先生はニコニコしながらキッパリとそう答える。
母の顔はまた一瞬で般若のようになった。
「ありますよ。さっき言ったでしょう?お嬢さんを戴きに来ましたって。」
先生はわざとらしく、ヤレヤレ…といった感じで笑いながら返事を返す。
そんな様子に、母の怒りはますます上っていくみたいだった。
「渚をもらうだぁ?」
「はい。ですからお嬢さんをお手元から離して頂きたいんです。」
先生はニコニコしている。
母は睨むように私と先生を交互に見ている。
私は母と目を合わすのが怖くて、視線をそらした。
「人の男寝取るような、こんな糞女が欲しい…ねぇ?」
母が馬鹿にしたように、嫌味ったらしく言った。
「あんたさ、私が今なんでこんなになってるか解ってんの???」
先生が首をかしげる。
「コイツが私の旦那を寝取ったんだよ。自分の父親になった奴を…汚らしいこの糞女が。」
「…それで?」
先生がキョトンとした感じに聞き返すので、母がまた段々とイライラしていくのがわかる。
私は居なくなった男の事を思い出し、吐き気と嫌悪感でたまらずに下を向いた。
違う!寝取ってなんかいない!私はあんたの男に襲われたんだ!
そう思っても、何故だか口に出せない。
私はただ下を向いて、じっと堪えている事しか出来なかった。
「やっと人生やり直せると思ったらコイツに全部ぶち壊されたんだよ。コイツのせいで…」
下を向いていても、母が私を睨みつけているのがわかる。
好き放題言われて悔しいのに、訳のわからない喉の痛みが邪魔をして声が出せない。
「私は全部失ったんだ。コイツのせいなんだから、これから償っていくのは当然だろ?」
「償い…ですか。」
「そうだよ。たんまり稼いで楽させてもらわなきゃ、ねぇ?渚。」
甘ったるい声で名前を呼ばれて、私はビクっとした。
「大事な大事なお母さんだもんねぇ?自分のせいでお母さんこんなになっちゃったんだもんねぇ?」
語尾が段々と、いつもの母に戻っていく。
頭にガンガンと響いてくるその声に、私はまた考えるのが嫌になって来る。
頷かなきゃいけない……だんだんとそう思えてくる。
「なぎはお母さんが可哀相だねぇ?お母さんを幸せにしてあげなきゃいけないよねぇ?」
母の声が本格的に猫撫で声になった時、先生はハァっと大きく溜め息をついた。
「…話は以上ですか?」
先ほどまでとは別人の様な、先生の冷たい声がした。
先生はゾッとするような薄ら笑いで、母を見つめている。
「はぁ?」
「話は以上ですか?このまま不幸自慢をされ続けても困りますので。」
先生が鼻で笑う。
母はまた、般若のような顔に戻っていった。
「不幸自慢…?」
「ええ、そうですよ。聞いていたら全部自業自得じゃないですか。お嬢さんはアナタのせいで、もっと辛い思いをしていますよ。」
「はあああああああ!?」
「結局のところ、アナタは金づるが欲しいんですね。何だかんだ色々言っていますが、僕にはそうとしか聞こえません。」
「…わかった風なこと言ってんじゃねーぞ?」
母が今にも飛び掛りそうな勢いで、拳を握り締めている。
「わかりますよ。僕はアナタの様な人を、よく知っていますから。」
母の歯軋りが聞こえる。
「いくら欲しいですか?1億でも2億でも、好きなだけ差し上げますよ。アナタが彼女を解放してくれるなら。」
先生の冷たい声に、その場が凍りつく。
そんな大金をいとも簡単に口から出す先生に、私は少し恐怖を覚えた。
「借金もある…そうおっしゃっていましたよね?もしかして**さんのお店にですか?」
固まっていた母はその名前を聞くと、一瞬だけビクッとした。
「彼女から仕事の話をされてまさかとは思いましたが…**さんのお店ですよね?この辺りでストリップやってるのはそこくらいですから。」
「それは…」
母はさっきまでの威勢が嘘のように、急に大人しくなった。
「大方、前払いで幾らか貰ったんでしょう。彼女が居なくなって困るのは、そのせいじゃないんですか?」
**さんって誰?あのお店のガラの悪い店長?
二人の間では淡々と話が進んでいく。
私は一人だけついていけなくて、混乱していた。
「**さん、怖いですからね。このまま彼女が居なくなってしまったら、何をされるかわからない。」
母は怯えた顔をして床を眺めている。
「…幾ら、頂いたんですか?それさえ返せば、もうアナタが困る理由は何処にも無くなります。」
だが、母は黙ったまま答えない。
先生はまた大きく溜め息をつくと、持ってきた紙袋を母の前に差し出した。
「2千万入っています。お嬢さんを戴きに来た手前、結納金だと思って持って来ました。」
2千万!?
私と母は驚いて先生を見た。
先生は相変わらず冷ややかに微笑みながら、母だけをじっと見つめていた。
母は呆然としながら、小さくコクリと頷いた。
「日取りの取り決めも無く、勝手に持ってきてしまい恐縮ですが、どうぞお納めください。」
先生が頭を下げる。
私は慌てて止めに入った。
「先生ダメです!そんな大金…」
「ダメじゃありません。これは結納金なんですから、普通の事ですよ。」
私を遮るように強く言うと、先生はニコッと微笑んだ。
でもすぐ冷ややかな笑顔になって、また母をじっと見つめる。
「それにこれだけあれば、当面は生活していけますね?アナタは僕とさほど歳も変わらない。まだいくらだってやり直しがきくでしょう。」
母は何も答えない。
だから僕はアナタが憎くても憎みきれないし、捨てたくても見捨てられないんですよ。」
自分でも気がつかない振りをしていた本心を見透かされて、私のムネは何故だかグッと痛んだ。
黙り込んでいる母に目をやると、母も複雑な表情で私を見つめていた。
「…それで身の回りを整理して…やっていけますね?」
先生が言い聞かせるように言うと、母は微かにコクリと頷いた。
母が頷くと、先生はやっといつもの顔に戻った。
「じゃあ、これでもう大丈夫ですね。……渚さん。」
急に名前を呼ばれて、私は慌てて返事をした。
「自分の荷物をまとめなさい。それから…」
先生は正座のまま、辺りをぐるりと見渡す。
「少しだけ、ココを片付けてあげなさい。このままじゃ、いくらなんでも酷い有様ですから。」
え?っと思って先生を見る。
相変わらず穏やかにニコニコ笑っている先生の顔を見ていたら、私の心も不思議と穏やかになっていく。
私は呆けている母をチラリと見ると、ハイと微笑み返した。
そういうと先生は、床に置いてある紙袋から見た事の無い大きい札束を取り出し、そそくさと玄関の方に歩いてく。
「ちょ!ちょっと先生!」
私は慌てて先生を追いかけた。
「どこにいくんですか?」
「借金、返してきます。お母さんはもう何もしてこないでしょうし、一人でも大丈夫でしょう。」
「返しに行くって…先生がですか?」
私は驚いて聞き返した。
「はい。だってさっさと返しちゃったほうがいいじゃないですか。」
「でも…」
「大丈夫、**さんとは知り合いですから。心配しないで。」
「知り合い!?」
あのガラの悪い店長と、人の良さそうな先生が知り合い…!?
私はさっきよりもっと驚いて聞き返した。
「そうですよ。僕、こう見えて顔が広いんですよ。まぁ詳しいことは後で話しますから。あとは宜しく頼みます。」
先生は驚きの余り固まっている私の頭を撫でると、そそくさと外に出て行った。
どうしていいのかわからず、私は部屋を片付け始めた。
酒瓶を拾うたびに、むせ返るような臭いで吐き気がする。
私は我慢できなくなって、台所の窓を開けた。
ふとシンクの中を見る。
私が出て行ってから何も食べていなかったのか、シンクの中は意外と綺麗だった。
あらかた片付け終わったところで、私は床に雑巾をかけ始めた。
「……なぎ…」
一心不乱に雑巾をかけていると、母が私を小さく呼んだ。
手を止めて、ゆっくりと母を見る。
母は泣きそうな顔でぼーっと私を見ていた。
「…なに?」
私が聞き返しても、母は「…なぎ…」としか答えない。
私は立ち上がって手を軽く叩くと、そっと母の前にしゃがみこんだ。
「…なぁに?」
母を見上げながら、優しく聞く。
途端、母の顔がクシャッと歪んで、涙をポロポロと流し始めた。
私は何故か急に切なくなって、母の手をそっと握った。
「なぎ…なぎ…」
母はそう言いながら、泣き続けている。
いつの間にか、母に対する怒りも嫌悪感も消えていた。
私は泣いている母をそっと抱きしめた。
「なぎ……なぎ…」
泣きながら、ひたすら私の名前を繰り返している。
「…いいんだよ。もういいから…」
私は宥める様に、母の背中をさすり続けた。
暫らくそうしていると、母の鳴き声はだんだんと小さくなっていき、私はそっと母を放した。
泣いて目を真っ赤にしている母の表情は、心なしか穏やかに見えた。
今までの母とは別人の様に、優しい目で私を見ている。
私はそんな母にニッコリと微笑み返すと、「掃除…しよ?」と言った。
母も少しだけ微笑んで、小さく頷いた。
たった5日帰ってきてなかっただけなのに、随分と懐かしく感じる。
あらかた身の回りの物をカバンに詰め終わると、私はどっとベッドに横になった。
大きく深呼吸をすると、吐いた息の分だけ毒気が抜けていくようで、心地よくなっていく。
私は、様々な事を思い出していた。
小さい頃、母がまだ優しかった時の事。
いつからかイジメられるようになり、暗くなるにつれて母との会話が無くなっていった事。
疎遠になっていきつつも、何故か小学校の卒業式に母は出席していた事。
ふと、母は寂しかったんじゃないかと、そう思った。
18で私を産み、世間からは好き放題言われ、実の両親からも死ぬまで会っては貰えなかった。
そんな中で母は、私と同じように荒んで行ったのではないか…
先生のように、優しく包み込んでくれる人が居たら、母の人生も別のものになっていたのかも知れない…
なんとなく、そう思った。
今まで漠然と母親としか見えていなかった母が、寂しい一人の女性に思えてきて、少しだけ切なくなる。
でももう大丈夫…母はさっき穏やかな顔をしていたじゃないか……きっとこれからはもう大丈夫…
私はそう確信してガバっと起き上がると、鞄を手に取り再びリビングに戻った。
急いで玄関に向かう。
「お待たせしました。用意、出来ましたか?」
先生は私を見ると、ニコッと笑ってそう言った。
「はい、掃除もちゃんとしました。…先生は大丈夫でしたか…?」
「はいこの通り。無事に帰ってきましたよ。…お母さん、どうですか?」
私はリビングの方を振り返った。
「もう…大丈夫だと思います。」
「そうですか、それならよかった。……じゃあ行きましょうか。」
「あ、荷物取ってきます。」
「あ、渚さんちょっと待って」
リビングに戻ろうとした私を呼び止めると、先生は一枚の封筒を差し出した。
これは?という目で先生を見る。
「領収書です。念の為、書いてもらいました。お母さんに渡してあげてください。」
あぁなるほど…そう思いながら封筒を受け取ろうとして、私はドキッとして固まった。
差し出した先生の手のひらが、傷だらけで真っ赤になっている。
ビックリして先生を見た。
先生は相変わらずニッコリ微笑んで、「早く」とだけ言った。
「先生…手…」
「いいから、早く。僕は車に行ってますから。」
先生が後ろ手に、玄関を開ける。
私は封筒を受け取ると、慌ててリビングに戻った。
「…領収書だって。先生が返しに行ってくれたから…」
母はまた泣きそうな顔になって、封筒を受け取った。
「じゃあ…私、行くから…」
そういって母に背を向ける。
玄関でワタワタと靴を履いていると、母は慌てたように「なぎ!」と私を呼び止めた。
振り返ると、母が何やら言いたそうに口をアワアワとさせている。
「…なぁに?」
優しく聞くと、母は少し泣きそうな顔で「またね…」と小さく言った。
私は少しだけ微笑んで「うん。…またね」と返事を返して家の外に出た。
家の前では、先生が車に乗って待っていた。
私は後部座席を開けて荷物を放り込むと、そのまま後ろに座って扉を閉めた。
何故だか、助手席に座るのは気が引けた。
先生は私がしっかり座ったのを確認すると、「さーて、帰りましょうか。」と言って車を出した。
来た時と同じように、二人とも何も話さなかった。
話の幕間にスレ主との対話があってボロが出たりリアリティを感じたりするのに
連投連投で全然読者との会話が無い
申し訳ありません。
私自身も会話を交えて投稿できればいいのですが、思ったより長くかかってしまっているので、急いで投稿しております。
皆さんの貴重なお時間を割いていただき、感謝の念で一杯です。
後もう少しで終わりますので、最後まで聞いていただけたら、幸いに思います。
対話ばっかりで投下遅いほうがいやだわ
家に帰りリビングに入ると、先生はフワーッと大きく背伸びをした。
「何だか大変な一日でしたね~。あー疲れた。」
そう言いながら、ニコリと私を見る。
私はずっと気になっていた事を質問した。
「…手…どうしたんですか…?」
「ん?手?」
先生は自分の両手を広げて、不思議そうに眺めた。
「怪我しただけですよ。傷も深くないし、ほっときゃ直るでしょう。」
そう言うと、ハハっと恥ずかしそうに笑った。
「違います!そうじゃなくって…どうして怪我をしたのか聞いてるんです。」
私が少し強く言うと、先生は困ったように苦笑いしながら、ドカっとソファに腰を下ろした。
「いやぁ…お金を返した後領収書くれって言ったら、じゃあコレを握れって小さいナイフの束みたいのを差し出されたんですよ。」
先生は楽しい思い出を語るように、ニコニコしながら話している。
「だからそれをこう…ギュッと。そしたらいきなり引っこ抜くもんですから……まぁこんなもので済んで良かったですよ。」
先生が笑う。
私はニコニコしながら握ったであろうその時の先生を想像して、思わず顔をしかめた。
「大丈夫、大した事無いですから。心配しないで。」
明るく言う先生の声に、私の目から涙が溢れた。
一歩間違ったら、先生は一生ピアノが弾けなくなっていたかもしれない。
それなのに先生は相変わらずニコニコして、気にも留めてる気配が無い。
「ごめんなさい…先生ごめんなさい…大事な手なのに…」
私は複雑な思いでムネが一杯になって、謝ることしか出来なかった。
立ったまま、泣きながら先生に謝り続ける。
「大丈夫ですって。……それに僕の方こそ、貴女に謝らないといけません。」
「…どうして…ですか?」
私がシャックリをしながら聞くと、先生は凄く神妙な面持ちで下を向いた。
「…貴女をお金で買うような事をしてしまいました。……もう二度としませんから…許してください。」
私は泣きながら、ブンブンと首を振った。
「…先生の…大事な…お金を……先生のお父さんが…遺してくれた…大事な……」
息が詰まって言葉にならない。
「いいんです。それは僕が勝手にやってしまったんですから。…お願いだから、泣き止んで、謝りますから…」
先生が段々と困った顔をしていく。
それでも益々涙は止まらなくなっていき、私は幼い子供のようにわんわんと泣き続けた。
先生は優しくそう言って立ち上がり、私をぎゅうっと抱きしめた。
「ごめんなさいぃ…」
抱きしめられると、もっと申し訳なくなってくる。
「だから大丈夫だってば。ほら、泣かないで。お願いだから。」
先生は困ったように笑う。
それでも私の涙は止まらなかった。
「大切な人を守るためなら、手の1本や2本、どうって事ないじゃないですか。渚さんだって、そう思うでしょ?」
先生はちょっと照れくさそうにそう言った。
私はその言葉で更にムネが苦しくなって、立っていられなくなった。
先生は「おっと…」と言いながら、私を支えるように一緒に座り込んだ。
泣きながらもどこか冷静な頭の片隅で、私はずっとそんな事を考えていた。
「……ほら…こっち向いて。」
優しくそう言われて、嗚咽を堪えながら先生を見つめる。
先生は優しく微笑むと、フッと顔を近づけた。
先生の唇が、私の唇に軽く触れる。
私の頭は、途端に真っ白になった。
息をする事も忘れて、私は自然に目を閉じた。
先生の顔が、スーっと離れる。
私は思い出したように、そっと息を吐いた。
薄っすらと目を開けて、先生を見る。
「…泣き止んだ。」
先生は私と目が合うと、ニコッと微笑んだ。
「…せんせい…」
私がやっとで呟くと、先生は恥ずかしそうにクスっと笑った。
「その…先生って呼ぶの、そろそろやめにしませんか?」
私は少し困った顔をした。
少しだけ考えて、先生に小さな声で聞き返す。
「……じゃあ何て呼べばいいですか?」
先生もちょっと困った顔をしながら笑った。
暫らくぼーっと何処かを見て黙り込んでいたが、またフッと笑うとまっすぐ私を見つめた。
「んー………わからない…」
そう言いながら、ゆっくりと顔を近づけてくる。
私はまた、目を閉じた。
先生はやらしい事は一切せず、ただ向き合った私を抱きしめているだけだった。
安心感と暖かさで心はすごく安らいでいたのに、私はなかなか眠ることが出来ず「先生…」と小さく声をかけた。
「…なんですか?」
先生も起きていたようで、すぐに返事が返ってきた。
「先生と**さんは…どういう知り合いなんですか?」
「このタイミングでそれを聞きますか。」
先生はプッ吹き出した。
「……あれは嘘です。」
驚いて先生を見上げる。
「まぁ…名前と何をしてる人か位は知っていましたけど。」
「何で嘘ついたんですか。」
私が少し怒った様に言うと、先生は苦笑いした。
「…まぁ、もういいじゃないですか。」
先生は困ったように笑いながらそう言うと、私をグッと抱き寄せた。
「でも…」
「いいからもう寝ましょ。これ以上このままで起きてたら僕、貴女に何するか解りませんよ?」
私は急に恥ずかしくなって、布団の中に顔を埋めた。
「…もうこれからは、貴女に怖い思いも、辛い思いも、絶対にさせませんから。」
先生は私の頭を、私が寝付くまでずーっとずーっと優しく撫で続けていた。
地元では予想通り噂になったけれど、私は先生と一緒に暮らし続け、先生の転勤にも付いて行った。
最初こそ仕事を探したものの、先生の職業柄移動が多く、すぐに辞めてしまう事を考えて先生と話し合った結果、私は職探しを止めた。
先生の傍で、穏やかな日々を過ごす。
私が20歳になると、先生は「結婚…してみませんか?」と私に言った。
私は喜んで「ハイ」と返事をした。
結婚式はせず入籍だけ済ませ、二人だけで記念写真を撮った後、私達は新婚旅行がてら短い旅行をした。
そこでやっと先生は、初めて私を女性として抱いた。
籍を入れて一年後。
33歳になった先生は教師を辞めて私の故郷に程近い場所に家を買い、そこでピアノ教室を開いた。
丁度その頃、あの日以来会っていなかった母から連絡が届いた。
全てを一度リセットした母は、今は知り合いの伝で小さな事務所の事務員をしているらしい。
久しぶりの電話越しの母の声は、昔とは違って随分と落ち着き、そして凄く幸せそうだった。
私も先生と結婚したことを告げると、母は電話越しに泣いていた。
それからはちょくちょく、母とは今も電話で連絡を取り合っている。
先生は相変わらずニコニコしていて、私達の会話は昔から変わらず敬語のまま。
夫婦で敬語なんて変…と友人達は笑うけれど、これは多分、もう一生直らないだろう。
先生と出会ってから、気がつけばもう十数年。
長い長い時間をかけて、本当に大事な人と結ばれ日々を過ごしている今、私はふと自分の人生を振り返り、幸せを噛み締めている。
急にシリつぼみに終わってしまって、申し訳ありません。
最近の事を書こうとすると、何故か指が止まってしまい、文章にはとても出来ませんでした。
長い時間、私の拙い思い出話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ボロボロ
質問いいかな?
どうして書く気になったのか教えてほしい
いや、オチ?で子どもが出来たとか入籍したとか、そういうんじゃなかったから
どうして書くつもりになったのかなって思って
私は今、幸せに過ごしています。
>>230
どうして書く気になったのか…そう言われると上手く説明が付きませんが、
ある日ふと、小学生にピアノを教えている主人を見ていて、何故だか自分の昔の事を思い出したのです。
あんなこともあった…こんなこともあった…
そう色々考えているうちに、自然と昔を振り返りながら、少しずつ書き始めていました。
今も幸せなんだね
一番偉いのは常に先生に対しては事実を伝えていたところ
何処か一つのタイミングがずれていたら、こうはならなかったよね
はい。
あの時少しでもタイミングがずれていたら、私の人生は母と同じような事になっていたかもしれません。
久々にムネきゅんしたわ
誰にも言えなかった過去の事、私は今すごく幸せだぞ!という思いを、吐き出したかったんだと。
皆さんが聞いてくれたお陰で、ムネがスーッとした気持ちでいます。
本当にありがとうございました。
よかったね
幸せ続くように願っとるわ
私も皆さんの幸せを、僅かながらですが祈らせていただきたいと思います。
それでは、皆さんさようなら。
長い時間、ありがとうございました。
素敵な結末になって本当に良かった
強く清らかな心を持った1さんご夫婦、これからもずっとずーーーーーっと幸せが続きますように!
自分も虐待しちゃうんじゃないかとか思うらしいとかなんとか。
とりあえず、先生の遺伝子の強さに賭けて頑張りなよ。
んじゃノシ
お幸せに。
恋したい(´;ω;`)