そろそろ投下を始めたいと思います。
たぶん、今回で終われる予定です。
――
それからボク達三人は、ファミレスに残って今後の作戦会議。
やっぱりカナブンとの対決は、避けれそうにないことが分かったけど
どうすればいいのか具体策はなかった。
きました! ちょっと遅くなりましたけど。
――
それに彼女の本当の気持ちが分からない以上、万一、カナブンを
退治できたとしても、その後に「余計なことをしてっ!」恨まれる
可能性.ゼロじゃない。
結論になりました。なんというか……あまりにも当然の結論です。
って、最初に気づけよ。
いや最初に、やったけどダメだったんだってば。
う〜ん、正直なところ気が重い。鬱だし。
ボク達は、さっき聞いたお姉さんの携帯に連絡して彼女にボク達が話を
したがってることを伝えてもらうことにした。あとは明日。
お待たせです。
――
翌日、彼女は遅刻せずに登校してきました。
ボク達を探すように、クラスを見渡しながら入ってくると静かに自席に着く。
クラスの視線が、彼女に集中している。ちょっと可哀想。
続けて「昼休みにPCルームで」と告げました。
反応はなかったけど、とりあえず伝わったと思う。
背中に彼女の視線が刺さっている気がします。気のせいかもしれないけど。
休み時間には後ろを振り返り、適当に話をしているフリを続けます。
彼女は返事はしませんが俯きながらも、上目遣いに視線を送ってくれます。
それは、きっと期待している証拠。
ボクは彼女に期待されているという嬉しさの反面、これから自分に
起こるであろうことへの不安でいっぱいでした。
ボク達三人はPCルームでパンをかじりながら待っていました。
すると、扉が少しだけ開いて誰かが中を伺っている気配。
ボク達はできるだけ明るい声で彼女を迎えます。
その声に促されて不安げに、そしておずおずと入ってくる彼女。
しかし、姿と表情がこれだけギャップのある子もないよなぁ。
遊び人キャラスタイルなのに不安気って、やっぱり相当無理してるんだな。
そして……ボクの気持ちは夏休み前のままだし、今でも彼女のことを放って
おくことはできないと思っていることを、精一杯伝えました。
たくさんの言い訳を添えて。
そして、カナブンのことはボク達でなんとかするし、何の心配も
要らないと伝えました。
本当は、こっちが心配だらけだったんですけど。
と言いたかったのですが、それは問題が解決してから
別の形で伝えることにしました。
こちらの話が終わると、彼女は消え入りそうな声で呟きます。
「ありがとう……」
といってもボクと彼女が一緒に帰るだけ。部活は当面休むことに。
そうすれば、そのうちカナブンが出てくるだろうという読み。
ボクと彼女の、ハッピーエンドが待っているハズ……
って、そんな都合のよい話はナイだろうけど。
羨ましいわ
平和な方が、よかったと思いますよ。
――
ボクと彼女は、できるだけ自然に二人並んで歩き、その後ろを
虹ヲタとメカ夫が、バイクで尾行する。
最初の一週間は、何も起こらなかったです。
2日目は、並んでみた。やっぱり無言
3日目は、ピッタリ寄り添う形になった。でも無言。
4日目は、彼女から腕にしがみついてきた。震えてる。少しだけ話した。
5日目は、お互いの手を絡めてみた。昨日よりも話ができた。
う〜ん、正直疲れた。汗だく。ヘトヘト。
もう、夏休みのような失敗を繰り返すわけにはいかないですからね。
もし彼女の様子に変わったことがあったら、すぐにでも飛び出すつもりで。
というか、字面が落ち着いた雰囲気でしたね。
メールの行間には、沈黙が表現されませんから。
先週と同じく彼女はボクの腕にしがみついている。正直なところ歩き辛い。
でも、悲壮感が少し減ったように見えたのは良かったかも。
週末の会話で、少しほぐれたのかな。
そして、天気のこと、学校のこと、みたいな会話がポツポツと
できるようになりました。
やっぱり現れた。カナブンだ。
彼女がボクの背中に隠れて、ぎゅっとしがみついてくる。
後方からメカ夫のバイクのエンジン音が高くなり、近づいてくるのが分かる。
カナブン号から男が降りて、こちらを見る……
カナブンと対峙する。
相手は無言……
こちらも無言……
なぜなら、ミドリを自宅に避難させたメカ夫が合流すれば3対1になるから。
相手よりも、人数が多いに越したことはない。
沈黙で交渉が進まなくなった時は、先に話し始めた方が譲歩する場合が
多いと聞いたことがある。
でもそれは、交渉の場合。武力衝突には適用されない法則だと思います。
沈黙は怖くない。何時間でも黙っててやりますぜ。
こちらの作戦を知ってか知らずか、カナブンが遂に口を開く。
「あんたら何者?」
「何者だと思う?」
質問返しとは、我ながらひねくれたもんです。
とりあえず相手に、頭を使ってもらいましょう。
その分、こちらには考える時間も情報も増えますから。
30代ってウソだろ?
本当は20代後半だろ?
その辺は、ご想像にお任せします(笑)
――
少しイラついた表情を見せながらカナブンが続けます。
「その制服は○○高校だろ。ミドリの知り合いかなんかだろ?」
「だったらどうする?」
あくまでも、とぼけて交渉のテーブルに乗らないボク。
言葉遊びをしてる中で何か突破口が見つかれば……とか思ってたのが本音。
すると……
「どっちが、彼女と付き合ってるんだ?」
きましたー! ありがとー
――
意外なことを意外なトーンで言い出すカナブン。コイツの言葉に怒気はない。
ボクは、ひょっとしてコイツは悪人じゃないのかも? という考えが頭をよぎる。
だから、ちょっと話をしてみようかという気になったですよ。
ただね、彼女がアンタを怖がってるみたいだから
ボディーガードみたいなもんだ、と言えばいいかな」
「そうか……」
この一言からカナブンが語り始める……えっ?語り始める?!
外交での解決を望んでいるようなのです。
これは渡りに船、地獄に仏、鴨がネギ、いや違うか、
とりあえず、こちらには好都合でした。
・
・
・
本当は、涙が出るくらいホッとしたんですよ……
彼女と直接話をしたことはなかったものの、例のメンバーの中で
ちょっと異質な彼女が、ずっと気になっていたとのこと。
行方が分からなくなり、ずっと気にしていたと。
そして、この夏休み頃に、偶然ボクと一緒に帰る彼女を見つけて
つい彼女の後をつけた上で、待ち伏せをして声をかけてしまったらしい。
その原因の一端が、自分にあるのかと思ってしまったと。
だから、引くに引けない状態になっていたらしいです。
おまけに、次々と連れて歩く男が変わっていくものだから心配で……
ですね。
――
彼も不器用な男のようで、結果的に自分の存在が彼女を
追い込んだらしいことには、とても困惑してましたね。
彼は彼なりに彼女が変わっていく様を心配し、何とかしたいと
考えていたようですから……
ボク達の前では、そのように見えました。
でも、強面でしたよ。
――
途中からはメカ夫も合流し、ボク達4人は公園で話をしました。
30分くらい話しましたかね。
彼女の状況は、ある程度までカナブンさんにも話しました。
彼は、自分の行動が彼女を怖がらせたことについて素直に謝罪をし
それを彼女に伝えて欲しいとのことでした。
帰り際に、彼はボクの目をしっかりと見つめてこう言います。
「彼女のことはアンタに任せた。俺はアンタを信じる」
「わかった」
ボクは短く答えましたが、頭の中では何だか言葉にしにくい感情が
渦巻いていました。
自分の気持ちを刹して、ボクに彼女を託したカナブン……
自らの危険も顧みず、イヤな顔ひとつせずにここに居てくれる友達……
ボクとミドリに向いている、みんなの気持ちが嬉しくて
ひとりで、ジーンとしてました。
実はその時、泣いていたかもしれません。
事務的に“一件落着”と言うには、ちょっと切なかったですが……
お義姉さんが帰ってきました。
昔の仲間の件については、片が付いたことを報告すると
とても喜んでくれて、その日は夕食をご馳走になることに。
豪華なディナーとはいかないでしょう。
それでも5人で囲む食卓は楽しいものでした。ミドリの笑顔をみるのは
数ヶ月ぶりでしたし。
送迎することになりました。名目上はボディーガードです。
本当は、もう不要なんですけどね。
ボクはミドリの家へ向かいました。お迎え初日です。
そこでまた驚くわけです。いや、今度はいい意味で。
しかも、天使の輪を装備した綺麗な黒髪。もちろん制服も普通に。
そして、照れながらボクを見るとモジモジしながら……
「似合ってるかな……」
もうね、キュンタヒです。ボク。
「山下さん達が帰った後で急に美容院に行きたいって言い出して
もう大変だったんだから」
「スゲー似合ってます。超カワイイです!」
ミドリは顔を真っ赤にして、相変わらずモジモジしてる。
なんだかキャラが変わってるし。
なんだか恥ずかしくて話ができません。
そのうち、ミドリから話を始めます。
去年の夏休みのことです。
みんなが、自分から離れていくのが怖かったから。
しかも夏休みに入って、仲直りしたハズのボクからメールの1本すら
来なくなっていたので、自分はもう嫌われてしまったのかもしれないと
落ち込んでいたのにと。
(この件は、つくづく面目ない……自分がヘタレだったばかりに……)
もう、どうしようもなくなったせいで、あんな風になってしまったとのこと。
彼女にしてみれば、中学の頃にそんな風になった時には、お義姉さんが
必タヒになって自分を庇い、支えてくれたことがあったから、今度も誰かが……
と無意識に思ったのかもしれない。
ことはできないと。
だから、自分が誰かを好きになった時には、いつかは伝えなければならない
ことだと、ずっと思っていたと。
彼女は、それを受け入れてくれる人としか付き合うことはできないと考えていたとのこと。
カナブン対策。やっぱり怖かったから。
オーケーしたらしい。
でも、すぐに手を出そうとする失礼な奴とは、二度と会わなかったと。
だから、結果として手当たり次第になったとも。
男遊びしてるようで
行 為はしてないと?
という申告です。追求はしません(笑)
――
そういう事情だから彼らとは、噂になっているようなことは
絶対になかったということを、ボクにだけは信じて欲しいと言われました。
そんなに必タヒな目で見ないでも、そこは全力で信じますよ。はい。
それは過去のことだから気にしないよ」
なんてカッコつけて言ったらスゲー怒られた。というか泣かれた。
「だから信じてって言ったのに……」
目にいっぱいの涙を溜めて言われてしまいました。反省。
なぜ最初からボクにカナブン対策をお願いしなかったのか、と尋ねてみると。
彼女は、ボクがきちんと告白してくれていたなら、何も問題はなかったのに
と拗ねた目で軽く睨まれましたね。
そうでした。告白どころか夏休みは、一度も連絡してませんでした……
すいません。
勉強のキャッチアップは、少々辛いものがありました。
でも、一生懸命がんばると言うんで、昼休みのPCルームを使って
一緒に勉強しました。
というか、ほとんどメカ夫におまかせ(笑)
コイツは、女性.性.まったくなかったせいで、至近距離で女子に
見つめられると、それがミドリでもまともに話ができなかったんですが
しばらくすると普通に話せるくらいまで成長しました。
志願があり、一緒に勉強するようになったんです。
ボクとミドリは部活があったんで、昼休みだけでしたが、彼らは放課後も
PCルームで集まっていたようです。
相手は、どちらかというと地味子さん系でしたがね。
でも本当にいい奴だし、イザとなるとヲタとは思えないくらい
頼もしいですから。
虹ヲタですか? まあ、それなりです(笑)
最近はボクとミドリ、虹ヲタ、メカ夫、そして地味子さん数名がひとつの
グループになってましたからね。
今年の学園祭は、楽しくなりそうだなとか思ってました。
やっぱり、色んなことがあって彼女が弱ってる時につけこむとかフェアじゃない
と思ってたんですよ。
だから、しばらく時間を置いて、彼女が元通り元気になったら決めてやるぞと。
わかります?
>>543
そうなんです。
――
ところが、これがいけなかった……
ある日、彼女からメールが到着するわけです。
「話がある。5時に校門で待つ」
愛想のないメールでした。なにか深刻な雰囲気が漂っています。
これは、誰か好きな男ができた様子だなと思ったです。
なんだか自分の肩がドヨーンと落ち込んだ気がします。
いかないので諦めます。
「遅くなって悪いな」
まだ約束の時間まで10分以上あるんですが、とりあえず
到着通知の第一声です。
ボクもドキドキしてました。
――
「いい……さっき来たとこだから」
彼女が力なく答えます。
上手くいかないなら寝る!
……
――
これって、正に1年半ほど前と同じ光景じゃないですか?!
ボクはもう逃げ出したくなりましたね。これから二人でファーストフード店へ
行って、ポテトと飲み物で小一時間話すんですよね。他の男のハナシを。
あ”ーもう勘弁してくれ……
赤い夕陽の風景にもかかわらずボクはブルーでした。
文字通りトボトボと歩き、ファーストフード店へ到着。
端の席を陣取りポテトと飲み物で準備完了。
ミドリの第一声。そして……
「私、好きな男の子がいるの……でも、どうしていいかわからなくて……」
ボクの心も同じですが……
――
ボクとしては、一番聞きたくなかった言葉でした
目の前が真っ暗になって、気が遠くなっていくのを感じました。
終わったです。すべてが……
ポツリポツリと話しています。
デジャヴどころではないですよね。ループですよループ。全く同じ光景を
体験したことがありまよ、ボク。
うぅぅ……
――
その場から逃げ出したい気持ちを抑え、気を取り直して挑むことにしました。
なぜなら、きっとこれが彼女からの最後の相談になると思ったからです。
視界の中で彼女が小さくなっていきます。なぜが歪んで見えてきました。
彼女を直視することはできなかったですけど。
前回の相談はグダグダになりましたが、最後の相談くらいは
きちんとしようと……うぅぅ……目から水が……
好きな子というのは、昔から友達として仲のいい男の子のこと。
自分は彼のことが好きだという気持ちに、つい最近ハッキリと気がついたと。
>>1が上手くいく、と信じたい
そうです。最後の1秒まで。
――
最近は彼と、なんとなくいい雰囲気まではいくんだけど、もう一歩を踏み出す
勇気がない。「好き」という肝心な一言が言えない。
だから今のままの関係を続けようと決めたんだけど、もう耐えられないと。
……
――
でも、もしダメだったら、友達ですら居られなくなるのかと思うと苦しくて
苦しくてどうしようもないとのこと。
実際、一言も話すことができない期間があって、その時はとても辛かったと。
その気持ちは痛いほど分かりますよ。だからボクも真剣に答えます。
「その気持ちはよくわかるよ……
でも結局はケリをつけないと先には進めないから」
まるで自分自身に語りかけるように。
友達として居心地がいいと思うなら、そのままの関係を続ければいい。
その時に心から祝福できるなら、その気持ちは本物。
もし、そうでないなら……友達であり続けたことを、きっと後悔する
ことになると。
どこかの博士の受け売りです。
ここまで言ってボクは我に返ったんです。
そうだっ! ボクも同じだと――
今、ここでボクが想いを伝えなければ彼女は相談内容の“仲のいい子”のところへ
行ってしまう。
そうなってしまったら、ボクはヘタレな自分を一生後悔することになる。
頑張ってます。当時のボク。
彼女は、急に改まったボクを見て驚いた表情ながら、コクリと頷く。
「今の話を聞いてさ……自分に重なったんだよね。
だからさ、相談途中で悪いんだけど、先にボクの話を聞いて欲しい。
その後で、そっちの相談内容の結論を決めてもらってもいいかな」
わーわー
――
ここまで聞いて、ミドリは俯いて黙ってしまった。ボクは構わず続けます。
「実はボクにも、同じように仲のいい子がいてさ。
もうしばらくは、友達でいようと思ってた。
でも……その子に好きな子がいるらしいと聞いて……
今、ここで伝えないと、一生後悔すると思ったんだ」
「……うん」
ミドリの目に涙が浮かんでいる。なぜだ?
返事はまだですがね。
――
「ミドリ……ボクはキミが好きな自分に気がついた
いや、これまで何年も気づかないふりをしていたんだ……
友達じゃなく、ボクの彼女になって欲しい」
額が汗でびっしょりだ。目の前の紙コップと同じ状態。
遂に! 言えました!
――
不思議なもので、告白というものは言い終えてしまうと非常にスッキリ
するもんだなと。
当時のボクもドキドキで
――
人生初の告白経験……
これまでのモヤモヤとした気持ちがウソのように心の中が透き通って
自分の心の底まで見通せる感じ。
もちろん回答が「ごめんなさい」だったら、それはそれで落ち込むだろうけど
このスッキリした感覚は、残ってくれると思ったし。いや、そう願っただけかも。
泣いているのか?
まさか笑っているんではないと思うが?
「△●※□■〜〜〜」
飛び込んできた。泣きながら何か言っている。
(ユーサクのバカ〜)と言っているように聞こえた。違うかもしれんが。
怒っているのか、悲しんでいるのかすら判断できない。
店中の注目が集まっているのを感じたけど、そんなことに構ってられる余裕はない。
やっぱり怒っているのか?
ダメなら、ひと思いに刹ってくれと思いましたね。
「相談……ユーサクのことだったのに……」
「え”?」
きましたー
――
そういえば、あまりにも似通った状況だなとは思ってたですが、そんなの冷静に
分析できる状態じゃなかったですから……しまった。早まったか。
「でも、嬉しい」
ミドリが笑顔に変わります。そして……
「返事はもちろん、イエスだよ」
まだ睫毛が涙で濡れてましたけど、それが余計に可愛かったです。
もう修羅場はないよな??
ありがとうございます。
でもその後、彼女にはしょっちゅう、からかわれることになります。
「告白したのは、ユーサクなんだからねー
どーしても私と付き合いたいって言ったから
付き合ってあげたんだからねー(笑)」
何かある度にコレを言われるわけですよ。そう、ずっとね。
次は、ちょっと進展した辺りを、短めに書いてみたいと思います。
おまけみたいなもんですが、基本的にデレデレなので、そういう系が
お嫌いな方は避けた方がいいと思います。