最初はお昼のお弁当なんかを差し入れしてた。それがどんどんエスカレートして、気づ
けば昼の弁当+自宅でも食べたいと重箱二段分のおかずとおにぎり10個、焼き菓子を二
種類の謙譲が義務のようになってた。イケメンで優しいAに夢中で最初は楽しかったけど、
お小遣いやバイト代が全部食費に消えることや、部活が大事な時期だからと一回もデート
してもらえないことに(他の部員はそうじゃなかったから、余計に)段々むなしくなり、
このままでいいかと悩んでいたらあっさりフラれた。
その次の日には後輩の美人さんと付き合いだしたと聞いて少し落ち込んだけど、弁当生
活からの開放感の方が大きくてすぐに復活。久々に友達と映画見たりプリ撮ったりがすごく
楽しかった。
その数週間後、担任に「ちょっと」と呼ばれた。進路相談のことかな?くらいに思ってついて
いったんだけど、教頭と学年主任がいて、「Aくんから金銭をもらった事実はあるか」と聞か
れてびっくり。教頭は優しいけど、厳しいと評判の学年主任にすっかりビビッてしまい、三ヶ月前
はつき合っていたが、その間おごってもらったのは私の誕生日に缶ジュース一本だけだと馬鹿正直に
答えた。担任が苦笑しながら間に入り、教えてくれた詳細を聞いてまたびっくり。
母を早くに亡くし父も仕事で家を空けがちのA家では、長年お世話になってる半身内のような家政婦
さんがいたのだが、そのお給料や手間賃がなんと現金手渡し。しかも高学年になると彼がそれを父親
から渡されていたそうで、ちまちまとネコババ。それでも足りず遊ぶ金欲しさに勝手に家政婦を解雇。
家政婦さんが高齢の為引退したがってたのもあったらしく問題化せず、器用な彼は掃除・洗濯まではで
きたが炊事がてんでダメ。それで私に目をつけ食料をゲット。そして私より可愛く料理も上手そうな
後輩から告白されたのであっさりのりかえたのだが、後輩が得意なのは製菓オンリー。可愛い後輩には
Aも強気には出れなかったみたい。しかも最悪なことにAには小学生の弟がいる。当然弟君は突然貧しくなっ
た食事に文句をつけるのだが、遊行費がわずかでも食費にとられてイラついたAは弟君に八つ当たり、私の名
を出して私が全部悪いと怒鳴りつけたらしい。父親が長期出張中だと安心していたんだろうけど、弟君は学校で
お友達の携帯電話を借り、父親に連絡。泣きじゃくる弟君を心配して急きょ戻った父親がAを問いただしたら、苦し
紛れなのか『元彼女の私に気に入らないからと勝手に家政婦を解雇された。おまけに私が作ってあげるからというから
お金を渡したのにつくってくれない。だから別れた』と言ったらしい。
父親から連絡を受けた先生たちは、以前から金遣いの荒い(学生なのにブランド品を多く持ってたり、後輩に気前よく
奢りすぎたり)Aの行動をマークしてたらしく、私への確認は一応であり、すぐにAの素行は父親に伝えられ、〆られ
たAが自白した。
後日A父からは丁寧な謝罪と、今までかかった食材費×3くらいの慰謝料?を頂き、A自身は高三の二学期という微妙な時期に
逃げるように転校してった。先生たちは信じてくれてたみたいだけど、自分が疑われてるんだとわかった瞬間は一気に血の気が引いたよ。
その親は家政婦の給金から抜かれた分を倍にして返してあげたのだろうか・・・
そして息子をタコ部屋に放り込んだのだろうか・・・
なんにせよ乙!