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白神山地は熊の湯温泉の主人の話 

ある日の夕方、この熊の湯温泉の主人のもとに
「山菜採りが滑落遭難した」との一報が入った 

主人が現場に駆けつけると、既に地元警察や救助隊が駆けつけており
サーチライト点灯の準備をしていた 
そしてその横で、まだ五十手前の男が泣きながら
「早く女房を助けて下さい」と懇願していたという 

その地点は白神ラインの天狗峠と明石大橋の中間地点で、
ガードレール下は急峻な崖であった

https://toro.5ch.net/test/read.cgi/occult/1356309352/
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生き残った夫の話によると、夫婦で山菜採りに来ていたが
ふと目を離した隙に妻が悲鳴を上げていなくなったのだという

白神山地はまだ寒く、サーチライト点灯を待つ救助隊員や警察官たちは
焚き火にあたって暖を取っていた
その横で遭難者の夫が
「火なんかに当たってないで早く妻を助けてくださいよ!」
と恨めしそうに懇願していた

やがてサーチライト点灯の用意が出来て、強い光が谷底に投射された。
少しずつ光の輪を横にずらしながら、遺体の捜索が始まった
やがて、「あっ」と誰かが叫び、サーチライトの光が止まった

(なんてこった、まず生きてはいまい)

主人は内心そう思ったという。
ガードレール下はるか二百メートルほどの地点、
岩が大きく張り出した谷の途中に女性が倒れていた
救助隊員が拡声器で呼びかけたが、何の反応もなかったという

絶命している。
主人だけでなく、救助隊の誰もがそう直感したそうだ

728:2/32013/01/20(日) 18:13:52.01 ID:XvDyKAbA0
しかし、発見地点は下手すれば二重遭難しかねない急峻な崖である。
主人と救助隊は谷底に降りる方法を相談し始めると、
遭難者の夫が半狂乱になりながら救助隊に詰め寄ってきた

「早く助けて下さい! 女房が呼んでるじゃないですか!」

もう少し待ってください、慌てると碌なことがない
と救助隊員は必死になって男をなだめたが、男は聞く耳を持たない
早く助けてくれと、もう少し待ってくれの押し問答が続いた、その時だった。
男が呻くように言ったという

「あぁ……なんであんたたちには聞こえないんだ! 女房が呼んでるのが聞こえないのか!?」

その瞬間だった。
男がバッと走りだしたかと思うと、あろうことかガードレールを飛び越えてしまった
悲鳴が救助隊員を凍りつかせた。
男の体が岩に激突しながら落下する音が不気味に響いたという

慌てて救助隊員たちが崖下を見ると、サーチライトの輪の中に、さっきの男が倒れていた
不思議なことに、男の遺体は妻のすぐ側に倒れていて、
まるで『助けに来たぞ』と言っているように見えたという

「なんてこった……」

主人がそう呟いた時だった。
一台の車が現場にやってきて、三十代になるかならないかという男が駆け下りてきた

「うちの親が落ちたって聞いたんですが」

遭難者の息子だった。
誰もが絶句し、「今引き上げるところだから、下は見るな」と誰かが言った、次の瞬間だった

729:3/32013/01/20(日) 18:15:45.84 ID:XvDyKAbA0
「そんなこと言ったって、うちの親父とおふくろが谷底から呼んでるじゃないですか」

救助隊が絶句していると、息子がガードレールに駆け寄ろうとした
咄嗟に、それを警官の一人が取り押さえた

「止めろ止めろ止めろ! でないとコイツまで連れてかれるぞ!」

その警官がそう怒鳴った瞬間
その場にいた警官が一斉に息子に跳びかかり、息子を取り押さえた

「何するんだ! 親父とおふくろが呼んでるのが聞こえないのか!?」

息子は半狂乱になってそう怒鳴るが、そんな声など息子以外の誰にも聞こえていなかった
あまりにも暴れるので、結局、息子は警官に両脇を抱えられ、
パトカーの後部座席に連行された
まるで山岳救助の現場とは思えない、異様な光景であった

しかし息子は「親父とおふくろが呼んでる」と唸り続けるわ、
隙あらばパトカーの外に飛び出そうとするわで、ほとほと手を焼いた

しかし数時間後、両親の遺体が谷底から引き上げられた途端、
まるで憑き物が落ちたようにおとなしくなった
息子は両親の遺体に縋って号泣していたが
先程までとあまりに違う息子の態度に、誰もが改めてゾッとしたという

山に呼ばれた人の話

730:本当にあった怖い名無し2013/01/20(日) 18:54:06.31 ID:3BdADd+i0
こえええええええええええええええええええええ

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