それで昔のコトを思い出した。
イロイロあったんで書いてみたい。
スゲー、どきどきするな。
心臓バクバクだし、手が震えるぞ。
書きます。
高校卒業以来、疎遠になっていた実家に帰ったことから始まった話。
事情があってフェイク入りだけど許して欲しい。
当時のスペック
オレ 30前、会社員、独身
ユキ 同級生、元カノ、既婚
コウジ 同級生、悪友、会社員、独身
一人ボーっとしてると電話が鳴る。兄は仕事があるからとさっさと帰って行ったし
元々母はいない。しかたなく出てみると……元悪友の吉田コウジだった。
オレ 「ああ、そうだな」
コウジ「お前、今日来れるか?」
オレ 「いきなり何の話だよ?」
コウジ「あれっ? ハガキを送ったろ? 同窓会の?」
オレ 「知らねーな。つーか、今日は親父の葬儀でたまたま帰ってきてただけだ。
だから、これから家に戻る予定だ」
まったく気乗りしなかったけど、しつこく言われて断るのが面倒になり、とりあえず会場へ。
ところが……受付を見てゲンナリ……そうじゃないかとは思ったけど……元カノだよ……
親父の転勤と兄貴の進学のせいで一人になったオレの世話をしてくれた子。
実際は彼女だけじゃなく、彼女の両親もオレのことを気に掛けて食事の世話をしてくれたり
家に泊めてくれたりしてた。
とはいえ彼女の家に居候するわけにはいかないんで、基本的には一人暮らし。
そして家の中のことは掃除、洗濯、食事の世話と家事一切を彼女がやってくれた。
そんな状態にもかかわらず、彼氏彼女になったのは高校に入ってから。
オレ「……げ、元気そうだな……」
ユキ「うん……」
気まずさ全開……絶対こうなるって思ったわ……だから来たくなかったんだ……くそっ!
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葬儀の時だと思う。それが正しければオレが5歳の時だ。
その時のオレは死がどういうものかは正しく理解できてなかったけど、もう二度と母親に
会えなくなったことはなんとか理解していたと思う。
だから、親父にあやされようが兄貴に諭されようがびーびー泣いてた。
ユキ「カズくん泣かないで」
オレ「おがーぢゃーん、おがーぢゃーん、びーびーびー」
ユキ「もう、男の子が泣いちゃだめっ」
オレ「だって、だって、びーびーびー」
ユキ「これからはユキがね、カズくんのね、おかあさんになってあげる。
ご飯も作ってあげる。一緒に寝てあげる。だからもう泣かないで」
言葉は適当だけど、こんな内容のことを言われたような記憶がある。
彼女が憶えてるかどうか知らないけど。
何かあるとすぐに泣くオレをいつも庇ってくれた。
だからオレのために面倒な家事一切を引き受けてくれた彼女に対しても女性として
特別な感情はなかった。なんというか、おふくろのような姉のような……
要するに家族みたいな感じだったから彼女の前でも平気でパ*ツ一枚でウロウロしてたわけで……
台風接近にもかかわらず彼女はいつものように晩飯を作りに来てくれた。
それを二人で食べた後、試験前の勉強を教えてもらうことに。当然、彼女の方が成績がいい。
ユキ「なんだか外が凄いことになってきてる……」
オレ「そーだな。さっきまでそうでもなかったのにな。今日、帰れるか?」
ユキ「ちょっと怖いかも……」
オレ「じゃ、泊まっていけよ。着替えはその辺になんかあるだろ?」
ユキ「……えっ……」
彼女のとまどった表情と声に気づかず、Tシャツとスウェットの上下をホイっと渡す。
オレ「風呂なら今のうちに入った方がいいぞ。停電したら面倒だし」
ユキ「……う、うん……」
打ち付ける雨の音が凄い、しかもアンテナが揺れるのかテレビの画像が時々乱れて
なんか閉じ込められた感がいっぱいで、妙にワクワクする。
その時……
電線でも切れたんだろう。雨戸が閉まっているから本当に真っ暗。近所の状況もわからん。
こりゃダメだ。もう、どうしようもないな……
妙に冷静になっていると風呂場から悲鳴が聞こえる。
ユキ「キャー、カズくーん! カズくーん! 怖いよぉー」
オレ「待ってろー、今、そっちに行くからー」
手すりがないと踏み外しそうだ。風呂場では悲鳴が泣き声に変わっている。
早く行ってやらないとな。
脱衣場のドアを開け、声をかける。
オレ「ユキ、来てやったぞ」
中から思いもしなかった声がする……
ユキ「待って! ……恥ずかしい……」
オレ「へ?」
実はこの時、初めて彼女が年頃の女性だと気づいたわけで……
なんだか急にこっちまで恥ずかしくなってきた。
ユキ「あっ……行かないで……怖いから……」
オレ「ど、どーすりゃいいんだよ?」
ユキ「ぐっ……目をつむったまま、そこに居てよ……」
風呂場のドアが開いて人が出てくる気配がする。湯気が顔や手に当る感じがした。
後方1mのところにゼンラの若い女性がいると思うと凄まじく緊張してきた。
タオルで体を拭く音、下/着を着ける音、パジャマ代わりのスウェットを着る音……
うー堪らん……音から状況を想像していたら下/半/身が固くなってきてしまった。
これまで彼女のことでこんなふうになるなんて一度もなかったのに……
オレ「お、おぅ……」
とりあえず目は開けたけど事情により彼女の方を向くことができない。わかるよな?
というわけで懐中電灯を受け取ると前かがみになりながら部屋まで戻ることに。
暗くて助かった……
風の音と雨の音だけ。さっきのワクワク感は吹っ飛んで微妙に気まずい感じ。
オレ「……えーっと……どうしようもないから、もう寝る?」
ユキ「えっ?!」
オレ「へ、変な意味じゃないって。ユキは兄貴の部屋で寝るんだよ。
兄貴の部屋がイヤなら、こっちで寝ればいい。オレが向こうに行くから」
ユキ「……イヤなんかじゃない……」
彼女に近づくと、明かりの点いたままの懐中電灯を彼女に渡す。
と……なぜか明かりが消えて真っ暗に……電池切れ?? じゃないよな??
ん?! 腕の辺りに暖かくて柔らかいものが静かに触れると同時に石鹸のいい匂いが……
こ、これは………………
……はいそうです……そういう仲になりましたです……
ただね、一応、知識としてはあったんですが経験がなかった。彼女もそうでした。
だから上手くいかないわけでして……
真っ暗で場所もわからんが、まさかいきなり懐中電灯で照らすとか変態すぎてムリ。
とりあえずココか? いや違う、入らん、じゃココか?
なんて適当に突いてたらもう、あっという間に我慢の限界で……
ちゃんとできたのは心身ともに準備を整えた何日か後だったような気がします。
だったんですけど彼女の両親は黙認でした。
次男で幼馴染のオレは婿養子には適任とか考えていたんでしょうね。
実際、彼女のお母さんからはそんなことを言われましたし。
当時のオレも深いことは考えずに旅館の専務とかカッコいいじゃんとか気楽に考えてました。
それまでも彼女の好意には甘えていたんですが、それとはちょっと違うんですよ。
うまく説明できませんが、心の癒しとでも言うんですかね。なんか安心できたんです。
だから……ずっと彼女と一緒にいたいなとか本気で考えてました……
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彼女の実家の旅館経営が苦しくなって地元有力者から融資を受けることになったんだが
そこのバカ息子が彼女に一目惚れしてしまい話がややこしい方向へ。
江戸時代じゃあるまいし、なんで借金のカタに娘を差し出さなきゃならんのだ??
と言ってもカネのない高校生の立ち回り先なんてすぐに割れるわけで3日と経たずに連れ戻された。
親父にはボコボコにぶんナグられて彼女の両親と地元有力者に土下座で謝罪……
当時の体格からいえば力で親父になんて負けるハズはなかったけど、その有力者が親父の勤める
会社の大得意だと聞かされたから黙ってナグられた……高校生でもそのくらいの空気は読める。
兄貴の話では親父の最後の言葉は『カズオ……すまない……』だったとか……
そんなことを聞かされた後で酒を飲んで騒ぐなんて気分になんてなれない。
だから一人ロビーに座って昔のことを思い出しながら感傷に浸ってた……
会場から持ってきた瓶ビー/ルが3本目から4本目になった頃、懐かしい声が聞こえてくる。
応援してやればいいのに
もしかして田舎の話?
>>44 田舎です。旅館があるくらいですから。
ユキ「……ここに居たんだ……」
オレ「……ああ……親父のことを考えてた……」ウソです。ユキのこと考えてました。
ユキ「あっ……ごめんなさい……今日はお父さんの……」
オレ「いいって……無事終わったし……ただね……
兄貴から親父が最後にオレに謝ってたって聞かされてさ……」
ユキ「……そう……」
オレ「……」
>>47 ありがとう
それから二人で何も言わずに並んで座ってた。どのくらいの時間が経ったのか会場が
ザワザワし始める。どうやらお開きのよう。みんなに挨拶だけはしておこうと立ち上がると
ユキ「あの……連絡先だけでも交換しない?」
オレ「そ、そうだな……」
ユキ「……連絡してもいい?」
オレ「いつでもいいよ」
田舎でかつ、有力者がからんでくると大変だよね
おれも田舎出身だから雰囲気わかる
その日はそれで終わり。昔話をするわけでなく、お互いの近況を話すわけでもなく
ただ並んで時間を過ごしただけ。でも、それだけで十分だった気がする。
彼女の姿が見れただけでなんだかホッとした。色々あったけど全て過去の出来事として
消化できそうな気もしてきた。
そしたら次からは笑って昔話ができるかも……ほんとか?
それから1ヶ月、いつもと変わらない生活が続く。
朝ギリギリに起きて朝食代わりの牛ニュウ。昼は会社の自販機でパン。そして深夜までサビ残。
走って終電に乗ってコンビニで弁当と缶ビー/ルを買うだけの毎日……まったくつまらん。
とはいってもFラン出身のオレなんかが氷河期に正社員の口にありつけただけ、ありがたい。
そう思ってブ/ラック臭が漂う会社だけど、それなりに貢献しようと努力はしてるつもり……
ただ……つまらんのだわ。
イケメンがちムチなのか。それで親が権力もってるとかハイスペックすぎるなぁー。
ある意味、気楽でいいんですよ。給料は安いけど使うヒマがないからカネは勝手に貯まってくるし
趣味がないから欲しいモノもない。
でも、この瞬間にオレが死んでも誰も泣かないし誰も困らない。成功しても誰も喜ばない。
そう思うとなんかどうでもよくってね……
独身で一人暮らしは動きやすいから休日とか深夜とか関係なく呼び出されるのだ。
タクシー代あったっけ?
とか考えながら携帯を見るとユキからの着信と表示されてる。
オレ「もしもし? どうした?」
ユキ「……別に……どうもしない……」
オレ「そうか……ちょっと驚いた。何かあったのかと思ったわ」
ユキ「……ただ……声が聞きたくなって……ぐすっ……」
オレ「もしかして、泣いてる? 何かあったのか?」
彼女はオレとは逆で守るものが重すぎて辛いらしい。
自分の意思ではない結婚……しかも破綻状態にもかかわらず解消できない関係。
それは旅館経営のため、従業員のため、その家族のため……
今、自分が居なくなるとその全てが崩れ去ることが分かっているから……
親が明日死んだらお先真っ暗になる
>>59 そうですよね。怖いですよね。
長い時間、話をしたけど結論なんて出るハズもない。同じところをグルグル廻るだけ。
それでもよかった。つき合ってた頃だっていつも内容のある話をしていたわけじゃない。
同じように結論のない話をしていただけ……楽しいか楽しくないかの違い……
そんな感じで特に約束したわけじゃないけど毎週日曜の深夜に電話を掛け合うようになった。
最初の電話はちょっと重かったけど、その後はどちらかというと世間話の中にお互いの
近況が少し混じる感じ。内容なんてどうでもよかったから……声さえ聞ければ。
現代でもあるのか。
やっぱ本当に好きな人と一緒になるっていうのは両家の家族のこともあって難しい面もあるんだな。
何回かの電話で分かったのは、彼女の結婚生活が初めから成り立っていなかったこと。
戸籍上は本妻だけど実際は愛人扱いだったらしい。それに反発した彼女は家に帰ることなく
旅館の一室で生活していて家では旦那が愛人とその子供と生活していたそうな。
なんということ……金持ちならなんでも許されるのかよ……なんだか悔しい。
そんなことが分かったある日曜の夜、彼女との電話を終えて眠ったオレは夢を見た。
これまで何度も何度も繰り返して見る夢……彼女との別れの朝のこと……