元々専用のソフトで画像を作ったりするのが好きだったらしい。
その子(以下A)は良いカメラを持っていて、皆で写真を撮る時はいつもAのカメラを使っていた(撮影する人はその時によって様々)。
その後、Aが明るさや色味、ボケ等を奇麗に修正した画像を皆に送信してくれたりプリントしてくれたりした。
毎度毎度じゃ悪いから遠慮するんだけど、Aには写真への拘りがあるらしく、私に任せて!やらせて!って言ってた。
そしてやがて、写真の中でAの姿だけが奇麗に修正されている事に気付いた。
それまでは風景や全体の修正しか気付かなかったし、確かにAはいつもすごく写りが良いけど、人間を修正しているとは思ってなかった。
まあでも、そんな事いちいち突っ込むのも野暮だし別に良いかって思った。
Aの自己修正はだんだんエスカレートして行った。
顔を小さく白く、目を大きく光を入れて、体は細く、足は長く。
どの写真でも、Aがピカイチの美少女になっていた。
だからAの写真を誰かに見せると、食いつきが凄かった。アイドルみたい!って。
そしてAは、他の人のカメラには絶対に写りたがらなかった。
たまに入るときも、凄く小さく、顔が分からない程度にしか入らなかった。
卒業アルバムの為に学生時代はカメラ係を買って出て、奮闘していた。
そして出来上がった写真は見事にAだけ美少女に修整されていた。
周りは修正に気付いていたと思うけど、Aの情熱に皆無言だった。
誰だか分からないレベルになっていた。原型はほぼ無かった。
でもAは満足していたようだし、周りも特に突っ込まなかった。
けど、20過ぎてくると周りの皆が実際奇麗になってくる。写りも上手くなる。
そうなると、今まで写真では一人勝ちだったAの美少女っぷりが霞んでくる。
本当の美人が出始めると、Aの自己修正画像は不自然で幽霊みたいに見えてくる。
するとAは、あろうことか周りの女子を不細工に修正するようになった。
肌は暗く汚く、頭は大きく、目は小さく、体は太く。
それをSNSにあげたりプリントして配ったりした(前からもやっていたけど)。
ネット上では、ずげえ!Aちゃん天使!女神!周り酷過ぎww のオンパレード。
男の人というのは不思議なもので、実際のAを知っている人でも、写真が可愛いと現実でも「可愛い」加点されるようだった。
その頃から、私達はAと距離を置き始めた。就職する頃には疎遠に。
因みに、Aは凄いブスとかデブとかいう事も無く、言動も至って普通でした。
写真だけがおかしかった。
数年後、Aが結婚。結婚式に招かれて、一応仲間と参加。
後日送られてきたアルバムを見て仰天、Aの姿は全て強烈に修正され、本当に本当に、誰だか分からないレベルになっていた。
箕輪はるか→堀北真希レベルをも大きく超えていた。
A以外の人は普通に写ってる。
挙式も披露宴も二次会も新婚旅行も全部Aだけ超美人女優。
もはや感動すら覚えた。
親しい人にそれとなく聞いたら、カメラはやはりAのもので、撮影はカメラ趣味の人にして貰って、編集と製本はAが行ったそうだ。
その話をしてくれた人も何か言いたそうにしていたけど、言わなかった。
まあ、本人が満足なら、悪い事をしている訳ではない…のかな…。
更に数年経って、地元で、Aが離婚した、子供も夫に取られたという話を聞いた。
慰めも兼ねて地元で同窓会が行われて、つい参加してしまった。
A曰く、A元夫は自分の友人や仕事仲間に絶対にAを紹介しなかった、電話は良いのに集まりには絶対に来るなって言う、浮気でもしてるんじゃないかって険悪になってなんとなく…だそうだ。
それを聞いて、修正の件だろうなあと何となく思った。
でもA元夫だってそれを知ってて結婚したんだろうし、写真修正はもはやAのライフワークなんだろうから少し気の毒に思った。
慰めていたら、Aが「夫に取られちゃったけど、娘は愛しい、可愛い。
今は私に生活力が無いから無理だけど、いつか一緒に暮らしたい」と幼稚園の娘さんの写真を見せてくれた
見事に、全て修正してあった。衝撃の美少女になっていた。
隣で微笑むAはミラクル美人ママ、パパやトメらは修正無し。
かなりの枚数(写メ含め)見せてもらってけど、全て修正してあった。
どの程度の修正か分からないけど、してある事はハッキリ分かる。
離婚の原因が分かった。怖かった。
それには何も言わずに解散した。
仲が良い子と飲み直していたら、彼女はAの娘をよく見かけていたそうだが、あの写真とは全く違う、全く面影がないそうだ。
子供同士が同じ幼稚園だったけど、行事の度にAがカメラ役を買って出て、同じ事の繰り返し。
Aトメは「孫の本当の姿は絶対に残せないのかしら」と零していて、遂にA元夫がキレたという形だそうだ。
一番スレタイだったのは、赤ちゃんのA娘画像も修正されていたこと。
私にも娘がいるけど、画像を美少女に修正したいなんて思った事無い。
Aは、なにか闇を抱えている人だったのかなあ。
とりあえず乙
プロの修正屋になればよかったのに…
整形に嵌らなくてよかったなとしか言えんわ