これから書いてきます
近くには店が多くあり、海産物をこれでもかと堪能出来る
これはどこの海際の観光地でも似たようなものだけど、石像の周りにはカモメが大量発生している
少し離れた場所にマグロ丼が食べられる有名店があったので、そこで昼飯を食べることにする
店の外には大漁旗が掲げられ、漁師の店をアピールしまくっていた
昼時の少し前なのでそれほど混雑もしておらず、さっと入れた
その直後くらいに人が押し寄せ、どうやら外に行列が出来ているみたいだ
運が良かった
ちなみに三色マグロ丼(大トロ、中トロ、赤身)の値段は確か3500円くらい
いや全くとんでもない
だから実際に本場のお高い大トロを食べても特別美味いとは思わなかった
回転寿司のマグロと何が違うのかさっぱり分からん
でも不味いわけではない
その店の名誉の為に言っておくが、ただ単に俺が味覚オンチなだけだと思われる
店を出ると数十人にも及ぶ行列が完成していて、ほんと運が良かったと改めて思わされる
目的を達成した俺は大間を後にする
ここに来る道中で「仏ヶ浦 ○○km」という看板をいくつも見たので、たぶん名所だということでそこに向かう
何があるのかはさっぱり分からないけど、とりあえず行ってみる
これがいつもの一人旅
正直本当に一人だけの一人旅を文章にすると、とんでもなくつまらないと改めて思い知らされる
今朝までの出来事が異常とも呼べる展開だっただけに、ここからしばらくは正直つまらないかもしれない
そのまま海沿いを仏ヶ浦に向かって車を進める
しばらくすると峠のような道に入り、すぐ下は崖という道をくねくねとひたすら進む
ちょっと怖かった
そんな感じの道がずっと続き、こんなとこに何があんだよ・・・って思い始めた頃に仏ヶ浦に到着
到着したところはどうやら駐車場のようで、そこから徒歩で約15分、山道を下ると仏ヶ浦に辿り着ける
ほぼ登山に近いくらいの山道で、帰り道、つまり登りのことを考えると行きたくなかったけどせっかくだから頑張る
少し湿った地面を進むと横向きの丸太を埋め込んだ階段が現れる
そのまま進むと板で足場を作った道が出てきて、その先には階段があった
その階段に差し掛かったところで、仏ヶ浦の全貌が見えてきた
それが仏ヶ浦
ただし普通の岩ではなく、岩石が長い時間海蝕されて出来たようだ
これはちょっと俺の言葉のレパートリーからは説明することが出来ないので、興味があったらググッちゃってください
足元が苔でぬるんぬるんして滑りそうだったことははっきりと覚えている
来た道を引き返し、プチ登山のようなものを乗り越えて車で出発
ここから恐山へ向かう
恐山はちょっと楽しみにしてたとこの一つで、何よりも宿坊に泊まるので久々の布団でゆっくり寝れることが待ち遠しかった
来た道は戻らず、少し遠回りになるけど下北半島をぐるっと回って恐山へ行く予定
道中の峠は崖崩れを起こして片側通行になってるところがあったり、ガードレール無しで隣は崖という道もあった
ちょっと怖かった
ここも観光名所らしく、看板が置いてあった
恐山冷水と呼ばれ、1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めばタヒぬまで若返ると言われているらしい
俺はまだタヒにたくなかったので、2杯に留めて6歳くらいまで若返っておいた
冷水を過ぎると、窓を閉めた車の中にいても硫黄の匂いが漂ってくる
有名なのかもしれないけど、恐山に温泉があるのは知らなかったことなのでちょっと焦った
山道を走り、林を過ぎると少し広いところに出る
そこには小さな橋があり、橋の傍には「三途の川」と書かれていた
どうやらこの先は地獄らしい
思ってたよりも広い駐車場に大きな食堂と土産売り場、隣にはアイス
結構カジュアルな観光地だった
参拝料500円程度を払い、門をくぐる
真っ直ぐ本堂まで続く参道の両脇には灯篭が並べられている
見た感じ大きいけどわりと普通の寺って感じ
ただその先がさすがの恐山
本堂から左に抜けると、有名な恐山の景色が現れる
小さな石を積み重ねている、あの景色だ
賽の河原とでもいうんでしょうか
その石の山は至るところに存在し、むしろ道以外の所には全て石の山で敷き詰められてると言っても過言ではない
石の山の周りには小さな地蔵、そして定番の風車
中には「○○家」と書かれた石もあった
あちこちの岩場からは温泉の蒸気のようなものが吹き出していた
結構本格的な墓も存在し、気軽な観光地とはあまり呼べない空気が漂っていた
あ、でもとてもいい観光地です
「順路→」みたいな看板もあったが、至るところにありすぎて素直に従っているとよく分からんことになる
砂浜のような場所の手前には、両脇に「希望の鐘」「鎮魂の鐘」と書かれた鐘がある地蔵様があった
これは東日本大震災の際に建てられたもので、追悼の意を表しているとのこと
その先の砂浜は極楽浜と言って、何もない、白い砂浜にキレイな湖だけの景色だ
前方を見れば極楽浜、振り返れば地獄
恐山は天国と地獄が存在する、あの世を表しているかのような場所だった
そのままぐるっと周って参道に帰ってくる
ちなみに参道の両脇には小さな横長の小屋があり、本堂に向かって左に2つ、右に1つ
この小屋は温泉になっていて、参拝者は誰でも入ることが出来る
左の2つの内、1つは男湯、もう1つは女湯、右側は男湯という形で別れている
どうせここで泊まるので、この外湯は後で入ろうということでここはスルー
荷物を持って恐山寺務所横の宿坊へ
宿坊と聞いたら古びた建物を勝手に想像していたけど、恐山の宿坊はとんでもなくキレイ
ホテルかと思うほどにしっかりした内装で、寺の中にある宿泊施設とはとても思えない
部屋に案内されると更に驚く
おそらくここは3~4人くらいがベストな感じの部屋で、とても広い
洗面台もちゃっかり二つ用意されているが、俺は一人だけ
広々としすぎている部屋に一人でいるとなんか色んな意味で切なくなり、夕食までは1時間程時間があったので先に温泉に入ることにする
宿坊の中にも内湯があり、大浴場になっている
2日連続温泉なんていう贅沢を味わいながら、濃い硫黄の温泉に浸かる
浴槽内には湯の花があり、けっこうぬるぬるして座ってるとケツが滑る
何度か後頭部から温泉に沈みそうになるのを堪えながら、たっぷりと温まらせて頂いた
そこで俺は何かを閃き、エアコンに近付く
少し屈むとエアコンの送風口がちょうど俺の頭の位置にくる
そうです、俺はそこで髪を乾かすことにしたのです
ドライヤーと違って腕が疲れないし、熱くないので結構カラカラに乾きそう
何か知らんけど楽しくなって、エアコンに向かって一人で頭をわしゃわしゃしながら髪を乾かしていた
もしかしたら少し「あーー」とか声が出てたかもしれない
すると突然、後ろから女性.声がした
??「何してるんですか?」
??「・・・・・」
俺「あ、えっと・・・髪を・・・ね、乾かして・・・」
俺「・・・・(すげー恥ずかしい」
??「そこでですか?w」
見た感じは年下で、有村架純によく似ていた
今思えばね、当時は存在を知らなかったから、ただただすごい可愛い人だと思った
ということでかすみと呼ぶことにする
どうやら風呂上りで、俺の少しあとに風呂からここに来たみたい
俺「あー・・うん、めっちゃ乾くんですよこれ」
かすみ「ふふっ、じゃあ私もやろうかなw」
隣のエアコンで同じことし始めた
かすみは少し背が低いので、普通に立ってるだけでちょうど送風口が頭の位置にくる
俺「でしょ!(出来れば見られたくなかったけど」
かすみ「今日は一人で来たんですか?」
俺「ですよー」
かすみ「ですよね、ここに来る途中で冷水飲んでるの見ましたw」
俺「!?」
かすみ「私バスで来たんですけど、ちょうどその時に通ったんですよねw」
俺「あー・・・なるほど」
俺「そちらは友達と?」
かすみ「あ、私かすみっていいます」
俺「あ・・・俺(名前)です」
かすみ「私も一人なんですよねw」
俺「へー・・・って何で?一人旅ですか?」
かすみ「そんな感じですw」
かすみ「ですね、何かちょっと来てみたかったんですよ」
俺「んーいいとこですよね、想像してたより何かキレイで清清しかったです」
かすみ「そうですよねー。俺さんはどこから来たんですか?」
俺「富山からです」
かすみ「えっ!ほんとですか!?私もですよ!」
俺「!!!」
俺「バスってことは・・電車か何かで?」
かすみ「はい、電車と新幹線で、下北駅からバスです」
俺「はー・・マジですか・・・」
かすみ「偶然ですねw」
かすみ「俺さんは車でずっと?」
俺「ですよー、途中寄り道は結構しましたけどねw」
まさかの同郷だった
そこから寄り道した話やかすみの道中の話をしていたら食事の時間になった
と言うか20人程いて、どこに座ったのか全然分からなかった
その後は部屋に戻り、すぐ後で住職の説法があるとのことで希望者だけ会場に集まった
住職は中々に面白い人で色々な話をした
恐山にはイタコはいないこと
幽霊は出ないこと
恐山で修行したという霊能力者なんて聞いたことない
温泉の硫黄の成分が強すぎるので、空気中の硫黄で電気製品がすぐ壊れること
やはり話し方が上手なので聞き入ってしまった
想像していた説法とは違い、落語のようなそんな空気だった
間違って覚えてるところもあるかもしれないので、完全に鵜呑みにはしないで欲しい
厳密に言えば恐山という場所にはイタコはいる
ただし、恐山という枠の中にイタコは存在しない
つまり、イタコは恐山という場所を借りて商売をしているだけ
恐山はその場所を無償で貸し出しているだけ
いくら恐山に問い合わせてもイタコには繋がらないし、居場所も分からない
「イタコさんにお願いがある」という問い合わせが多いこと多いこと、と住職は愚痴ってました
あえて言えば、昔は連絡先くらいは知っていたそうだ
ただ、泥沼の遺産相続問題でイタコにお願いしたお客が、納得いかずに恐山に苦情を言ってきたそうな
そこで板挟みになって以来、恐山としてはイタコとの橋渡しすらしないことにした、と
更に言えばもう一つ、イタコとは相容れない理由が恐山にはあるとのこと
これは後で述べることにする
これについては決して住職の強がりでも何でもない
見たという人は是非私に直接教えて欲しいと言っていた
何年もここにいて、夜中に何度か散歩したこともあるが、人魂一つ見たことがないと
幽霊というものがここに存在するのであれば、是非出てきて欲しい
たまーに聞く恐山での幽霊話なんて、もし仮にそれ目当てで来たお客さんをがっかりさせることになる
出るなら定期的に、最低でも1ヶ月に1・2回程度は出てもらわないと困る、と
そもそも恐山の本尊は地蔵菩薩
弱い霊も救って成仏させるという慈悲深い地蔵菩薩様がいるのに、成仏出来ない霊が彷徨うなどということはあってはならない
そして霊という存在自体、いるかいないかは証明は出来ない・・と言っていたが、これについては何か難しい話になったのでうまく言葉にできない
ちなみにイタコについてだが、弱い霊も成仏させてくれるという地蔵菩薩を本尊におく恐山
対してタヒんでしまった故人の魂を呼ぶとされるイタコ
成仏させる恐山、霊を現世に呼び戻すイタコ、どう考えてもこの二つが相容れることはないとのこと
他にも沢山話を聞いたけど、何となく覚えてはいても文章にして伝えることが出来ない
気になる人は恐山に泊まっちゃって説法聞いちゃってください
ここで外湯の存在を思い出し、浴衣に着替えて外に向かう
外湯のある参道に出ると、少しの明かりを残して見事なまでに真っ暗
日の光が消えた寺というのは少々怖いものがあるが、住職を信じて外湯へ向かう
まずは参道から左側
かなり古い横長の小屋の戸を開けると、のれんも何もなく、いきなりの脱衣所
そして脱衣所と湯船との間に木の壁はあるものの、上部は胸くらいまでしかないので入ってすぐに湯船が見える
シャワーも何もなく湯治湯のような温泉なのでここで身体を洗うことはない
ちなみに湯船は2つあり、小さく、せいぜい4人が限度といった狭さで、既に合わせて3人程入浴中だった
湯船に入ると相変わらずの湯の花
ケツが滑る滑る
ただ狭い湯船なので、背中を壁につけて足を前に投げ出して身体を固定すれば滑ることはない
10分も入るとかなりしんどくなる熱さなので、5分程度で湯船の縁に腰掛け、少し涼む
これを2度程繰返して次に向かうことにする
なんと言ってもここは山の中なので空気もキレイ(硫黄臭いけど
続けて参道を横切り、もう一つの外湯へ入る
ここでもほとんど同じような感じだったけど、入ってすぐの脱衣所と湯船の間の壁の造りが違った
こちらは入ってすぐ両脇に脱衣所があり、正面に壁がある
先ほどのよりも少し高いけど、少し伸びれば余裕で湯船が見える
ただ、壁の両側が空いているので、その壁ももはやあってないようなもの
先に入ってるおっちゃんたちに見られながら着替えを済ます形となる
同じように温泉に入り、外に出て散歩する
気持ちいいけど湯ざめしない程度に散歩して戻ろうとすると、もう一つの外湯があることを思い出した
恐山の境内地図に載っていたが、参道沿いではなく、宿坊の裏手にぽつんとあるようだ
何を隠そう、そこは唯一の混浴だった
万が一鉢合わせたら恥ずかしいじゃないか
もっと言えば、男だけ集まってたら何か情けないじゃないか
混浴自体には興味はなかったけど、せっかく来たんだから全ての外湯には入っておきたかった
今はみんなが自由時間であり、外湯巡りをしている人も多かったので混浴に誰かがいる可能性.大いにある
そこで俺は早朝に混浴の外湯に入ることにして、宿坊に戻った
部屋に入ると俺はすぐに寝た
確か時間は9時くらいだったので、大体4時くらいに起きればちょうどいいだろうと思い、眠りにつく
ちなみに恐山宿坊には朝のお勤めがあり、それは6時から始まる
十分に間に合うので、ゆっくり浸かることを妄想しながらいつの間にか寝てた
布団で寝るのは久々だったしね、ほんとうにゆっくり寝れたと思う
これまたいい時間に目が覚めたと気分がよくなる
身支度を済ませ、しばらくぼーっとしてから外湯に向かう
5月と言えども、早朝の青森、そして山の中ということもあり結構肌寒かった
やや駆け足で宿坊の裏に回り、混浴の外湯を発見する
寒かったのでさっさと中に入り、5月なのにさみーなぁ・・とか独り言言いながら浴衣を脱いだ
浴衣だから脱ぐのはもう一瞬だよね
で、湯船に入ろうと目を向けると衝撃的な光景が目に入る
誰かいる
しかも女性.
俺「・・・・・・・・」
俺「あっ!すいません、後できます!」
急いで浴衣を着て外に出ようとする
??「いえ!どうぞ。気にしないでください」
俺「!!?」
??「寒そうなんで気にしないでくださいw」
俺「じゃあ・・・すいません、失礼します」
湯船に向かうと、女性.顔がはっきり見えた
かすみでした
かすみ「おはようございます」
俺「おはようございます・・・」
湯船は2つあり、かすみは手前に入っていたので俺は奥の方に入る
俺「・・・・・」
かすみ「・・・・・」
俺「朝、早いんですね」
かすみ「あ、早朝なら誰もいないかなーと思って」
かすみ「せっかくだからこっちも入っておきたかったんですけど、夜だと結構人がいそうで恥ずかしくて」
かすみ「だから朝にしたんですけど、もしかして同じこと考えてましたねw」
俺「全くそのとおり・・・早朝なら誰もいないかなーと思ったけど同じこと考えてましたね」
昨日の夕方に話した時と同じように話すことが出来て、なんとか普通に会話することが出来た
本当はダメなのかもしれないけど、2人ともタオルを湯船の中に入れて隠していたし、少し白濁なので目を凝らさなければ中は見えない
かすみ「俺さんはいつまで連休なんですか?」
俺「8日までかなー」
かすみ「へー、なんかちょっと連休ズレてる?んですね」
俺「そうだね、全員で一気に休むわけにはいかないから、少しズラして連休もらうんだよ」
かすみ「なるほど!私は12日くらいまで休むつもりですw」
俺「長いねw てか学生さん?」
かすみ「そうです、大学2年なんですよ」
また大学2年生
なんだろう、大学2年て旅に出たくなるお年頃なのかな?
でもあの2人に比べると落ち着いてると言うか、個人的にはすごく話しやすい印象だった
かすみ「うーん、車だったら色々行けそうですけど、このまま帰ろうかなーと思ってます」
俺「え?でも12日まで休みなんでしょ?」
現在は5月5日
かすみ「そうですけど、うーん・・・」
俺「何かあるの?」
かすみ「いえ、予定とかはないんですけど、行きたいところがここだけだったので、帰ってゆっくりしようかなって」
俺「なるほどー、まぁゆっくり休むのも大事だよねw」
かすみ「俺さんはこのまま帰るんですか?」
俺「そうだね、こっからは帰るだけだけど、来た道戻るのも面白くないから日本海側から色々周って帰ろうかなと」
そんな感じの話をしながら、かすみは暑くなったのか湯船から出ようとしていた
俺「うん、色々ありがとう」
かすみ「いえ、こちらこそ楽しかったです」
かすみ「・・・・」
俺「・・・あっ、ごめん」
俺はそのままの形だったので、かすみが湯船から出ようとすると視界に入る
それを気にしてかすみは出れなかったようで、俺は空気的にそこに気が付いてしまった
俺はかすみに背を向けると、かすみは小さく「すいません」と言って着替えを始めたようだ
かすみ「ではお先に行きますね」
俺「うん、俺ももう出るよー」
かすみ「あ、すいません、私出ないと上がれないですよね・・・失礼しますね」
ガラッと音がして、かすみは出て行った
俺も結構のぼせそうな感じだったので、そのまま湯船から出ると身体を拭いて浴衣を着る
外に出ようとガラッと戸を開けると
かすみ「あっ」
俺「!!」
外に出てすぐ横にかすみが待っていた
かすみ「良かったらちょっと散歩しませんか?」
俺「え?あ、ぜひぜひ!行きましょ」
昨日の夜と同じく、俺も正に散歩してから戻ろうと思っていた所だった
本堂の奥は岩場になっているので、宿坊のサンダルで来ていた俺たちはそこで足止めとなった
本堂にお参りして、ゆっくりと参道を歩いて戻った
かすみ「気持ちいですねー」
俺「うん、朝はやっぱり空気いいね」
チラッと横を見ると、肩より少し長いストレートの黒髪を後ろで束ねたかすみが隣を歩く
浴衣から覗くうなじが綺麗で、ついつい見とれる
宿坊備え付けの巾着袋を両手で持ち、木製のサンダルで歩く姿は、可愛いというより美しいという表現がよく似合っていた
俺「あのさ・・・」
俺「もしこのまま帰るんだったら、良かったら一緒に帰らない?・・かなー・・・って」
かすみ「えっ・・・」
なんかついつい言ってしまった
このままここで別れてしまうのがちょっと寂しかったんだ
かすみ「あ・・・でも・・・」
俺「無理にとは言わないけどさ、同じとこに帰るなら一緒にどうかなーと・・・」
かすみ「・・・・・」
俺「・・・あ、でもごめん、泊まるとこ多分車の中になるから・・・だめか、忘れてw」
かすみ「・・・・」
かすみ「俺さんがいいなら・・・」
かすみ「いいですか?一緒に行って」
俺「や、でも泊まるとこが」
かすみ「大丈夫ですよ、そういうのは。さっきもそうですけど、なんか俺さんはそういうとこ大丈夫そうw」
かすみ「それに秋田の方から帰るんですよね?そっちもちょっと行ってみたいです」
どうやらかすみは混浴でのことで少し信頼してくれたらしい
後で聞くことになるけど、一人旅は今回が初めてで、思ったより寂しくなったんだそうだ
だからこのまま帰ろうとした所で誘ってくれてちょっと嬉しかったと
そして2人っきりになっても手を出さないところ、というかはっきり言って奥手な印象を受けたから大丈夫そうだと思ったと
つまり根性.し、所詮は童/貞
いやそこまでは言ってないけど、要するに一緒に寝ても大丈夫そうだということだった
俺「あ、あぁ・・・ほんとに?」
かすみ「はい」
俺「おー・・・よし、じゃ行こう!」
かすみ「何時くらいに出る予定ですか?」
俺「うーん、8時・・・か9時くらいかな?ご飯終わってからもう一回内湯に入ってこようかなって」
かすみ「なるほど、私もそうしますね!じゃあ8時くらいにロビー集合でいいですか?」
俺「そうだね、そうしよっか」
そのままロビーで別れて、お互いの部屋に向かった
お勤め前にかすみと再開し、そこから一緒に行動することになった
まぁ・・・普通にお経を聞いただけだったから何も言うことはない
ちなみに私は神も仏も全く信じていないけどこんなとこに来ている
その後は朝食だったが、相変わらず席は決まっているので別々に食事をとる
ちなみに夕食もだけど、精進料理のような感じでちょっと少なめ
朝食を終えて部屋に戻り、荷物を整理してから大浴場へ向かう
身体を洗って部屋に戻るまで、かすみと会うことはなかった
8時を過ぎた頃だったのでロビーに向かうと、かすみはもう座って待っていた
俺「ごめん、待たせたかな?」
かすみ「いえ、ほんとに今来たところなのでバッチリですw」
2人でチェックアウトして、かすみの荷物をトランクへ、そしてかすみは助手席に座る
かすみ「改めて、よろしくお願いします(ペコッ」
俺「うん、こちらこそ」
俺「て言うかそんな敬語じゃなくてもいいよ?」
かすみ「ほんとですか?でも何か慣れないのでたまに敬語出ちゃうかもですw」
俺「無理にタメ口にしろってわけじゃないから、話しやすい方でw」
かすみ「じゃ、基本タメ口で、あんまり気にしないで話すことにしますねw」
そう言ったかすみは早速敬語だった