環境を変えるという意味もあったらしいが、一番の理由は本人の意向だったという。
それを言い出したのが、およそ二週間前。同窓会の知らせが回ってきた頃だ。
と、彼女の現状については軽く話したので、今日のことを順に話していこうと思う。
なにか見舞いの品でも持っていった方がいいのかな、と歩いているときに思いついたんだ。
花でも買っていこう、と思ったんだが結局やめた。
エリの好きな花というのがわからなかったから。ずっと一緒にいたのに俺はそんなことも知らなかった。
これなら振られて当然だよな。
と、くらい気持ちに入りかけたので買うのはやめにした。
今のお前になら出来ると思うがね!!
失礼な奴だ、と追い返されるかななんて思ったりもしたがそんなことはなかった。
病院の中は割と閑散としていて人が疎らだった。
見ると、色々な人がいたけど不謹慎なのでやめておこう。
一つ思ったのはここにエリがいるんだなってことだけだ。
おかえり、大したことなくて良かったね
俺もヤスの話を聞いてなんか…変わりたい、ってかなんか頑張ろうって思えた。ありがとうございます!
すると、受付の人が「ご関係は?」と聞いてきた。
なんて答えればいいのかわからなくて口ごもってしまう。
友達? 幼馴染? 元彼?
何となく、どの言葉もいやだった。
かといって他に何も浮かばない。
悩んだ末に、
「元、彼です……」
なんとなく口が酸っぱくなった。
「ご家族や本人の同意は?」
みたいなことを聞いてきた。
すっかりそんなことを忘れていた俺は、ありません、と答えるしかなかった。
せめてエリの家に電話だけでもしておけば良かったなあ、と意味のない後悔をした。
受付嬢は不審者を見る目付きで俺を人睨みし、
「ちょっと待っててくださいね」
というとどっかへと電話をかけた。
電話が終わる。
「あちらでしばらく待っていてください」
ロビーを指差してそう言った。
まぁ、仕方ないんだろうけど
平日の朝っぱからなにしてるの、アノ人。ヒソヒソヒソ。
そんな声が被害妄想で聞こえた。
で、俺はくじけないためにもエリのことを考えていた。
カバンのなかを覗く。
入っていたのは一通の便箋だ。
受験の時、携帯を奪われた俺が彼女と取った連絡手段。それの名残。
エリからもらった万年筆で書いたそれは、もし、エリに会えなかったら渡してもらうつもりだった。
中に書いてあるのは、謝罪の言葉。そして、俺の今の気持ち。エリのことが、好きだという。
心臓ばっくばく
良く考えてるな
対策が完璧w
「ヤスさーん。こちらへ来てください」
受付の方へ近寄ると、見たことのある人がいた。
なんでこの人がここに? という疑問。
いや、病院自体にはいてもおかしくない。
だけどどうして俺の前にいるのだろう。
「久しぶり、ね」
「は、はあ……」
突然現れたエリの母親に、俺は戸惑いを隠しきれなかった。呆然としたまま返事をする。
「どれくらいぶりかしら?」
たぶん、最後にあったのは俺とエリの受験が終わり、合格祝いに彼女の家に行ったときだった。
「え、っと……。たぶん四年とちょっとくらいかと」
「そう。ちょっと早いけど、お昼食べる?」
「は、はあ」
俺たちは受付から食堂へと移動した。
wktk
とりあえず中に通されたんだな。よしよし、いい感じだ。
何を話していいのかもわからないし、そもそもあまり話したことがない。
昔は、「娘をよろしくね」「いえいえこちらこそ」などと言い合っていたが、今はそんなことを言えない。少なくとも今は。
「ここの食堂はそれなりに美味しいのよ」
「はぁ」
「なにか頼む?」
「え、あ、じゃあアイスコーヒーで」
緊張で喉が乾いていた。
お嬢さんを僕にください、とか言うよりも緊張するんじゃなかろうか。体験したことないが。少なくとも今は、まだ。
「そう、じゃあ私はーーこれで」
メニューを見て指をさす。
そんな、ちょっと子供っぽい仕草がエリに似ているな、と思った。
「えっと、じゃあ買ってきますよ」
「あらそう、悪いわね」
とにかく俺は気まずかったので席を立つ。
お金をもらうのを忘れていたが、まあ別にいいなと思った。
もともとこっちでもつつもりだったし。
アイスコーヒーと彼女の頼んだフライドポテトを持って席へ戻る。
「どうぞ」
「ん。ありがとうね」
受け取ると、彼女はムシャムシャとポテトを食べはじめた。
それをただ見ている俺。
なんだろう、俺はエリに会いにきたのになんでその母親と対峙して、挙句目の前でポテトを食われているのだろう。
気がつくとまたエリのことを考えていて。
本当に好きなんだな、会いたくてたまらないんだな、と思うと緊張が和らいだ。
「ねえ」
突然、声をかけられる。
その声は怒っているでもなく、さりとて歓迎しているようでもなかった。
良い感じで焦らされてるぜ・・・いいぞもっとやれ
いってこよ
来た、と思った。
「それは、エリ……さんに会いに」
「会って、どうするの」
彼女の声は平坦に響く。力が篭っていなくても感情が篭っていた。
「それは……」
「あなたたちは終わったんでしょう?」
胸が痛みを覚えた。
だけど、事実だ。
「……はい」
「それなのに今更会ってどうするの? 突然、現れて……」
「……俺は……」
迷ってはいけない。というより、迷いはなかった。
「エリさんとヨリを戻したいと思っています」
良く言えたなGJ!
「エリが今どういう状況だか知っているの?」
「いえ……あまり詳しくは」
「エリが、あなたと別れた後、どうしていたか知っているの?」
「……いえ」
少しずつ。
「それは、そうでしょうね。あなたはエリを遠ざけたんですもの」
少しずつ、彼女の感情が発露していく。
ポテトを食べる手は止まっていて、視線が俺を射抜いていた。
「なら、私が教えてあげる。エリがあなたと別れた後、どうしていたか」
がんばれヤス!
でもバイトだorz
良い報告、楽しみに待ってるからな!
その中には俺の知っていたことや、さっき書いたエリの現状についてもあった。
だけど、当然俺の知らないことがほとんどだった。
「いろんな人と付き合っていたわ。だいたい一ヶ月くらいで全部終わっていたけどね。
どれも相手の人にフラれたみたい。重い、って言われたらしいわ。あなただけね。エリから振ったのは」
言葉の矢が刺さった。
正直に言えば、滅茶苦茶ショックだ。だけど、それを表に出さないように。
「なんでそんなに知っているんですか」
おもに俺が振られたこととか。
「当然よ、母親だもの」
理屈ではなかった。
だよな!!??
ラスボス・・・だと・・・
「……ありがとうございます」
それから三十分くらい、話を聞かされた。
その中でチクチクと入る棘に俺は割とダメージを受けた。
「どう、あなたが知らないことばかりでしょう?」
「ええ、まあ」
気のせいか、言葉の棘が増している気がした。
「でも、どれもこれも、あなたが知ることのできたものばかり。あなたがエリの傍にいれば、ね」
うん。気のせいではなかった。
それどころかこれは完全に責められていた。
「あなたがエリと連絡を絶たなかったら、エリがここにいることにすぐ気付けた、でしょう?」
「……はい」
その通りだ。
俺が、逃げたりしなければ。エリの以上に気づくことはできた。いや、そもそも。
「もしかしたら、あなたがいなくなったから、エリは誰かにいてほしかったんじゃないかしら」
「ーーッ」
やっぱり。そうなんだろうか。
「まあ、想像だけどね」
それは嘘だった。目が、確信していた。
俺のせいだと。
俺は、責められていた。非難されていた。
く、挫けるな…どう転んでもエリはヤスの運命の人で、
お前を幸せに出来るただ一人の人だから、これは避けて通れない道なんだ…。
うぅ…でもなかなか痛い棘だなorz
を認めていなければ出てこない言葉じゃないか?
相変わらず目に力を込めて、声音だけは平坦に。
「あなたはまだヨリを戻したい?」
娘を傷つけておいて。
それでも、まだ戯言を吐けるのか。
そういう問いだと思った。
辛い。
ある程度想像していたとは言え、面と向かって、それも親の口から言われると予想以上に堪える。
コーヒーはなくなっていた。
喉が乾く。
俺には資格がないのかもしれない。
エリから逃げた俺には。
彼女の隣にいる資格は。
「…………おれ、は」
を責めるのは何か違う気がする。。。
母親だからかもしれないけど、いい大人なのに。
最善の策は
がえりを逃がさないことだったかもだけど、別れを告げたのはえりだしね。
ずっと好きでいつづけるってことも
は守ってるし、えりはいろんな人と付き合ってる。
別に悪いことではないし、えりを非難する気もさらさらないけど・・・
に責任はないと思う。
自信が責任を感じているのは
がやさしくて、なおかつえりのことを想ってるからだよね。
「娘をこんなことにして」
って言ってる感じだけど、それだけ
のことを認めてたんだよ。
彼らは迷って、逃げて、けれども諦めることはなかった。
幸せを。好きな人と歩む幸せを手に入れるために。
俺は、彼らになりたかった。
身勝手と罵られても構わない。
資格がないと言われても知ったこっちゃない。
エリとの日々が浮かぶ。
ただ俺は。なによりも。
「それでも、俺はエリともう一度一緒にいたいです」
エリが好きだった。
が本気か試してるんじゃないかと思う
しかし、母親もさぞ苦しかろうな。
責められる筋合いじゃないかもしれなが、イキナリお見舞い気分で突撃した
はかなりのKY。
、マジでかっこいいよ・・・
になら掘られてもいい
涙腺決壊しそうじゃまいか!!!!
でいいよ!!!
いくらエリの味方ってもそこまで偏った見かたせんだろ
最近自分も中学時代から約6年付き合った彼女と別れたが
一ヶ月程たった今、向こうが告白されて彼氏が出来て
それをキッカケに彼女が汚い物に見えてしょうがない。
好きだし、友達だし、家族と言ってもいいが、気持ち悪い。
戻ることは出来ない事実をエリ母に知って頂きたい
まあ、エリさんの母は、娘がああなった悲しみを、誰かにぶつけたかったんだろう。
そこに元カレのヤスが来たから矛先が向いたというわけで。
相手の憤りを受け止めるのも、修行だぜ。
それは別れ方が明らかに違うからじゃないか?
の場合はお互い好きなのに別れたんだし。それもおかしな話だけどな
「させません」
「あなたのことを、もう嫌いになっているわよ、きっと」
「それでも、今度は友人として、彼女のそばにいます」
「本当にずっと一緒にいられるの」
「います。そのために、家でできる仕事を選びました」
物書きの仕事は、そのために選んだ。
好きな人と一緒にいられるように。
「……そう」
俺の言葉を聞いた彼女は、フーと長く息を吐いた。
いや、うちらも好きだったが別れたんだよ。事情があってね
それを友人という立場でも貫き通そうと思っていたんだが
まさかこんなに早く彼氏作るとは思ってなくてね。追々はそうなる
だろうとは思ってたが。
たぶん、勝手に裏切られたと感じているのかもしれないねぇ
だから哀しい
,497の言う通り
試されているっぽいな
お前さんがこのまま元カノとよりを戻す気がないなら、気持ち悪いと思っていた方がいいかもしれない。
やっぱりよりを戻したいと思っているのなら、その気持ち悪さは嫉妬みたいなもんだろうな。
ヨリを戻したいなら、伝えればいいかもな。
もっとも、寝返りは癖になるから気をつけるべし。
急に、それまでの剣呑さが消え失せる。
先ほどのため息と一緒に吐き出したように。
「後は当人同士の問題ね」
「えっと、いいんですか……」
「まあ、ね」
彼女は俺から視線を外してどこか遠くを見る。
何を、見ているのだろうか。
「エリがああなったのは私にも責任があるしね……」
そういえば、と思い出す。
エリの両親は共働きで、たまにしか家にいなかったことを。
小学校の授業参観も、彼女の祖母が来ていたことも。
「だから、本当はあんまり口出しできないんだけど」
「娘を泣かした男に一言、言ってやりたかったんだよ」
言った彼女は困ったように笑った。
結婚したら、良いお付き合いできそうだな。
誰も恨むなよ。嫌いにもなるなよ。自分も相手もその彼氏もだ。
人を嫌いになって良いことなんかほとんどないんだから。
しんどいだろうが、恨み言だけは言うな、絶対だぞ。
お前さんの今後の幸せを祈る。
やっぱりウダウダ考えててもしょうがないってことだよ
後悔するかしないかは全て自分次第だ
wktkがとまらん
の底力を見せつけられた。
今まで無気力で過ごしてきた日々がバカバカしく思えた。
もう少し頑張ってみようと思う。
に感謝
はあまり大人になろうとしない方がいいと思うよ
幸せに出来る自信があって羨ましいw
ありがとう。
誰も恨まないよ。家族だもん
俺は元彼女と彼氏の幸せの手伝いが出来ればそれでよいw
無条件で味方してくれて、自分の全てを背負ってくれる存在。
母親の顔が浮かび、少し涙が出そうになった。
「ほら、なんて顔してるの。これから会いにいくんでしょ?」
「えっ、あ……いいん、ですか」
「うむ。許可しよう」
大仰に頷く。
「先に私が行くから呼んだら入ってきてね。後は二人きりで話なよ」
「は、はい」
ようやく。
四年ぶりに。
エリと、会える。
「ああ、一つ教えてあげる」
「はい?」
会計を済ましたところで声をかけられる。
「エリはね、付き合っていた人と別れた夜は決まって泣いてたよ。誰かさんの名前を言いながらね」
「……え、え?」
何だそれ? どういうことだ?
理解が追いつく前にサッサと行ってしまった。
もしかして、という希望が生まれた。
エリのことを抱きしめてあげられるかも、と。
全私が泣いています(;ω;`)
続き期待
よかったな。
みんながあまりにポジティブなレスを付けていたので
あえて最悪のケースを考えてカキコしたが
漏れの想定の範囲内では一番楽観視できる状況の
ようなので、正直ほっとした。
の覚悟は正直すごいと思った。
だけど、一人で背負い込みすぎるなよ。
涙が止まらない
てか涙が滝のようだwwwww
この中にエリがいると思うと緊張してしまう。
「じゃ、ちょっと行ってくるから」
エリの母親が行ってしまう。
チラリと部屋の様子が見えたが、相部屋だったのでエリを見つけられずに扉は閉じた。
ただ呆然と立ってるのも馬鹿らしいので、携帯でこのスレの確認でもしようと思った。
が、病院内は携帯禁止だということを思い出してすぐさま電源を切った。
仕方ないのでただ待つ。
本日二回目の待ちだ。
今度はさほど待たずに、彼女の母親が出てきた。
ん? でてきた。
「あの……」
「あー、悪いけど。ちょっとこっち来て」
はエリたんの入院先の病院をどうやって特定したの?
話聞く限りでは友人も噂だけで入院先の病院までは知らないっぽいし
エリたんの両親とは病院で4年ぶりに会ったんだし…?
wktkがとまらんっ!
近くの精神科、もしくは精神病院に片っ端から聞いた。
というよりも入院も出来るような病院は限られていたので割と楽だった。
今思えばその時に面会できるかどうか聞けばいきなり突撃にはならなかったのでは……。
なぜか、病室は遠ざかってしまった。
「あ、あの……」
「黙ってついてくる!」
「は、はい」
そして出たのは中庭、みたいなところだった。
公園程度の敷地にベンチが二つ程度。
芝生の緑が目についた。
屋外なので、空調はなく昼特有の蒸す感じがする。
「ここで待ってて」
「はあ」
置いて行かれてしまった。
本日、三度目の待ち。
立っているのもアレなのでベンチに座った。
これが最後ならいいなあ、などと思って時を過ごす。
そして、十分が過ぎた。
ちなみに、そこからエリの病室までは歩いて三分もしない。
まさか、追っ払われた……。
いやな予感がしたので、立ち上がろうとすると。
「ん?」
中庭の入り口に、誰かが、いた。
wktk
守秘義務もあるし、今は個人情報保護ってのもうるさいし。
やたら、おどおどしていた。
こちらの視線に気づくと。
ゆっくりと、こちらへ歩いてきた。
涙が、出そうになった。
万感の思いを込めて、彼女の名前を呟いた。
「……エリ」
「……や、やあ」
彼女はバツの悪そうに顔を背けた。
画面が歪んで見えないんだが?
不謹慎だが、ギャルゲやってる気分だ。
の文才とか状況のせいかなw
ハッピーエンド来おおぉぉいっ!!
仕事しながらROMを経て
今は、更新ボタン連打しながらROMってる
俺もだw
仕事しろwww
オレもだが。
偉いな
俺は書き込みながら仕事してたから
何一つ片付いてないw
そうなのか? 友達です、って言ったら割と普通に教えてもらえたが……。
この時の思いはうまく言葉では言えない。
いろいろと混ざっちゃっていたから。
だけど、確かに感じ取れたのは、エリのことを好きだって言う気持ちが溢れたきたことなんだ。
エリは、四年前とは少し変わっていた。
背が小さいのは相変わらずだ。
髪が少し茶色くなっていた。黒い方が似合ってるけど、これもいいかなって思った。
いつものボブカットが今はロングになっていた。
四年。
四年経って、変わっていても、やっぱりエリはエリで。
ああ、俺は彼女を好きなんだ、と再認識した。
こっちのが泣けるだろ。考えなくても。
だな。
まだ511から読んでないが、夕ごはんを待ってるせいなんだ。
頑張って、続きを投下してくれ。