朝青龍は「んなもんいかねーよ」とDQNスカシを発動させて帰宅。
「8人組」のあとの2カップルは、1学年下の雰囲気イケメングループとボーリングへ行き。
俺はD、ともちん、メガネくん(羽生名人と瓜二つ)を含むメンバーとカラオケへ行った。
何か用事があったのか、優ちゃんは来なかった。
優ちゃんが来ていたら、と今から思えば、思うこともなくもない。
ともちんと隣に座ったりしながら、なんとなくハイな気分になりながら談笑、卒業式の余韻を堪能した。
この時、優ちゃんがいなかったこともあり、俺はともちんばかり見ていた。
ともちん と 優ちゃん、ふたりが急に天秤に掛けられた気がした。
ただだからと言って、何かしたいというわけではなかった。
Dも含めて、普通におしゃべりしているだけで楽しかった。
なのに、その二人が何かあるかもしれない、なんて誰も1ミリも疑わないだろう。
きっと何もないさ。
疑うやつがいたらそいつはちょっと人を信用できなさすぎる。
普通はそう思うだろう。
俺だってそう思う。今でもそう思う。
「だから決して変なことは起きない」と思うのがふつうだ。
クラスのお調子者が「あと1時間延長しまぁ~す」とか言ってる。
Dは俺の知らない曲をカッコつけて歌ってる。カラオケに夢中だ。
しかしそんな平穏な空気の中、俺は突然何を思ったのか暴挙に出る。
ともちんとキスしようと思い立ったのだ。
俺「ねぇ、ともちん」
ともちん「ん?」
俺「ちゅーしようよ」
Dは今夢中で歌っている。聞こえていない。
ともちん「え?」
俺「ちゅーしようよ、って言ったの!」
いや聞こえた聞こえないの問題じゃなく、こんな提案は笑って受け流されるべきものだ。
ともちん「あははは!うん、いいよ!」
満面の笑みで即答。
俺が驚いていると、ともちんが更に信じられないような一言を放つ。
ともちん「・・・でも、Dが邪魔だよね・・・」
正直耳を疑った。
何が起きているかわからなくなりそうだった。
俺「じゃあさ、メガネくんが別室にいるから、もう帰るっつって、Dに探しに行かせたらどう?」
ともちん「うん、じゃあそうしよ」
よく考えると、考えるのにメガネを呼ぶ必要などないのに、完璧な作戦だと思った。
俺「俺言うと怪しいからさ、ともちんからDに言ってよ」
そんな会話をしているうちにDが歌い終えた。
D「おれ!?」
そりゃびっくりもするだろう。
なんで彼女もいるのに、俺ではなく自分が行くのか。
なぜ帰るのにメガネが必要?
素直にともちんの言うとおり、メガネを探しに部屋を出て行った。
そんな折、タイミングよくnobodyknows+の「ココロオドル」がなり始めた。
部屋のボルテージがあがり、この部屋にいるメンバー叫ぶことに夢中だ。
部屋の奥のソファーに座っている俺たちのことなんか気にかけていない。
ともちん「うん」
唇が重なった。
ともちんの厚ぼったい下唇が、柔らかく俺の唇に触れる。
最低かもしれないが、いろんな葛藤を乗り越えてたどり着いたキスだった。
俺はキスをしながら思った。
どうせ最初で最後の一回だ、思いっきり熱いものにしてみよう。
俺は舌を入れた。
ともちんも最初はちょっと口を閉ざしていたけど、少し受け入れてくれた。
AKBのともちんのように八重歯が少し出ているともちん。
その八重歯に舌が当たって、不思議な気分になった。
ともちん「いきなり舌いれちゃうのやだな」
いきなりってなんだよ。
どうせ最初で最後のキスだろ。
と俺は思ったが(フル勃っき中)、俺はどういう精神状態だったんだろう。
だめもとでもう一言。
俺「じゃあ普通のキスをしない?」
ともちん「うん、いいよ!」
再び勃っきしたのは言うまでもない。
今度は冷静に普通にキスをした。
Dが帰ってこないか、ひやひやした。
バスはまだある時間帯だったが、みんなで歩こう、ということになった。
幹線道路から、一本入ると静かな住宅街だ。
4人で静かに歩いた。
Dから見れば、さっきまでの喧騒から、急に静かになった雰囲気と、卒業した寂しさとで、みんな静かになっているんだと思っただろう。
でも俺の頭の中はともちんでいっぱいだった。
ともちん「あっ!一番星だ!」
俺&D「???」
ともちん「え?一番星知らないの?一番星は、自分がその日一番最初に見た星のことだよ!」
俺「!!??」
D「えーそうかなあ。その夜に一番最初に出たやつなんじゃないの?」
ともちん「えー、そうなの?わかんないやー、はは」
でもその日の俺には、ともちんのこの一言が、どうしようもなく愛おしかった。
かわいくてしかたなかった。
一番星・・・
未だに一番星はどっちが正しいのか俺は知らない。
Dはともちんを送っていくらしい。
俺とメガネ(完全に空気)はそこからそれぞれ別の方向だった。
しばらく別れが惜しいのか、そこでダラダラしていた。
突然Dが
D「おいメガネ!あの電柱までダッシュして、帰ってきた方が真の勇者だ!」
とかワケのわからんことを言い出して、メガネとダッシュを始めた。
当然取り残されるおれとともちん。
ともちん「さっきの・・・Dにも、優ちゃんにも秘密だよ?」
俺「あぁ・・・うん。」
ともちん「ふふっ、ねえ俺?さっきので心動いた?」
なんという質問だ。俺を試しているのだろう。
この頃には、俺はだいぶ冷静さを取り戻し、優ちゃんのことを考える余裕が生まれていた。
俺「いや、動いてないよ。やっぱり俺、優ちゃんの彼氏だし」
ともちん「そっか・・・
わたしはちょっと動いたよ?」
俺「え?」
D「ゴォォォール!D選手、見事勇者として、世界の頂点にたちましたあー」
ともちん「もー!なにいってんのwさ、かえろっか」
そうして、なんとなく解散の流れとなった。
俺「うん、ばいばい」
なんて言っていたら
D「あれあれー、お二人さん仲良しですねー!ちゅーしちゃえよー、ちゅーwwwwなんちゃってwww」
なんて言う。
もちろんDは冗談だ。
お前ら仲良かったんだからちゅーぐらいしたらいいじゃん、でもするわけないよなw、ぐらいの軽いノリだ。
でも俺とともちんには違う風に聞こえた。
二人はなんとなく気づまりに目を合わせながら
「そんなことしないよ」と笑った。
学生時代の恋愛は誰しも長続きしないもの。
そう書いたように、それは俺たちにとっても同様で、俺と優ちゃん、Dとともちんも大学進学後1年もたたないうちに別れる。
端から見たら、誰にでもある、どこにでもある、ありふれた高校の時の恋愛。
推しメンはもちろん本物のともちんとみぃちゃんだ。
この物語に登場するみぃちゃんとともちんに、二人が似ていることを指摘したのは、他でもないDだ。
奴はそういうところが鋭い。
でもういえばあの二人に似てるなぁと思う前に、AKBのこの二人を好きになってたんだから好みというのは不思議なもんだ。
そういえば最近NMBにも興味が出てきた。
Dは、その日は黙りこくって、家に帰ってしまったが、次の日には
D「昼寝をしたら全部清算できた」
なんて言ってた。相変わらず意味はよくわからない。
Dとはいまだに仲良くしていて、月に1回ほど飲みに行く。
実は大学進学後に、俺がともちんに告って玉砕した話はまた別の話
こうやって書いてみると信じられないようなことの連続だったけれども、そんなことも人生あるんだよな、と今5年以上たってみて思っている。
THE END
釣りじゃないです。