すごくお似合いだと思っていたからだ。
これが、うまい某の集まりから出来たカップル一組目。
俺は俺で中西さんのことを好いていたけど進展はなく、代わりに小倉さんと一緒にカラオケいったりQMAしたりカラオケいったりしてニヤニヤしていた。
きめえ。
というか小倉さん歌うめえ。
おかしいんじゃないかってくらい歌うめえ。
中西さんは声楽を専攻しているからうまいのは解るんだが、小倉さんは美術系を専攻しているのにこの巧さ。
中西さんの友人達は、一芸に秀でてることが多かった。
さすが芸術科。
天才肌ってやつなんかな。
他方、何かが極端にできなかったりもしたんだけど。
ここからの半年がまさに激動だった。
それはおいおい語るとして、俺は相変わらずうまい某を配り続けていた。
その頃には、メンバーはだいたい20人くらいにまで膨れ上がっていた。
でも不思議なことに、俺より年下(18歳未満)は一人も居なかったんだよね。
同い年が半数、あとは年上が半数といったところ。
んでまあすんごい田舎のコミュニティだから、とにかく輪が狭いのね。
それにオタクの集まりだから、コミュニティの域はそれに輪をかけて狭かったんだ。
同じ学校だったり、母校の先輩後輩だったり。
初めて顔を合わせてみてびっくりする、みたいな。
意を決した俺は10月の半ば、中西さんに告白をすることにした。
事前に小倉さんに周到な根回しをしてもらっていたことは、言うまでもない。
中西さん、ふじこ、山さん、優男、小倉さん、俺の6人でカラオケへ。
俺は、中西さんと小倉さんの影響でファンになった鬱バンドの鬱曲を熱唱していた。ニセモノ。
んで中西さんが終バスの絡みでそろそろ帰ろうかとしたとき、俺は小倉さんに目配せした。
頷くと小倉さんは、中西さんにそっと耳打ちした。
うまい夫が話がある、と。
出てすぐのところに、中西さんが立っていた。
たぶん、俺がこれから何を言うかわかっていたんだろう。
俺「その、えっと、ふじこふじこふじこ」
心臓は破裂しそうだった。
どもってまともに喋れない。
告白するのなんか数年ぶりだ。
でもなんとかかんとか、想いのたけを話すことができた。
結果は……
どちらでもなし。
イエスともノーとも言われなかった。
曰く、こういう経験があまりないから良く解んないらしい。
もうちょっと仲良くなろうと。
そんな流れで中西さんは帰ってしまった。
俺もバイトがあったので小倉さんに感謝しつつ帰った。
そんな折、また例の某SNSサイトが出てくるわけだ。
俺は一応学校では生徒会の代表みたいなことをしていたんだけど、その実、副会長の女子及びその取り巻きに権力を握られた窓際会長。
学校に居場所がなかった。
ネットの中にリアルを求めていた。
友達もあんまり居ない、話も合わない。
だけどうまい某の面々はキチ○イでクオリティ高くて面白くて、やっぱりそっちに逃げちゃうんだよね。
それはさておき。
そのころSNSサイト上に、小さいながらも、うまい某を配るオフのサークルってかコミュニティができた。
俺も完全にうまい某キャラになっていた(どんなキャラだ)
ちなみにうまい某を販売しているのはやおきんだけど、作っているのはリスカって会社なんだ。これ豆な。
この頃の俺は新興宗教の教祖よろしく、自分はすごい存在なんだと全力で錯覚していた。
だが、11月に入ったころ、事件が起きる。
年の頃は20後半、本当に平凡を絵に描いたような男だった。
今となっては顔も思い出せない。
「vipですか?」
…あれ?
なんかデジャヴ…
そう、男はvipperだったのだ。
聞くならく、北の大地から歩いたり車に乗ったりで旅をしているんだと。
んで俺の住んでいる街に差し掛かったとき、たまたまうまい某を配っている俺たちと出会ってしまったわけだ。
偶然とは言えvipperと出会ってしまった俺は、またもやテンションが上がってしまった。
どうにも、その旅のvipperが出会い厨臭いのだ。
その時すでにうまい某のマスコットキャラ的なポジションに収まっていた小倉さんに牙を向ける。
とはいっても超リア充な彼氏がいて、オタクとはいってもどちらかというとリア充寄りな感じのする小倉さん。
お人好しなんだが、そこら辺のかわし方は心得ているようだった。
んでふじこもふじこでそれをあまり断ろうともしなかったので、それを知った山さん激怒。
どんな手を使ったのかは知らんが旅のvipperを排除。
山さんキレるとkoeeeeeeee…
それ以来、うまい某には微妙な空気が流れるのでした。
というか俺の来るもの拒まずってスタイルがダメだったんかね。
妙な責任を感じた俺は、そろそろうまい某コミュについて考え始める。
これが11月の半ばくらいか。
俺と山さんとたまに小倉さんがうまい某を配り、他の奴らはそれを見ながら談笑、というスタイルが確立された頃だった。
つーかうまい某を配るオフなんだからおまいらもちゃんとうまい某配れよ!
って思い出して腹がたってきたあああああ。
それはさておき。
その時にはもう、うまい某で出会ったカップルが、山さんたち以外にも2、3組できていた。
嫌らしい意味ではなくね。
ある日のオフ、中西さんが参加者のチャラそうな学生と、なんか仲良さそうに話していた。
内心キョドりまくるも平然としたふうを装い、あとで中西さんとそれとなく聞いてみると、
「付き合うとかないないwww」
みたいな感じで否定してくれたので安心した。
安心したんだ…
パニックになる俺。
前日に絶対付き合わないとか言ってたのに?
あれなんで付き合ってんの???
へ???
みたいな。
初体験だったよ(はぁと///
もとからメンヘラっぽいところはあったんだけど、この一件でその素質が覚醒してしまった。
ちなみにこの付近の記憶が今でも非常に思い出しづらい。
なんでだろう。
面白い人が集まって面白いことをする→それを見た人がたくさん集まってくる→一定の割合で含まれたバカが面倒を起こし始める→決まり事が大量に増える→面白い人どっか行く→バカが残る→潰れる
このコピペみたいなかんじ。
小倉さん、山さん、優男、ふじこ、あとは話に登場してないんだけど仲の良かった人たちあたりといる時は本当に楽しかった。
ただ、それ以外といるのは正直苦痛でしかなかった。
…そろそろ、潮時かなと思った。
んで何もする気が起きなくなった俺は、うまい某のコミュニティを解散することを決意。
とはいってもさっきの人たちとは関係を続けるつもりではあったんですが。
最後のうまい某オフを開催。
やるんなら盛大にやろうってことで、なんだかんだ25人?くらい集まった。
配ってるのは相変わらず俺と山さんと小倉さんくらい立ったんだけど
バイトの休憩中に中西さんが彼氏の家にいったって日記と彼氏宅の写メを見たとき、休憩後に過呼吸起こしてぶっ倒れた。
あと、学校にはほとんど行かなくなっていた。
行っても保健室で寝てる感じで。
これがだいたい12月の半ばか。
そんな中、さっきちょっとだけ出てきた関東在住のフレンド、チビ助とメールをするようになった。
俺より2個下のそいつは当時高1で、だけど病弱で学校を休学しているらしかった。
通っている学校をぐぐってみると、そこにはお嬢様女子校が。
詳しい話を聞いてみると、どうやらチビ助は中々なお嬢様だった…
んで俺も学校に行かずあっちも学校に行ってない、必然とメールする量は増えていった。
その様を見るのはまるで自分をトレスしているようで、ちょっとだけ気恥ずかしかった。
そして面子もある程度揃いいよいよ日程も決まったある日、唐突にチビ助から電話がきた。
と。
ちょっと待て待て待て待て。
俺はまだ中西さんへの想いに踏ん切りがついてないんだぜと返事を濁したが、押しきられる形でOKをしてしまった。
まあ、500キロくらい離れた遠距離恋愛(笑)ですた
何より、OKをしてしまった自分に腹がたった。
中西さんへの想いはそんなもんだったのかと。
日付が変わるくらいに戻ってきます。
今日中に上京編までいきたいです。
それでは。
後者であって欲しいな
色々と、いろいろと、勉強になるわ
チビ助とのメールは相変わらずだった。
ただ、チビ助は親がなにぶん厳しいようで、連絡をとるのすらままならない事が度々あった。
そんな折、とうとう関東組でのうまい某オフが開かれようとしていた。
チビ助のフレンドと、そのフレンドのフレンドだかなんだかだったらしい。
秋葉原で配るらしかった。
当日、俺は終日バイトだったので詳しいことは知らないままだった。
仕事が終わり帰宅し、レポを見る。
配り終わったのかどうかは知らんが、なんか途中でゲーセン組とカラオケ組の二手に別れ、それぞれ楽しんでたらしい。
理由はないが東京こわいって思った。
結果的に、首尾は上々。
俺もその他の面子と仲良くなっていた。
俺は、いろいろ考えた末に東京の会社に就職することにした。
理由は本当にいろいろあったんだけど、何より、チビ助に会いたいってのが一番だったのかな。
今となっては良くわからない。
内定は不思議とすぐ貰えたので、3月で地元を去ることが確定した。
そのことをうまい面子にも伝えた。
反応は、意外と淡白だった気がする。
どうにもめんどくさい難病らしかった。
とはいっても学校に籍があるかどうかだけの違いで、これまでとは大して変わらぬ日常だった。
チビ助はチビ助で、前述の関東組とも仲良くできているようだった。
それで、関東組の中で早速くっつく奴らが出たらしい。
東京こわいってry(take2)
チビ助の親友の女の子と、ちょっとなよっとした男の子。
お似合いだと思った。
…いやまあ、速攻別れたらしいんだけど。
2月くらいか。
山さんとふじこは相変わらず順調。
中西さんカップルも相変わらずだった。
優男は出会った時から変わらず優男だった。
しょこたんはぁはぁとか言ってた。きめえ。
小倉さんは…
女 と く っ つ い た
ふむふむ、ガチホ/モからのレ/ズかぁーあんた趣味いいな!
というか篠崎が小倉さんに告白し、小倉さんがおっけーしたらしい。
心で泣いたね、俺は。
その話は、いつものようにアニメイト前でだべっているとき、篠崎本人の口から聴いた。
俺は、嗅いでいた媚薬を取り落としそうになった。
ちなみに媚薬は木の根っこの匂いがした。
ともかく、非常に衝撃的だった。
頑張れよ、とだけ言っといた。
ちなみにこの時の俺は、スーツがデフォになっていた。
どうでもいいか。
そうそう、この頃になるとちょっとだけ、ほんのちょっとだけ気持ちに余裕が出てうまい面子とも遊べるようになっていたんだ。
んで相変わらず学校には通ってなかったんだが、ここで問題が起きる
休みすぎて出席日数が足りなくなりそう…
俺の通っていた学校はちょっと特殊で、一応全日制なんだが制服がなく教科も単位制だった。
つまり普通の高校より大学のシステムに近いんだ。
選択科目は別に落としても問題ないんだが、必修科目である体育の出席日数が非常に危うくなっていた。
それを落としたら卒業できない=内定もパァ=東京行けない。
俺は久々に必タヒになった。
必タヒに頼み込んで補修を受けさせてもらい、なんとか単位もゲット。
というかバイト先(回転寿司屋)の店長に奴隷のように働かされていた。
仕事が終わったら有無を言わさず職場でキャッチボールや麻雀やプロレスをさせられた。
パワ八ラだよね、これ…
まあいいや。
んで2月も終わりに差し掛かった頃、事態は急を告げる。
メールを送り、すぐに返事がこないと追撃メールを送り、それも返ってこないと嫌われたと勘違いしてまたメールを送ってしまい以下略。
負の連鎖だった。
自分でもダメだってわかってはいるんだがね…
そんなある日、チビ助からメールがくる。
なんでも、同じ関東組の奴から告白されたんだと。
ちなみに、付き合っていることは周りに伏せていた。
チビ助が俺を捨てる訳はないだろうとタカをくくり、チビ助の人生なんだから自分で考えて決めなさい、なんてことを言ってしまった。
かっこつけたんだな…
嫌な予感というか、半ばある種の確信めいたものを抱き、電話に出る。
チビ助の声色はいつになく硬かった。
俺は悟った。
案の定、チビ助はその男からの告白を受けるそうだった。
受けるかどうかは自分で決めろ、俺はそれに従う、なんてかっこいいことを言っていたのに、醜く食い下がる俺。
そしたらチビ助は耐えきれなくなったのか、重い口を上げた。
曰く、正直ヤンデレに耐えられなくなった、俺の愛は重すぎる、関東組の奴に告白されようがされまいが、どのみち俺とは別れるつもりだったと。
そんなことをつらつらと語られた。
もう完全にダメだと悟ったとき、俺も首を縦に振った。
好きな人をふらっと来たうまい面子にかっさらわれるということを2連続で体験した俺は、それこそ屍のような状態だった。
全てを怨んだ。
ピザのくせにカッコつけて…
素直にならなきゃ
変わりたいと思った時からが成長だからさ
あんまり自分を追い詰めんようにな
相当にへこんだ。
けど、地元のうまい面子とは変わらず仲良くしていた。
なんなんだ俺は。
そして3月1日、いよいよ卒業式を迎える。
俺は前日からvipでサザエさんのSSスレを立て、徹夜で物語を紡いでいた。
寝ずに迎えた卒業式。
正直、内容は全く覚えていない。
前年度生徒会長が卒業生代表で読むはずだった答辞は、当然メンヘラな不登校児に読ませるわけにもいかず、壇上では見知った女が何かを喋っていた。
気付けば卒業式も終了。
思い思いに別れの挨拶を済ませる同級生を尻目に、俺は小倉さんたちの通う学校を目指していた。
リア充すぎんだよあいつらは…
やっと小倉さんや中西さんたちが出てきた。
互いにお祝いの言葉を述べる。
ちょっとだけ奴らの目が赤かった気がしたのは、寝てない俺の幻覚か。
その後、奴らはクラス会?だかに行くことがわかった。
くそリア充が…
そこで奴らとお別れした俺は、全ての始まりの場所、アニメイト前へと向かった。
ちょっとだけ感動。
その後、久々にうまい某を配りゲーセンなんかに行って飯を食って帰宅。
あ、サザエさんのSSはちゃんと完結させました。
これで心残りは無くなり、あとは東京に旅立つまでの日数をかぞえるばかりと相成りました。
初めてうまい某を配ったあの日から、ちょうど1年。
たったの半年だってことが、未だに信じられないんだよね。
数年間はあったような気がする。
いやまあその短期間で2人にフラれたわけだけど、それを差し引いても余裕でお釣りのくるぐらい充実してたんだよね。
こんな経験は、これから数十年続くであろう俺の人生の中で、絶対無いだろうと思う。
それほどに充実していた。
それから東京に行くまでの約2週間の話でもしようか。