かなーり前、私の実家の近所にAちゃんという子がいた。私より10歳くらい下の子ね。
Aちゃんはお母さんとお母さんの再婚相手とアパートで暮らしていてニコニコ挨拶するいい子だったけれど、お母さんが病気で亡くなってから、養父さんだけじゃ世話が行き届かないのか汚れた服装になってアパートにお水っぽい女が出入りするようになった。
あきらかに叩かれてるアザとかあったし、痩せてたから、保健婦さんや児童相談所に近所の人が通報したけれど「保護者がいるから保護できない」って言われて終わりだった。
夜中に悲鳴が聞こえることもあって、そういう時は警察が来たりしたけど、口頭注意だけで養父さんが逮捕とかは全然されなかった。
児童相談所は「親といるのが子供にとっては一番いいんですよ」の一点張り。
いや叩く親なんかいいわけないじゃん、だいたい血つながってないしと言ったけど「親は親。そういう言い方は差別(キリッ」で済まされた。
ある日Aちゃんが骨折するほど酷く殴られて、ようやく施設保護になった。
けど養父さんがすぐ引き取りに来て、そういう時拒否する権限がないとかで、また元通りになった。
近所の皆は養父さんが怖いからAちゃんにこっそりお握りやジュースをあげたり、トイレを貸すくらいしかできなかった。
私が高校生の時、Aちゃんは養父さんと引っ越してしまって、その後どうなったかわからなかった。
私は今実家から離れた土地で暮らしていて、親とは週1〜2電話でしゃべるくらい。
母が電話で「そういえばAちゃんが来た」と言い出した。
当時Aちゃんに特に優しくしてたBさんていう人がいて、「Bさんにお礼が言いたいけどお店が閉まっている(Bさんは商店をやってた)からどこへ言ったか知りませんか」と聞きに来たらしい。
Aちゃんは標準より小柄だけど元気そうで、普通のこぎれいな格好をしてたそうだ。
ちょうど母に家にご近所さんがお茶のみに来てたので、家に上がらせて話を聞いたら、引っ越した先の児童相談所はこっちとは違って熱心で、病院や警察と連携ができていて「殴られて入院したら即施設に連絡がいって保護された」とAちゃん。
養父が引き取ると言ったら引き渡さなきゃいけないのはこっちと同じだけれど、アフターケアがちゃんとしていて、家に訪問とか、養父にカウンセリングとか色々しているうち、養父が面倒くさくなったのかAちゃんを施設において失踪。
その後、行政が亡くなったお母さんの妹さんに連絡をつけてくれて、引き取られたらしい。
Aちゃん「養父が死んだとわかって、養父に会う心配がなくなったからBさんにお礼に来た」
Bさんは今娘夫婦と同居してるから、そこの連絡先を教えたらお礼を言って帰っていったそうで、母は「たまたま福祉がしっかりしてる地域に引っ越したから助かったんだね。いきなりいなくなった時は心配だったけれど、こんないい「たまたま」もあるんだね」と感心していた。
今の児童相談所がどうかは知らないけれど、当時は地域差が大きかったんだと思う。
逆に言うと引っ越してなかったらAちゃんは最悪死んでいたかもしれないわけで、めぐり合わせってあるんだろうね。