しょうがないから出た
・娘から事情は全部聞いた
・私(義父)が責任を持って相手に償いをさせる
・近いうちに嫁実家に来て欲しい
みたいなこと言われた
「でも俺、いま仕事休めないんで無理っすよ」
「ならば平日の昼間に時間を作ってくれないか?日程の都合がつ
いたら教えてくれ」
「ハァそれなら別にいいっすけど」
みたいな感じ
それと「娘が24君と話したがっている。話しだけでも聞いてやっ
てくれないか」って言われた
で、俺が軽く拒否ったりして少し押し問答
でも結局は嫁と話すことになった
いったん電話切って、しばらくしたら義父の携帯からまた電話か
かってきた
嫁からだった
嫁の電話は着拒してるからね
で
嫁はなんかいろいろゴメンナサイとか許してとか言ってたから適
当にハイハイ相槌打っといた
どうせもう離婚するんだから許すも許さないもないわな
で、なんかいろいろ言い訳っていうか経緯?浮気に至った心情とか
自分語りしだしたから「いや別にそういうの興味ないから」
って遮った
そんなことより満喫のフラットシートが埋まることのほうが重大
だっての
で「いまどこに住んでるの?ちゃんとゴハン食べてる?」とか余
計なお世話まで言い出した
「いやそれ君に心配してもらう筋合いないから」
「私の顔見たくないからアパートに帰ってないなら私いま実家に
戻ってるからもう大丈夫だよ
24が許してくれるまでアパートには戻らないから
ちゃんとお布団で寝てよ」
だってさ
正直この申し出はありがたかった
満喫生活にも疲れて来てたしね
でも
「お前がどこにいようがお前の自由だし、
俺がどこで寝ようが俺の自由だろ
いまさら心配するフリとかしなくていいから」
って言って電話切ったった
で、久々にアパートに帰った
そりゃそうでしょ?
だって自分のベッドのほうがやっぱ寛げるもん
久々に家に帰ったらあちこち掃除されてて妙にキチンとなってた
冷蔵庫開けたら日持ちしないものは全部処分されていて代わりに
俺の好きなビールが補充されてた
なんかね、部屋中が媚びてる雰囲気が全開なの
テーブルに書き置きらしき封筒があったから丸めてゴミ箱に捨てた
毎日仕事に行って帰りにバイトとラーメンとか食べて帰って、
就職情報誌パラパラ捲って寝た
で、昼前に起きて洗濯とかして昼飯軽く食べてから出社
ビールには手を付けなかった
それを飲んでしまうと嫁の「媚び」を受け入れたことになる気が
したから
まあとにかくそんな日々が続いた
何度か義父から電話あったけど無視したり「なかなか都合つかな
いっす」とかスルーしてた
ちなみに当時の俺は週休2日制だった
で、一週間謹慎したから公休2日+5日欠勤
で、土曜と日曜はランチ営業もあるから平日1.5日ってカウント
だから平日に換算すると6日ぶん穴を空けた計算
これを穴埋めするには三週ぶんの公休を返上
つまり四週間休みなし
な?ブラックだろ〜?
だけど社長に言わせると
「そこまで含めて自分の尻拭い」だそうだ
で、しばらくは特に何もない日々を過ごしてたんだけど、そのう
ち家賃とか公共料金のことが心配になりだした
今までそういうの全部嫁に任せっきりだったからね
ポストにもなんか明細みたいなの届いてたし
あと、キチンと片付けられてるとはいえ、嫁の荷物も目障りだしね
やっぱ一度キチンとしたほうがいいのかもってことで
義父にアポ取った
平日の午前中に嫁の実家に行くことになった
昨夜ちょっと書いたけど、嫁の実家は割と金持ち
ちょっとオシャレな住宅街にある
で、ガレージには自慢のクラウンの隣にもう一台それ系の車が停
まってたから俺は適当に路駐
ピンポン鳴らしたら義母が出てきて和室の客間に通された
したら嫁と義父の他に背広姿のオッサンが2人いた
1人は死んだサカナみたいな目をした40ぐらいの貧相な中年
もう1人は60ぐらいのチビハゲ
サカナほうが例の上司?じゃあチビハゲは誰だ?
ってか俺どこに座りゃいいんだろ?とか思って
突っ立ってたらチビハゲが
「や、や、この度はウチのものが大変なご迷惑をおかけしまして…」
とか言いながら立ち上がった
で、名刺渡された「はあ…」とか言いながら名刺見たら嫁の会社の
代表取締役だった
「さ、さ、おまえもご挨拶しないか」みたいに促されてサカナも立ち
上がろうとしたから
俺
「いや別に名刺とかいいっすよ、この人が嫁の相手ってことっす
よね?」
チビハゲ「ま、ま、そう仰らずに…」
とか言ってきたからスルーして義父に
「で、どこに座ればいいっすか?」
で、義父に言われた場所に座った
一番上座に義父、その隣に嫁、
義父の向かいにチビハゲ、その隣にサカナ
俺は嫁とサカナに挟まれたお誕生日席
うまく言えないけど伝わった?
で、義父が「まずはサカナクンが謝罪をしたいと言うことだ」って言った
サカナは
「この度は私の不始末で大変なご迷惑をお掛けしてしまい
誠に申し訳ありませんでした」
って誰の目も見ずに言ってプルプル震えながらちゃぶ台に頭擦り
付けた
チビハゲも「〇〇社さんからお預かりした大切な娘さんに…なんとお
詫びを申してよいのやら…」って
えっ?なにそれ?ちょっと意味がわからん
嫁って親のコネで就職してたってこと?
全然知らんかったわ
俺の困惑を察知したのか義父が口を開いた
「いや、実は娘は私の会社が お付き合いさせて貰ってる会社で面
倒見て貰っていたんだがね…
ここなら間違いないと思って安心して任せていたんだがね…
まさかこんなことになるとは……
ねっ!〇〇さんっ!!」
最後はチビハゲに向かって怒鳴ってた
義父は全国区とは言わないが県内では有名なA社の常務
で、嫁はA社の下請けのB社に義父のコネで就職したらしい
だからB社は社長まで乗り出して得意先の重役の怒りを鎮めに来
たってわけ
チビハゲ「いやはやまったくもって申し訳御座いません
このたびのことは全てこのバカ(サカナ)と私の責任でございます
嫁子さんには大変なご迷惑をおかけしました
さ、さ、おまえももう一度お詫びしろ」
サカナ「申し訳ありませんでしたっ!」
サカナ今回は義父に向かって頭下げてら
なにこれ?この流れって俺いらなくね?
どうやら彼等のなかではサカナが加害者で嫁は被害者って図式らしい
俺から見りゃ嫁こそが加害者なんだけどね
まあ会社同士のパワーバランスって言うか「大人の事情」なんだ
ろうけど、そんなの俺の知ったこっちゃないし
そもそもこのチビハゲ誰だよ
俺とは無関係じゃん
サカナだって謝罪ったって義父にばっか謝ってんじゃん
謝るなら俺に謝るのがスジじゃねーの?
嫁にいたっちゃさっきから一言も口きいてないし
俺こいつと家賃の話しをしにきたのにな
そしたらイライラしくてきた
俺「あの、ちょっといいっすか?」
チビハゲ「ははっ何なりとっ」
俺「俺今日は嫁に話しがあって来たんすけど、なんか俺とは関係
ない話ししてるみたいだから出直しますわ」
義父「何を言ってるんだ、今日は24クンの為に彼等を呼び出したんだぞ」
チビハゲ「そ、そ、そうですよ
今日は24さんにお詫びを申し上げる為に参上した次第でありまして…」
俺「じゃなんでコイツ(サカナ)は俺のほう見ないの?コイツ一度も俺
と目合わせようとしないんだけど?」
チビハゲ「や、や、」
それでも下向いて黙ってるサカナ
俺「てめえも何とか言えや」
イラッとして前髪掴んじゃった
そしたらコイツ俺のこと睨みやんの
思わず殴っちまったよ
正しい
義父「24クン!」
嫁「キャッ」だか「ヒャッ」だか
チビハゲ「ちょ、ちょ、そう興奮なさらずに…」
でね、暴力振るっちゃったことある奴なら解ると思うんだけど、
暴力って一度振るっちゃうとその行為自体に自分が興奮しちゃっ
て興奮がエスカレートしちゃうんだよね
ギャーギャー喚きながら何発か殴っちまったよ
義父とチビハゲもなんかギャーギャー喚いてた
で嫁の「やめてっ!」って声で我に帰った
ああなんだそうか
まだコイツのこと庇うんだ
なんかもうバカらしくなっちゃった
で
「もういいわ
帰りますわ
離婚の話はまた今度来ますわ」
って帰ろうとしたらサカナがボソッと「障害事件で訴えるぞ」とか抜
かしやがった
勝手にしろやと思ったら
チビハゲ
「な、ば、キサマは何を言っとるんだ
そんなことしたらキサマのクビぐらいでは済まさんぞ」
ああまだ「大人の事情」なわけね
チビハゲ
「ま、ま、24サンも興奮なさらずにここはひとつ穏便に…
そうだ、サカナクン、あれをお渡ししろ」
サカナがのろのろとカバンから何か取り出す
でも目は俺を睨んだまま
まあそれはそうだろうけどね
で、まあアレって言ったらアレなわけよ
結局最後まで中身確認しなかったから正確には判らないけどたぶ
んキリよく500マソだったんじゃないかな?
だいたいそれぐらいの厚み
チビハゲ
「多大なご迷惑をお掛けした24サンにせめてものお詫びのしるしと
思いまして…」
俺「いるかそんなもん!」
いやほんとは欲しかったんだけどね
だって500マソだよ500マソ
それだけありゃ引っ越し費用どころの話しじゃないじゃん
そりゃ普通に欲しいわな
でも、その金を受け取ったら負けなような気がしたんだよね
義父「24クン!大人になりなさい!」
自分でも自覚してることを他人に言われると頭くるよね
それがガキって証拠なんだろうけどね
俺「大人ってなんすか!?
力関係チラつかせて
ふんぞり返って被害者ヅラすることっすか?
カネで解決することっすか?」
義父「そんな話しをしているんじゃない!」
俺「じゃあどういう話しなんすか!」
チビハゲ「ま、ま、とにかく離婚だけは考え直して…」
俺「アンタは黙ってろや!」
俺「じゃあ聞きますけどコイツ(サカナ)は
俺とアンタ(義父)に頭下げて詫び料包んで、
で、コイツ(嫁)はコイツ(サカナ)の奥さんや
家族に頭下げたんすか?
詫び料渡したんすか?
アンタ(義父)も一緒にアタマ下げてきたんすか?」
チビハゲ「いやいやそんな滅相もない…」
俺「だからアンタは黙ってろや」
俺「それがスジってもんじゃないんすか?」
ここで嫁が口を開いた
嫁「お父さん、もういいから…」
俺「何がいいんだ!
おまえもメソメソ泣いて
パパに尻拭いしてもらってないで
自分でスジ通せや!」
で、義父がまだなんか言ってたけどシカトして部屋からでた
廊下でオロオロしてる義母と目が合ったけどこれもシカト
そのまま家に帰った
ちょっとって言うかだいぶ盛ってるけどだいたいこんな感じの面
談だった
次の結婚で嫁が当たりな訳?
で
でも、今ならお義父さんの言ってたことも理解できるんだよね
お義父さんは自分の持つ全ての力を使って娘の幸せを守ろうとし
ていたんだよね
何が本人にとって幸せかはともかくとして、それが娘の幸せだと
信じて動いていたんだよ
自分の目の届くところに就職させたのだってそうだし、
筋も道理もなく力関係を使って一方的に「被害者」という立場に
持ち込んだのもそう
推定500マソのカネだってそれが娘の幸せに繋がると思ったから作ら
せたんだと思う
そういうふうになりふり構わずに何かを守ろうとすることがお義
父さんの言う「大人になる」ってことなんだろうね
お義父さんだって自分のしていることが道理に反してるってのは
百も承知だったと思うんだ
チビハゲだってそう
得意先からの道理を無視したムチャ振りに敢えて従うことで大事なも
のを守ろうとしただけなんだよね
今ならわかるんだけどね
でも当時は納得できなかった
義父も500マソも糞食らえだと思った