それで彼の実家にご挨拶に行ったとき、母親がニコニコして玄関に現れたのに私を一目見てからは急に静かになった。
父親は単身赴任中で、妹さんは合宿か何かで留守だった。
彼が一生懸命場を和まそうとしてくれたけど母親はほぼ無反応で、なんか私、嫁候補としてはNGらしいなと感じた。
帰り道で彼に「なんか私、嫌われたっぽいね。なんか拙いことしちゃったかな」って言ったら、彼が「そんなことないと思うけど、今晩聞いとく」って言われて、お茶したあと別れた。
何故か理由を聞いたら「私の人間性を否定してるわけではないので、そこは分かってほしい」と言いつつ「背が低いお嬢さんはちょっと」って。
私、身長153cmでチビではあるけど、それが結婚の障害になるなんて晴天の霹靂とはまさにこのこと。
ちなみにその母親も私と同じぐらいの身長で、彼は175cmぐらい。
で、母親の説明によると、父親は160cmぐらいで妹さんは150cmに少し足りないぐらいなんだって。
「父方も母方も親戚は低身長な人ばかりで、そんな中でやっと170?越え(彼)が生まれて低身長の遺伝をなんとかしたいと常々夫婦で話してた」そうで、息子の嫁には170cmぐらいある女性を望んでたらしい。
そんなこと言われて「そうですか、じゃあ結婚止めます」とは思えず「それなら彼にそういう女性と付き合うように小さいころから言い含めておけばよかったじゃないですか。ここまで来てそんな理由で断られても私の気持ちはどうなるんですか?」と反論したら、申し訳ない申し訳ないって謝ってきたけど「息子が女性とお付き合いしてることを知らなかった」そうだ。
就職後には一人暮らししてるとは言え、大学卒業するまで自宅通いだったし、そんなもん?
その後、彼とご両親の大バトルがあった。
父親も母親と同じ意見で、単身赴任先から戻ってきて彼を説得したらしい。
妹さんだけが味方になってくれて「私が好きな人との結婚をそんな理由で断られたら死ぬほど辛い」とまで言ってくれたらしいけど、せめて160cmはないと無理って言い続けてたらしい。
うちの両親も「そこまで反対される家庭に嫁がせるのは・・・」と不安がっていたら、俺の両親の許可なんか要らんって彼が言ってくれて「今後一切自分の家族とは接触させないから」と私の両親を説得してくれて結婚。
結婚式は教会で私両親と彼妹と、互いの親友だけを呼んでひっそりしたものだった。
結婚してもうすぐ10年、子供も男の子がふたり生まれたけどまだ身長が伸びるかどうかわからない。
彼の実家には、彼の宣言通り一度も行っていない。彼の両親はいまだに私を嫁と認めてないようだし。
思い出すと今でもちょっと面白かったのは、義妹が母親に言い放ったという「デカ林素子ぐらいじゃないと遺伝に勝てるか」と言う言葉。
その義妹は165cmぐらいの男性と結婚したが、やはり身長のことで反対されたらしく義父母とは疎遠気味。
「それ以上大きな人だと首が疲れるのよ」って言ってた。