あまり面識はなかったけど、俺が剣と魔法のファンタジー脳なら
彼は戦闘機と軍隊脳って言ったところか。
一度休み時間に彼の席の後ろを通ったら
「クク…爆撃だ…やれ!」とか呟きながらノートに一心不乱に
何かを書き綴っていたのを覚えている。
彼は事件が発覚した当初、我関せずって感じだった。図太い奴だ。
よかったなファンタジー路線で
彼は俺の立てた復讐劇に感心。
幕袖にいるときは敵地に潜入する兵士の気持ちだったとか。
そして彼なりに盛り上げようと考えたらしい。
それが最終リハの休憩の間に教室に戻り体操服をパクる、という作戦。
これは難なく成功。
本当はクラスの可愛い子のがよかったけど、無かったからケニアので妥協。
しかし帰り道でいらなくなりドブに捨てた。
現在に至る。
という感じの告白を放課後、クラスの発言権のある男子が数名残った時にしてくれた。
これはこれで面白いなww
しばらくケニアの髪のチリチリ具合とか下痢は近づくと臭いとか
そういう他愛のない話で盛り上がってた。もちろんイケメンも参加。
しかし、次第に…やばくね?って雰囲気になった。
ところがそこで俺の厨二精神炸裂。
「あれはもう無くなったんだ…失ったものは戻らない。しかし、新たに作ることはできる」
みたいなこと言った気がする。我ながら震えた。会心の名台詞。
けど、当時の俺含めそこにいたみんなはすっかり厨二病患者だった。
イケメンも「そうだな。俺らなら!」みたいなこと言ってた気がする。
デブも「偽装作戦か…」とか呟いてたけど、これは俺には意味不明だった。
そうしてケニア体操服コピー作戦が決行されることとなる。
そもそも俺の厨二病から生まれた無責任な言葉。
なんとなくかっこいいし言ってみよう程度にしか考えてなかったから
まさか最近家庭科で覚えたミシンで体操服作ろうぜwってことになるとは思わなかった。
そして当然のように挫折。布もないし、家庭科室開いてない。
そこでイケメンの家でやることになった。
家庭科で作ったエプロンを褒められた俺はちょっと自信があった。
デブはなんかやたら本格的な道具とか持ってきてた。
イケメンはノリだけなので、授業でもらったはずの裁縫箱は「どっかいった」とか言ってた。
しかしエプロンとか手提げと違い体操服に大苦戦。
あの名前を入れるワッペンもない。
そもそも先生いないとミシンとか複雑すぎて触れない。
途中で飽きた俺たちはバイオハザード1をやって遊んだ。
今でもあのゾンビ共は怖い。ちなみにこのゲームも後々あることで影響が出る。
さて、そろそろ帰ろうかって時に、イケメンの兄が帰ってきた。
彼こそ、まさに後の神と崇められる存在だった。
俺たちが裁縫箱を並べたり、布を裂いたりした現場をみて声をかけてきたのだ。
かくかくしかじかでと経緯を話すと、ちょっと待ってろと言って引っ込んだ。
そして、キーアイテム「体操服」を持って現れたのだ。
この一件以来、俺たちは彼を崇めることとなる。
「神」と。
今にして思えば、なんで持ってんだww体操服プレイかよwwって感じだが
当時の俺たちにそんな邪な考えは浮かぶべくもない。
もちろん名前を書いたワッペンを貼る。
サイズが違うとか生地が違うとか微妙に筆跡が違うとか
そういうことは取るに足らないことだった。
俺たちは何か大きな事をやり遂げたという達成感で一杯だった。
デブは「任務完了」とか呟いてたけど、てめーのせいだろwって少し思った。
一週間くらい経っていたはずだし、クラス一の可愛い子ならまだしも
ケニアの体操服なんて微塵も興味ねーよ、というのがみんなの本音だろう。
そのおかげで体操服をロッカーにいれるのは難なく成功した。
俺は密かにまた障害があるんじゃ?と期待した分、拍子抜けだった。
翌日、ケニアが「あ、あれ……え?え?」
とかきょどりだしたところで事件は終わりだと思った。
しかし、体育の時間にまさかの急展開をみせる。
ほどなくして女子の集団がざわつきはじめた。
運動が得意な俺とイケメンは技を競い合って遊んでた。
片方がハンドスプリングとか前宙を繰り出し
もう片方が「ば、ばかなっ!」とか「くっ強い…」とか言う遊びだった。
そこで先生から集合の合図があった。
なんとケニアが泣きながら突っ立っていた。
一瞬ばれた!と思ったけど、イケメンと顔を見合わせ黙っていた。
デブはその後ろであからさまにオドオドしていた。
そして先生はゆっくりと口を開いた。
「女子はもう帰っていい。男子はちょっと残りなさい」
あぁ…終わった。と思った。
あぁ…ばれたな。
先生「だけど、やっていいことと悪いことがあるんだ」
やべぇ…タヒにてぇ。
先生「正直に言えば、私も一緒に謝ろう」
でも…俺が直接の犯人じゃないんだよな…。
先生「ケニアの体操服に……」
あぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!
先生「精子がついていた」
…………………………あ?