349:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:18:10.66 ID:SXx2AtTZ0
―― 第四部 豹変 ――

夏休みの間、ボクは部活と塾の夏期講習、そしてバイトで滅茶苦茶忙しかったです。
午前中は部活、昼飯もそこそこに塾へ、そして夜はバイト。
課題も信じられないくらいの量が出されるので、それを片付けるだけでも
毎日日付が変わるくらい机にへばりついてました。もうヘトヘトでした。

http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1349273445/
351:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:19:23.44 ID:SXx2AtTZ0
彼女のことは凄く気になるし、メールだけでもしたかったんですが
忙しいからと自分に言い訳をして、結局一度もメールしなかったです。
我ながら情けないくらいヘタレ。

350:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 01:18:57.01 ID:uC5k3G1T0
四部キター!

352:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:20:23.09 ID:SXx2AtTZ0
>>350
長いので、途中で落ちるかもですが、頑張ります。
――

そう言えば、ミドリからもメールも電話もなかったです。
彼女も忙しいんだろうなと、思ってたんですがね。

ところが……

353:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:21:35.81 ID:SXx2AtTZ0
新学期が始まって、ボクは愕然とすることになります。
もうね、本当に驚きましたよ。顎が外れるくらいポカーンとしたです。

なぜなら彼女の髪が、みごとな金髪に変わっていたから。

354:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:22:35.35 ID:SXx2AtTZ0
しかも服装は、遊び人キャラそのもの。

制服のシャツのリボンは無くギリギリまで開襟状態、加えて膝上何センチよ?
みたいな超ミニ、そして化粧はケバく、若づくりしたセクシー女優みたいでした。

355:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:23:23.89 ID:SXx2AtTZ0
驚きのあまり声の出ないボクの後ろにドスンと座ると、不機嫌そうに終始無言。
ボクとは目を合わさない。ボクは何か言おうとするんですが、全く言葉が出ない。
池の鯉のように、ひたすら口をパクパクするばかりです。

356:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:24:30.03 ID:SXx2AtTZ0
周囲が、ヒソヒソと騒がしくなったところに教師が慌ててやってきて
彼女は職員室へ連行されていったです。

357:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:25:31.17 ID:SXx2AtTZ0
ボクの部活以外の数少ない友達が、慌てて寄ってきました。

コイツらには1年前の件も、病院でのことも、映画デートの話もしてあって
休み中に何度も「今日、告れ!」「明日、告れ!」と突かれていましたから。

358:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:26:55.98 ID:SXx2AtTZ0
「何があったんだ?」

まず寄ってきたのが、二次ヲタ。
三次には興味がない、と常々豪語している悲しいピザ。
中学の頃からの数少ない友達の一人。去年のマネージャーさんの件も
ちょくちょくと相談していた奴。筋金入りのヲタだがイイ奴だ。

359:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 01:27:21.82 ID:tA6KMPQO0
その豹変が>1のせいなのか?いや続きを待つ。

360:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:28:59.45 ID:SXx2AtTZ0
>>359
この時点では、全く不明なんです……
ボクのせい……でも、あるようで、ないようで……
――

ゲーム(特にギャルゲー)とパソコン一般に詳しい。
工口ゲーとギャルゲーの違いを語りだしたら止まらない。それって違うのか?
悪いが今後、虹ヲタと呼ばせてもらう。

361:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:30:09.84 ID:SXx2AtTZ0
「なんかスゲーものを見た気がするぞ。おまえ何も知らないのか?」

こいつはメカフェチ。生き物には興味がないと宣言している。
機械モノをこよなく愛する変タイ。
虹ヲタとの部活繋がりで親しくなった奴。成績優秀。イケメン。

362:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:31:11.77 ID:SXx2AtTZ0
好みのタイプは“美少女型アンドロイド”らしい。
よく知らんが名前もついているみたいだ。バカだし……
僻地から通学してるせいで、正式にバイク通学が認められている羨ましい奴。
今後、メカ夫と呼ぶ。

363:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:33:04.89 ID:SXx2AtTZ0
ボクは驚きで言葉を失っていて、もう気絶しそうなくらいでした。

そりゃそうでしょう、人生初の楽しいデート相手であった美少女が
一瞬にして見事な遊び人キャラに変身したわけですから。

364:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:34:17.91 ID:SXx2AtTZ0
だから、落ち着いてからゆっくり話そう、ということになり昼休みに奴らの
所属するパソコン部の部室に集合することにしました。

部室と言っても授業で使うパソコンが並ぶ、ただのPCルームです。
専用の部室じゃありません。

365:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:35:20.17 ID:SXx2AtTZ0
このPCルームでは、虹ヲタのせいで何度冷や汗をかかされたか分からない。

壁紙が工口グロ画像とかは当たり前で、
エラー音が『お兄ちゃん、やめて!』だったり
いつの間にか全端末にチャットソフトがインストールされて、授業が
チャット大会になったこともあった。

366:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:37:03.78 ID:SXx2AtTZ0
そんなバカ話は、さておきミドリの件。
二人ともボクに気を使っているのか、非常に言いにくそうに話を進めるけど
要は「男ができたから諦めろ」と言いたいらしい。

367:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:38:27.14 ID:SXx2AtTZ0
ボクだけは希望的観測を含めて、ちょっと違う気がしてました。

もし彼ができたのなら、不機嫌な理由が分からない。
少なくとも夏休み中にできた彼なら、今はラブラブの真っ最中だと思うわけで。
ボクの知ってる彼女は、そんな子だったハズだから。

368:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:39:20.00 ID:SXx2AtTZ0
そういうと、三人とも考え込んでしまった。

男三人で話していても埒があかないということで
とりあえずメールしてみようとなったわけです。
……返ってきたのはデーモンでした。またかよ。

369:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:40:02.10 ID:SXx2AtTZ0
それじゃあ電話してみようとなった。
……着拒否。こっちもか。

それならと虹ヲタの携帯を借りて掛けてみた
……出ないし。

370:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:40:57.16 ID:SXx2AtTZ0
結論としては、理由は不明だけど完全に嫌われたんだろう
ということで落ち着きました……(合掌)

371:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 01:41:39.09 ID:EnRze/Yt0
明日休みだから最後まで付き合うぞ!

372:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:42:11.96 ID:SXx2AtTZ0
>>371
ありがとうございます。
――

生徒指導の成果なのか、その後の彼女の髪は金髪から汚い茶髪に変わってました。
ギリギリ通学可能な範囲の色に落ち着かせたんでしょうね。
短期間に染めを繰り返したせいか、なんだかバサバサで纏まりがなく
とても残念な感じ。

373:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:43:05.43 ID:SXx2AtTZ0
相変わらず不機嫌な黒いオーラを360度、全方向に発散していて近寄り難かったし。

それでもボクは勇気を振り絞って、毎朝というか彼女が登校してくれば
たとえそれが昼でも「おはよう」だけは言ってましたよ。

当然、何の反応もないんですが。

374:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:44:54.89 ID:SXx2AtTZ0
そのうちに、次の変化が現れることになるんです。

彼女が、校内でも面倒なグループと言われる男と次々と付き合っていく
ことになるわけです。これは悲しい。非常に悲しい。

元がカワイイ子ですからね。狙ってた輩は多かったんですよ。
弱っているところを狙うとか許せんですが……

375:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 01:45:54.34 ID:SUP7ftQ20
きっついな
でも分かるぞ

376:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:47:08.74 ID:SXx2AtTZ0
>>375
もう泣きそうでしたよ……
――

しかも、どれも長続きせず、次から次へと手当たり次第といった状態……
“食い散らかす”という表現がピッタリなわけでして。

こうなるとクラスだけじゃなく、校内でも有名になり始めて、
皆が彼女のことを「糞遊び人キャラ」とか「サセ子」とか言うようになってましたね。

まあ、実際見た目も行動もその通りだし……

377:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:49:03.44 ID:SXx2AtTZ0
そのうち「兄弟にはなりたくねー」とか「病気とか、もらったら堪らん」とか
「メンヘラとか怖いじゃん」と校内で彼女を相手にする男はいなくなりました。
当然ながら女子も怖がって近寄らない。

そして彼女は、孤立していくんです……

378:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:49:59.91 ID:SXx2AtTZ0
噂はさらに加速し、高校生では物足りなくなりカネを持ったオッサンと
遊んでるとか、A∨に出演したらしいとか、薬漬けでヤ●ザのオンナになった
なんて話もあるくらいなりました。

379:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:51:06.32 ID:SXx2AtTZ0
さすがにこうなると、ボクの友達も「アレは黒歴史だ。忘れろ」と直接的に
彼女を諦めるように言ってくるように、なっていきましたね。

コイツらが彼女の悪評を知りつつも、その内容を言わないでいてくれるのは
こんな状態でも、ボクに気を使ってくれているからでした。

380:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 01:51:17.93 ID:xNrhXI0M0
女ってこういうのがあるから解せぬのだよなー
そしてこういうことする子に限って素直じゃないと来たもんだ

381:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:52:59.58 ID:SXx2AtTZ0
>>380
そう解せないんです。理屈じゃないみたいですから。
――

そして遂に、彼女は学校にすら来なくなるわけです。

たまに来ているような気配はあっても、クラスには顔を出さないし
授業も出ない。

382:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:53:48.36 ID:SXx2AtTZ0
だからボクも、さすがにもうダメだなとか思い始めたんです。

ところがある時、珍しくクラスに顔を出してボクの後ろに座る彼女の左手に
気づいたんですよ。

383:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:55:14.19 ID:SXx2AtTZ0
なぜかその日までは分からなかったんですが、確かにあの指輪があることに。
しかもあの時のまま、薬指に……

だからボクは……やっぱり彼女には何か辛い事情があるんだ!
とか考えるようになったんです。

384:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:56:23.16 ID:SXx2AtTZ0
それでまた虹ヲタと、メカ夫に相談したわけです。指輪のことも話して……

「おまえなあ、頭大丈夫か?」 虹ヲタが心配そうに言います。

「悪いことは言わん。やめとけ」 メカ夫が諭すように言います。

「今さらあの遊び人……いや、彼女に近づいてどうするよ?」

虹ヲタはさすがにイラっときたのか、暗黙の禁止用語を
うっかりと言いそうになってました。

385:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:57:53.91 ID:SXx2AtTZ0
「おまえが仲の良かった頃とは違いすぎるぞ。
 もう幻想を捨てて現実を見ろよ」

メカ夫も呆れたように続けます。もう全否定モード。

「でも、見てられねーじゃん。いっつも一人で……
 なんかあるんだよきっと。カワイそーじゃん」

ボクも必タヒでした。コイツらには分かって欲しかったんです。
たとえ協力してもらえなくても、コイツらには理解して欲しかったんです。
彼女を……

386:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:58:56.89 ID:SXx2AtTZ0
「おいおい、マジですかぁ〜?」

肩をすぼめながら両手を天に向けて“やれやれ”という仕草を揃って
しながら、生暖かい目でボクを見つめる二人。
とか言いつつ、二人とも真剣に考えてくれることになりました。
やっぱり友達はありがたい。

387:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 01:59:42.36 ID:SXx2AtTZ0
さて、考えるとは言ったものの何も浮かばない。

すると虹ヲタが、何だか怪しげな推理を展開し始めました。
手詰まりのボク達は、今は怪しさ満載の彼の推理に耳を傾けるしかありません。

388:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:00:11.31 ID:SXx2AtTZ0
「きっと、どこかでフラグが立ったということだよね」

「フラグ?」 ボクとメカ夫が怪訝そうに繰り返します。

「映画を観に行って、指輪を買わされたところまでは
 問題なかったんだよね?」

虹ヲタは構わず持論を展開していきます。

389:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:01:06.50 ID:SXx2AtTZ0
「なら、その周辺になにか選択肢があったハズ。
 おまえは“Bad Endルート”を辿ったんだよ」

「選択肢……? ないなぁ。彼女に言われた通り、動いただけだし」

ボクは、正確性.自信のない記憶を辿りながら答えます。

390:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:02:21.08 ID:SXx2AtTZ0
「じゃあ、環境変数だ。彼女の心境に変化を与える何かがあったハズだ」

コイツ……完全にギャルゲーとして考えてやがる。
でも、今はコイツしか頭を働かせてないから仕方ない。

「そういえば……気のせいかもしれないけど」

ボクは映画の一件よりも、更に古い記憶を辿ります。

391:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:03:11.15 ID:SXx2AtTZ0
「なになに?」 二人が食いついてくる。

「彼女の家の前に、変な色のスクーターが停まってたことがあって……」

「それで」 話を聞く前からこれが原因、と決めて掛かりつつある様子の二人。

「そのスクーターを見た彼女が、急に黙り込んだことがあったんだ」

392:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:04:27.80 ID:SXx2AtTZ0
それは夏休み前のことでした。いつものように彼女を家まで送っていくと
いかにも柄の悪そうな目立つスクーターが停まっていたんです。

オーナーらしき人影は見えなかったんですが、彼女の顔がみるみる曇り
黙り込んでしまったわけです。
その時は「おや?何だろ?」くらいにしか考えなかったんですけど。

393:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:05:53.59 ID:SXx2AtTZ0
「……むぅ、そのスクーターってカナブン色みたいなやつ?」

機械モノの記憶については
コイツの右に出る者はないメカ夫が言います。

「そうそう、ラメ入りグリーンみたいな色」

ボクの記憶はいつも曖昧ですが、さすがにカナブン色のスクーターは
しっかりと記憶に残ってました。

394:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:07:04.12 ID:SXx2AtTZ0
「それなら、オレも学校の周りで何度か見かけたな。結構弄ってるヤツ
 だったから覚えてる」

さすがメカ夫だ。ノーマルではないところまで覚えてるらしい。
というか、あのカラーリングで、ドノーマルってことはないわな。

「……それだな」 虹ヲタが満足そうに頷きます。

395:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:08:01.04 ID:SXx2AtTZ0
虹ヲタの推理では、そのスクーターのオーナーと彼女には何らかの
接点があり、彼女はそれを好ましく思っていなかったんだろうとのこと。

その件は、きっと学校では知られたくないレベルの話ではないかとの推理。

396:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:08:58.43 ID:SXx2AtTZ0
というわけで、メカ夫が知り合いのショップ経由でカナブン色のスクーターを
追いかけてくれることになった。なんでも、あれだけ弄ってるならどこかの
ショップに頻繁に通ってるハズだ、という読みでした。

397:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:10:14.32 ID:SXx2AtTZ0
何日かして、メカ夫がニヤニヤしながらやってきた。
カナブン号は読み通り、簡単に見つかったとのこと。
なんでもオーナーは、○○中学の卒業生で現在は高校を中退して何か
日雇いのような仕事をしているらしいとの情報だった。

面倒な輩が出てきたなぁ〜、というのが正直な感想でした。

398:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:11:21.78 ID:SXx2AtTZ0
メカ夫がカナブン号を追いかけてる間、虹ヲタはミドリの過去を洗っていた。
彼女と同じ中学出身の同級生から、知り合いの元教師、果ては親同士の
ネットワークにまで食い込んで調査してくれたらしい。
お前、卒業したら探偵事務所でも開設したらどうだ?

そこで分かったことは、噂を含めて次の通り。

399:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:12:43.13 ID:SXx2AtTZ0
まず、彼女は中学の一時期、転校してくる前に荒れていたことがあったこと。
次に、父は再婚しており、義母の連れ子の義姉がいること。
そして、義母とは折り合いが悪いらしく、現在は義姉と二人で暮らしていること。
最後に、義姉とは非常に仲が良く、二人で外出しているところをよく目撃されていること。

400:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:13:57.90 ID:SXx2AtTZ0
ここまでの調査で、カナブンと彼女の接点が分かりました。
転校前の中学が同じでした。
ボクは、さすがに彼女の転校前の状況は知らなかったです。
それどころか、お義姉さんと住んでる、なんてことも初めて知りました。
彼女とは4年くらい近くに居たわけですが、そんなことは全く知らなかったですよ。
うぅぅ……

402:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:14:44.23 ID:SXx2AtTZ0
そこで、ボク達三人が想像したストーリーは次のようなもの。ありきたりですが。

親の再婚
 ↓
義母と折り合い悪し
 ↓
娘荒れる
 ↓
不良グループへ
 ↓
更正して転校
 ↓
高校入学
 ↓
昔の仲間登場
 ↓
再び荒れ始める ← 今ココ

403:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:15:55.18 ID:SXx2AtTZ0
となると、昔の仲間とやらを何とかすればよいのでは? なんですけど。
ここで三人は悩むわけです。
サッカー小僧とピザとメカヲタのトリオでカチコミとか、ありえんわけですよ。
ヘタすりゃ命だって危ない気がするじゃないですか。

404:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:16:43.46 ID:SXx2AtTZ0
ボクはさておき、あとの二人は縁もゆかりもナイ女子のために命は
張れませんですよ。
いや、ボクだってそこまでの覚悟はないかもです。すいません。

405:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:17:36.08 ID:SXx2AtTZ0
そこで、とりあえずカナブンは置いといて義姉に接触をして事情を聞こう
となったわけです。
もし、どんな形であれ、今はカナブンと、よろしくやってるのだとしたら
ボクの出る幕ではありません。まったく余計なお世話でしょうし
馬に蹴られてタヒねるレベルです。

406:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 02:18:33.99 ID:tA6KMPQO0
トリオ、かんばれ。って感情移入しちゃうね。

409:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:20:49.47 ID:SXx2AtTZ0
>>406
立派な、ダメンズなわけでして……

407:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:18:36.34 ID:SXx2AtTZ0
それに、趣味の悪いスクーターのオーナーとかって、なんか物騒な感じがする
じゃないですか……すいません。ヘタレで。

とは言うものの、義姉の歳がいったいいくつなのかも知らないし
学生なのか仕事をしてるのかも分からない、そういえば、ボクはミドリの
家の場所は知ってても、電話番号は知らないんです。

409:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:20:49.47 ID:SXx2AtTZ0
というわけで、彼女の自宅を急襲、いやノンアポで訪問することにしました。
時間は彼女が家にいない時間の方がいいかと思って、まず金曜の午後
授業はサボりました。一度目は空振りです。

次は月曜日の午前。二度訪問の訪問です

410:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 02:22:52.95 ID:Wf7Czp0K0
やっと追いついた
がんばれー

411:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:24:10.02 ID:SXx2AtTZ0
>>410
ありがとうございます。
――

ボク達三人は、制服のシャツをパソツにピッタリと入れて
全ボタンを締めて、ネクタイを首まで上げたサラリーマンスタイルで
彼女の家の玄関前に立つわけです。

「ピンポーン」 緊張の一瞬です。

「はぁ〜い」

インターホン越しに若い女性.声。

412:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:25:04.18 ID:SXx2AtTZ0
ボク達三人は「居たっ!」と喜びと緊張の混じった感覚で
小さくガッツポーズです。
この瞬間に「もう戻れないぞ!」と思ったのを覚えてます。
いわゆる「賽は投げられた」状態です。

413:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 02:25:54.10 ID:C7IGUuFI0
おもしろいです

頑張れー

414:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:27:13.92 ID:SXx2AtTZ0
>>413
頑張りますー
――

「こんにちは。○○高校二年○組の山下と申します。
 妹さんの件でお話したいことがあります」

事前に何度も練習した言葉を噛まないように、マイクに向かって一気に話します。
ここで怪しまれては先に進むことができません。

415:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:28:53.20 ID:SXx2AtTZ0
「……今、開けますね……」

玄関に現れたのは、心配そうな表情の女性.した。
ボク達は、さっきインターホンに向かって言ったことと同じ内容のことを
言いました。大事なことなので2回言ったわけではありません。

416:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:29:50.24 ID:SXx2AtTZ0
すると女性.、ここでは話がしにくいので近所のファミレスで
待っていて欲しいと言うと、家の奥へと消えていきました。

指定されたファミレスで待つこと約30分、先程の女性.現れました。
ボク達三人は直立してから90度の礼でお迎えします。百貨店の店員並だし。

417:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:31:08.58 ID:SXx2AtTZ0
不安げな表情の女性.自己紹介をしてくれました。

「はじめまして、ミドリの姉の○○です」

普段はダラダラしてる3人ですが、この時はできるだけ好印象を与えようと
いつもの3割増くらいの気合で話します。面接の要領です。

「ミドリさんと同じクラスの山下、虹ヲタ、メカ夫です」

418:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:32:30.27 ID:SXx2AtTZ0
「妹のことでは、ご心配をお掛けしてすいません」

本当に申し訳なさそうに、お詫びをする女性.
そんなに謝られたら困ってしまいます。別に彼女がボク達に
迷惑をかけたわけじゃないですし、今の状況だってボク達、いやボクが
勝手にやってて、残りの二人は渋々つき合ってくれてるだけなんですから。

419:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:33:07.71 ID:SXx2AtTZ0
虹ヲタとメカ夫は、黙ってこっちを見る、
どうやら、ここから先はボクのターンらしいです。
ボクは相当テンパっていたので、何をどう説明したのか覚えていないです。

420:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:33:58.48 ID:SXx2AtTZ0
それよりも、まず自分がいったい何をしたいのかが
自分でもよく分かっていなかったから。
でも、内容は伝わらなかったかもしれないけど、必タヒさは
伝わったんじゃないかと思います。

421:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:35:06.57 ID:SXx2AtTZ0
「あなたが山下さんだったんですね。妹からよく話を聞いてましたよ。
 中学の頃からね。そういえば夏休み前かな、あの子、その頃すごく
 楽しそうだったんだけど……」

非常に辛いところから話は始まりました。
そこを突かれると、ちょっと心が痛いです。

422:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:35:58.81 ID:SXx2AtTZ0
なんだか気まずい雰囲気が漂い始めたんですが、ボクは三人で
事前に打ち合わせたシナリオ通りに進めます。

「彼女に何があったのか、ご存じないですか?」

直球勝負です。

423:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:36:44.92 ID:SXx2AtTZ0
お義姉さんからは一瞬の間を置いて、一見関係のないような言葉が出てきました。

「実は私、来年結婚するんです」

「はい……?」

話の流れが掴めず戸惑い、顔を見合わせる三人。

「私、あの子と二人で住んでるから、あの子一人になっちゃうのよ」

その言葉で事情が分かりました。
そうでした、この姉妹は二人で住んでいたのでした。

424:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:37:41.48 ID:SXx2AtTZ0
「それが悲しいと(ああなるのか?)」

ボクは言葉の後半部分を飲み込んだ。

「それを伝えたのが、ちょうど夏休みだったかな。
 あの子ショックだったみたいで……それと……」

お義姉さんは、言っていいのかどうか躊躇う様子。

425:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:38:34.08 ID:SXx2AtTZ0
「彼女の昔の仲間のことですか?」

ボクは思い切って言ってみた。この辺が核心になりそうだったので。

「……そう、知ってるんだ……」

お義姉さんは、ポツリポツリと噛み締めるように説明してくれました。

426:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:39:46.13 ID:SXx2AtTZ0
妹、つまりミドリは、父の再婚をきっかけに荒れていた時期があったこと。
(荒れていたといっても、派手な格好で、似たような子が集まった
 グループに居ただけとの説明です)

427:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:40:09.29 ID:SXx2AtTZ0
義母との折り合いが悪いせいで、今は両親とは別居状態であること。
妹の前に現れたのは、たぶん荒れていた時期の仲間だと思うけど
転校後、昔の仲間とは全く付き合いがなくなっていること。

428:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:41:04.72 ID:SXx2AtTZ0
だから、そいつにしてもス㋣ーカーみたいに付きまとっているだけで
妹も困っているハズだと。

ボク達三人は、まだ釈然としない表情だった。

今の説明を聞いても、彼女が華麗な変身を遂げた合理的な説明が
つかなかったから。

そして、お義姉さんは続けます。

429:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:42:08.74 ID:SXx2AtTZ0
「あの子、ひとりでスゴく不安なんだと思う……中学の頃も……
 お父さんの再婚からあんなふうになっちゃったし……
 たぶんだけど……あの子、一人になりたくないんだと思う。
 だから、誰かに助けて欲しかったんじゃないかと思うの。
 夏休みの間もずっと山下さんからの連絡を待ってたみたいだったし」

この言葉を聞いて、三人がビクッと固まります。ボクは頭を抱えます。

430:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:43:05.81 ID:SXx2AtTZ0
虹ヲタとメカ夫の目が痛い。どうやらボクは彼女に期待させるだけ
期待させて肝心な時に逃げてしまったことになっているようです。
しかも、絶望まで与えてしまった様子。

431:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:44:04.31 ID:SXx2AtTZ0
激しく落ち込むボクと、それを責める視線の二人を見て
お義姉さんは慌てて言葉を続けます。

「違う違う、山下さんを責めてるわけじゃないのよ。
 私がいけないんだから……今回は、私が居なくなることが凄く不安
 なんだと思うの。
 そこに、現れて欲しくない昔の仲間が現れたりしたから、あの子は
 もうどうしていいのか分からなくなって……」

432:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:45:00.38 ID:SXx2AtTZ0
それで、転校前の頃みたいになってしまったと。

その時は結果として、お義姉さんが自分を救ってくれたという一種の
成功体験みたいなモノが、彼女の深層心理にあるのかもしれない。

ということは、今回も誰かが彼女の前に現れて彼女を絶望の淵から
救ってあげないといけない。それがボクでいいのか……?

433:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:45:59.42 ID:SXx2AtTZ0
重い空気が4人を包んでいる。虹ヲタとメカ夫の目がボクに
鋭く刺さっている。痛い。
彼らの目は「お前が悪い」という非難の眼差し。

434:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:46:48.23 ID:SXx2AtTZ0
そうだろうな、彼女が一番助けを必要としていた時期にその期待を
裏切って逃げ回ってた奴が、誰あろうボクなんですから。

でも、言い訳をさせてもらえるなら、ボクはその辺りの事情を全く
知らなかったわけで……

435:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:47:38.86 ID:SXx2AtTZ0
知ってたら、絶対に彼女を助けに行きましたよ。
逃げたりなんてしません。たぶん……

沈黙に耐えられなくなった虹ヲタが、口を開きます。

「お義姉さん、大丈夫ですよ。
 妹さんのことは“コイツ”に任せてください」

って、えっ? ボク? ですか?

436:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:48:24.59 ID:SXx2AtTZ0
メカ夫が続きます。

「そうですよ“コイツ”なら絶対に妹さんを元気な姿に
 戻せますから。もちろん、ボク達も手伝います」

やっぱり、ボクなんですよね?

437:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:49:27.04 ID:SXx2AtTZ0
自信満々で無駄に力強い言葉を聞いて、お義姉さんは安心したような
不安なような複雑な表情をしてました。

あと一押し、ボクの決意表明があれば、その表情が少しだけ安心側に
振れそうな雰囲気なんですが……

439:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:50:16.55 ID:SXx2AtTZ0
基本的にヘタレなボクは、なかなか言葉が出ないわけです……

もう友達二人は怒りの目になってます。爪でテーブルをカチカチと
叩き始めています。テーブルの下で足も踏んづけてきました。

438:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 02:50:07.05 ID:SUP7ftQ20
うむ、頑張って欲しいわ

440:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:51:14.33 ID:SXx2AtTZ0
>>438
もうちょいで頑張れそうです。
――

『いい加減、覚悟を決めろ!』という声が聞こえてきそうな目と
態度だったです。
お義姉さんはというと、期待と不安に満ちた目でボクを見つめてます。
三人の視線に後押しされて、ついにボクはその決意を口にすることに
なります。

441:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:52:21.91 ID:SXx2AtTZ0
「ボク、彼女を助けたいんですっ!
 余計なお世話かもしれないけど……」

「山下さん……」

お義姉さんの顔が一瞬、輝いたように見えました。

決意表明、所信表明演説、なんでもいいから更に続けます。

442:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:53:12.08 ID:SXx2AtTZ0
「今日は、お義姉さんにそれを伝えたくて会いに来たんです。
 だから……彼女にもう一度笑って欲しいから……
 精一杯やってみますっ!」

虹ヲタとメカ夫が大きくうなずき、テーブルの下で拍手したように
見えました。

443:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:54:04.51 ID:SXx2AtTZ0
お義姉さんは、号泣状態でボク達三人の手を取って喜んでくれました。
あの子をよろしくお願いしますと、深々と頭を下げて帰っていきました。

言っちゃったよな……こりゃ責任重大だぞ……
他人の人生背負っちゃった感じだし。
ボクと二人の友達は自分達の発言の重さに、かなりビビッてました……

444:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:55:25.96 ID:SXx2AtTZ0
切りのいいところまで投下できましたので
続きは明日ということで、お願いいたします。

それでは、おやすみなさい。

445:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 02:56:36.67 ID:SUP7ftQ20
乙!
明日も読みます

446:バース ◆H0fjJ5ft/U2012/10/06(土) 02:59:07.79 ID:SXx2AtTZ0
>>445
長時間お付き合いいただき、感謝です。

明日も来るのは、夜になると思います。

447:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 03:02:39.49 ID:NjIAP5/G0
乙!
まってます

449:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 03:08:06.46 ID:i4WRybBa0
乙でした!
昨日も寝不足で今日も寝不足だ…

451:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 03:24:17.45 ID:EnRze/Yt0
お疲れ様です!話の中に引き込まれるわ

452:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 03:55:50.61 ID:KYIfwysz0
読みやすいよ 明日も待っている!

455:名も無き被検体774号+2012/10/06(土) 05:10:47.90 ID:lVqNYC2t0
独特の文体で読ませるな〜。
癖になりそうw

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