カーチャンの病状が少し良くなった記念に飼ったハムスターが、
徐々に弱ってきてしまった。
俺含む家族全員、ハムスターを溺愛していたため、
みんなかなり心配していた。
寿命が近いとはいえ、もう見ていられなかった。
弱っていくのを見て、俺は涙が止まらなかった。
カーチャンは、すごかった。
もう必タヒでお世話をしていた。
ハムちゃんも、カーチャンにすごいなついていた。
それは老衰しても、何も変わらなかった。
俺は、カーチャンとハムちゃんが一緒にいるところを、直視できなかった。
最期は…よちよち歩きながら、カーチャンの方に向かい…
辿り着いた瞬間、倒れて…動かなくなっちゃった…。
俺は外で泣きまくった。
あんな最期を目の当たりにして、泣くなという方が絶対ムリだった。
平均寿命より半年弱、長生きしたみたい…。
カーチャンは、泣き崩れるほどだった。
カーチャンの方を見ることはできなかった。とてもできなかった。
翌日、カーチャンとお墓を作った。
うちの庭に、そっと埋めた。
カーチャンの悲しむ顔、すごくつらかった。
今度は…みんなが仕事や学校に行っている時だった。
ものすごい衝撃だったのを覚えてる…。
『タヒ』に立ち会えないショック…。
ペットでもそれは同じ。
えさ箱のそば、ひまわりのたねの側で…倒れてた…。
俺もカーチャンも、ショックで立ち直るのに時間がかかった。
俺は何度もハムちゃんの家を洗ったり…名前を呼んでみたり…
正直、今でもハムちゃんのことを思い出すと涙が止まらない。
先にタヒんじゃった、ハムちゃんのすぐそばに、埋めてあげた。
ずっと、天国で楽しく過ごせますようにって、カーチャンとお祈りした。
カーチャンの病気の調子が、悪くなり始めた。
特に夜が苦しいみたいで、俺はつらくて、つらくて…
『痛みを変わってあげたい!!!』
本気でそう思うほど、カーチャンがかわいそうだった。
「後遺症」って、なんなの?って思った。
生きながらえるためには、仕方ないの?
この後遺症って、避けるためにはタヒぬしかなかったの?
こんなに、苦しんでるんだよ…
なんでだよ…どうにもならないのかよ…
本当に、打つ手、無しなのかよ…。
この時期、カーチャンはのたうちまわるほど痛そうだった。
俺は痛みが無いのに、カーチャンの事を思うと苦しくてしかたなかった。
カーチャンにそう言った。
見てられなくて、限界だった。
カーチャンはこう言った。
「お母さんはね、子どもを犠牲にしてまでよくなろうなんて、
絶対に思わない。そんなことしてまで良くなって、何になるの?
それでよくなったりしたら、今よりも必ず苦しい。
カーチャンは、俺や妹の痛みを変わることは喜んでするけど、
カーチャンの痛みを変わってもらうなんて、できても絶対しない。
そんなこと言っちゃダメだよ。
親って、そういうものw」
カーチャンは、汗をかきながら…俺にこう伝えたんだ。
『俺のイベント』があるごとには、カーチャンはいつも元気だった。
後遺症とか全く感じないほど、元気だった。
祝い事、卒業式、入学式、合格発表日、もろもろ…
いつも、『絶対に』元気だった。
いつもそうだった。
でもバカな俺は、やっとここで気付いた。
裏を返せば、『キツい時』はあったのだ。
表面に出してないだけ。
カーチャンは、祝いごとの場面では、決してキツイことを表面
に出さなかったのだ。
気付くのが、遅すぎた。
家族に会いたい
俺「カーチャン、もしかして、我慢してる時って、結構ある…?」
カーチャン「ん?どうしたの急に…?」
俺「ん…いやさ、俺の祝いごとの時って、カーチャン、いっつも
元気…じゃん?それで、さ、ムリ、させてるよなって…」
カーチャン「んーん?そんなことないよ?もしかして、俺の祝い事の
時には気分が晴れてゴキゲンだからじゃない?!w」
俺「そ、そう…?そうかな?」
カーチャン「うん!気にしすぎ!w」
俺「だっ、てさ…最近カーチャン、調子悪くて…」
カーチャン「大丈夫!すぐ良くなるよw」
カーチャン、見破られたら、嘘つくのヘタなんだよな…。
何とか、俺に気を遣わせないように、してくれてるとさ…
ダメ、なんだ。カーチャンの意思を、無駄にできないんだ。
カーチャンが、あんなに笑ってくれてるのに、一瞬にして無にすること
になっちゃう気がして…。
俺は、そこから奥へと、カーチャンの想いをほじくることはできなかった。
親って、なぜ、こんなにも大きい存在を維持できるんだろう。
でも汗、かいてた…。
カーチャンが汗、かいてる時は、キツいとき。
そんなの、わかってる。
でも、一生懸命、笑顔を作ってくれる。
「エヘヘ」とか言われると、俺はもうカーチャンを責めることは
絶対できなかった。
カーチャンに元気でいてもらうためには、どうしたらいいんだろう…?
そればっかり来る日も来る日も考えた。
俺らの『ために』笑顔でいてくれるのは、キツイ時だ。
カーチャンには、『自然に』笑顔でいてほしい。
聞く話によると、やっぱりストレスなんかも少しは関係するらしい。
ほんの少しでも、ストレスを解消できたらと思ったからだ。
値段がそんなにしないものであれば、バイト代で買ってあげることもできた。
これは人生の今までにないことで、すっごい嬉しかったのを覚えている。
お小遣いで買ってあげるのと、働いて貯めたお金で買ってあげられるのとでは、
重みが違った。
この遊びで、昼食をデパートのレストランで食べた時は、格別だった。
カーチャン、嬉しそうだった。
すっごい、楽しかったのを、鮮明に覚えている。
デパートのレストランで食べる昼食は、
子どもの時にカーチャンやおばあちゃんにデパートに連れて
行ってもらって、買い物して、おもちゃ売り場に連れてってもらって、
最後にご飯をレストランで食べるという、子どもの頃の感覚を
思い出させる感じがして、すごい幸せだったんだ。
やっぱり、疲れてるんだなって、確信した。
カーチャン、自分のことは何も相談しないのに、
俺のことは何でも相談に乗ってくれる…。
もう、カーチャンは、普通の親以上に立派に育ててくれたよ。
俺にはもったいないよ。ごめんなさい、カーチャン…。
ただの
『親だから子どものためなら何でもする』
という定義にはもう当てはまらないよ…
何でもしすぎなんだよ…
カーチャン。
それで体調崩したら、一番の子ども不幸、なんだぜ……?
ね?カーチャン…
カーチャン「これなんかどう?!おいしそうだよw」
俺「どれどれ…。うん、おいしそうだね。」
カーチャン「でしょう?あと、これとか…」
俺「…カーチャン?」
カーチャン「ん?」
俺「カーチャンが食べたいメニュー、俺にすすめてるよねww」
カーチャン「んーん?wそんなことないよw」
俺「バレバレだしww」
カーチャン「でも、きっとおいしいよ!」(これに弱い)
俺「う、うん…じゃ、これにする。」
カーチャン「じゃぁ、お母さんは、これ!」
俺「一緒に、食べようよ。」
カーチャン「分けて食べたら、どっちも食べれるねw」
俺「うん。おいしい! ね、カーチャン。」
カーチャン「ん?」
俺「デパートのレストランで、よくご飯、食べたよね。」
カーチャン「うんwおばあちゃんと3人で食べたりね♪覚えてるんだね~。すごいすごい。」
俺「楽しかったからね。」
カーチャン「でも2人では初めてだねw」
俺「だね。でも、なんか楽しい。」
カーチャン「デザートも、食べようよ!」
俺「マジ?」
カーチャン「うんwみつまめとか杏仁豆腐とかあるよー!」
俺「軽いもので行こうぜ…な?」
カーチャン「おいしいよw」
カーチャンは、元気になったら、ストップがきかない。
だって、いつも「ムリしてる元気」か「後遺症で苦しんでる」か
「ハムちゃんのことで苦しんでる」のどれかばかりだったから…。
俺は、もしかしたらカーチャン以上に元気をもらえたのかもしれない。
俺が、『自然な元気』をつけてもらおうと出かけたのに、
俺が元気づけられた。
俺は一生、カーチャンにかなわないと思った。
特にデパートでのやり取りは、覚えています。
それだけ、楽しかったです…。
さすがに、一字一句とはいえないんですけどね;;
こんな感じと思って下さればと思います。
カーチャンは、いきなり出かけようと言い出した。
カーチャンは、一緒に俺の誕生日プレゼントを買いに行こうって言い出した。
カーチャン「一緒に選んだら、本当にほしいのが選べるでしょw」
俺「そうだけどww」
前に行ったデパートに到着した。
明日母ちゃんに電話してみよう。
それがカーチャンには、つらそうに見えたらしい。
要するに、バッグをプレゼントしたいとw
ということで、ほしいのって言っても、カテゴリーは決定してた。
カーチャンはすぐにバッグコーナーに向かってった。
俺はそのことをまだ知らなかった。
俺「バッグ買うの?」
カーチャン「うん!俺のバッグ、持っててつらそうじゃない?
自転車とかバイク(原付のこと)とか、乗ってて危ないんだからね!」
俺「う、うん、そうだよね…。」
カーチャン「これなんかどう?」
赤茶色い、ショルダー型のバッグだった。
正直、かっこよくて、ほしかったが、すごく高かった。
カーチャン…センスが良いな…
俺「い、いや…これなんかどう?」
1980円のバッグを指さした。
笑いながら、疑った目だった。
俺「使いやすそうだよ!たくさん入りそうだしね!」
他にも数種類、見て回った。
途中で、俺はトイレに行きたくなり、すぐに戻るからとトイレに行った。
帰ってくると、カーチャンは何か買っていた。
俺「何か、買ったの?」
カーチャン「うんw俺の誕生日プレゼント♪」
俺「マジ?あれ?決めたっけ…?」
カーチャン「うんw決まってたでしょw」
帰ってから開けてみると、高いやつのバッグだった…。
俺「カーチャン…」
カーチャン「わかってるよww」
俺「ありがとう。大事に使うよ。」
カーチャン「23年、俺はカーチャンの子どもだからねwわかるw」
周りに友達いない状態でこのスレ読んで、泣いてしまった
周りからみたら、携帯みながら泣いてるきもい人。
親に優しくできない自分が恥ずかしいわ
俺は家族(カーチャン以外)に、ストレス解消がかなり
効果があった事を伝えた。
実際、カーチャンはすごく喜んでくれて、めちゃめちゃ楽しそうだったから。
薬の効能や、休ませることばかりに頭が向いていた俺たちは、
このことは今の今まで盲点だった。
森林浴の時だって、カーチャン、テンション上がってた。
くもりのない、嬉しさだった。そう感じたんだ。
家族でも一発計画してみるかと、小一時間考えた。
なぜか、トーチャンの意見で、そうなった。
なんで?
意外と行動派な一家、次の休日には決行された。
その前に、カーチャンとのイモ掘りの話をしなければならない。
俺のクラスの社会科の授業には、イモ掘りの実技が組み込まれた。
他のクラスは、なぜかこんなイベント、無かった。
それで、さらに親子でイモ掘りをするという企画にまでなった。
母、父、どちらでも良いというものだったが、
ウチはもちろんカーチャンが参加した。
なぜか張り切っていた。
スコップ、軍手、麦わら帽子。大きめのタオル。
これらを1週間前には買いそろえていた。
ちび俺「みどり!!」
カーチャン「俺くんはみどり、好きだもんねーw
お母さんは…水色にしようかな?」
ちび俺「イモ掘りに使うスコップ?」
カーチャン「うん!一緒に買いに行く?♪」
ちび俺「うん!!」
わざわざバスでデパートにまで行った俺たち。
俺は子どもの頃から、緑色とか黄緑色が大好きだった。
やさしい色だから。
カーチャン「俺くん!このスコップは?」
ちび俺「これがいい!!」
カーチャン「でしょwwこれにしよう♪」
緑って言ってたけど、実際選んだのは、きれいな色の黄緑色だった。
カーチャンは、空の色みたいな水色だった。
カーチャン「次は、帽子!被らないと、日射病になっちゃうからね?」
ちび俺「にっしゃ、病?」
カーチャン「うん。おひさまに長い時間、当たってると、
頭がクラクラしちゃうから。」
ちび俺「じゃぁ、かぶらないとね!」
カーチャン「イモ掘りは、長い時間お外であるから、
そろそろ新しいの買おうね!」
ちび俺「うん!」
カーチャンは、青いリボンの付いた、麦わら帽子を買った。
カーチャンの麦わら帽子姿、とても、似合ってたんだ。
店内を、手をつないで歩いてた。
その後、デパートのテラスみたいなカフェで、ご飯を食べながら、
さっき買ったばかりのおニューの帽子を、2人で被った。
カーチャン「俺くん!明日はイモ掘りだよ!準備できた?」
ちび俺「え?う、多分…」
カーチャン「軍手と、スコップと、帽子だよ!あと、タオルも!
軍手は、手袋みたいなのだから!」
ちび俺「う、準備するよー。」
カーチャン「お母さんは、麦わら帽子と、軍手と…」
カーチャン「明日、たのしみだね!!
いっぱい、取れると良いね!
とれたら明日はてんぷらだね♪」
…カーチャン?
カーチャンのテンションがハイだったのを、覚えてる。
うちのクラスの担任はおちゃめ(?)で、なんでも工夫したがる先生だった。
若い20代の女の先生だった。
イモ掘りも、例外ではなかった。
むしろ、イモ掘りなんてイベント、例外にするはずない。
担任「それでは今からイモ掘りやります♪」
生徒一同「はーい!!」
担任「でもイモ掘り始める前に1つ、説明があります!」
生徒&父兄「??」
担任「お母さん方とクラスのみんなで、親子でイモを集め、
多く取った人の勝ちです!でも、横取りは、ダメだよ。」
父兄「ガヤガヤ」
聞いて、ない。
俺のペアは、最初から有利だった。
早くから用意していた持ちモノ+カーチャンのやる気(?)があった。
カーチャン「俺くん!!そこ、イモ!!あるよ!」
ちび俺「ほんとだ!よい、しょ!」
カーチャン「お母さんも手伝うから!」
カーチャンが飛んできた。
これがホントの芋づる式…ずるずる取れた。
イモは鬼のように取れていった。
結果、圧倒的な勝利をモノにし、なんと優勝した。
もちろん、俺よりもカーチャンの方が喜んでいた。
ごはんを食べてお風呂に入ったあと、デザート(?)にふかしイモが登場した。
普段なら嫌気がさしてるところだが、カーチャンと一緒に頑張って取った
イモだった。家族みんなで食べて、とってもおいしかった。
カーチャンは、とっても嬉しそうだった。
何より、カーチャンと取ったイモを一緒に食べるのが、嬉しかった。
カーチャン、大好きだから。
トーチャンの”栗拾い”という意見は、実はここから来ていた。
イモ掘りをあれだけ張り切っていたんだ、栗拾いも好きだろう。
そういうことだった。
でも12年前のこと。
トーチャンも、覚えてたんだな。
俺の、たかだか社会科の授業のことなのに。
カーチャン、嬉しそうだったからな。
トーチャンも、嬉しかったんだよね。
親は生きてるうち使うもんだとさ…
就職して親孝行したいな畜/生……
ってか>>1、仕事帰りだしもう夜遅いし、無理すんなよ
だけど、そうじゃない。カーチャンが本当に楽しみたいこと、やりたかったんだ。
『家族とだから』じゃなくて『カーチャンが楽しめること』を、みんなでしたかったんだ。
カーチャンが大好きなことを『家族みんなで』!
これがカーチャンのストレス解消に、1番効果があるんじゃないかって。
カーチャンなら「私は何でもいいから、みんなのやりたいことしよう♪」
こう言いそうだったから。
俺と妹、トーチャンの意見は、満場一致した。
まぁ、何でも喜ぶのかもしれないけど…カーチャンは、本当に嬉しそうだった。
ただ、カーチャンに過度の運動は禁物なので、
激しい動きはさせないように注意を払わなければならない。
カーチャン、ムリするから…。
予定日を告げた夜、パラッと、風が吹いた拍子に、カーチャンの
スケジュール帳が見えてしまった。
しおりが挟んであったから、簡単にそのページが開けてしまったのだろう。
栗拾いの日は、こうなっていた。
☆☆クリひろい☆☆
もってくもの!
軍手 上着 帽子 おべんとう 虫よけスプレー
みんなの分
もらっていたけど、いつもこんな感じで、持って行く物を書いていた。
日曜日当日、カーチャンは早起きしていた。
俺は寝坊した。
俺「カーチャン?何時に起きたの?準備がすごいんだけど…」
カーチャン「おはよw4時かな?はやく準備、しなきゃねw」
俺「よよ4時?マジ?!早いって!寝てなきゃ!」
カーチャン「楽しみなことは、頑張れるんだよ♪ww」
カーチャンをリラックスさせるためなのに、なにやってんだって思った。
テーブルの上には、バスケットにお弁当が入ってて、
水筒にはみんな好きな、冷えたカルピスが入っていて、
帽子やタオル、おしぼり、虫よけスプレーなど用意してあった。
バスケットのお弁当は、豪華だった。
運動会の昼食で食べるお弁当レベルだった。
俺も両親に迷惑かけてるなー。
行政書士の資格取る!! とかいって無職なのに何もしてない。
ほんとにニートしてる。両親、期待してるのにね。
なんかしなきゃ、って焦ってるんだけど、五里夢中。
このスレ見てますます焦るわ。
>>564
ぜひ、頑張って下さい!
時間って、大切なものですから…。
行政書士って、難しそうです。でも、取って仕事ができたら、
きっと、ご両親の、最大の親孝行になると思いますよ。
応援、してます。
そして>>1も在るべき子の姿だなと思った
みんなに見てもらえて、嬉しくて、書いてしまいます。
ごめんなさい、毎日時間が遅くて…。
からあげも、たまご焼きも、とてもおいしかった。
でも、朝食は、バスケットのお弁当とは全然違うメニューだった。
俺はここで…カーチャンの偉大さを再確認した。
お弁当にもたくさん時間を割いてると思うのに、
朝食でまた、しっかりした朝ごはんが出てきた。
このカラクリ、どうなってんの?
こんなに大変な家事を、俺が生まれてから20年近く、
続けてきたというの?文句ひとつ言わずに?
カーチャンは、朝食を作ったり、みんなのお弁当を作ったり
するのに、文句なんて一言も言ったことなかった。
多い時は、3人分のお弁当に朝食なんてのもザラだった。
カーチャンの手、ちょっとガサガサで、きずついていた。
俺はまた、泣きそうだった。
カーチャンの手、あかかった。
カサカサだった。
固くなってた。
きりキズがあった。
カーチャン…
カーチャン、ごめんなさい…。
俺、やっぱり何もして、あげれてなかったね。
カーチャンの、1番苦労している部分、手伝ってあげれてなかったね。
退院してからも、苦労してばっかりだね。
仕事量、何もかわって、なかったね…。
ごめん、ごめんよ、ごめんなさいカーチャン……。
“ごめん…気付いてあげられなくて……”
カーチャンは、笑ってくれた。
あたま、なでてくれた…。
にこにこ、してた。
この時、カーチャンからの言葉は、返ってこなかった。
いつも、気付けなかったことを、後悔してしまう。
でも、カーチャンは、笑ってくれる。
俺が、親になったとして、こんなことができるんだろうか?
カーチャンの子どもなのに、俺はカーチャンを超えること、
絶対できないんじゃないかって、思ってしまうんだ…。
カーチャンは、長い間手のひらを見られることを、イヤがったんだ。
カーチャン、俺に気を使う必要なんて、ないんだ。
むしろ俺は、その事実を、知りたかったんだ。
カーチャン「そんなに見たら、ダメだよw」
俺「え、なんで?」
カーチャン「いいから、いいからw」
俺「う、うん…。」
俺はお手伝いを、時間を見つけてはしていたと思っていたが、とんでもなかった。
カーチャンに仕事なんて、山ほどあるんだ。
見えない仕事だって、いっぱいあるんだ。
目につく仕事ばかりを考えていてしまった。
俺は考えを根本から改める必要があるんだ。
今日の企画が台無しになるのは、嫌だったんだ。
一家を乗せた車は、栗拾いへと出かけた。
幸いにも、天気は快晴だった。
あまりに恥ずかしいから家族には内緒なんだが、
俺は自室に、てるてる坊主をつるしていた。
作戦は数日前に決行されていた。
俺「なぁ妹、俺に布キレくれない?」
妹「もうちょっと紳士に」
俺「妹さん、私に布を少々、分けて下さいませんか?」
妹「何に使うの?」
俺「いいから、いいからww」
俺「その、端っこの方でいいから♪」
布キレに黒マジックで書いたお粗末なもの(しかも絵へた)
だったが、気分が違ったんだ。
ちなみに、つるしたせいで雨が降ったら、土下座しようと思った。
俺の好きな、入道雲が出てた空だった。
濡れタオルを配ったり、酔い止め、頭痛薬、腹痛薬、胃薬を人数分、
あらかじめ用意していたり、水筒でカーチャンの作ったカルピスを
配ったりと、何かしら動いていた。あめやガムも常備してた。
もちろん、カメラも持ってきてた。
多分、カーチャンが一番忘れてはならないものなんだろうなぁと思う。
カーチャンは白いワンピースに七分丈のデニムをはいていたのを覚えてる。
カーチャンの中では、動きやすい服装なんだろう。
俺は、どこか出かけるときの、このドライブが大好きだ。
わくわくしてさ、もしかしたら、俺にとっては、1番この時が
ストレス解消になっているのかもしれない。
お年寄りから子どもまで、ほとんど家族連れだった。
俺は、初めてすることはわくわくする方で、はやく遊び(?)たかった。
俺「はやくはやく!」
トーチャン「おーい、待て待て。」
カーチャン「若いわねぇ~w」
あんまり考えたことなかったけど…こういう施設って、
取る量に限りがあったりするんですね。~kgまで、とか。
みんな思い思いに動いていたが、俺はカーチャンの側で拾ってた。
俺「うん。あんまり言わない言い回しだけどねwww」
カーチャン「これ、誰が考えたの?」
俺「トーチャンだよ。カーチャンがこういうのスキかもって。」
カーチャン「そうなんだ。お母さん、スキだよ。でも、どうして?」
俺「イモ掘りwww社会科のww」
カーチャン「え?あ、ああwwすっごい取れた、あれww」
俺「カーチャン、楽しそうだったから。」
カーチャン「はしゃぎすぎたねw」
カーチャン「でも、そんなこと、覚えてたんだね…」
俺「そうだよ。俺もビックリしてさ…。
カーチャン?トーチャンさ、ああ見えてみんなのこと、
よく考えてるし、いつも幸せでいられるようにしてる。
素で、尊敬してる。今はまだ、トーチャンにはいえないけど…。」
カーチャン「そっか。お父さん、まじめだから。
むしろ、みんなのことばかり考えて、自分の健康とか、
ないがしろにするから、ちゃんと見ててあげなきゃ、ね。」
(カーチャンも、だよ…
でも、そんなところに、お互い、惹かれたんだろうな。)
トーチャンカーチャン、親不孝な娘でごめんなさい
多分結婚式も孫の顔も見せてやれないけど、学校はサボらずに行くようにする。
一人で楽しむ方が、いいかな?とも考えた。
でも、俺が一緒に拾いたかったから、側にいてしまったんだ。
俺は絶好のチャンスだと思い、カーチャンに聞いてみたいことがあった。
俺「カーチャン、最近、どんなことやりたい?」
カーチャン「どんなことって?」
俺「例えば、これして遊びたいとか」
カーチャン「そうだね…。」
俺「……。」
カーチャン「最近温泉行ってないかもね。温泉、いきたいな♪」
俺「温泉、か…。」
カーチャン「家族で温泉に入りに行くのも良いかもねーww」
カーチャンは、恐らく、施設の温泉に行きたいって言っているんだろう。
俺は、決めた。
最初の”親孝行”は、『温泉旅行』だ。
一緒に買い物行ったりとかするんだけどどうも素直になれない
面と向かってが無理ならまず手紙とか書いてみるってのはどう?
つ 肩たたたき券
それよくわかる
家の中や、病室で話すよりも、ずっと、ずっと楽しかった。
やっぱり、アウトドアなことをしながら楽しく会話するのって、なんか、いいんです。
カーチャン、笑顔だった。
とびきりの笑顔。
俺は、それが何よりの今日の収穫だったんだ。
俺は何が何でも、温泉旅行に連れてってやりたい。
思いっきり、羽をのばしてもらいたい。
家事の事なんか、1日くらいきれいさっぱり忘れてもらいたい。
栗をにぎりしめ、誓った日だった。
話しながらでも、ドンドン集めていった。
俺はというと、話せば話に集中する体質で、そんな余裕、なかった。
集合時間になり、カーチャンは情けで俺に栗をわけてくれたww
なんとも情けない結果で終了したw
でもカーチャン、家族に、俺に分けたこと言わなかった。
カーチャンは、普段からそういうことで面白がる人ではなかった。
『うーーーーん…』
栗なんて、どうやって消化するんだよ…
俺は何も思いつかなかった。
結局、カーチャンが強引に栗ご飯を大量に作り、大半は消化した。
残りは、家族でTVを観ながら、スプーンでグリグリして食べた。
時間かかった。
ポロポロこぼれるし…
カーチャンは、食べ方上手だった。
カーチャンって、器用なんだな…。
お茶の間で家族で栗を食べてる時に、カーチャンはこうつぶやいた。
『本当に、ありがとう。』
声は、本当に、小さかった。
10秒近く、みんな沈黙…トーチャンが、こう返した。
『おう。また、みんなで遊びに行こう。』
>>1みたいな家庭は稀有なんだろうな。
トーチャンが、バーベキューをやろうと言い始めた。
俺や妹は大歓迎なのだが、カーチャン、トーチャンは、
あんまり脂っこいものは食べれないのだ。それなのになぜ?
でも、トーチャン、カーチャンは乗り気だった。
トーチャンは、バーベキューに使う備品を集め、火を起こす係。
カーチャンは、野菜や肉などを切ったり、食材の準備係。
妹は、その他の家事を手伝ってた。
俺? 俺…酒の買い出し…。
・風は比較的強い
・中秋
・なんか少し寒い
バーベキューは多少困難に思えた。
なんでそこまでゴリ押ししてバーベキューをしたがるのかわからなかった。
トーチャン、昔っからこういうのは得意だった。
アウトドア派なトーチャン。男だった。
肉も焼いた。
魚も焼いた(網に1匹丸ごと置いた…)
野菜も焼いた。
海鮮類も焼いた(貝とかタコとか)
トドメに焼き芋した。
肉だけじゃなかったので、トーチャンカーチャンも楽しめた。
意外な結果、バーベキューは大成功だった。
俺「ねートーチャン。」
トーチャン「うん?どうした?」
トーチャンは俺の焼き芋にバターを塗ってくれた。
俺「なんで今日、突然バーベキューを始めたの?
もう秋だし、ちょっと寒いから、変かな、って思ったんだけど…」
トーチャン「ああ。時期はちょっと変かもしれない。
だけど、俺や妹も、そのうちこの家を巣立つだろう。
そうしたらこんなに簡単に、バーベキューなんてすること、できないんだ。
時期の選択ミスはあるが、やりたいと思った時にやる。
思い出作りをしたかったから。
まぁ、お父さんからしたら、家族でこうやって楽しむんだったら、
季節なんて関係ねーからなwww
カーチャンと、そう思ったんだ。」
カーチャン「もう、俺も妹も、大きくなったからね。
できるうちにやっておかないと、後悔するからね。
寒いからって、バーベキューであったまるしねw」
俺「……」
涙が出て、家族の前でこらえるのが。つらかった。
夜で、涙は見えなかったかもしれない。
正直、トーチャンがこんなこと俺たちに考えてるなんて、想ってなかったんだ。
こんな優劣をつけるトーチャンも、悪くないと思った。
カーチャン、アルミホイルでしっかり包んでくれた。
バターや塩をまぶして、みんなで食べるイモは、格別だった。最高だった。
いつか離れて暮らしていくんだと思うと、急に切なさがわいてきた。
そんなこと、ほとんど考えたことなかった。
今まで、みんなで過ごすの、当たり前だった。
トーチャンカーチャン…先のことまで、考えて、くれてたんだ…
ヤキイモ、全部食べ終わっちゃった…。
もう、さすがに、片づけなきゃいけないのかな…と思った。
余韻が強くて、片付けたくなかった。
間もなく、トーチャンが動き始めた。
片づけを始めちゃったのかと、思った。
こんな素敵な家庭いつか築きたいな
子供できたら、いっぱい可愛がってあげたいな
夫婦仲良くやっていきたいな
お湯を入れたヤカンを、早速、火で温めていた。
トーチャン「次はコーヒーだ。絶対、うまいぜ?」
カーチャン「俺も妹も、これ飲んで、あったまりなさい♪」
そう言って、大きめのマグカップに、作りたてのコーヒーを注いでくれた。
トーチャンの、マグカップだった。
とびっきりの、おいしさだった…。
俺は、地べたに寝っころがり、星空を眺めた。
満点の、星空だった。
カーチャンは、コーヒー好き。
わざわざ毛布を持って来て、みんなでコーヒーを飲みながら星空を仰いだ。
みんな、この時間が、ゆっくりになればいいなって、思ったのかな。
楽しい時間が終わるの、寂しいんだよね。
きっと、そうだと思う。
みんなのあの時の気持ちは、同じだったんだ。
今までのどんなコーヒーよりも、おいしかった。
あの夜は、カーチャンと一緒に毛布にくるまって、
いつまでも、話してた。
飽きることは、なかった。
街はクリスマスムードが漂っている。
クリスマスに予定が無かった俺は、家族と過ごすことにした。
別に友達といることもできたが、今年は家族といることにしたんだ。
妹「クリスマスプレゼント、もらえる?!」
カーチャン「何がほしいの?」
トーチャン「俺、サンタクロースやろうか?」
俺「え?何?プレゼントを配るってこと?」
トーチャン「うん。いや、サンタクロースの服、買って来ようかな。」
俺「そっち?!本格的な方?!」
トーチャン「たまにはね」
俺「過去にやったことあったっけ」
トーチャン、本当にでかけた。
荷物、持つよって言って、一緒に付いてった。
カーチャンの1番の目的は、ケンタッキー。うちの毎年の定番だった。
値段の張り具合にビックリしたが、カーチャン、顔色1つ変えなかった。
ケーキは、今年は買うことにした。
フルーツケーキ!いちごが乗ったやつ。
俺「奮発して、大丈夫なの?」
カーチャン「年に1度だから♪」
俺「そうだけど…平気かなぁ」
カーチャン「…そのうち、俺も彼女とか作って、クリスマスは
一緒にいられないだろうからね~。今のうちだけだねww」
俺「カーチャン…」
赤い服が棚の上に乗ってた。
あえて何も突っ込まなかった。
クリスマスは別として、俺は年末年始の雰囲気が好きなんだ。
特番ばかりやるTV。
お正月のBGM。
新年の予定を立てる楽しさ。
俺は年始よりも、年末が好きだな。
すぐにでも食べつきたかった。
でも、トーチャンが身支度に時間、かかってた。
俺「なにやってんだよww」
トーチャン「引っ張んなって…!!」
『乾杯!!!』
カーチャンはワイン
トーチャンはビール
俺と妹は、シャンメリーを片手に、乾杯した。
余談だけど、シャンメリーの量、少ないww
この時期の雑談の時間は、大好きなんだ。
トーチャン「来年の目標とか、みんなあるかい?」
俺「そりゃぁ、ねぇ」
妹「たぶん…」
トーチャン「なにかあるだろ…?あるって言ってくれよ…」
俺「じゃぁ、ある」
妹「あるよ」
トーチャン「じゃぁ、言っていこう!」
俺「仕方ないなぁ」
今後も元気でいてもらいたい
俺はまだバイトで就職してない屑だが
取って、経済の勉強したい。」
確かに目標だが、それ以上の目標があったけど、伏せておいた。
妹「高校入試で、志望校の為に英語頑張る。」
トーチャン「仕事があんまりうまくいかないから、業績を伸ばすことだな」
俺「トーチャン、あんまり考えてなかったでしょww」
トーチャン「考えて、たよ?」
ほんとかよ…
カーチャンの番だった。
当時、聞きたくないことだった。
が、目標を伝えた。
カーチャン
「来年も、元気でいられること。
楽しく、いられること。
俺や妹やお父さんと、一緒に頑張れること。
生きていられること。」
カーチャン「最近、元気でいられるのは、俺やみんなのおかげだよ。
今、すごい楽しいよ♪
来年も、いっぱい遊んだり、思い出、作ろうねw」
あまりにも、壁が大きかった。
聞いてはいけないようなことを聞いたような…聞かなくちゃいけなかったような…
すごかった。頭が追いつかなかった。
聞いて、安心したかったんだ。
俺はいつも、そう。
相手から安心する言葉を求めて、期待通りの返事が返ってきたら、安心しちゃうんだ。
でも、”もし”、逆の…意味だったら…。
他のなんでもない。カーチャンのことなんだ。
1%の可能性.もある限り、聞くのが怖かった。
怖かったんだ。
俺は息を飲んだ。
でもそれ以上にびっくりしたのは、トーチャンも…間を残しつつ、
次の言葉を飲んだ。
俺や妹は、動けなかった。
ご飯だけを食べる状態が続き、しばらくは何も話さなかった。
話すことが、できなかった。
でも沈黙のあと、トーチャンは、プレゼントを出してくれた。
トーチャン「メリーメリークリスマス!!!」
カーチャン「メリー・クリスマス♪」
新春用だった。
サイズもぴったりだった。
カーチャンやトーチャンは…
俺の服のサイズも靴のサイズも、
身長に体重、誕生日、赤ちゃんの時にしてたクセ。
よくやっていた好きな遊び。好きな食べ物。
好きな動物…。
全部知っている。覚えてくれている…。
カーチャンは特に、いつもいろいろ気にかけてくれているんだ。
なのに、カーチャンは何か隠している…。
きっと、みんなに迷惑をかけないように。
カーチャンが、話したがっていない。
それは確かなんだ。
なぁ…
俺は今、どんな選択をすれば最善なんだ?
本当のことを教えてもらうこと?
知らないフリ?
それとも、カーチャンから話してくれるのを待つの?
カーチャン、元気になってきたんじゃないの?
カメラで撮ろうとした。
俺は素早くカーチャンの元へ駆け寄った。
俺「カーチャンが写って!」
カーチャン「俺が写りなさい。カーチャン、撮りたいからw」
俺「いつも撮ってるんだから、今回は、いいじゃん。」
トーチャン「俺が撮って良いんだぞ。お前、写りなさい。」
結局、カーチャンが撮った。
微妙にクリスマスは、終わっちゃったんだ。
俺は、早速行動に出た。
お正月だ。
トーチャンは、みんなでお参りに行こうと、深夜から遠出した。
年末年始で気持ちも高ぶっているし、みんな、「行きたい!」と言って、
すぐに車は出た。
カーチャンは、すごい。
行くって決めてからの、ドライブの準備が早い。
深夜だけど、炊飯器をすぐに開けておにぎりを作った。
みんなの上着を用意した。
水筒に、熱いコーヒーとお茶を準備した。
10分もかからず、みんなが準備が終わる前にカーチャンの準備は終わっていた。
ふと見た時には、準備完了で正座して待ってた。
本当に俺の親なのかと思った。
親って、偉大すぎて……。
車を走らせた先、神社の手前は、大混雑だった。
有料駐車場も、いっぱいだった。
トーチャンは、近くでみんなを降ろし、トーチャンだけ
遠い駐車場に停めに行ってくれた…。
カーチャンは、「買ってあげるよ♪」と言ってくれてた。
なんで、カーチャンってこんなに、あったかいんだろうって。
いつもいつでも365日、俺のコト、考えてくれるんだろうって…。
年から年中、子どものコトばっかり考えて、疲れないんだろうかって…。
そんなことを考えながら、奉納の列を並んでいた。
俺は力強く鈴を鳴らし、土下座の勢いでお願いした。
もちろん、願うことはたった1つだった。
他に考えることは、なかった。
カーチャンは、すごい長い時間、お祈りしていた。
俺「カーチャン?どうしたの?」
カーチャンは目を開けた。
カーチャン「ごめんwさ、後ろにもみんな並んでるから、行こうか♪」
俺「カーチャン?さっき、お願い事長くなかった?」
カーチャン「そう?長くないよw短くてお願いが途中で切れちゃうくらいにw」
俺「1つじゃないと、お願い、かなわないよ?」
カーチャン「だって…1つとか、ムリだもん…。
お父さんや俺や妹が、健康で暮らせますように。
妹が、受験で合格しますように。
俺が、大学で楽しく勉強できますように。
お父さんが、会社で活躍できますように。
子どもたちが、幸せに、結婚できますように。
みんな、いつまでも幸せでいられますように。」
カーチャン「…ね?無理でしょ…?優劣なんてつかないんだもん…。」
俺「……ありがとう、カーチャン。」
カーチャン「え?どうしたの?(聞こえなかった)」
俺「なんでもない。おみくじひこうよ。」
カーチャン…。カーチャン、1つくらい、自分のお願い、入れてくれよ…。
俺は中吉だった。
でも俺のおみくじの級等よりも、カーチャンのおみくじが、気になって仕方なかった。
カーチャン「”学問”が今年は良いんだって!!
なにか勉強、してみようかなwwちょっぴり、遅いかな?w」
俺「”生活”の部分も良いみたいだよ、カーチャン。
いろいろと、模様替えしてみたりすると気分一新、するんだって。」
俺はこんなこと言いながらも、”病気・やまい”の部分を速攻で覗きこんだ。
『やまい、なし。健康に気を付けるべし。』
次いで、”旅行”確認。
『出先に幸運あり。期待できる。』
カーチャンのおみくじは、『大吉』、だった。
俺「良かったね、カーチャン。なんでも、挑戦できるって書いてあるよ。」
カーチャン「ほんとだw何か習い事でもしてみよっかなーww」
カーチャンには内緒に、おみくじの内容を確認した。
”病気”の項目を気にしてると、カーチャンも、イヤだろう…。
でも、カーチャンの顔色があんまり良くない気がしたんだ。
俺は、今日は早めに撤退した方が良いんじゃないかと思った。
予感は的中することになった。
カーチャンとの、お話です。
カーチャン、一気に顔色が悪くなった。
カーチャン、その場にしゃがみ込んでしまった。
俺はトーチャンと、急いで車まで連れて行き、自宅まで連れ帰った。
カーチャン、病院に行きたくないって、言った…。
カーチャンは、家事をしようと、動きまわろうとする。
トーチャンは、急いでそれを阻止していた。
カーチャンを、絶対に、働かせようとはしなかった。
トーチャン、おかゆつくったり、有給とって休んだり、
だからと言って俺たちにはお好み焼きや野菜たっぷりの
ラーメンを作ってくれたりした。
トーチャンの顔は、真剣そのものだった。
お好み焼きも、決して手を抜くわけではなく、
具だくさんの、屋台顔負けの味だった。
俺は、この2人に絶対一生かなわないと思うと同時に、
自慢の両親だと、心から、そう思った。
トーチャン「うん?どうした」
俺「トーチャン、忙しくて忙しくてたまんないのに…
俺らのご飯まで、頑張って用意すること、ないよ
なんか簡単に作るし、作れないときはお弁当とか買うから」
トーチャン「ばか、それじゃ栄養が偏っちまうんだ。
お前たちは、俺の大事な大事な、こどもなんだ。かけがえが、ないんだ。
お母さんのこと、確かに大切だ。
でも、おまえらのことも、大切なんだ。
俺には、お前たちに栄養たっぷりのものを食べさせる『権利』があるんだ。
決して『義務』なんかじゃない。俺は、『義務』だと思ってないからな。
それに、家族と一緒にいるんだ。全然、忙しくなんかない。
楽しいぞ。」
俺「………うん……。」
トーチャンがご飯を作っている時に、カーチャンは話しかけてきた。
カーチャン「お父さんね、俺や妹のことが、かわいくてかわいくて
仕方ないんだよ。きっと、やりたいことをやっているだけだと思う。
お母さんも、お父さんのああいう料理、俺が生まれる前はしょっちゅう食べてたよ♪
おいしいでしょ♪
みんな、食べてあげてねw」
俺「うん、わかった。
おいしいんだけど、邪魔しちゃってる気がしてさ…。」
子どもができた時にwかわいくてかわいくて、仕方なくなっちゃうから!」
俺「そう、なのかなぁ」
カーチャン「そうそう♪」
カーチャンは、具合が悪いのに、頑張って俺と話してくれた。
笑顔を絶やさなかった。
俺は、カーチャントーチャンの言ってることが、
本当に、何1つ偽りのない言葉だって、信じて疑うことはなかった。
カーチャンは、「行きたくない…」って言っていたんだけど、
病院へ行くことにしたんだ。
思ったより、悪くなっていた。
カーチャン、やっぱり、ムリしてたんだ…。
入院はしたがらなかったカーチャン…
薬の処方を、大量にもらった。
こんな量を、カーチャンは食後に飲まなきゃならないんだ。
「離れて暮らすのは嫌だよ…
せっかく新年のあいさつもして、お願いもしたのに…」
カーチャン…わかってくれ…
カーチャンと会えないのはみんなだって寂しいさ…
でも、このまま病気の進行が続いたら、どうなる?
カーチャン、元気になって戻って来たら、またみんなと
ボーリングできるじゃない。ドライブ行けるじゃない。
ピクニックに行けるよ。夜はこたつでみんなでトランプできるよ?
みんなで、お祝いごとも祝えるよ?
みんなの願いは1つだよ…
病気が治って、健康になってほしいんだ。
みんな、さみしいけど…
何より、みんなが年越しでお祈りしたことだと、思うんだ。
カーチャンに、これからもずっとずっと…”カーチャン”でいてもらうために。
お願いして、みんなで治すって、そうきめたんだ。
みんなで、治していくんだ。
俺は、バイトの掛け持ちを始めた。
やだなやだな。。
でも俺は違う。
目標があるから。
『温泉旅行』
目標があるから、頑張れた。
普段の俺なら、すぐ辞めてた。
なにより、なによりも…カーチャンの喜ぶ顔が見たかった。
俺は、こういうことでもカーチャンの治療につながるんじゃないかと考えたからだ。
喜ぶこと、嬉しいことをされて、少なくとも悪い影響を与えることはないだろう。
俺は、やれることはやってみたいんだ。
なにかしらで学業に支障をきたすからって。
俺の両親は、肯定派だった。
社会の勉強を先にできるからって。
俺も、バイトしたかった。
さすがに掛け持ちはやばいかなと思ったが、
軽い就労時間のやつを見つけて、働いた。
不思議と、楽しかった。
『目標』が、楽しい目標、だったから。
一刻も早く、喜ぶ顔を見たかった。
カーチャン、産んでくれて、ありがとう。
カーチャン、いつも笑ってくれて、ありがとう。
カーチャン…いつもご飯作ってくれて、ありがとう。
カーチャン…こんな俺と、一緒に泣いてくれて…ありがとう…。
カー…チャン…こんな俺と…一緒にいて、くれて…あり…がとう…
カー…チャ…ン…
泣きながら仕事してた時もあった…。
一緒にいた方がいいのかな?
俺も、カーチャンと会いたい…
でも、バイトしている。
正直、どっちが良いのか、わからない…。
だけど、俺はバイトして温泉旅行行きたいって、思った。
カーチャンに喜んでもらえると思ったから…。
カーチャン、喜んでくれるかな?
俺、カーチャンの描いた息子に、なれてるかな?
楽しみに、してるよ。
温泉…楽しみ。
それまで、頑張って。
トーチャン、逆光に強い男。
トーチャン、決してメンタルが強いわけではなくて、
『自分の大切な人のために、何ができるか』
を考えて、頑張っているんだ。
トーチャンの気持ち、わかる気がするな。
トーチャン、こんなに頑張ってるんだもん。
きっと、よくなるね。
カーチャンの悪いところなんて、すぐ、消えるね。
カーチャン、頑張ってる俺らのこと、見てくれてるかな。
伝わるかな?
励みになれるかな…?
がんばれ、カーチャン。
バイトもさぼらなかった。
俺はいつしかこう思うようになっていった。
『カーチャンに、恩返しをしていきたい』
でも、カーチャン生きてなきゃ…恩返しできないんだよ?
生きてなきゃ、楽しくないよ?
俺たちと、会えなく、なっちゃうよ…?
カーチャンは、元気でいなくちゃ、ならないんだよ。
こんなにも、頑張ったじゃない。
これからは、元気で楽しくいないと、いけないんだよ。
カーチャン、やせてた。
でも、笑顔で出迎えてくれたんだ。
カーチャン、窓際のベッドじゃなかった。
カーチャンに、窓際になってほしかった。
青空が、きれいだから。
小鳥も、飛んでくるから。
カーチャン、鳥、好きなのにね。
俺、カーチャンに何かあげたいなって思った。
病院って、退屈そうだから…
でもカーチャン、「解いてみるwww」って、嬉しそうだった。
福引きで当たった、ルービックキューブも持って来ようかな…。
カーチャンに、何でもしてあげたかった。
やせ細ったカーチャンをみて、俺は泣き崩れそうだったんだ…。
何かないかな、なにか…って、ずっと考えてた。
もう許してれ…
「俺、来てくれてありがとう。
ねぇ、百羽鶴のこと、覚えてる?
俺が折って持ってきてくれた、百羽鶴。
あれ、私の自慢だった。
病室の人たちに、自慢してた。
色とりどりの、鶴たちだったねw
今までのみんなとの思い出、たくさんありすぎて、お母さん幸せだねww
自転車、よく練習しました!
イモ掘り、はしゃぎ過ぎたねw
トーチャンが入院した時は、みんなで、泣いちゃったね。
みんなでやったバーベキュー、とっても、おいしかったね!
俺は、お母さんの大切な、大切な…たからものです。」
俺「…カーチャン。」
カーチャン「…うん?」
俺「楽しかったよ。全部、楽しかった。
でも、これからも、楽しいんだ。
今、思い出を振り返る時じゃ、ないんだ。
今からだって、たくさん、できるじゃないか。
今そんなこと、言わないでくれよ。」
俺「また、バーベキュー、やろう。」
カーチャン「………うんw」
今日は散歩の許可が下りず、ベッドの上で話すだけになった。
カーチャンも、もともと活発な人で、動きまわりたい人なんだ。
かわいそうだった。
カーチャンと、普段あまりしなかった、たわいもない話をした。
「大学の講義でね~、この難しい問題で当てられちゃって…」
「この講義の先生さ、面白くてさぁ」
「バイト先でかっこいい服見つけた!!」
「今日はバイトでミスっちゃって…上司に怒られたんだ…」
全部、真剣に聞いてくれたんだ。
全然、めんどくさがらないでいてくれた。
こんなにどうでもいい話なのに…
カーチャンは、凹んで笑って、聞いてくれた。
退院記念に、行きたかった。
どうしても、行きたいな。
お金は、あるんだよ。カーチャン。
絶対、行きたいよね?未来の、カーチャン。
必ず、行こうね。
バレンタインにと、俺はカーチャンに、買ってきてと頼まれた。
カーチャン…そこまでして、律儀にプレゼントしなくて、いいんだよ。
トーチャンだって、わかってるさ…。
でも、カーチャンらしいね。
そんなカーチャンのこと、俺もトーチャンも、好きだもんね。
結局、クッキーを買ってきた。
俺「カーチャン、来年は、手作りできるよ!!」
カーチャン「もちろん♪なに言ってるのww」
俺には、なんかお酒の入ったワイン、くれた。
ほろ苦くて、とってもおいしかった。
病気に多いんだけど、昼はそうでもなくて、夜にかなりの痛みが来るんだって…
そりゃ、やせるよね。
でも、会いに来たら、いっつも笑顔。
また、鶴、折ろうかな。
(オレ規制で無理ぽ)
手間をかけさせてしまって、すみません…。
本当にみんな、感謝です。