結婚報告しに行って聞いて旦那ときゅんと二人揃って来たんだ
早く書いてくれよ。待ってるのはオレだけじゃないはず。
書いても良さそうなので書かせてもらいますね
祖父母の出会いは半世紀以上昔のこと
祖父がおそらく20歳、祖母が15歳の時だ
祖母は地元から離れた女学校に汽車で通っていた
毎朝祖母が乗る時間帯の汽車には目立つ人が乗っていた
やたらと女性にモテる男性、祖父である
当時祖父はイケメンというほどでもないがものすごくモテた
同乗してる女性に見つめられたりラブレターを渡されるのはしょっちゅう
当時としては驚くべきことだが連絡先を渡して誘う猛者まで出るモテっぷり
祖父も祖父でモテても飄々として、それがまた女性を盛り上がらせていた
だがお嬢育ちの祖母は軟派な悪い男に違いないと思って警戒していた
そんなある日にたまたま祖父母は帰りの汽車も一緒になった
いつも通り祖母は祖父に関わらないようにして最寄り駅まで来た
しかし汽車を降りた途端、草履の鼻緒がブチッ
漫画のごとく祖父がさっと祖母を受け止めた
なんてことはなく、祖母はホームで派手に転けた
手は擦りむくし鼻血は出るし鞄は痛むして踏んだり蹴ったりの祖母
半泣きでいたら目の前に茶色く濡れた手ぬぐいを差し出された
見上げたら祖父がいて「怪我したとこ拭き、お茶は殺菌効果があるから」と言った
ぽかんとする祖母を笑顔もなく助け起こして鞄も拾って駅舎の椅子に誘導
怪我の手当をして鼻緒も直して、駅の電話を借りて祖母の家人を呼んでくれた
祖母は祖父のことをわりといい男じゃないかと思って認識を改めて感謝した
翌日手当に使ったお茶まみれの手ぬぐいを洗濯して返そうと汽車に乗った
でもその日以来祖父は汽車に乗ってこなかった
実は祖父はその日、もっと早い汽車に乗って南の方へ出征してしまっていた
それから数年後の戦争が終わった頃に話は飛ぶ
祖父をすっかり忘れた祖母が19歳の年に祖母父が事故死した
あんまりにも唐突な出来事で家業がやばくなった
そこで援助してくれそうな家に祖母を嫁に出すことが決定
時代が時代なので祖母はついに来たかと粛々と受け入れた
ちなみにこの間、嫁に行く先の家を教えられただけで相手との顔合わせはなし
結婚の日に初対面というぶっ飛びようである
慌ただしい準備を終えて婚礼の日になり、祖母は車に乗せられ嫁入りした
が、婿の家に着いてみるとなにやら慌ただしい
祖母側が戸惑っていると身内らしき人が迎えに出て来て中の座敷へ案内
祖母に「とりあえずここにいてな」と言い置いて放置して何処かへ行ってしまった
不安なまま祖母は座って待っていたら座敷の外から人の話し声が聞こえた
「××(婿)はどこに行った」「朝から見てない」「もしかして逃げたか」
そこまで聞こえてしまって祖母は婿になる人に逃げられたと確信した
身売り同然でくる小娘なんかイラネされたんだと思ったら、惨めで悲しくて外に聞こえないよう祖母は泣いてた
そしたら急に締め切ってあった障子が開いてスーツ姿の男性が靴を持って入ってきた
焦った顔をしていて驚いている祖母にまったく気付いてない
中に入り込んでやっと祖母に気づき「僕の嫁さんですか?」と聞いてきた
祖母が頷いたら目の前にしゃがみ込んで角隠しの中を覗き込んでハンカチを差し出してきた
相手の顔を近くで見て祖母はびっくり、男性はなんの偶然か祖父だった
祖父も目をまん丸にして一言「あ、出征前に会った鼻血の子」
祖母は覚えてくれてたのはいいけど開口一番がそれかよ!と思ったそうだ
でも状況についていけなくて祖母があわあわしてたら舅姑が飛んできて祖父を殴って回収して行った
わけがわからないまま祖父の準備も済み、大幅に遅れて無事結婚式が挙げられた
夜になって祖父と落ち着いて話せてわかったことなのだが祖父は逃げてなかった
結婚の日の日取りを間違えて会社に出勤してたそうだ
出勤直後上司に「今日お前の結婚式じゃね?」と言われて気付いて慌ててこっそり帰ってきたらしい
ごめんなーうっかりしててと呑気に謝られて、祖母は私の涙を返せと祖父の髪をむしりたくなった
だが「泣いてるとこ2回も見たし責任取るわ、3度目の正直で泣かさんよう頑張る」と言われて止めたという
それ以降、祖父は祖母を振り回すマイペースだけど悲しませて泣かさない
今もちゃんと道で転けないように祖母の手を引いて歩いてる
なんだかんだで有言実行してるあたり祖父は祖母の読み通りわりといい男のようだ
祖母はツンデレツンデレしてるけど祖父のそこに惚れていったみたいである
祖母は笑い話として話してくれたけど、私としては可愛いなぁとキュンとした次第です
キュンキュンしたわ
飄々と自分の結婚式忘れて出社したじいちゃんいいキャラしてるなー