つい1ヶ月ほど前まで久保らは今までと
変わらない関係で新垣ちゃんは天使だった
↓
放課後、体育祭の準備をしてる
新垣ちゃんを見て暇だった久保が手伝う
↓
毎日のように手伝うようになる。
まだ天使
↓
結構遅くまでなった日があり、
二人でお疲れさん会的な感じでご飯食べにいく。
まだ天使
↓
ご飯中や帰り道、久保に対するダメ出しが徐々に出てくる。
↓
それからちょくちょく新垣ちゃんからの命令で
色々手伝わされるようになる。
二人だと言動がキツくなる。
微妙に悪魔
↓
いまではそれがさらに進行して、
二人だと常に昨日のような口調になる。
悪魔化
という流れらしい。
八方美人というか、性格悪い、新垣ちゃん…
でもさらに久保はどうしようもなかった
久保「俺・・・新垣ちゃんのこと、好きかもしれない・・・」
それから俺たちの新垣大作戦がはじまった
俺とは普段と変わらず
ニコニコと優しく気さくに話してくれる新垣ちゃん…
なんでこんな新垣ちゃんのことを好きになったのか聞くと
「本気で怖いわけじゃないし、
わがままでおこりんぼうで、なんか可愛い」とのこと…
稲森さんの件もそうだが、
久保はちょっと癖のある人が好きなのかと思いながらも、
とりあえず昔のトラウマを乗り越えようとしてるから
全力で力になろうと決めた
俺と久保のリサーチによると新垣ちゃんは
マジで恋愛に興味なし(人を好きになったことがない)で、
悪魔な性格を見せつけてるのは何故か久保だけということ
久保から直接新垣ちゃんに
「なんで俺にだけそんな感じなの?」
って聞いてもらったんだが、
「んー、なんか久保くんて犬っぽいから。ペット的な感じ。
だから久保くんはあたしの言うこと聞かなきゃダメ」
と返答され、訳が分からなかったがとりあえず
新垣ちゃんは久保を便利な所有物だと思ってる節があった
ただある意味では新垣ちゃんとかなり近い関係にいる久保
チャンスはチャンスだが、
このままだとご主人様とペットの関係で終わってしまう
俺ならそれでもいいけど、久保は新垣ちゃんと
付き合いたいからどうにかして
その垣根を越えなきゃいけない
「久保くんって男らしくないから異性としてじゃなくて
ペット的にしか見れないんだ、きっと」って言われたらしく、
ちょっと凹んでた
たしかに久保は男らしいっていうよりは
可愛い系のやさ男だったから
なかなか男らしさを発揮できていなかった
何かで新垣ちゃんに男らしさをアピールできないかな…
あった!!
俺は久保が野球がうまいのを思い出した
体育とかで他のスポーツはパッとしないけど、
久保は中学のころシニアで野球をやっててエースだった
詳しくはよくわからないけど選抜チームに選ばれたり、
野球で推薦の話もあったみたいだった
久保は「高校野球とか練習キツそうだし、
もう中学で十分やったから」と入学当初言っていたが、
コレは新垣ちゃんにアピールする武器になるはず
数日後…
そこにはグラウンドでノックを受ける久保の姿があった
そこそこのレベル(といっても3回戦くらい)
だったからブランクのある久保にレギュラーとって
活躍するのはちょっと難しいかなと思ったけど、
秋に新チームになってから久保は
二番手ピッチャーのポジションを掴んでいた
新垣ちゃんとの関係は相変わらずだったみたいで、
「どうせ下手なのになんで今頃野球なんてやってんの?
馬鹿みたい」とか
「放課後に無駄な練習してないであたしに付き合いなさいよ」
とか言われてたみたい
なんだかんだ久保といられる時間が少なくなって
ヤキモキしてるっぽい新垣ちゃんが
可愛く思えてきた高2の秋…
その頃、新垣ちゃんの相談やらも含めて
久保の家に結構行ってたんだが、
俺は2個上の久保のお姉ちゃんに恋をしていた
そんな俺たちの淡い恋は進展のないまま
あっと言う間に高3になった
最後の夏の甲子園予選で背番号1を勝ち取った
新垣ちゃんにも背番号1を自慢したらしいが
「野球とか興味ないから」
「全然その凄さがわかんない」
「坊主なんて似合わないから早く前の髪型にしてよ、馬鹿」
とか言われたらしい
多分、いや、確実に新垣ちゃんはツンデレ
少し前から随所に
新垣ちゃんも久保のこと気になってんじゃないかなって
発言が出てくるようになってきたし、
全校応援の甲子園予選は最後の一押しをする最高のチャンス
そして大会当日、俺は新垣ちゃんの隣をがっちりキープ
この頃には俺も新垣ちゃんと結構仲良くなっていた
(俺に対しては気さくで優しい状態)
一回戦の相手は弱小で、
久保は温存されて試合に出なかった
結局ゴールド勝ちして二回戦進出
試合中の新垣ちゃんは
「なんで久保くん出ないの?」
「こんな弱い相手なのに出れないって
久保くんって相当下手なのかな?w」
「久保くん出ないとつまらなくない?」とか言ってた
多分本人は意識してないだろうが
久保くんって言葉をめちゃくちゃ連呼してたw
ここ一年ちょいの間で日々こつこつとアピールして
2人の関係を築いてきた結果、
新垣ちゃんにもしかしたら恋心が…と思った瞬間だった
久保にそのことを伝えると
「それだけで甲子園優勝できそう」ってニヤニヤしてた
二回戦の相手はうちの高校と同じくらいの強さの高校で、
久保が先発した
新垣「あ、久保くん今日試合でるんだ?相手弱いのかな?」
俺「いやいやいや、この前の相手より全然強いよ。
だから久保が出るんだ」
新垣「えっ、そうなの?久保くんって下手じゃないの?
運動神経あんまよくなさそうだし」
俺「あいつ野球はうまいんだ。
背番号1ってチームの一番の中心選手ってことなんだ。
二年の途中から入部してエースなんてすごいよ久保は」
新垣「・・・そうなんだ」
俺「うん。この前の試合は温存されてたんだ。
今日も勝てるように応援しよう」
新垣「あ、うん」
新垣ちゃんは久保の試合を見るのが初だった
終始言葉数も少なくて、ピンチになるとメガホンを
ギュッて握りしめてめっちゃ久保のこと見てた
これは間違いなく恋w
途中から雨が降ってたんだが、
雨足が強くなって再試合になった。
久保はずっと一人で投げてたんだが、
再試合でも先発して完投
すごい熱戦になったけど、見事うちの高校が勝った。
ちなみに再試合も延長戦になって、
久保はそうとう疲れてたし、肩を痛めたっぽかった
ていうか隣の新垣ちゃんは
終始無言で心配そうに久保のこと見てた
三回戦は私立の強豪で、
うちにはかなり分が悪いと思っていたが
久保まさかの好投で6回終わって同点。
だけどスタンドからでも久保が疲れてるのがわかった
新垣「・・・バカ」
俺「ん!?」
新垣「・・・久保くんてバカだよね」
俺「ん、え、いきなりどした?」
新垣「あんな疲れてんのに、あんな無理して」
新垣「A子ちゃんに聞いたんだけど(野球部のやつの彼女)
久保くん肩相当痛いんだって。
だから昨日メールで心配してあげたら全然痛くないし、
疲れてないよ、だって」
新垣「バカ」
俺「・・・・」
次の回に久保は相手打線につかまって大炎上
炎上中、新垣ちゃんは眉毛しかめて
すげー泣きそうで見てらんなかった
結局ゴールド負けで、久保は泣いてた
新垣ちゃんもそれを見てちょっと泣いてた
それを見てなぜか俺も泣いた
サンクス
なんか書いてたら懐かしくて目から汁でてくる
秋になって高校最後の文化祭
俺は軽音楽部の連中とバンドを組んで
毎年文化祭で演奏してたんだけど、
付き合って間もない久保と新垣ちゃんカップルも
仲良く手繋ながら見にきてくれた
新垣ちゃんに
「雑音・・・だけど聴けないこともなかったかな」なんて
毒づいた感想をもらったりしたけど、
あの時の微笑ましい2人の姿は忘れられない
というほんわかな感じで高校生活は終わった
久保は大学進学
新垣ちゃんも大学へ(めっさ頭いいとこ)
俺は実家の酒屋に就職・・・
嫌いではないんだけど、どうもあわないっぽい
久保も新垣ちゃんも都内の大学で、
そこまで距離が離れてなかったから
ハタチすぎたあたりで同棲開始
久保とはよく飲みに行ってたし(たまに新垣ちゃん含む)、
交流は相変わらずだった
高校卒業して彼女もいない俺を今や
高いところから見下してる久保…
ある時、二人で飲んでるときに酔った勢いで言ってしまった
「お前の姉ちゃんが好きだ」と・・・
最初は「冗談だろ?w」「嘘だろ?w」なんて
言ってたけど、そのうちマジって気づいて
「そうだったのか・・・」と一言
そして…
「1なら全然いいな、姉貴の相手でもw
いいやつだって俺が保証するし!
ほれっ、コレ姉貴の番号だから」
そういって俺の携帯に姉ちゃんの番号を登録する久保…
「知ってると思うけどまだ実家に住んでるし、
今彼氏いないみたいだから飯でも誘ってやってよ」
なんていいやつなんだ・・・
「今度は1の番だな、大作戦w」
そう言ってくれたのがなんか
昨日のことみたいに思い出されてくる
俺は時間がだいぶかかったけど
久保の姉ちゃんとつき合うことが出来た
久保は大学卒業して半年くらい経ったあと新垣ちゃんと結婚
そして次の年には超絶に可愛い女の子が生まれた
(俺はロリコンではない)
あの夫婦は相変わらず新垣ちゃんが強かったけど、
それでも仲がよくて本当に幸せそうだった
俺のほうも順調で、
今年の4月(久保姉と付き合った記念日)に
籍を入れて結婚式の予定だった
久保と新垣ちゃんが弟夫婦になるのは
なんだか変な感じがしてたけど、
正月とか盆とか親戚で集まりがあっても
久保がいれば楽しいからいいなとかそんなこと考えてた
だけど、今回の震災で久保は亡くなった
地震の日は午前中で仕事終わって
あとはこっちに帰ってくるだけだったみたい
時間があるし、そうそう来れる機会もないから
久しぶりに沿岸のほうにいるおじさん、
おばさんに会いに行こうとレンタカー借りて向かったっぽい
そのおじさん、おばさんは
3月後半に遺体が見つかったけど、
久保は依然行方不明だった
4月になっても見つからず、
俺らは結婚式をキャンセルして、
籍を入れるのも延期した
5月、6月も見つからず、7月
久保は見つかった
もう火葬されて骨になってたんだけど、見つかった
DNA鑑定の結果で久保だって判明した
もう泣きかれるくらい泣いたのに涙って出てくるから困る
多少着色はあるけどほぼ実話なんだ
作り話なら最高なんだけどな・・・
あー、酒飲み過ぎて頭いてぇ
新垣「ほんとバカだよね、いつも間が悪いんだから」
俺「ほんとだよ・・・」
新垣「幸せにするって言ったのに…」
俺「ん?」
新垣「ずっと一緒って言ったのに…」
俺「・・・・・」
新垣「おいてかないでよ・・・ばかぁ」
新垣「ばかぁ・・・久保くん・・・・ばかぁ・・・」
新垣「うぅ・・・うわぁぁぁぁぁん・・・」
新垣ちゃん、久保が見つかる前まで
気丈に振る舞ってたんだけど、もうその時はすごい泣いてた
新垣ちゃんの言うとおり、お前はバカだ久保
さすがにあの新垣ちゃんを見て
俺もめちゃくちゃ辛かったぜ、久保…
本当に喜んでたことを聞いて、
俺らは籍を入れて結婚式を挙げることを決めた
久保の席には遺影を置いて強制参加させてやった
姉貴とキスしてるとこなんて見るの気持ち悪かっただろうけどw
今新垣ちゃんは子供と久保の実家に住んでて、
俺んちと近いから何かあればすぐ手助けにいける距離にいるから
久保もちょっとは安心してるかなと思う
だらだら書いて長くなってしまったけど、
書いてたらなんだか少し気が楽になった気がする
本当に俺の自己満でこんなものを書いてしまったが、
付き合ってくれた人たちありがとう&辛気臭くてすまんかった
こういうドラマみたいな話が
今回の震災で数えきれない位生まれたんだよな
恐ろしいな 釣りであってほしいよ
実際は毎日一人になるとこんな感じでクヨクヨしてる
今日は久保姉は新垣ちゃんの子供の面倒みるついでに
実家に帰って俺一人だから、
なんかとてつもなく落ちてしまった…
でもこうやってるうちに時間が潰せたしよかった
釣り宣言したら久保帰ってくるかな
なんで前途有望な人間はあっさり死ぬのに
俺みたいなウンコ製造機はいつまでも
生き長らえているんだろって思うわ
思うだけだけど
わかるか?
強いやつが生き残るんじゃない
生き残ったやつが強いんだ
運としか言いようがない
生き残って「何で死ななかったんだろ」と思う奴だっている
新垣ちゃんとチビ新垣ちゃんに会う度に胸が張り裂けそうでやばい…
すまなかった
俺の自己満に巻き込んでしまって…