比較的新興のキリスト教で、遠くない未来ハルマゲドンがおこり、
組織に属していない人間は全員滅ぼされる、
生き残った組織の人々は、楽園で永遠に幸せに暮らせる、というのが教えのベースだった。
週に3日、集会と呼ばれる教会での集まりがあり、そこで聖書の教えを聞く。
その他の時間は、可能な限り伝道活動を行うことが推奨されていた。
ハルマゲドンは数年から10年程度で来ると言われており、その為フルタイムの仕事をすることは悪とされた。
そんな時間があれば伝道活動をすべし、というのが組織での常識だった。
父親は元々は大手の営業マンだったが、入信後言われるがままに仕事を辞め、アルバイトを始めた。
当然うちは貧乏だった。
子供は俺だけとはいえ、父親がフリーター、母親が専業では当然だ。
またハルマゲドンが来るまでのこの世は、悪魔に支配されているとされていた。
信者以外の人間は「世の人」と呼ばれ、必要以上の接触は信仰心を削ぐということで、これも推奨されない行為だ。
つまり、原則学校の友人と遊ぶのは禁止であるのだ。
もちろん部活も禁止だ。
学校では授業のみ受け、すみやかに帰宅し、集会、もしくは伝道活動に出席するのが、信者の子供の行動パターンだ。
その他、クリスマスや誕生日、正月や七夕、節分、あらゆるイベントが
>>146の続き
あらゆるイベントが、悪魔に支配されているこの世の行事とされ、関わることは一切禁止だった。
俺の幼少から少年時代が、いかにつまらないものだったか、分かって頂けると思う。
また、悪いことにうちは両親共に信者だった。
多くの家庭が母親のみ信者で、父親は未信者だった。
そういう家庭でも母親が父親の反対を無理矢理押し切り、子供を教会に連れて行くのだが、それでも両親ともに信者のところよりは自由があった。
さらにうちの父親は、その教会でもっとも責任ある長老と呼ばれる立場になっていた。
長老一家は他の信者の模範とならなければいけない存在だ。
他の信者の子供が、クラスの子と放課後に遊んでいるのを目撃されても大事にはならないが、俺の場合は許されない。
そういう事が発覚すると、両親にベルトで全身をみみず腫になるまでおう打された。
嘘だと思うかもしれないが、行きすぎた体罰は当時の組織ではよく行われていたことだった。
10代半ばの頃だ。
俺には神がいること、ハルマゲドンが来ることをなかなか心から信じることができなかった。
伝道活動に熱心になることも出来なかった。
それよりも友達と遊んだり、部活をやったりしたかった。
しかし組織の教えは、物心ついた頃から徹底的に叩きこまれていた。
頭では否定しても、ハルマゲドンの恐怖や、神に見られているという感覚を忘れることは難しかった。
また両親からは、組織から離れたら縁を切ると宣言されていた。
そんな状況で組織から離れるのは、10代の少年には本当に厳しいことだ。
しかし組織にとどまっているのもまた地獄だった。
中学の卒業式のその夜、俺は神に祈った。
高校入学までの間に、どうか私にあなたの存在を信じられるような奇跡をおこして下さい。
心に直接語りかけて頂いてもいいです。
今は苦痛な集会や伝道活動が楽しくて仕方がないようにして頂いてもいいです。
どうかどうかお願いします。
その日から毎日毎日真剣に祈った。
信仰心を神に伝えようと初めて伝道活動にも積極的な関わった。
でももちろん奇跡は起きなかった。
ちなみに決行をこの日にしたのは、入学前だと高校に行かせてもらえなくなるのを危惧したからだ。
当時は真剣だったのだ。
驚く両親に、僕は今日で組織をぬける、と宣言した。
心から信じる事ができない事、この春休みに神に祈ったが応えられなかった事、今の人生が辛い事、
それらを努めて冷静に伝え、そして最後に高校だけは出して欲しいと懇願した。
母親は泣いてパニックになっていた。
父親は自分が何を言っているのか分かっているのかと最初は威圧的だったが、俺の意志が固いとみると、もう少し時間をかけて考えようと態度を軟化させた。
その夜は、ずっと母親のすすり泣く声が聞こえてきた。
俺は無言で頷くと、母親が号泣した。
神の名前を何度も口にし、俺が集会にくるようにと祈っていた。
祈りは届かないんだよクソババア、と心で悪態をついた。
その後も何度か説得されたが、俺は応じず。
無駄だと知った両親は俺へのコンタクトを止めた。
それから両親とは、しばらくまともに口を聞かなかった。
高校はどうだ?みたいな当たり前の会話もなかった。
食事も自室で取ったし、なるべく顔を合わせないようにした。
俺はバスケ部に入った。
スポーツはそれなりに得意で、背も高かったので、部活では誉められる事も多く楽しかった。
クラスにも馴染め、友達と帰りにゲーセンに行ったりするのが新鮮で、毎日か楽しくて楽しくて仕方なかった。
勉強はほとんどしなかった。
大学にはどうせ行けないのだ。
そんなことする時間があれば中学時代に失った青春を取り戻そうと、部活に遊びにと熱中した。
また、小遣いがなかった為、土日だけ新聞配達を始めた。
月2万くらい、まあ十分だった。
二学期になった頃、ようやく両親と食事をするようになった。
でも組織の誰々君が最近立派に伝道してるとか、誰々君がバプテスマを受けたとかそんな話ばかりだった。
また俺のせいで父親が長老の立場を下ろされたのも聞かされたが、知ったこっちゃなかった。
相変わらず部活どうだ?の一言もなかった。
しかし俺も色々な場面で両親を頼らざるを得ないのは痛感していたので、卒業までは仮面親子を演じようと、特に荒波を立てるような言動は控えた。
二学期の終わり、同じクラスの子に告白された。
夢にまでみた青春がどんどん自分の元にやってくる。
その子とはほとんど話したこともなかったが、まずは友達からと付き合いを始めた。
彼女も運動系の部活をやっており、帰りはよく一緒に帰った。
いつもニコニコ、一緒にいて楽しい子だった。
月2万とはいえバイトをしていた俺は、マックなんかでは奢っていた。
ハードなバスケ部でアルバイトなんてすごい、と彼女は驚愕していた。
両親が小遣いもくれないクズだからね、とは言えず、みんなには内緒だよ、とだけ言った。
冬休み、船橋の屋内スキー場でデートし、帰りに人生初のキスをした。
俺は舞い上がり、そして翌日には冷静になった。
俺あのこの子こと、異性として好きなわけではないな、と。
心のない交際にいたたまれなくなった俺は、三学期が始まる前に別れを告げた。
でも今にして思えば、俺は彼女のことが好きだったのだ。
当時俺を止めたのは、異性交遊に対する罪悪感だった。
それは組織では一発アウト、即排斥の行いだったからだ。
例えるならドラッグをやるような、そんな後ろめたさがあった。
当時はまだ宗.教の影から完全には逃れられていなかったんだろう。
いい子だったのに、童/貞は彼女で捨てていれば、素敵な思い出になっていただろうに。
高二になってすぐ、俺はバスケ部のレギュラーになった。
高二の間に二人と付き合い、そのうち一人とセー交渉を持った。
その子のアニキのワゴン車で二人で酒を飲み、酔った勢いでやった。
そしてすぐ別れた。
こちらはあまりいい思い出ではない。
まあなんにせよ、その一年間で、俺の宗.教からの無形の影響力は、すっかり無くなっていた。
俺は名実ともに一般人になれたのだ。
俺が初めて集会に連れていかれた日だ。
彼女は同い年だったが、まあ性別も違うし、同じ教会内でも群れと呼ばれるグループが別で、接点はほとんどなかった。
住まいも電車で二駅ほどで、小中学校も当然別だ。
でも俺は小学生の頃から嫁の事をよく見ていた。
なんにしろ彼女は綺麗だったからだ。
ほっそりしていて目がキラキラして、そして立ち居振舞いがとても礼儀正しかった。
当時どこまで自覚していたか分からないが、俺の初恋は嫁だったと思う。
本人に言っても、当時は話したこともほとんどないじゃない、と信じてくれないけど。
彼女が俺と同じ高校だというのは、入学してすぐに分かった。
でもその頃はもうとっくに初恋の気持ちなんて忘れていたし、そもそも当時の俺の精神状態はそれどころではなかった。
廊下ですれ違っても、お互い挨拶はしなかった。
顔も知ってるし多少ながらも話したこともあるので、そんな時はなんだか居心地が悪いような不自然な空気を感じた。
高三で、嫁と同じクラスになった。
スレチ
よそ行ってやってくれ
宗.教大嫌いなんだよ
ネタだろうけど面白くねぇから
普段の行動を見ていれば、元組織の人間には分かる。
部活にも入ってない、友達もほとんといない、一目瞭然だ。
俺はとても不憫に思った。
積極的に組織に留まっている人間がいるとは俺には思えなかったし、学校での彼女はとても楽しそうには見えなかった。
まわりの雰囲気を見ながらチャンスをうかがい、目立たずに二人で話せそうなタイミングで、勇気を出して声をかけてみた。
俺「久しぶり」
嫁「なにそれ、同じクラスなのに笑」
俺「話すのは久しぶりでしょ」
嫁「そうかも」
俺「俺の親父とお袋元気?」
嫁「なーにそれ笑」
こんな感じで軽いノリで、組織の名前は出さずに、でも組織ありきの前提で会話した。
17歳の嫁はとにかく綺麗だった。
間違いなく学校一だった。
俺は15分20分の会話ですぐに恋に落ちた。
でも現実的には難しい。
高嶺の花なのは置いておいても、彼女は異性交遊を禁じられたクリスチャンなのだ。
知恵を絞って、バスケの試合に誘うことにした。
二人きりのデートは無理でも、学校行事の試合を観戦するくらいはいいのではないか?
そう考えたのだ。
もちろん厳密に言えば組織以外の人との不必要な接触は避けるべきとされているが、うちのような両親ともに信者でない限り、各人の良心に委ねられている部分はあった。
俺「ねえ、俺高校入ってからバスケ始めたんだ」
嫁「俺君がバスケやってるのなんて、みんな知ってるよ」
俺「中学では出来なかったからね、嫁さんはやりたい部活とかなかったの?」
嫁「うーんと」(困った顔)
俺「いっぱいあったでしょ」
嫁「そうだね、でも仕方ないよ」
俺「日曜の集会、今夕方でしょ」
嫁「え?うん」
俺「午前中、バスケの試合あるんだ、見に来て欲しいんだ、昔のよしみで笑」
嫁「なにそれ笑、行けるかな、ちょっと分からない」
俺「うん、これたら来て、絶対笑」
嫁「えー笑」
ベストを尽くした俺は、その後念を押すこともなく試合当日を迎える。
会場で嫁の姿を見たときは飛び上がるほど嬉しかった。
俺は唯一フルで出たが、それだけに情けなかった。
会場で嫁に声をかけた。
俺「ごめん、負けた」
嫁「でもみんな上手でびっくりしちゃった、凄かった」
俺「ありがと、あと来てくれてありがとう」
嫁「いいえ、こちらこそ」
組織では、子供同士でもそれなりに礼儀正しい言葉使いで会話をする。
それだと学校では浮くので、学校に馴染むしゃべり方にモードを変更するのだが、嫁は結構違和感のある話し方をしていた。
俺「ねえねえ、今日の埋め合わせというかお礼がしたい」
嫁「どういうこと?」
俺「来週あそびに行かない?ディズニーいこ?」
その時の嫁は、心底困った顔をしていた。
俺は必死で説得した。
俺「言っとくけどデートじゃないからね、今日のおわび、お礼、そんな感じだから、ね」
詳細は忘れだが、そんな感じの妙な説得をした。
そのかいあってか、なんとか了承にこぎ着ける。
嫁「じゃあ土曜の午後からなら」
その週は嬉しくて嬉しくて、ずっとそわそわしていた。
デートにきるような服は当然持っていないのだ。
それでも嫁は誰より魅力的に見えた。
一線を超えた後悔なのか覚悟なのか緊張なのか、彼女はとても神妙な顔をしていた。
でも入園してからは、彼女はずっと笑顔だった。
楽しくて楽しくて仕方がないといった感じだった。
カリブの海賊で海賊がお姉さんに追いかけまわされてる仕掛けを見て、指を指して笑っていた。
横から見たその笑顔は映画のワンシーンみたいに非現実的に見えた。
彼女はお土産は買わないと言った。
ここには内緒で来たのだから当然だ。
だからポップコーンとかチュロスとか、そんなのをたくさん買って上げた。
別れ際、俺は告白することにした。
そんなつもりはなかったのだが、彼女の現実離れした美しさに好きとか惚れたとかそんなのよりももっともっと強い感情が溢れてきて、止められなくなってしまったのだ。
嫁「なに?」
俺「キミが好き」
嫁「・・・」
俺「初めてのデートでこんなこと言うのは気が早いけど、次がある保証なんてないし」
嫁「・・・やっぱり今日デートだったんだ笑」
俺「当たり前じゃん笑」
嫁「そっかぁ、私デートしちゃったんだぁ・・・」
嫁はまた笑顔から神妙な顔になった。
俺は急に怒りが沸いてきた。
誰がなんの権利があって、彼女から笑顔を奪うのだ。
ハルマゲドンが来なかったら、彼女の青春を誰が返してくれるんだ。
部活やったり友達と遊んだりデートしたり、もっともっと青春を楽しめたはずなのに。
こんな理不尽なことがあっていいのか。
いや、ハルマゲドンなんて別に来たって構わないんだ、来るなら来いよ。
それまで人間らしく生きられるならそれでいいんだ。
永遠になんか生きたくない。
神に中指立てて笑いながらタヒんでやるよ。
嫁「うん」
俺「今ハルマゲドンがきたらね、あの子もママもタヒんじゃうんだよ」
嫁「・・・」
俺「私の聖書物語って書籍では、ハルマゲドンの絵は隕石か地割れだったよね、隕石に潰されてタヒぬのか、溶岩で焼けタヒぬのか」
嫁「・・・」
俺「神は愛があると教えられてきたけど、俺にはとてもそうは思えないよ」
嫁「・・・私も分からないの、いろんな事が」
俺「嫁さんは、永遠に生きたい?」
嫁「え?どうだろう、タヒにたくはないけど」
俺「俺は好きな人と一緒にいれるなら、ハルマゲドンが来てタヒんでもいい」
嫁「・・・」
俺「・・・」
嫁「・・・プロポーズみたい笑」
俺「プロポーズだもん」
嫁「嘘でしょ笑」
俺「うん笑」
彼女はゆっくり語り始めた。
組織の教えへの疑問、母親との関係、失った青春へのどうしようもない後悔。
どれも分かりすぎるほど分かる。
嫁のネックは母親との関係だった。
もし嫁が辞めたら、母親は間違いなく悲しむ、それも相当深く、それが嫁には耐えられないと。
そういえば俺の母親も半狂乱になっていた。
組織にいて、教えを完全に信じてる人間からみれば、辞めるイコールタヒ刑宣告と一緒なのだから、その反応は当然かもしれない。
俺「嫁さんとこは、お母さんとお父さん仲いい?」
嫁「どうだろ、普通かな」
俺「お父さんは未信者だもんね、それでも二人は一緒に生活して仲良くしてるんだから」
嫁「うん」
俺「嫁さんが辞めて最初は悲しむだろうけど、時間たてば関係は元に戻るんじゃないかな」
嫁「・・・どうだろう、分からないよ」
嫁は迷っていた。
俺だって悩みに悩んで辞めたのだ、すぐ決められないのは当たり前だ。
俺「俺はね、高校入学までにいいことがなかったら辞めるって決意して、それで入学の日に辞めたんだ」
嫁「入学の日に辞めたのは知ってるよ」
俺「え?」
嫁「俺君と同じ高校って聞いていたもの、それが入学した途端集会に来なくなるんだもん笑」
俺「そっか笑」
嫁「みんなびっくりしてたよ、まさかあの俺君がって笑」
俺「長老の息子だもんね、次はまさかあの嫁さんが、だね笑」
嫁「えー笑」
嫁「・・・そうだね」
俺「でもね、それまでも週一でも2週に一回でもいいから、俺とデートして欲しいな」
嫁「私も俺君とは遊びたいけど・・・」
俺「やっぱりデートっていい方はいや?笑」
嫁「うん笑」
俺「分かった、じゃあなんだろう、買い物とか、学校帰りの寄り道とかならいい?笑」
嫁「うん笑、それならしたい」
そういう経緯で、俺と嫁はちょくちょく遊ぶようになった。
彼女はそれからも集会には変わらずに行っていた。
でも3ヶ月、4ヶ月経つうちに、嫁から今日集会だぁ面倒だなぁとか、今週は伝道一回も行かなかったんだ、といった発言がでるようになってきた。
一応彼氏彼女ではないし、デートでもないということだったので、キスはもちろん手も繋がなかった。
俺も嫁が結論出すまでは焦るまいと考えていたので、苦痛でもなかった。
そういう関係は美しすぎる彼女から、セー的イメージをどんどん遠くしていった。
なので自転車の二人乗りをしたときに背中に触れた彼女の乳〇の感触に、俺は狼狽え混乱したのを覚えている。
この感触をもとにオ〇ニーは絶対しちゃダメなんだ、と謎の貞操観念に悩まされた。