(1)
高校の頃、いじめられてた。
田舎だけど一応進学校だったので絵に描いたようなDQNはいなかったけど、
最初は肩パンとかされる程度だったけど徐々にエスカレートして
普通に殴られたり蹴られたり、
ひどいときにはタバコの火を手に押し付けられたりした。
とにかく遮二無二勉強して県外の大学に進学した。
大学はいい友達や先生に恵まれてびっくりするほど楽しく過ごせた。
地元に戻って就職してからも上司がとても良くしてくれて仕事にもやりがいを持てた。
あれだけ辛かった高校時代のこともどうでもよくなって、根性焼きの跡も
「俺の学校すっげぇ荒れてたんすよwwwwクローズみたいでしょwwwwww」
ってネタに出来るようにもなった。
入社して数年、仕事もある程度こなせるようになって余裕が出てきたので
何か趣味のサークルでも入ろうかなと思いSNSで探してたら、
バイク好きの集まるサークルを見つけた。
晴れた日にのんびり近場に出かけて地元の美味しいものでも
食べましょう、みたいな軽いノリが気に入ったので、
代表者に連絡を取り次回の集まりに参加させてもらうことにした。
んで、当日その集まりに行ってみたらAがいた。
全員合わせて15人くらいのメンバーの前で自己紹介したら
Aは俺に気付いたようだった。
Aは結婚していて、このサークルに奥さんと参加していた。
奥さんは姉さん女房らしく、フォーリンラブのバービーに似ていた。
バービーに出身を聞かれたので答えたら
「じゃあA君と高校同じ?同級生?うそー!」
ってバービーのテンションが上がった。
テンションが上がってはしゃぐとますますバービーそっくりだった。
Aは何かごにょごにょと煮え切らない受け答えをしていた。
高校で俺にしていたことに対して多少なり罪悪感があるみたいだった。
大学生活が本当に充実してて楽しかったので
高校の事なんてもうどうでもよかったんだけど、
後ろめたそうなAを見てたら復讐とまではいかないけど
ちょっとからかってやろうと思い立った。
「でも俺、不思議なんですけど高校の記憶がほっとんど無いんっすよ、
びっくりするくらい何も覚えてなくて。
多分よっぽど受験勉強キツかったんっすかねwww」
って、記憶が飛んでるふりをした。
サイコな奴と思われたら心外なので
「大学とか今の仕事がすごく忙しかったから忘れたのかもwww」
みたいな事を冗談めかして付け足した。
バービーは最初は「うそー!」とか言ってたけど、
何度もやりとりするうちに俺が本当に何も覚えてないんだと思い込んだようだった。
バービーが「ちょっとA君、俺君のこと何か知らないの?」とか聞くと
Aは「いや・・・」とか「クラスが違って・・・」とかごにょごにょ言ってた。
その後、Aが腫れ物を触るような感じで恐る恐る
「マジで何も覚えてないのか?」
って聞いてきたので、
なるべく寂しそうな顔をして(多分実際は五木ひろしみたいな顔になってたと思うけど)
「本当に覚えてないんですよ・・・Aさん、何か知ってる事あったら教えてくれませんか?
なんだか、人生にそこだけぽっかり穴が開いてるみたいで」
と答えたら目がすいすい泳ぎ始めた。
そのうち目線が俺の根性焼きの跡に注がれてきたので、
「これもね、いつやったか分からないんですよ・・・自分にとってあまり思い出したくないこと
だから忘れちゃっただけかも知れないけど」
って五木ひろし顔で言ったら真っ青になっていた。
あれだけ悪ぶってたAが、自分の行いが誰かの人生を変えてしまったという
事実にびびってるのがすごく滑稽だった。
帰り際に
「あ、今度卒業アルバム持って来て下さいよ、何か思い出すかも」
と声をかけたら引きつった顔で頷いたので、
「俺、アルバム捨てちゃったみたいで。じゃあよろしくね。『A君』」
って言い残してその日は帰った。
その後転勤で県外に引っ越すまでは何度かそのサークルに顔を出した。
メンバーやバービーは俺を気に入ってくれて、すごくよくしてくれた。
バービーは基本的に曲がった事は大嫌い!な人で、Aは
とてもじゃないが昔俺をいじめていたとは言えない雰囲気らしく、
終始居心地悪そうにしていた。
復讐になってないと言われればそうなんだけど、
それなりに自分の人生が充実してきたところで
因果な真似をするのは気が引けた。
高校でのいじめは自分にとってもう本当にどうでもいいし、
小心者のAが勝手に罪悪感を感じ続けるならそれでいいやと思ってる。
最近バービーから「こっちに帰ってきたらまた教えて、みんなで俺君待ってるよ」
ってメールが来たので記念にカキコ。
相手が何も感じなかったら復讐にもならんよね
この件に関しては上手くいったパターンだけど
ほっといても自滅しそうではあるが
嫁にするなら最適かも 夜も良さそうだし>独身男性各位
不安な状態に置き続けるってのは
結構いい復讐かも