その中のA社、テナントビルに入ってるそこそこ名の知れた会社の営業所で
入ロすぐにあるカウンター窓ロでやり取りをするんだが
いつも奥の方の席に座ってる気になる女性がいた。
気になるって言っても好意があるとかそういうのじゃない。
そこの席だけロッカーや観葉植物で影になったような席でちょっと暗くて
他の人たちが談笑してても話に加わらず、表情もなく黙ってる。
(と言ってもそこに滞在してるのはせいぜい10分ぐらいだけど)
その人が誰かに話しかけるところも見たことない。
ていうか歩いてるところも見たことなくて、いつも同じ姿勢で座ってる感じの
とても暗い印象の女性だった。
ある時、いつもの窓口の女性とちょっと雑談になった時に「あの人、大人しいですね」って
言葉を選んで聞いてみた。
そしたら「どの人?」って言うから「あそこのパキラ(木)の横の席の」って言ったら
「え?どこ?」「あそこの観葉植物の左側の席の髪の長い人ですよ」って言ったら
「あの席はずっと誰もいませんよ」って言われた。
冗談や嘘言ってるふうでもなくサラッと言われて、それ以上何も言えなかったんだけど
職場へ戻る道すがら、あれは霊なのか?見えてたのは俺だけなのか?って怖くなって震えた。
そんなこと聞いたものだから、次の納品の時は怖くて怖くてそっち見ないようにした。
で、さっさと納品済ませてビルを出ようとしたら窓口の女性が追いかけてきた。
「ごめんごめん、そんなに怖がると思わなくて」って笑いながら
「あの人はね、みんなにハブられてるだけ。結構しつこくて辞めないのよねー」って。
ものすごく朗らかに楽しそうに言うんだよ。そんなことを。
俺、思わず「いや、そういう話だったらもっと怖いっすよ」って言ってしまった。
そしたら笑顔が高速でどっか行って「あそー」って言って戻って行った。
職場に戻ったら上司に
「次回から別の人に納品に来てくれって言われたけどなんか粗相でもしたか」って言われて
カクカクシカジカ・・・と話したら「こわぁ・・・」と言って「まぁ気にするな」って言ってくれた。
俺、ホラーとかすごい苦手だけど、ああいう職場はもっと怖いと思った。
ホラーといい勝負の闇の深さだね…