とんでもないしきたりのあるクソ田舎www
十歳上の許嫁とかリアルで有ったとんでもない所です
で、例外なく僕にも許嫁がいました。
仮に名前を有紀子とします。
ただ、村の権力者の大地主の所の娘。
本来なら僕の実家の様な弱小農家と許嫁など結ぶことがあり得ないのだが、
僕らの生まれた年に許嫁を結べる子供が居なかった(ここは聞いた話なんでよくわからない)
というのと、地主夫婦がまだ若く、家を継ぐ男の子がどうせ生まれるという
理由で、彼女と許嫁になったらしい。
婆ちゃんなんてその話が決まった時(僕が生後半年位)
神棚に一晩中お礼を言い続けたらしい。
また、村でもちょっとした話題になったという
彼女の家にも頻繁に遊びに行ってたし、小学校一年くらいまでは一緒に
お風呂に入ってた。
家の人もかなり暖かく迎えてくれていた。
出来てた。
というか、僕は実際有紀子が大好きだった。
なので、周囲の同級生が
「あの子好きだ~」とか「でもあの子○○好きなんだぜ」
とかの話題で一喜一憂してる時はすごい優越感があった。
だったが、許嫁制度があるのは自分の村だけだったようで
僕たちの関係はかなり好奇の目で見られたし、女子にはかなりからかわれた。
問題が起こった。
期待されていた男の子が生まれない。
これに地主の一族が焦り出した。
若い事に期待してすぐに次の子供は生まれると思っていたから。らしい。
実際、有紀子の両親は結婚してすぐに有紀子が出来ている。
こうなってくると話が変わってくる。
中一の11月。
僕と両親は有紀子の家に呼ばれた。
「お宅の倅とわしの孫との許嫁の話は無かった事にする」
と一方的に告げられた。
そして、その後何も言う間もなく追い返された。
父親は茫然としてるし、母親は唇を真一文字に結んで震えていた。
家に帰って両親が祖父母にその話をすると、
祖母は僕に「何かお嬢さんに粗相したんじゃないか」
と詰め寄り、祖父は魂の抜けたようになっていた。
村中の噂の的になってしまった。
「鯛に逃げられた。」
とか
「地主さんの目が覚めた」
だの。
母が日に日にやつれていくようで、子供ながら非常に申し訳ない気持ちだった。
僕は許嫁解消以来、話しかけられなくなっていた有紀子に声をかけた。
彼女も僕を避けるような感じになっていたんで、非常に気まずかった。
「なぁ。僕の事、きらいなん?」
どう声を掛けていいか判らずとっさにこう言ってしまった。
恥ずかしくて顔を真っ赤にした。
すると
「ううん。好きだよ。ずっと。」
と言われた。
もうタヒぬかとおもった。
と思わず詰め寄ると、
「お婆ちゃんが、お家の為だからって。もう新しい許嫁も決まってる。」
・・・タヒにたくなった。
思わず大声をだしてしまい、有紀子が肩をびくっとさせた。
「・・・○○さんの家の太一さん」
聞いて愕然とした。
その家は確かに名家だが、そこの太一と言えば三十過ぎのおっさんだ。
「あぁ・・そう・・」
としか言えなかった。
さらに彼女はつづけて言う。
「あのね。18になったらその人と結婚するんだって。」
吐き気がしてきた。
彼女が18の時、太一は40になっているはずだ。
虎舞竜か!
気が付いたら自分の部屋にいて、泣いてた。
悔しくて悔しくて仕方なかったのを覚えている。
翌日、目が真っ赤になっていたのが恥ずかしくて
学校をさぼった。
当時、良い感じに中二病を発症し始めていた僕の思考は
1、太一を消す
2、太一を浮かす
3、太一を○○
の三択になっていった。
ちょwテラ厨二ww
山に入り、射撃訓練を繰り返し来るべき決戦に備えた。
しかし、ここで思わぬ問題発生。
太一は引きこもりだった。
戦わずして敗北感が漂う。
どうする!どうするの俺!
と無い頭絞ってとにかく太一を○○することを考えていたある日
夜、食事中にみていたTVドラマから思いもよらないヒントを得た。
そのドラマでは、両親に反対された男女が遠くの地へ仲良く逃げる話が
描かれていた。
そう。 「駆け落ち」である。
すぐに僕はコレだ!!と思った。
何故ならドラマはハッピーエンドだったから。
この時の僕の心の声
「何があっても有紀子は僕が守る!」
今思い出しても恥ずかしくてタヒねる黒歴史。
まず、JAで全財産をおろす。
お年玉貯金だ。
・・・しかし、思った以上に金額は少なかった。
10万チョイ。記憶通りならもっとあったハズ。
良い子のみんなは、お母さんにお年玉は預けちゃダメだぞ。
資金集めをした。
結果12万弱が駆け落ち資金となった。
そして、7月25日。夜11時。
僕は有紀子の家に侵入した。
闇に紛れる為、全身黒の衣服に黒のバンダナで口元を隠し、サングラス。
どう見ても不審者です。本当に
夜、サングラスでは何も見えないという事に。
サングラスは速攻で捨て、レッツ潜入。
彼女の家は犬を飼っていたが、幸い僕に慣れていたので吠えられることなく
彼女の部屋の窓の前までたどり着いた。
まだ起きているようで電気がついていたので、ゆっくり窓を開ける。
結論から言おう。
女の子の部屋の窓は許可をもらってから開けよう。
お兄さんとの約束だ。
「よっ!」
と明るく声をかけたものの目線が自然とそちらに向く。
彼女は一瞬声をあげそうになったが、押し黙って
僕にビンタすると
「ちょっと待って」
と言ってカーテンを閉じた。
「はいって良いよ。」
と言われ室内へ。
久しぶりに訪れた有紀子の部屋は女の子らしい部屋になっており、
その雰囲気とパジャマの彼女と相まって胸がドキドキして苦しかった。
と言われ、思い切って
「僕と駆け落ちしよう!」
と告げた。
有紀子はかなり驚き
「え!?無理だよ!」
とか
「子供には出来ない!」
と言っていたが僕はここで
ぼくのかんがえたかっこいいせりふ を放った。
「大丈夫!どこでどんな困難があっても僕が有紀子を守って見せる!」
・・・自分は痛い子です
「本当?」
じっと僕の目を見つめて目をうるませている。
やばい。胸の鼓動でタヒにそうだった。
「もちろんさ!」
そう言ってそっと抱き締めた。
この時、僕は最高に僕自身に酔ってたわけで。。
そして運命の三日後。
午後3時。
僕は部活と偽り、村のバス停へ。
有紀子は図書館に行くと偽りバス停へ。
ここから僕らの駆け落ちが始まった。
僕の心の中は 成功 の2文字しか無かった。
この後行くあて等有りもせず、数少ない資金。
けれどそんな事など一切頭にない。
何故ならドラマの中の駆け落ちはハッピーエンドだったから
という理由で
駆け落ちとは遠くへ行くものだと思っていたから。
そして、電車に乗り、目的地に着くまで2人でずっと他愛ない話を続けた。
見知らぬ町の夜。
急に不安になってくる。
「ねぇ、夜どうするの?」
そう言われてハッとする。
なんと言ってもノープラン。
そんなこと考えてなかった。
と粋がって見せ、近くの旅館の受付に入ってみる。
「すみません。2人なんですけど大丈夫ですか?」
受付のおばさんが不審そうな顔で僕たちをみる。
「君たち、2人?親御さんは?」
やはり中学生2人と言うのは怪しいのか。
「ええ、親戚の家まで夏休みを使って2人だけで行ってみようって。
その途中なんです」
有紀子がアシストを入れる。
と続ける。
やはり、疑うような視線を向けてきたが、
「では、こちらに記入を・・・」
と受付の用紙を出してきた。
僕がホッとしたのもつかの間。
用紙には住所と連絡先の欄があった。
そう思い、半ば投げやりな気持ちで自分の住所を書いた。
電話番号だけは1文字変えてかいた。
部屋に案内されホッと息をつく。
「とりあえず、ゆっくりしよう。お風呂入ってくるね。」
そういうと有紀子は部屋をでる。
彼女が部屋を出た後、どっと疲れがでた。
けど明日は?
今後資金はどうする?
など、ここにきて僕の無計画さから来た問題点が一気に噴出した。
最大の問題は宿泊所と資金だ。
今日だけで二万円は使ってしまっている。
あと数日も持たないのではないか。
どうしようもない不安が押し寄せてきた。
気を紛らわせようと風呂に行く。
だが結局もやもやしたまま風呂を出た。
その瞬間、さっきまで考えていた不安が引っ込むと考えは下心に切り替わった。
何でもないふりして隣に座る。
良い匂いがする。
「どうしよう!どうしよう!」
と心の中で勝手に先走った考えでいっぱいだった。
「ねよっか。疲れちゃった。」
有紀子がそういって僕を見た瞬間。
よっしゃ!
と思いましたね。
地主制っていうのは農地改革でなくなったんだよ。
地主制度は無くなっても昔の地主が未だ権力持ってるのが田舎。何でだろうね。
まぁ、結局どうしたらいいかも判らず、僕もヘタレだった為
何も起こらず2人別々の布団に入る。
電気を消すとまた、明日からの不安が押し寄せてくる。
不意に有紀子が言う。
どういう意味かは聞けなかった。
ただ
「ああ。」
としか言えなかった。
結局何も考えつかないままその日は眠った。
朝早々と旅館を後にした。
あまり長くいると、親に連絡される可能性があり、電話番号が違うのも
ばれると思ったからだ。
旅館を出て、有紀子に
「東京を目指そう」
とつげた。
東京に行けば何とかなる。
そんな安易な考えで。
彼女は何も言わず頷いた。
とりあえず乗り換えのある駅まで行くことにした。
電車の中での会話は少なく、代わりに手を握る時間が長かったと思う。
そして、乗り換えの駅に着く。
もうすぐ東京。
そこまで行けば・・という根拠のない希望があった。
たどり着くことに成功した。
時刻は夕方6時。
今日はこの町に泊ろうと前日と同じように宿を取った。
宿を出たところで僕たちは警察官に補導されることになる。
僕らの宿泊を不審に思った宿が住所の番号に連絡→番号違う
→警察に
という流れだったらしい。
さらに、僕らには当然のごとく捜索願が出されていたらしい。
僕らの駆け落ちは何ともあっさり終わってしまった。
父は僕を思いっきり殴った。
痛みよりも悔しさでいっぱいだった。
有紀子は両親にさっさと連れられて行ってしまった。
ドラマみたいに上手くはいかないという現実を一気に突きつけられ、
悔しくて仕方なかった。
その中、一人の刑事さんが僕に声をかけてきた。
「この年で駆け落ちとは無茶苦茶したなぁ」
思わず睨む。が
「でもな。勢いだけじゃ何にも出来んかったろ?それ勉強したらどうするかな」
と言われた。
正直その時は全く理解できず、馬鹿にされたと思っていた。
父、母、祖父母と親戚にこれでもかと怒られ、
今後、有紀子と彼女の家に近づく事、そして残り夏休み外出禁止を喰らった。
両親と祖父母は有紀子の家にただひたすら謝り続けた。
一週間もすれば村中の噂はこの話で持ち切りだった。
だが、噂の内容は僕が有紀子を誘拐した事になっていたが。
久しぶりに堂々と有紀子に会える。
そう期待して学校へ。
しかし有紀子は学校に来なかった。
そう思っていた。
だが次の日も有紀子は来なかった。
名前をぶー子とする。
理由 当時のあだ名。本名は裕子 見た目で。
「ねえ、有紀子なんで急に転校なんてしたのよ?」
「は?」
何言ってんだこいつ?トリュフとマジックマッシュルームでも間違えたか?
「だから、なんで有紀子転校なったの?あんた同じ地区でしょ?何か知らないの?」
聞き間違いじゃなかった。
転校?全く意味が判らない。
あの家は引っ越しなどしてない。
ぶー子に詳しく話を聞く。
「なんか、おじさんの家から通うって言ってたけど。高校も向こうで行くって」
ショックで頭がおかしくなりそうだった。
僕はこうして有紀子と完全に引き離されてしまった。
連絡を取る手段もない。
もうこのまま二度と会えず、有紀子はあの太一のものになってしまうのか。
そんなのは絶対に嫌だ。
けれど、僕にはどうしようもない。
ただ時間だけが過ぎ、有紀子と引き離されて一年が過ぎた。
この間、何度か有紀子に連絡を取ろうと試みたが全て失敗に終わっている。
もうすぐ高校受験を控えた時期の事。
僕らの中学の生徒のほとんどは地元の高校へ行くのが大半である。
クラスではグループ学習の時間があり、試験対策勉強を行っていた。
僕のグループは男子3人女子2人の5人グループ女子の一人はぶー子だ。
ぶー子がおもむろに口を開く
「そういえばさ~有紀子。○○高校行くらしいね~」
・・・思わぬ所から出てきた有紀子の情報に思わず反応してしまった。
「えっ?えっ?それマジ?」
この反応はまずかった。
ぶー子はニヤリとすると鼻をふくらませブヒブヒいいながら
「あれ~気になっちゃう?」
とからかいだした。
チャーシューにするぞ。
あせって何でもないふりをする。
ぶー子は「ふ~んww」
と言いながらもニヤニヤしながらこっちを見る。
「まぁ、わたしも昨日電話で聞いたんだけどね~」
なん・・・だと・・・
伝書鳩ならぬ伝書豚を。
問題はどうやって聞き出すか。
このお調子者のことだ。食い物で釣ろう。
給食のシュークリームを使う事に決めた。
伝書豚はさすがに言い過ぎwwww
ぶー子にシュークリームを手渡す。
「有紀子の連絡先教えてほしいんだ。」
ぶー子が目をキラキラさせながらにやける。
「フヒwwなんで?w」
屈辱だが背に腹は代えられん。
「理由は聞かないでくれ。頼む。」
「まwwいいけどwwはいww」
電話番号を教えてもらい、近くの公衆電話から掛けようと
教室を出ようとした。
ぶー子テメェ。
「あww私が取り次いでやろうかwwwそん代わりww洗いざらい話せよwww」
この豚。思わぬ策士。
しかし、このチャンスを逃せば永遠に有紀子と連絡は取れない。
僕はぶー子に屈してしまった。
やっぱりコイツに話すんじゃなかったと大後悔時代到来。
「でもあんた男らしいじゃんwwちょっと惚れそうwww」
マジでやめろ。
「いいよw取り次いでやるよww」
ぶー子と公衆電話に向かう。
ぶー子が電話をかける。
「あ、もしもし。私有紀子さんの友達の裕子と申しますが。有紀子さんいらっしゃいますか?」
・・・いつもとキャラ違うぞ。借りてきた豚の様だ。
ほいっといきなり受話器を渡してくる。
「ちょ・・いきなり・・」
「いいからwwwいけよww」
「もしもし?」
とてつもなく緊張した。
『え・・もしかして、俺君?』
久しぶりに聞いた有紀子の声。
それだけで本当に泣きそうになった。
無言でテレカの残度数だけが一つ減る。
「あの・・」
『うん。何?』
「まっててくれる?」
どう言っていいかわからなかった。
やっちまった。
そう思った。あんな事になった後だったから。
『わかった。それじゃあね。』
そういって電話が切れた。
「ちょwwおまえwどうしたww有紀子なんてwww振られた?ww慰めてやろうかwww」
ぶー子の声でハッとする。
「いや、わかった。って。」
ぶー子が突然腹を抱えて笑いだす。
「ぶひっひwwそれwwまじでwww」
笑いすぎ。
どうすればいいか。
前回は無計画の上で駆け落ち等と無謀な事をして失敗した。
嫌というほど屈辱を味わった。
何より、今度同じ事になればおそらくもう二度と有紀子には会えない。
けれど、このままでは有紀子は太一(40)と虎舞竜にされてしまう。
考えた挙句、思いついたのは
そうだ。太一消そう。
しかし。
すぐにそれじゃ駄目だと思いなおした。
それをしても結局また新たな相手を用意されたら同じだと。
結局名案というのは思いつかない。
学校にいくと女子グループがニヤニヤしながら僕を見てくる。
まさか・・・と思いぶー子に目をやると
とぼけた様に舌をペロッとだし、
「メンゴww」
とか言いやがった。
電話の後、屠刹場へ送り込まなかったのは一生の不覚。
ホントにおかしくなりそうになりながら一日を過ごした。
問題は放課後の事。
詳しく話を聞かせろと女子グループに連行される羽目に。
その様子をみて高笑いするぶー子。
刹意わくね。
洗いざらい経緯を話すと
女子全員が応援してくれる事になった。
中には泣いて協力を申し出てくれる子もいた。
議題はどうやって太一を葬り有紀子を取り戻すかにシフト。
感想;女子の方が発想がエグイ。
ぶー子が寄ってくる。
完全に後付けだろ。
だが、今まで周りに味方が居なかった中味方してくれる人が出来たのは嬉しかった。
中でも、女子グループのリーダー格だった彩香は泣きながら共感してくれて
「私に出来ることは何でも言ってね!」
と、申し出てくれた。
「ぶひw私のお陰だろww感謝しろよwwあ、でも惚れるなよww私には心に決めた人がいるからwww」
ぶー子。こいつはやはりここで始末しておくべきか本気で悩んだ。
この時期、受験生は最後の追い込み期間である。
だが、一部の進学校を受ける生徒を除き、殆どが地元の高校に行く為、
実質、そこまで必タヒに受験勉強をしている生徒は少なかった。(高校はよっぽどがない限り、地元中学生は落ちない)
ある日、数学の自習時間。
彩香がある提案をしてきた。
「ねえ。有紀子とクリスマスにデートしない?」
突然の提案を全く理解できない。
「だから。クリスマスに有紀子とデート。したいでしょ?」
それはもちろんだが、有紀子は今親戚の家に預けられている。
ここから行くには日帰りでは無理な距離だ。
「無理だよ。遠いし。」
そういうと、彩香がにっこり笑う。
「馬鹿ね。冬休みだから実家に帰ってくるでしょ?そこで誘えばいいじゃないw」
年末年始は実家で過ごすはずだ。
冬休みの期間は有紀子は家に帰ってくる。
「・・・でもやっぱり無理だ。」
そう。僕は彼女に会う事を禁止されている。
村では僕は誘拐犯という事になっている。
今でこそ誤解だったと周囲はほとんど普通に接してくれているが、当時はまるでゴミをみる目で見られたものだ。
だが、有紀子の家の人間は今でも僕を誘拐犯だと言っている。
会いに行けるはずがない。
「鈍いわね~。私たちが有紀子誘って連れ出すからって言ってるの。ね?」
彩香がにこりと微笑みかけてきた。
この瞬間僕は神様はいると思った。
「ぶひww私も協力するんだから飯奢れよwww」
ぶー子が鼻をブヒブヒ鳴らしながらいう。
この瞬間悪魔もいると思った
放課後、有紀子に連絡を取ると、作戦概要を伝える。
その後、週末に僕の村まで来て、有紀子の実家にクリスマスパーティの
案内を持っていき、許可をもらってくるという素晴らしい働きをしてくれた。
「感謝してよね~w」
彩香様。もちろんです。
有紀子いなかったら惚れてまうやろ。
「ぶひwwwチャーシューメン大盛りなww」
共食いか。
が、思わぬ事態に。
母
「外出は許さない。クリスマスに一人で?なんで?」
「男友達とパーティ?クリスマスに?」
と滅多打ちに会い、理由なき外出は禁止と言われた。
以前の事件のせいで自分の外出は特に厳しく監視されていたのを忘れていた。
「なんだ。理由があればいいんじゃん。私に任せて。」
と言うと、週末に我が家へ。
「私、今お付き合いさせて頂いてる彩香と申します。実は家のクリスマスパーティに是非彼を呼びたくて。」
と母にいった。
「話を合わせてね。」
と言われていたが、さすがにビビった。
「そ、そうなんだ。恥ずかしくて言えなかったんだけどw」
無理やり合わせる。
すると母は呆気にとられたように
「そ、そういう事ならいいわ。」
と外出許可を出した。
彩香の家に電話掛けられたらどうしよう。
という事だ。
流石にまずい。
この事を伝えると
「あw大丈夫wwうちのママもおねーちゃんも味方だからww」
本気で泣いた。
毎日、早くクリスマスが来ないかとそわそわしていた。
家でもやけにテンションが高く、不審がられたが
彼女が出来たから
という理由で納得してもらえた。
そして当日。
街に出かけ彩香らに指定された場所で待つ。
約束の時間は午後2時。
時間が近づくと緊張してお腹が痛くなってる。
だが有紀子は来ない。
「まさかバレた?」
まだ5分も過ぎてないのに焦り出す。
その時
「僕君?」
とても懐かしい声を聞いた。
そこには、1年ぶりに会う有紀子がいた。
1年前よりも大人っぽくなっていた。
やばい。カワイイ・・・
僕の当時の心境は
REC
の3文字でした
どうやらあまりにもジロジロ見過ぎたらしい。
「いや・・・全然。かわいいよ。」
顔が真っ赤になるのを自分で感じながら言う。
「ありがと。」
そういうと有紀子が微笑む。
いや、この時ホントにもうタヒんでもいいと思いました。
ちょっと感極まって泣きそうになる。
ぶー子がこっちの様子を見て、指をさして笑っている。
イラッとした。
そういうと僕は歩きだした。
「うんw」
有紀子は返事をすると、腕を組んできた。
一気に緊張で胸の鼓動が速くなる。
いくらなんでも積極的過ぎじゃね?
とか思いつつもふと気がついた。
有紀子の胸が大きくなってる事に。
思考は一気にそっち方面への期待MAXに。
そんなもんで、色々話したい事があったのに、何も上手く話せず
とりあえず、喫茶店に入ることに。
向かい合って座ると、少し落ち着きを取り戻した。
色んな意味で
あの事件のあと。
彼女の祖母がカンカンに怒っていた事。
同じ村にいればまた繰り返すからと遠い親戚の家に行くことになった事。
高校も、向こうで卒業するまでは帰ってこれないという事。
そして
「高校卒業したら、籍入れて結婚させられるの。」
状況は最悪だった。
40にもなった太一でなく、余所から良い所の婿を迎え入れよう
とか
養子で嫡男を取ろう
とか
好き合っているなら僕でもいいだろう
とか。だが結局は有紀子の婆さんの一声で決まってしまったらしい。
喫茶店を出ると有紀子がふと息を吐き僕を見つめる。
「せっかくなんだから。今日は楽しもうw」
そう、せっかくのクリスマスデートだ。
僕はさっきの話は少し忘れることにした。
それからは普通にデートを楽しんだ。
ゲームセンターに行き、2人ではしゃぎ回る。
有紀子の欲しがったぬいぐるみのを取るのに1,000円ほど使ってしまった。
僕の人生初めてのカラオケに行く。
上手く歌えず
「へたくそ~w」
と有紀子にからかわれる。
カラオケBOXを出ると時刻は7時を回っていた。
もう時間がない。
有紀子の門限は9時。
楽しい時間は本当にあっという間に過ぎてしまった。
「一緒に帰れたらいいのにね。」
有紀子が悲しそうにつぶやく。
自分の無力感がどうしようもなく憎い。
駅のホームで電車を待つ。
僕は有紀子に聞いておかなければいけない事があった。
有紀子が「うん。」と頷く。
「必ず、何とかするから。その時は一緒にいてくれる?」
どう言っていいか判らなくなりなんとも曖昧な言い方になってしまった。
慌てて付け足す。
「僕も大人になるから。今度こそ。だからまだ3年間好きでいてくれますか。」
・・・恥ずかしすぎる意味不明のセリフを吐いてしまった。
頭が真っ白になって視線が宙を泳いでいた。
有紀子の返事は無い。
顔を見るのも怖かった。
電車の時刻が近づく。
その時。
「私は、好きだよ。ずっと。これからも。だから待ってるから。」
そういうと、有紀子の顔がぐっと近づいてきた。
初めてのキスは全く覚えてません。
天国の曾爺ちゃんに会った気がしました。
ラストはどうなるのかな~
ハッと思いだし、ポケットからプレゼントを渡した。
彩香から「ロマンチックな場面で渡せw」と選ぶのを手伝ってもらったプレゼント。
「ありがとw大事にするね。」
そういうと、いっぱいの笑顔を残して彼女は帰っていった。
1時間後。次の電車に乗り帰宅する。
家に帰りつき、母の冷やかしを軽くあしらう部屋にもどる。
1日の出来事を思い出し、久しぶりに幸せな気分でいっぱいになった。
早速、クリスマスデートの結果を聞きに女子グループが集まってきた。
「キスしたかキスwww」
ぶー子がおちょくりながら口を突き出す。
こいつ逆立ちでもしてるんじゃないかと思うほどキタネェ・・・
「協力したんだからしっかり結果聞かせなさいw」
彩香がニヤニヤしながらつついてくる。
結局洗いざらい話す羽目に。
「キャー」とか「うわww痛いww」
とか散々からかわれた。