みんな冷静になり、特に小学校の例の一件を知っている人間はざわざわ状態。
デブも自分の犯した暴挙に気付いたらしく、こっちに助けを求めてくる。
俺とイケメンは顔を見合わせ、確認し合った。
デブを助けようと。
後で聞いた話だけど、イケメンはデブを見捨てようと合図したつもりらしい。
まあとにかくその場を切り抜けるためにロを開こうとした瞬間。
「その話は今は関係ないでしょ」
とまさに鶴の一声と言わんばかりの一言が教室に響き渡った。
あの、俺に告白してくれた可愛い子だった。なんという女神。
肉チンとデブと原始人も、あの子に言われたら…みたいな感じで引き下がる。
デブも「助かった」というのが顔に書いてあった。
俺とイケメンもなんだかしんないけどよかった…と思った。
しかし、ちょっとなんであの子が助けてくれたのかが気になった。
しかし事なきを得たのは事実だ。多少、禍根は残った気もするけど。
ところが、これで廃れるだろうと思われたウィルスゲーム悪魔verは
この先も密かに続けられ、俺がその災難を被ることになる。
まさにインフルエンザのような厄介さでクラスを席巻していた。
そして、俺にとって忘れられない事件が起きる。
その日、俺は昼休みをサッカーで楽しく過ごし、午後の授業に望んだ。
その際、かの女神がただいまのゾンビ菌感染者であることを知った。
誰だ…つけたやつは…出てきやがれ…
俺が神の鉄槌をと思ったが、それは言えない。
俺は厨二病のトップランカーとして、またある程度クラスの地位をもっていたため
その俺が自らルールを壊すようなことはできなかった。
もちろん、イケメンも同じだ。
しょうがない、今日はもうおとなしく過ごして部活やって帰ろう…そう思った。
しかし、五限時に回ってきた手紙が俺をそうさせてはくれなかった。
羨ましすぎる
その女子は人を見る目があるな、と感心した
そう書かれていた。
大小のピンクの花が散りばめられた紙のすみに、小さく女神の名があった。
その後の部活は気が気じゃなかった。
あんな事件の後だし、女子にリンチされるのでは?とか
実は原始人と下痢の復讐なのでは?とか思った。
正直身に覚えがありすぎて、女神の素直な好意をそのまま受け取ることができなかった。
そして、部活が終わる。
よく見るとロマンティックな青春白書である事が分かる
正直、女神は学年でもトップランクに可愛かったし
小学校のあの時、飛影のせいで彼女を振ったことを後悔していた。
今でもあれは飛影のせいだと確信している。
しかし、そこで頭をよぎる。ゾンビ菌。
彼女についているゾンビ菌。
今にして思えば、なんという馬鹿と言わざるを得ないが、当時の俺には一大事だった。
というより例のゲームは神格化され、もはやルール破りは禁忌のような扱いだった。
いや…しかし…剣道場の裏…あそこはバドミントン部の領域。
幸いバドミントン部は男女別だ。
ゾンビ菌を知るものはいまい。
そう考えたのが浅はかだった。
部活を終え、制服に着替えたのだろう。8×4の優しい匂いが鼻腔をくすぐる。
俺はもう最高に興奮していた。
フヒヒww体操服着せちゃうぞww的な状態と言ってもいい。
女神は少しはにかみながら下を向いていた。
どう切り出そうか悩んでいるみたいだった。
俺は男だ。
ここは男らしく自分から思いを告げるべきではないか。
そう思った。
しかし、女神が先に口を開く。 「小学校の…約束…覚えてる?」
タヒぬwwwwwwwwタヒんでしまう
これは絶対>>1イケメンだな・・・ッ!
たしかに、3年後と言ったが……。
あれは俺の厨二病が災いした戯れ言であって、決してロマンチックな約束じゃなく…
そもそもまだ結婚できないし…え?ていうか覚えてたの?今まで?ずっと?
って感じで一気に混乱した。
何も言い出せず黙ってたら、女神が業を煮やしたのかさらにこう続けた。
「あのあといろいろあったねー」
どうやら閑話休題というやつだった。
情けないことに、これはチャンスと思った俺はそれに乗じた。
「そ、そうだね。懐かしいね、楽しかったよ」
と言った矢先、こう返された。
「体操服のことは秘密にしておくよ(キラッ)」
こ、こいつ…知っている!?
なにか弁解しなくては、と思ったが何も言えない。
さらに女神は続ける。
「まさか君が体操服盗むなんてー思わなかったよ、はは」
…なん…だと…?
盗んだのは俺じゃない!断じて違う!変態神と女神に誓おう!
あれはデブだ!あいつがパクって捨てて、俺はその尻ぬぐいをしただけだ!
と言いたかった。が俺の中でデブの暑苦しい笑顔がよぎる。
……言えない。ここで仲間を見捨てては、男ではない。
当時の俺は、こういった友情を大事にする
不器用キャラという設定というかもう性格だった。
「でも、わたしはそんな気にしないよ。あ…いや…よくはないけど…」
ともう、完全に俺が犯人で、哀れな性欲猿で、告白の相手だった。
よく分かんないけど・・・いいな・・・
そして顔を上げた。
そして、女神の後ろ10メートル、やせた垣根とフェンス越しに
イケメンとデブの姿が見えた。
やつらのニヤついた顔を見て、俺は蘇った。
今、彼女に触れることは許されない。
危うく魔女の洗脳に毒されるところだったぜ。
そして、俺は断った。帰って泣いた。
泣きながら、俺は天涯孤独の星の元に生まれたのか…と呟いた。
次の日、デブが肉チンと付き合ったと聞いて、発狂した。
なん…だと…?
レンジでチンした肉を食べるデブ…
聞かれてもないのに昨日は寝れなくて…
とか言い訳してしまうのはもはや挨拶のようなものだった。
イケメンとデブは昨日のことには触れなかった。
俺もあえて自分から口にすることはしなかった。
女神は一見明るそう振る舞っていたが、無理しているのは明らかだった。
そして放課後。
三人で帰宅している際に俺は思ってもないことを口走った。
「あー肉チンと付き合いてー」
てっきり肉チンww好きにしろよwwwみたいな反応が返ってくると思った。
しかしイケメンはこう返す「もぅデブのもんだからなぁ」
はにかんだデブに殺意が湧いた。
あのあとにデブは密かに肉チンに謝ったらしい。
そしたら家が同じ方向で思いの外話が弾んで
気付いたら付き合っていた。と。
間を端折ったのは、覚えていないからだ。多分聞いていなかった。
イケメンは既に二次元の素質を見え隠れさせていたので
三次元とかちゃんちゃらおかしいぜ、といった様子だった。
俺はあぁ、とかそぅ、とかしか言えなかった。