付き合って一年くらいの時、デートしてたら、川沿いの道を手を繋いで歩く老人夫婦がいた。
「ああいうの憧れます」と私が言ったら(10歳ほど年上だったので何となく敬語だった)、
「え、なにそれ俺たちが、ってこと?俺、君が25になったら別れるよ。ババアの女は嫌だから」
「ああいうの憧れます」と私が言ったら(10歳ほど年上だったので何となく敬語だった)、
「え、なにそれ俺たちが、ってこと?俺、君が25になったら別れるよ。ババアの女は嫌だから」
二人とも介護が必要な健康状態。
息子夫婦と同居していたけど、嫁さんは二人も介護するのが体力的に限界にさしかかる。
爺さんは、居心地の良い家から離れたくないので無理矢理自分の妻を老人施設に入れて自分だけ自由気ままに暮らし始めた矢先、嫁さんがとうとう倒れて過労とストレスで入院した。
じゃぁ、妻の後を追って施設に行けば面倒を見て貰えると思って放置していた妻を訪ねたら、妻には75歳の恋人が出来ていて「残りわずかな人生この人と暮らす。」と離婚される。
恋をした妻は車いすも使わなくなり、お化粧してロ紅ひいて小綺麗な可愛いお婆ちゃんになって、爺さんは嫉妬で大暴れして周囲や息子夫婦からも愛想を尽かされたらしい。
夫はアフターサービスとかメンテとか、そういう関係の仕事なのですが、たまたまその人の担当をすることになりまして。
何しろ年寄りだから自分語りが半端ない。
「夫と氏別で子供たちには絶縁された気の毒なわたし、こんなに優しくて気遣いが出来て努力してまじめに生きてるのに不幸なわたし。なんてかわいそう。そう思うでしょ。」って感じのどんより曇った愚痴を毎回毎回、ねとねと聞かされながらの仕事だったらしいです。
もっと変な人もたくさんいるのでそのくらいなら、と夫は言っていましたが。
べたっとした距離感のない人で、仕事と関係のない頼まれごとなども、お年寄りだしついでだし、と夫が気軽に受けたことで懐かれてしまって。
たまたま職場の休みと役所に出す書類提出期限が重なって、自宅を連絡先にして必要書類を送ってもらったことから暴走が始まりました。