七年前、俺は「 ンコ」って単語で大爆笑するごくごく普通の小学生だった。
あのときはそれなりに友達もいて楽しい毎日を送っていた。
事件は小学六年生の九月に起きた
みんなが大好きなあの番組の初回放送
そう、「痛快!ビ○グダディ」である。
大家族の生活を取材するドキュメンタリー番組
俺はこの時この番組は見ないで別の番組を見ていた。
文才なんて無いから
俺(現・18)
近所じゃ有名な大家族の一員
長男
ぶさめん
したら皆の態度が明らかに変わってた
まるで珍しいものを見るかのように遠巻きに俺を見るようになったんだよ
当時、俺はそんな番組見てなかったしガキだから
みんなの態度の変化の理由がわからなかった。
今思うときっと感受性豊かな小学生が
俺んちと似たようなのをTVで見て衝撃を受けたんだろうなって思うよ。
大家族って何人ぐらいよ
具体的人数を言うと身バレ怖いから
12人以上とだけ言っておく。
まじか…
特定されないといいな
もちろん俺だけではなく弟妹達にも。
でも、無駄に神経図太いうちの兄弟はいじめに負けず(気づかず)時は過ぎていった
わりといじめられるよ
目立つし…
中学の俺は生徒会に所属し野球部のキャプテンを務めるという割と優等生だった。
進学校を志望してたから割と成績もよかった
そんな中にもいじめは密かに続いてはいた
あるとき、クラスのやつがビッグダディの話から
大家族の実態を調べようみたいになってた。
もちろん大家族の俺は調査の対象になった。
10何人も家族いて
父親は公務員だからそこそこ貰ってる
でも足りないから母親のパート代と俺と弟のバイト代で賄ってる。
「本当にあんな乞食みたいな暮らししてんの」とかだった。
正直めんどくさかったけどメンツもあるし適当に答えておいた。
そんな中ある一人が「お前の父親もあんな屑で槍チンなの?」と聞いてきたやつがいた。
カチンときたが落ち着いてそこは否定した。
しかし、その場にいた別のやつが
「槍チンと槍マンじゃなきゃこんな大家族にならないでしょ?www」と言った。
俺は父親と母親を侮辱された気がしてブチ切れた。
その場にいた5〜6人と大喧嘩してしまった。
割と派手に暴れてしまったため新聞に載ってしまった。
それ故に学校から大顰蹙を買い、生徒会はクビ部活も退部。
内申点が激オチして高校受験も失敗。
進学校を諦め近くのDQN校へ。
二人入院で三人怪我させてしまった
やり過ぎたな
確かに相手も悪いがある意味自業自得だよ
だよな、自分でもそう思う。
普通はできないよな喧嘩慣れしてる奴じゃないと
うん。
もう訳もわからずただ怒りに任せて殴ってた。
高校生になったら感情抑えて冷静になれるようになったよ。
しかし、夏大のとある試合でまたしても事件が起きた。
家族が総出で応援に来たのだ。
高校では隠していた大家族という事実が露呈してしまった。
こうして、例の番組が放送されるたびに再びいじられるようになってしまった。
背番号が発表されて新聞にもベンチ入りとして名前が載せられた頃。
OFFの日に珍しくクラスメイトと遊び行くことになった。
例の通りうちは大家族故に服なんて数着しか持ってない。
しかも、友達の古着とか父親のおさがりとか…
おめかしする服がない俺は一応ダサくはない格好で行った。
でも、集合場所でこう言われた
A「あれ?それこの前も着てたよね?ww」
俺「洗ってあるから臭くはない」
(大家族は洗濯の量が尋常じゃないので朝と夜の毎日2回洗濯をする。
だから、毎日同じもの着れたりする。)
B「どうせそれも誰かのおさがりなんだろ?w」
C「それ俺があげたGパンだわwww」
A「友達におさがり貰うとかきめぇwwwww」
D「お前んちビンボーすぎだろw」
A「同じ服しか着ないやつとか一緒にいたくねぇわww帰れよwww」
B「ほんとだよwくせぇから帰れw」
C「やめてw俺の服が臭いって言われてる気がして嫌だwww」
A「どうせこいつん家も豚小屋みたいな家で臭くてゴミ食って生きてんだよwww」
D「ゴミはさっさと死ねよw」
この辺で俺は気づいた、「あぁ、今日は俺はいじるために呼ばれたんだ…」と
ついに殴られた。でも中学の二の舞は嫌でその時は必死に我慢した。
この出来事が土曜の出来事で次の日は普通に部活の練習があった。
翌週の月曜日、登校するとクラスにABCDの姿がなかった
放課後担任に呼び出され特別指導室に連れて行かれた。
目の前には野球部の顧問と教頭がいた。
まず教頭に
ABCDが俺にいじめられたから学校に来たくないと言ってることや
土曜日に駅前で俺がABCDをいじめてるのを見た生徒がいるということを聞いた。
俺は気が狂いそうになった。
いじめてるのは奴らのほうだし、土曜日のも俺は手を出していないのに…。
一応、自分の言い分も話した
そしたら部活の顧問から
「俺はお前を信じたい。
だけどな、お前のことが大きな問題になったら…ほかの部員に迷惑が…
だから、ベンチ入りを辞退してくれないか?」
と所々言葉を濁しながら言ってきた
俺はもうどうでもよくなった
「…迷惑かけたくないので部活はやめます」
そう一言だけ言って
そのあとの問いには全て適当にうなずくだけだった。
我慢したら我慢したでこれか…
腐ってやがる
先生なんて非情なもんだよ
学校なんて出席日数ギリギリで登校して
あとは行かずに朝から晩までアルバイト
成績はもちろん大学なんて行けるはずもない結果に。
それでももう一度だけやり直したかった俺は三年生の七月から勉強を始め
この間何とかFランだけど大学進学が決まったとさ。
お先真っ暗で怖い。
ごめん
大家族のことでもいいし
俺のことでもいいし
何でもいいよ
暇だからね
何部屋ある?
持ち家だよ
4LDKかな
もともと市営団地に住んでたんだけど
大家族だからやっぱり生活音みたいのが多いんだよね
したら、他の住民から苦情がすごくて追い出されるような形で引っ越した
仲はかなりいいほうだと思う。
それはうらやましいな
うちも世間的に見たら家族は多い方なんだけど(もちろん>>1一家には及ばないけど)、この人数をどうしても好きになれないんだよなぁ
いろいろとからかわれたりするし
俺も最初嫌だったけど
仕方ないかって割り切ったら意外と好きになれた
やっぱからかわれるよね