思ってさ」
「別に…。普通だよ」
「そっかそっか。たまにはさこっちにも帰って来いよな」
「気が向いたらね。忙しいから切る」
「お、おう。頑張れよ」
なんかサヤカは違う人間になっちゃったみたいに感じた。
夢を抱えてやってきた少女たちは1年とちょっとで欲望の街に飲み込まれてしまったのだ。
「ホスト行ってみない?」
アヤもすっかり夜にそまっていた
「えー別に私はそんなに興味ないかなぁ」
「ようは試しじゃん。堂本光一みたいな人いるかもよw」
「うーん。んまぁ一回だけなら…いってみよっか。」
二人は仕事が終わった後イケメンが多いと噂のホストクラブへと足を運んだ。
ただサヤカはここで出会ったホストのシンヤに人生をめちゃくちゃにされてしまった。
サヤカは実は男と付き合った経験が少なかった。
俺が知らなかっただけかもしれないがww
サヤカとアヤはすっかりホストにハマってしまった。
指名しているシンヤの誕生日が近づいたある日
「えー。流石にキツイよ」
「マジ頼むっ」
サヤカにとってシンヤは東京の癒しだった。
アヤも心の支えのひとりだったが、アヤも別のホストに相当入れ込んでおり、二人揃って感覚が麻痺していたのかもしれない。
「わかった…。なんとかしてみるよ」
着信履歴には不在着信で「ゆうすけ」と何件も残っていた。
一日50000円ほど稼げたので、シンヤの誕生日には60万ほど準備ができたのだった。
そして誕生日の日
「サヤまじでありがとう…」
そう言ってシンヤはサヤの手を握った。
「えへへ。おめでとうシンヤ」
「今日終わったあと空いてる?お礼したいんだ」
「うん。いいよー」
この日からサヤカはシンヤの本カノってやつになった。
よくわからんが、ホストには色カノと本カノっていうのがあるらしい。
もうサヤカは後戻りできないところまで来ていた。
支援
アヤとのルームシェアをしていた部屋は二人とも戻ってくることはなくなってしまった。
アヤはしばらくすると消息が不明になってしまい、売掛金(店への借金)がどうとかで指名されてたホストはえらい目にあったらしい。
サヤカはシンヤと住むようになった。
付き合うとシンヤは束縛が強く半ば強制的に腰のあたりにタトゥーを入れられた。
そのタトゥーにはなんかの意味が込められてたって聞いたけど忘れてしまった。
シンヤは薬の常習犯でキメてするってのにハマっていたらしくサヤカもそれを強要されていた。
なんでそんなことになってしまったんだろうか、、この頃は全く連絡が取れなかった時期なので詳細はわからない、ただ後から受け取るサヤカから手紙では後悔しかないと書かれていた。
シンヤが真っ青な顔をして帰ってきた
「どうしたの?」
「ヤバイヤバイヤバイ…………」
「だからどうしたのってば」
「つけちゃいけない金に手つけた…。俺、消されるかもしれない…。」
「い、いくらなの?」
「500万…」
「サヤカ何とかなんねー?まじで頼むよ。俺消されちまうよ…」
「そんなこと言ったって…」
「そうだ、サヤカ大人ビデオとかどうだ?それなら一本で50ー80万ぐらいにはなる!」
「え、ちょっとなにいってんの?」
「本当に頼む!!これが片付いたら俺たち結婚しよう!」
「……」
「ダメか…?」
「いいよ」
「マジかよ!?サヤカまじで愛してる!!」
お金はシンヤの口座に振り込まれる契約だった。
何本かのビデオに出演した基本は素人ものだったらしい。
俺はサヤカが出た作品は見たくないし、探す気もない。
もし見つけたら全部買い占めて燃やしてやりたいくらいだ。
最後のビデオを取り終わってシンヤと同棲している部屋に戻ると、シンヤはもういなかった。
書き置きも何もないまま荷物がすっかり消えてしまっていた。
サヤカは絶句した。
あんな軽い感じだったけどいいところもあったらしい。
サヤカは東京を去ることを決意した。
サヤカは海沿いの小さな町に帰ってきた。
母親は虐待をしていた父親と離婚していた。
また二人で暮らすことになったんだ。
実家に戻って数日経ったある日
聞き覚えのある声がした
「サヤカ?」
「…」
「やっぱりサヤカだ!帰ってきてたんだな」
「ゆうすけ…」
「もう私に関わらないで…」
「は?おい!サヤカ!?」
「うっとおしいって言ってんだよ!!!!」
今まで聞いたことないくらい大きな声でサヤカは叫んだ。
「え。。」
「あんたは私のなんなの!?人の気持ちも知らないでバッカじゃない!いつもいつも私にまとわりついてきて気持ち悪いんだよ!!あんたなんかしんじゃえばいいのよ!!!」
そういうとワンワンと泣き出してしまった。
俺は言葉が出なかった。
よくわからないけど、俺はサヤカを抱きしめていた。
「ばか…ばか…」
この時東京で何があったのか俺はわからなかったが色々辛いことがあったんだろうと思った。
俺はこの時地元の大学に通う学生でそれなりに時間があった。
サヤカもこっちにきてからは仕事をせず、時間があった。
だからってのはなんか変かもしれないけど、二人でいることが長くなった。
こんなに長くいるのは小学校以来だった。
「ゆうすけは変わらないね…。」
「そっか?背伸びたんだけどw」
「私は汚れすぎちゃった。」
「んー。じゃあ洗えばいいよw」
「はぁ?w」
「靴だって服だって汚れたら洗うだろ?自分自身だって洗っちゃえばいいんだよw」
「バカじゃないのwww」
「まだまだ人生これからだろー。サヤカは昔からなんでも器用にこなすし大丈夫大丈夫!」
「ほんと呑気wwま、そこがゆうすけのいいところかw」
めちゃくちゃな言い分だったけど、さやかに少し笑顔が戻った気がした
俺もサヤカもお互いを好きだったとは思うんだが、幼馴染効果なのかなんなのか恋人にはならなかった。
サヤカが地元に帰ってきて数ヶ月たったある日
サヤカは体調を崩した。
高熱でうなされて凄く苦しそうだったんだ。
本人はただの風邪でしょっていってたけど内情は違かった。
ヒト免疫不全症候群
エイズだった。
だれからうつされたかはわからない。
これまでの無理が祟ったんだな。
この時はエイズだなんて思わなくて病院なんか行かなかったんだ
俺は大学を卒業が間近で就職も決まった。
サヤカは体調を崩した後からいつも体調が悪そうだったが、色んなアルバイトで自分の生活費を支えていた。
春がくるちょっと前。
時期は3月初旬。
サヤカはまた体調を崩し、入院することになった。
この日サヤカには医師から衝撃的な事実を突きつけられた。
エイズに感染しており、カリニ肺炎を発症している、と。
投薬をすればすぐに死んでしまうことはないはずでしたが、色々な合併症があったらしくサヤカはそのまま亡くなってしまいました。
自分がそれを知ったのは亡くなったことをサヤカのお母さんから聞いた時。
もはや何も言葉が出なく涙だけがとめどなく溢れてきました。
身内だけの葬儀が終わり、俺はサヤカのおかあさんに呼び出されました。
「ゆうすけくん。ひさしぶりね。娘がいつも迷惑かけちゃって申し訳なかったわね」
「いえ…」
「サヤカの部屋を整理してたらね、あなた宛の手紙が出てきたの。もしよかったら読んであげてちょうだい」
「は、はぁ」
「サヤカね、あなたが幼なじみで本当によかったと思ってたはずよ。私からもお礼を言うわ。ありがとう」
「こちらこそ、、ありがとうございます」
こんな手紙を書くのは本当は嫌なんだけどゆうすけには知ってて欲しいから書くね。
(続きには東京での出来事が書かれていた。)
私ね、東京から帰ってきた時本当は自分で死んじゃおうと思ってたの。
けどゆうすけに会って感情爆発させてwwそして抱き締められた時、もう少し生きてみようかなって思ったの。ゆうすけと生きてみたいって思った。
でもね、最近自分はそんなに長くないんじゃないかなぁって思ってるんだ。
だからもし私になんかあったときのためにこの手紙を書いとくことにしたの。
だから、、いつもは言えないけど…迷惑ばかりかけてごめんね。大好きだよ。ありがとう。
サヤカより
あのとき無理矢理とった写真だ。
不機嫌そうなサヤカとはちきれんばかりの笑顔の俺。
それを見て涙が止まらなくなってしまった。
なんで好きと言えなかったんだろう。どうして行くなと言えなかったんだろう。
後悔の嵐だった。
サヤカと写っている唯一の写真。
俺は自分の部屋に飾ることにした。
写真に写っている不機嫌そうな君はもう俺のところに帰ってこないけど、もう一度会えたら俺も大好きだったと伝えたい。
俺は社会人になってから出会った女性と結婚して子供も授かった。
だけど春が来るたびサヤカのことを思い出す。
そして君の「うっとおしい」を聞きたくなる。
おわり
胸が苦しいな‥
賛否両論あるかと思いますが、自分的には書けてよかったです。
はじめてこういうのを書いたのでなかなか下手くそでしたが当時を思い出して書けていろいろな感情が沸き上がりました。
読んでくださった方々、支援してくださった方々ほんとうにありがとうございました。
こういうこと聞くのはあれだけど、
節目節目のどこかで自分が救い出せたんじゃないか?みたいな後悔があるの?
そういう理由で書くことにしたのかなぁと思ったりしたんだけれども
>>121と似たような感想をもった。
時計の針を戻せるならどこまでだろう。
酷な質問なのでスルーしてくれて構わない。
彼女の冥福を祈ります。
そうですね。
自分がサヤカの運命を左右できる場面は何回かあったと思います。
その際正しい選択が出来ていればと思うときもあります。
まぁ全てが過ぎてしまったことなので今更どうしようもないんですが。
年月を経てそこらへんは整理することができたと思います。
彼女は自分がAIDSって知らずに逝ったのか?
発祥して長く苦しまずに亡くなったのは、
こんなこと言ってはいけないかもしれないけど不幸中の幸いだったんではないかなぁ
としか言えないわ
エイズって知った上でなくなったはずです。
入院したときに母親と一緒に聞いたそうです。
二年間のあいだにエイズの症状は出てたんだと思います。
多分ですが告げられる前に自分で勘づいていたんじゃないかなぁと今はおもいます。
>>126
支援どうもでした。