しかし俺の肩に乗っている頭のことを考えると、のどがカラカラになって何も出てこない。
俺「・・・」
NMB「・・・」
俺「あの・・・さ・・・」
NMB「フフッ、どしたん?」
俺はとんでもない量の勇気を振り絞った。
そしてついに
俺「あの・・・好き・・・で・・・す」
NMB「・・・?」
俺「その、NMBが・・・好き。」
俺「好き、だよ・・・?」←完全に調子に乗っている。
っしゃあ!言ったあぁ!
さあ、あとは向こうの「あたしも」を待つだけだ。
どうやってその後に持ち込もうか・・・
いまDはどこにいるのだろうか・・・あいつにも伝えなきゃ・・・
NMB「・・・っ、ごめん。私そういうの無理なんだ」
俺「!?」
そういうとNMBは立ち上がり、虚を突かれた俺を尻目に、
NMB「じゃあまたね」
と呟き部屋から出て行った。
俺の恋がまた一つ終わった。
-NMB編・終了-
目も合わせてくれない。
しかし周りの友達は、別室に移動したDから、俺が何をしようとしてたかが筒抜けになっており
「おめでとうwww」
「脱童おめ」
「こんど俺にも色々為教えてくれよ」
などと散々言われ、その度に機嫌が悪くなっていった。
そんな俺を見て、NMBは俺から離れていった。
廻りは、「照れるなよ~」と囃し立てるデフレスパイラル。
「オペレーション・脱トモダチ」は、成功した。
逆ベクトルで。
それはDの事だ。
Dは着実に修学旅行のアクティビティで一緒なのをいいことにともちんといい感じになっていた。
俺は自分のことに必タヒにだったし、Dも聞かれないと自分のことを話さないタイプの人間だ。
そのため、Dとともちんが付き合いそうになっていることなど俺には知る由もなかった。
D「あ、おれともちんと付き合えるかもしれない。っていうか、付き合えそう?みたいなwww」&nbsnbsp;
・・・
数日前までの俺なら、心から祝福していたかもしれない。
が、俺はキレた。
俺「お前さ」
D「ん?」
俺「俺が振られたっていうのに・・・よくそんな事が言えるもんだなあああ!!!」
俺は心のどこかでDがいつもの調子でおちゃらけて返してくると期待していた。
しかし
D「・・・うるせーよ、お前に関係ないだろ」
俺「お前・・・お前、分かってんのか?」
D「なにがだよ」
俺「お、おま、お前がともちんと付き合うっていうことは・・・俺と・・・ぜ、絶交するってことだからな」
D「は?お前何言ってんの?」
そこで俺は、また余計な事実に気づいてしまった。
Dの右腕に、ともちんがいつも右腕につけているミサンガがついていることに・・・
そして俺はさらに逆上した。
今日は最終日といえど、帰路につくだけだ。
機嫌がとんでもなく悪かった俺は、NMBとも、Dともシカトし合いながら、大型バスに乗り込む。
修学旅行用チェックマークシートは宿で破って捨てた。
途中のSA休憩でも、Dとも、NMBとも無視し合っていた。
俺は「最近ちょっとちゃらちゃらしすぎた。俺は硬派に一人で生きていくのが似合ってたんだ」と、今後また、一人で過ごす決心を固めていた。
Dが近づいてきた。
俺「・・・」
D「やっぱ俺、ともちんと付き合う」
俺はDをぶん殴った。
Dはなんとも言えない、勝ち誇ったような、さびしそうな顔をして、Dがともちんのいる女子グループの方に歩いて行くのが見えた。
Dがともちんに話しかけて、ともちんを外に連れだすのが見えた。
女子グループが囃し立てる中、二人は外に出て行き、見えなくなった。
紙コップの底にたまった砂糖はどんなにコーヒーをかき混ぜても溶けなかった。
その日、Dはともちんに告白し、二人は付き合い出した。
その場のテンションで「絶交だ」なんて言っていたが、本気でそう思っていた訳ではない、
と帰りのバスで思い直した俺は、地元に戻ったあと、Dに謝り、Dも俺に謝り、前みたいに普通に話をするようになった。
ともちんは、Dと付き合うことになった直後、Dが俺に絶交だと言われた話を聞かされており、そのことについてとても心配していたそうだ。
ただのバカっぽい子かと思っていたが、なんだ、いい子じゃないか。
ともちんと俺はDと付き合うまではあまり話したことなかったのだが、案外いい子で、3人で遊んだりするような仲になった。
NMBとの事にも踏ん切りがつき、また俺に新しい好きな人ができたのは落ち葉が目立ち始める高2の秋だった。
俺はこの優ちゃんを今度は好きになっていた。
理由はよく覚えていないが、修学旅行のあとから、座る席が近くなったこともあってよく話すようになった。
優ちゃんはとっつきにくいと思っていたが、話してみると意外に共通の趣味があったりして、話が盛り上がった。
NMBみたいに男慣れしていないところも好印象だった。
俺は当初、NMBの邪魔をする優ちゃんが嫌いだったが、Dは当時から「えー、いい子じゃん」と言っていたので、俺が「優ちゃんを好きになった」と言った時の彼の目は色々言いたそうだったが、「いーんじゃね?」と言ってくれた。
優
蒼井優にちょっとだけ似てる。
女の子っぽい服装をしているところを見たことがない。
NMBとの数々の接触の中で、俺の中の「女子苦手意識」がなんとなく払しょくされて、女子とも気軽に話せるようになっていたのだ。
俺は、今度こそ優ちゃんと、ちゃんと仲良くしようと試みて、着実に、一歩一歩進もうと決意した。
ストーキングや、チェックマークシート制は廃止された。
しかし優ちゃんはなんともとらえどころのない子で、何を考えているのか、そもそも恋愛に興味があるのか、そういうことが全く分からない子だった。
これまで「恋愛大好きっ!」な女子に極限まで振り回されていた俺は、優ちゃんに癒されつつ、その一方で優ちゃんの本音を知りあぐねてモヤモヤしていた。
みぃちゃんは優ちゃんと仲が良かったので、俺はみぃちゃんに「優ちゃんが好き」ということを打ち明け、協力してもらうことにした。
これもそれも、NMBにキープにされていた間に身についたコミュ力のおかげである。
スペック
みぃちゃん
AKBの峯岸みなみの初期の頃に似ている
優ちゃんとは仲がいいが、女子全体の中ではなんとなく浮いている
これは、「優ちゃんは恋愛には興味がない」と思っていた俺に多大な衝撃を与えた。
が、話はそれだけにとどまらなかった。
Dとの放課後会議を重ねていく中で、それが俺の大嫌いな、一つ下の学年にいる、雰囲気イケメンのRなんじゃないかという疑惑を持った。
好きな人がいるのはいい、年頃だ、そういうこともある。
しかしそれがあの雰囲気イケメンの代表格みたいな中身スッカラカンのRだなんて、正直優ちゃんのセンス、人格を疑った。
俺はひどく失望した。
今思えば、好きな人のことを、他の女子に相談できるとか、とんでもない贅沢であるが、当時の俺にそんなことはわからない。
あくまで日常の一風景である。
俺【優ちゃんに好きな人がいるっぽい、もうだめだ・・・】
みぃちゃん【えーっ、そうなの?本人何にも言ってないけど、どうしてわかったの!?】
説明する俺。
みぃちゃん【うーん、でもそれってまだわかんないじゃん】
俺【いや、もういいんだ。たぶん間違いないんだ。】
みぃちゃん【そっかあ】
俺【うん・・・】
みぃちゃん【そっか・・・】
俺【・・・ところでさ、みぃちゃんって好きな人いないの?】
みぃちゃん【え?!あたし?なんでそんなこと聞くの?】
俺【いや、なんか気になって。】
俺【なんか前に俺のこと気になったかも、みたいなこと言ってなかった?】
俺【あれ?俺のこと好きなの?】
実際このようなやり取りはあった。けど当時の文脈的には、恋愛相談の中で、意外な俺君を知れて興味湧いた、程度の事だったと思う。
みぃちゃん【・・・んー、なんか相談に乗ってたらそういう風に思ったかもだけど、】
みぃちゃん【別にそーゆーのじゃないから!】
そして俺こと柳沢敦は、急にボールが来てもないのに間違った方向にシュートしてしまう。
俺【でもさ、俺も優ちゃんとは終わったし、みぃちゃん、もし良かったら俺と付き合おうよ】
みぃちゃん【・・・ほんとにいいの?】
だった。
俺【うん、よろしくね】
ということで、意外な方向で俺に初めて彼女ができた。
-みぃちゃん編 始動-
D「まぁよくわかんねぇけどいいんじゃね?」
と言われた。
なんだよこいつ、つれねえなぁと思いつつ、おれは早速メールでみぃちゃんと明日の「放課後デート」の約束を取り付けた。
そのメールを見返しているうちに、どんどんみぃちゃんの事が自分の中で大きくなっていき、窓に向かって「俺・・・みぃちゃんが好きだ」とか言ってた。完全に浮かれていた。
その夜、俺の枕への「キス練習」は深夜にまで及んだ。
俺、彼女持ちなんだ・・・
そう思っただけで、足取りも軽かった。
学校に行くと、クラスにはみぃちゃんもいて、なんとなく二人でそわそわしてしまうのが初々しいな、なんて思いながら授業を受ける。
もちろん優ちゃんも同じクラスだから時々視界に入る。
目が合いそうになったが、逸らした。
ふっ、過去の女め。やれやれだぜ。
俺はもう先の未来へいっちまったんだぜ。あでぃおす、ちゃお。
彼女持ちの俺は、華麗に板書を決める。
・・・
あれ?
なんだろう、この心のモヤモヤは・・・
彼女がいるのに、大好きなみぃちゃんと付き合ってるのに・・・
このモヤモヤは、さっき優ちゃんと、目をそらしてからだ。
・・・?
ちょ、ちょ待てよ自分、俺はみぃちゃんと付き合ってるんだし、優ちゃんはあのくそみたいなRが好きなんだぞ、忘れちまえよ。
結局その日の授業は何も頭に入らなかった。
俺は
俺は
やっぱ優ちゃんが好き・・・かも?
俺「やっぱ俺・・・優ちゃんが好きかも?いや、好きだわ。でもみぃちゃんと付き合ってるし・・・どうしよう。」
D「じゃあみぃちゃんと別れて優ちゃん狙えよ」
こいつはこういう当たり前のことを、抜群のタイミングで言う。
そうだ、俺は優ちゃんが好きなんだ。
しかし俺は皆さんの想像以上のクズ人間なので
俺「ま、とりあえず、みぃちゃんはキープかな。一応【距離を置こう】ってメールして、ほんで優ちゃん狙ってうまくいかなかったら、またヨリ戻そー」
俺は本当は、誰が好きなのか、優ちゃんなのかみぃちゃんなのか。
答えは簡単だった。
やっぱり
俺は優ちゃんが好きだ。
そして週明けすぐ、俺は優ちゃんをデートに誘った。
この行動力もNMBのキープだった時期に身につけたスキルの一つだ。
なんと
快諾された。