入院の原因は足の骨折だったから、普通に腹も空くんだよな。
翌日から「適切な塩分量は」とか「過剰な調味料の悪影響は」とか学校の授業みたいなものを受けさせられた。
その一環で、各受講者の味覚についてきちんとした検査をされたんだが、なんと俺に味覚障害が発覚。
あの海水男までとはいかないが、「病的に鈍麻してる」とまで言われた。
確かに、以前から嫁に「私の料理がまずいんじゃなくてあなたがおかしい」と言われてた。
・某がっつり家系ラーメンにコショウ10振り+ニンニク山盛り3杯はおかしい。
・嫁の飯の味が悪いからと、食う前に塩コショウ七味醤油と調味料をかけまくるのはおかしい。
・味付け海苔や漬物に醤油をかけるのはおかしい。
・塩じゃけに醤油をかけるのはおかしい。
・味噌汁に出汁のもとを半袋(大さじ1杯相当)入れるのはおかしい。
などなど・・・
元々嫁は北部九州生まれで京都育ちの元公務員→結婚後に転職してOL。
俺は関東の元トラック運転手→最近、内勤。
そのために、生まれ育った地域差や労働内容で味覚が違ってるんだろう程度に思ってた。
でも実際まずいんだよな。
だから、飯マズを人のせいにすんじゃねーよ!嫁なら俺に合わせた料理を作れよ!とさんざん言ってた。
俺が悪かったんだなぁと思ったら、嫁に対してものすごく申し訳なくなって、見舞いに来た嫁に謝った。
そしたら、病気になって死んじゃう前に気づいてくれてよかったーって嫁に泣かれた。
一回り以上も年下の嫁に、俺はなんて悪いことしてたんだって痛感した。
退院してからは、嫁と一緒に歩いて通勤するようになった。
嫁は俺の会社の近くにある駅から電車に乗って通勤しているので、駅まで一緒に行って、改札前で見送ってから
会社に引き返してる。
帰る時間を合わせて買い物にも行くようになったんだが、嫁がどれだけ食べ物に気を遣っているのかもわかった。
料理を横で覗いて覚えようとしたら、邪魔すんなーと言われるけど、出汁の取り方や味付けの仕方を教えてくれた。
明日は2人そろって休みなので、俺も何か昼飯を作ってみようと思ってる。
よかったじゃん。
頑張れこのやろ。
そんだけメシマズメシマズ言われても離婚せずにいてくれた嫁さんに感謝して
これからしっかり幸せにしてあげなさい
張り切ってたせいか思いのほか早い昼食になってしまい、嫁はリビングで昼寝中。
俺にもできるものと思ったらちょうど中元でもらった素麺があったのでそれにした。
嫁に休んでろと言ったのに、横にくっついて手伝ってくれた。
薬味を一緒に用意したり、隣で鍋を見てゆで時間を計ってもらったりしたよ。
嫁が「ほら!今だ!今お湯からあげなきゃどうする!!」とか、珍しくはしゃいでて俺も楽しかった。
今まで知らなかったんだが、うちのめんつゆは嫁のお手製だったらしい。
今朝、朝飯あとに出汁とってたんで、何してるのか聞いたらめんつゆ作ってた。
「市販のつゆは塩分以外にも、お砂糖が意外とたくさん入ってるんだよ」と教えてもらったが
俺はめんつゆに砂糖が入ってることすら知らなかった無知なので素直に感心した。
薬味たくさん入れたら怒るかなと思ったけど、生姜とねぎは体にいいので
味覚を狂わさない程度であればいいと言われた。
いつもと変わらん素麺のはずなんだが嫁が「おいしいねえ」と笑ってくれたので満足だ。