保険金なんかは俺の大学進学費用の為にと手を付けずに、とにかく一生懸命育ててくれた。
おかげで大学まで出してもらって、就職が決まった時には
学費としてとっていたお金の残りだと言って就職祝いの通帳をくれた。
さすがにそれを受け取るわけにはいかないと思って
母ちゃんがこれからうんと楽しむために使えよって辞退したんだが
「母ちゃんはちゃんと楽しんでるし、お前にしてやれるのはこれで最後だから。
あとは自分ですべてやるんだよ」って言って無理矢理渡された。
いつか母に何かあった時の為に取っておくことにした。
今年の春に、俺、胃癌の手術をした。
(部分切除でリンパ転移もなく
医者からは100%とは言えないが心配は要らないと言われている)
その入院中に嫁がその通帳を見つけたらしい。(元嫁だが“元”は省略)
退院して落ち着いた頃に
「見つけたのはたまたまだから、変に誤解してほしくないんだけど」
と予防線を張りながら、あの通帳はなんなのかと聞いてきた。
嫁とは結婚2年目でまだ子供はいない。
結婚前の預金はお互い開示していたが、この通帳に関しては上記の理由から話していなかった。
俺としては、母に何かあった時にあれを使えば家計に負担を掛けなくていいと言うこともあって
今は黙っていた方がいいと言う判断だったんだが、変に誤解されてもいけないので
この機会に上記のようなことを話したんだ。
ところが嫁からは予想外の反応があった。
嫁も俺と同じで父親と死別した母子家庭の一人娘なんだが
俺と違うところはあまり裕福でなく、奨学金で大学を出たところ。
その奨学金は結婚後、家計費から払ってるんだが
(共働きで同額ずつ家計に入れて、そこから払っている)
その通帳を見つけて以来、あれで一括で支払ってほしいと言いだした。
俺は、夫婦になったんだからと半分は一緒に払ってるのに
それ以上を望むのはさすがに厚かましくないかと思ってる。
が、嫁は
「俺君のお母さんはしっかり者だから、何かあった時のことは自分でどうにかするでしょ。
今は目の前の奨学金返済を最優先させるべき」と、自分に都合のいい理屈を展開してきた。
あのお金を自分の事に使うのだとしても、いつか子供が出来たら教育費もかかってくるし、
俺も今後何があるか分からないから残しておきたい。
すくなくとも奨学金返済は今半分負担してるのだから
それ以上には考えていないって断ったんだが
あんまりしつこく言ってくるから
「だったらもう俺は今後手を引くから自分の奨学金ぐらい自分で払え」って言ったら
泣き出して「酷い、そんなんじゃもう夫婦やってけない!」って
それがなんか脅しのように感じた俺は
売り言葉に買い言葉で「じゃあもう離婚でいいよ」って言った。
嫁には「結婚したらそれで終わりなのか。結婚したらこっちのもんとか思ってんのか」って
言われたけど、結婚してからも大事にしてたじゃん。ただ今回の件は譲れなかっただけで。
それでここしばらくギクシャクしてたんだけど、実家の母から突然電話があって
「あの通帳はおまえ自身の為に使いなさい。
あのお金のことでお前たち夫婦がギクシャクしてるのは私は辛い」って。
嫁、母に直談判したみたいだ。
これで完全に気持ちが切れた。で、盆休みに嫁に正式に離婚を申し出た。
子供がまだいなかったのが幸いして、まぁ揉めに揉めたけど離婚成立。
あの通帳に関しては、嫁にどうこう言える権利は元々なかったのに
それを嫁の借金(奨学金)返済に充てようとしたのがそもそもの離婚の原因なので
結婚2年の間に一緒に支払った奨学金を盾に財産分与なしで
結婚後にそれぞれが自分で預金したものはそのまま自分のものってことで離婚した。
嫁はまさか俺が本気で離婚するとは思ってなかったみたいだから抵抗したけど
俺からすればかなり譲歩して離婚にこぎつけた感じ。
事情を知る友人たちは
「嫁、厚かましいにも程がある」
「いくら俺君の方が惚れた結婚だからって、そりゃあ冷められて当たり前」と
全員一致で嫁批判もあって、これ以上ごねても損しかないと思ったようだ。
新しくアパート借りて一人暮らしに戻って、ようやく落ち着いたので記念に投下。
母は気にしてたけど、俺から言わせれば
あの通帳のおかげで嫁の本性に気付けて良かったと思ってる。
あなたが癌になって、今は大丈夫で半分負担してくれてても
この先分からないから、
いまお金があるうちに返済しちゃえって腹積もりだったんだな
手術後にお金の話をする奥さんの神経がわからん。
奨学金半分でも一緒に払ってくれるだけで愛ある旦那さんだったのにね。
その元嫁は本物のアカン奴や。
うん!言う通りだな。
本性が暴露されて良かったではないか。
元嫁事件でも良いお母さんだよな。お母さんとこれからも仲良く。
お大事に。貴方とお母さん、お二人ともどうか幸せになってな。