もう15年前の話でよかったら。
6年生初日の登校日。
特にクラス替えもなく見慣れた顔触れで
「春休み短かったよな〜」とか
「FFの裏ボス倒したぜ」とか
いつも通り友達と会話をしてる所で
教室の扉が開き、先生が入ってきた。
「あ〜、やっぱりまたふるっち先生かよ〜」
「うるさい。大体お前らわかってただろ?
うちは二年ごとに受け持つ学校なんだから」
「先生の顔見飽きた〜。」
こんな何気ない会話が教室に響き渡る。
先生自身も全員去年と同じ顔ぶれなので
特に気張って挨拶もすることもなく
「今年もよろしく」程度の挨拶を済ますと
だらけてた先生の顔が一瞬引き締まる。
いいか?みんな仲良くしてやれよ〜」
「わかってるよ〜。席が一個多いもん!男?女?」
「焦るな。今、紹介する。坂倉〜。入ってこい〜」
クラスみんなの視線が扉に注がれる。
横に座ってる山田花子を7〜8発蹴られたような顔したブスは
「出会いの予感♪」などと、狂おしいほどに
イカれた言葉を汚い顔面にある肛門から吐いたのを覚えている。
扉が開き一人の少年が下を向いたまま入ってきた。
耳まで伸ばした黒髪に、二重でやや釣り上がり気味の目。
顔は面長で細く引き締まり、やや大人びた顔立ち。
キツネ顔のホストのような男にクラスの連中は目を奪われる。
「うわ〜♪」「きゃ〜♪」という黄色い声援というよりかは
もはやピンクに近い天井に突き抜けるような悲鳴を女子達があげ
その声を聞いただけで男子数人は既に不愉快そうな顔をしてる。
普通の転校生だったら自己紹介で
オロオロ戸惑い上手にしゃべれず
緊張感を丸出しにするのだがこの坂倉は違った。
半ばふてくされ気味に「坂倉・・」と告げ
そのまま少しの間があくが
二つ目の言葉は彼の口から出てこない。
先生が「趣味とか特技は?」と聞いても
「別に・・」と、小さい声でつぶやく。
鼻息を荒くし、ノ〜トを広げ
おもむろに「坂倉 ブス子」と書き
名字と名前のバランスを心配していた。
「席どこ?もういいでしょ先生?」と坂倉は告げると
舌うちしながら席につく。
俺はこの坂倉の態度が鼻についた。
バカ女達がイケメンとのロマンスを妄想で繰り広げるには
もってこいのオカズになりえるルックスだ。
やや悪ぶった態度がさらにメスの本能を刺激させて
脳みそをイカれさせ湿らせるには十分。
いいオカズをもらい、尻尾振って喜ぶ発情期のメス犬共。
こいつらの声援はどうでもいい。
俺はこの舐めた態度にランドセルを背負わず
肩掛けバッグでやってきて
どこの角度から見ても生意気なこいつをしめる!と
一人意気込んでいた。
根暗が明るいキャラに変わるチャンスだよな
したことないけど
番長的な存在だった。
発育が早く既に身長が170センチあり
他はみんな身長は150センチ台ばかり。
まともに取っ組み合えば体格差ですべて押し切れるので
俺に喧嘩で勝てる奴はいなかった。
絶対に負けるはずがない。
大きな自信を持ち、6年生初登校日ということもあり
午前中で授業が終わる。
帰りの会が終わり、帰ろうとする坂倉を
俺は背中から捕まえた。
「おい!俺がこのクラスで番を張ってる1だ。
てめえ挨拶もなしか?」
今、思い返すと「番を張ってる」などと
知能指数が低い言葉をかっこいいと思い込み
最高のキメ顔で言っている当時の自分を思い出すと
その事実を知るもの全てをこの世から消したくなるが
まだ6年生だから勘弁していただきたい。
なんせバイブルがろくでなしブルースだったから・・・
「あ?返事でき・・ガブッ!!」
目を合わすよりも言葉を交わすよりも早く
坂倉は俺の横顔を殴りつけた。
俺は一瞬何が起こったかわからなかった。
いきなり殴りかかってくる事など想定していなく
「あれ?なんかほっぺたいてえな?」と
理解するのに数秒を要した。
しかし、頭の中で組み立て殴られた事を理解すると
「てめええ!こらあああ!」と
坂倉の髪を掴んで振り回す。
この髪をつかんで振り回したのまでは
覚えているが喧嘩の中身はよく覚えていない。
なんとなく覚えているのは
とにかく坂倉は防御を一切せず
俺が殴った上から無理矢理殴りかかってくるという
狂気じみた喧嘩の仕方をしてきた。
俺の方が有利に進めていたと思うが
あまり記憶は定かじゃない。
ただ途中から一切防御しないで
何発も顔面に攻撃が入ってふらふらしてるのに
全く引かずひたすら殴りかかってくるこいつに
「もう怖いから終わりにしたい・・」と
思っていたのは覚えている。
その後、誰かが教室に先生を呼びに行き
喧嘩を止められて終わった。
先生に事情聴取を受け
自分から喧嘩を仕掛けたことを正直に話すと
マジでたんこぶができたほどの強烈なげんこつをもらい
保健室行って坂倉に謝ってこい!と、職員室を追い出された。
「謝んなきゃ・・いけねえのか・・・」
俺は謝るのが嫌だった。
自分から喧嘩を売ったんだから自分の方が悪いのはわかる。
しかし最初の舐めた態度やランドセルじゃなく
偉そうに肩掛けバッグを持って現れ
いくら喧嘩売る気で声をかけたからとはいえ
いきなり殴りかかってきた奴に謝る・・・
考えただけでも気に入らない。謝るなんて冗談じゃない。
俺はそのままランドセルを背負って
玄関に向かい靴を履いて帰ることにした。
なんて内心ちょっとびびりながら靴を出していると
タッタッタと走ってくる足音が聞こえてきた。
「やばい!帰ろうとしてるのバレたか?」と
身を隠そうとしたがここは下駄箱。隠れる場所はない。
もう怒られる覚悟で足音が聞こえてくる先を見つめていると
その足音と共に視界に飛び込んできたのは坂倉だった。
「あ・・・・・・・・・」
お互い目が合い、空気が凍り
全ての時間が止まったような空間ができる。
なんでこいつ・・ここに・・・
どうする・・謝るべきか?
頭の中ではいろいろ考えを巡らすも
なかなか良策が見出せず動けない、
水道をキチンと締めなかったのか
ポツポツと滴り落ちる男が聞こえる・・・
そんな静寂の中、坂倉が口を開いた。
「あ・・ああ・・・先生にお前に謝ってこいって
怒られて。でも謝りたくねえからこのまま逃げるつもり。」
「・・・・・・・・・・・・俺も」
「え?」
「・・・俺もお前にいきなり殴りかかったんだから
謝ってこいって言われて・・・・
腹立ったから逃げて帰ろうとしたところ・・・」
「ぷっ・・・・」
「は・・ははははは」
空気が緩み、時間が動き出すのを感じた。
張り詰めていた空気は優しく溶けて
俺と坂倉を優しく包みこみ、柔らかくなった日差しを浴びながら
お互い笑いが止まらなくなった。
「お前こそ謝れよ!」
「嫌だね。」
「俺もごめんだね。」
「んじゃ一緒に帰ろうぜ。」
「似たもの同士、一緒に帰るか!」
どっちも謝らずに仲直りする経験は
人生でこれが最初であり最後かもしれない。
俺は坂倉と親友になった。
学校ではもちろん終わってからも毎日のように一緒に遊んだ。
ただ仲良くなればなるほど不思議な事があった。
小学校6年生ならばたいがい門限がある。
俺の家は当時としては若干甘めで
夕方の6時半だったが
いつもバイバイするときは
「俺はもうちょい遊んで帰るわ」と言っていた。
いくら子供とはいえ、毎回毎回「まだもうちょい遊んで行く」と
言ってるのはおかしいと気づく。
しかし一度それについて深く聞こうとしたが
何度聞いても「遊び足りないだけ」としか返事が返ってこない。
小学6年生には心配でもそれ以上の事をしてやれない。
俺は気にはなりつつも
それ以上は触れずに時を過ごしていた。
THE・青春
俺は小学5年生まではいろんな友達と
ゲ〜ムをやって遊んでいたが
6年生になり急に坂倉ばっかりと遊ぶようになり
また外にばっか行くようになって
飯食ってる時も坂倉の話ばかりしてるもんだから
坂倉に会ってみたい!と騒ぎ出した。
「なぁ?うちの母ちゃんが会いたいって言ってんだけど
遊びにこねえ?」
「え・・?お前の母ちゃんが?
・・・別にいいけど・・・」
このとき、少しだけ下に
うつむきため息をついた気がした・・・
こいつの表情を今でも忘れない。
やめろwwwwwww
それ板倉や
菓子やらジュ〜スを用意して出迎える。
時間になって坂倉が来ると
「待ってたわよ〜!」とうちの母ちゃんは
坂倉に抱きつき「か!勘弁してください!」と
顔を真っ赤にして坂倉はじたばたしていた。
その後、母ちゃんを交え3人で話してたんだが
やっぱり母ちゃんがいると坂倉としゃべりづらい。
「もういいだろ!出てってくれよ!」と再三説得し
1時間かけてやっと俺の部屋から出て行った母ちゃん。
「悪かったな。しゃべりづらかっただろ?」
「たしかにしゃべりづらかったな。
でもいい母ちゃんじゃん」
「そうなのよ。私はいい母親なの♪」
母ちゃん、屋根をつたって二階の俺の部屋の窓に張り付いてた・・・
完全防備状態にして俺と坂倉はタバコに火をつけた。
なんとなく悪ぶっていた俺達は
タバコを普通に吸うようになっていた。
「こら!ガキャ〜!てめえらタバコ吸ってんじゃねえ!
ここ開けろコラァ〜!!」
母ちゃんはカーテンを絞められて
帰ったふりをしつつも
その窓の下に伏せて盗み聞きを続行していた・・・
しつこいよ母ちゃん・・・・
さすがに無理がありすぎてワラタ
ガラガラガラ・・・・
「てめえ!1!いつも言ってんだろ!
タバコ吸うなら私の前で吸えって!
隠れて吸って火事とか起こしたらどうすんだ!
吸いたきゃ私の前で堂々と吸え!」
うちの母ちゃんは高校時代は
それはもう漫画に出てきそうなクソヤンキーで
覚せい剤以外は全て経験していた。
高校時代の写真を見せてもらったが
トータルテンボスのアフロにもう一発サンダーを
かましたようなバカでかい頭に
真っ赤な口紅をひき、ロンスカにぺっちゃんこのカバンを抱え
「押忍」と書かれたマフラーを装着していたほどだ。
酒を飲もうと文句は一切言わなかった。
ただただ言われたのは「私の前でやれ」
陰でこそこそ悪さをすると
焦ってロクな結果にならないってのが
母ちゃんの持論で
例えば隠れてタバコ吸ってる→見つかりそうになり
焦ってどっかに投げ捨てる→火事を起こす」となったら
取り返しがつかないと。
だからいつも「何かするなら私の前でやれ」が口癖だった。
今、思うとホント変わった母ちゃんだったな・・・
そんなこんなで坂倉が帰った後に
母ちゃんと坂倉の事をしゃべっていたが
母ちゃんが変な事を言い出した。
なんていうのかな・・・
凄い私の顔色をうかがってたわね」
「そりゃそうだろ。窓から急に怒鳴りつけて
タバコ吸うなら私の前で吸え!って言われたら
顔色も伺いたくなるって。」
「そうじゃなくて・・・う〜ん・・・
とにかくなんか凄い怖がってたように見えた。
ま、勘違いならいいんだけどね〜」
母ちゃんの言ってた事はこの後的中してたことを知らされる・・・
6月には6年生で最大と言ってもいいイベントの
修学旅行が控えていた。
当時特に好きな子がいたわけでもないが
「もしかしたら告白されるんじゃねえか?」とか
バカな脳内シュミレーションを繰り返し
前日はなかなか寝付けずにいた。
そして修学旅行当日。
バスに揺られ、俺達は旅館に着く。
そして旅館に着くなり
いきなりハイキングに行くと教師達が言い出す。
坂倉「どうする?めんどくせえしバっくれる?」
俺「いや、無理だろ〜。絶対点呼取るし。
めんどくせえけど行こうぜ〜。」
女子1・2・3「坂倉君〜!」
女子1「ねぇ?一緒にハイキング歩いて行っていい?」
坂倉「はぁ?やだよ。俺は1と行くし。」
女子2「え〜、じゃあ1も一緒でいいからさ〜。」
俺「おいおいてめえら、なんで俺がオマケみたいになってんだよ?」
女子3「だって、1ってさ。スポーツできるしおもしろいし悪くはないんだけど・・・顔がね〜・・・」
女子1「ちょっと!マジ言いすぎだよ〜!ぎゃはははは!」
女子2「みんなが思ってたこと言っちゃう?」
女子3「だって。惜しいんだもん。顔さえ良ければ坂倉君並みなのに。顔がイケてなさすぎ!」
ただしイケメンに限る!という現実は
小学校時代から確実に存在していたのだ。
俺はこの事件で深く心に傷を負った・・・
そりゃ俺だってもっとかっこよく生まれたかったし
何も好き好んでナマズみたいな顔に生まれてない。
運動も喧嘩も俺の方がちょっとだが坂倉より上。
だが顔面レベルは 坂倉>>>>>>>>>>>>俺=ナマズ
ぐらいの差があり、女子人気は圧倒的に坂倉が勝っていた。
俺は思った。
こ の バ カ 女 達 の 邪 魔 し て や る
いろいろと坂倉に質問を始める。
クソ女1「ねぇ?休みの日、坂倉君は何してんの?」
俺「呼吸してんだよ。当たり前だろボケが。」
クソバカ女2「ねえねえ?好きな女の子のタイプは?」
俺「パンツにうんこつけない女だよな。だからお前らは無理だって。」
ビチグソメス3「彼女とかつくらないの〜?」
俺「俺が坂倉ならお前らからは選ばねえよ。」
物凄い低いレベルのガヤだが
当時は小学6年。これで精いっぱいだった・・・・
俺「文句あんならてめえらが消えろよ。
俺は坂倉とハイキングするって決めてたんだよ!な?」
坂倉「あ・・ああ・・。ま、1と約束してたし
文句あるならおまえらがどっか行ってくれ。悪いな」
屁×3「マジで言ってんの?ひどい〜!
でも・・かっこいいから許しちゃう〜♪」
坂倉は本当にいいやつだし大好きだけど
10年以内に刹すリストに入れることにした。
糞どもの邪魔をし続け、結果的には
ただでさえ薄かった人気をさらに堕落させるに飽き足らず
「坂倉君を奪い取る会」なるものが女たちの間に誕生し
同時に「1討伐隊」も編成され
あろうことか、クラスで不動の2トップと呼ばれ
片方は女ながら鼻糞ばかり食い続けるタヒ神顔の女と
いつもバッタと会話し「飛びたいんだよね。飛びたいんだよね」と
囁き続けるヤク中のような女を刺客として送り込まれ
逃げ惑ううちに坂倉とはぐれるという事件も起きた。
ちなみにタヒ神もヤク中も特に坂倉は好きではなかったらしいが
「頼まれたから」という理由で俺を暗刹しにきたらしい。
女の団結力はこれから恐ろしい・・・
そんなこんなで修学旅行の時間が進み夜になると
坂倉の様子が少しおかしくなってきた・・・
飯を食い終わったあたりから
なんか焦ってるような落ち着かないような素振りを見せている。
俺「ん?どした?」
坂倉「俺さ、調子悪いから風呂やめておくわ・・」
俺「え?マジで?どした?大丈夫か?」
坂倉「う〜ん・・ダメかも・・・
とりあえず先生のとこ行って寝てくるわ」
と、告げると部屋から出ていき
先生の所へと坂倉は向かっていった。
俺は心配しつつも風呂に入り
帰ってきて30分ぐらいしたら
坂倉は元気な顔をして部屋に戻ってきた。
俺「大丈夫か?」
坂倉「ああ!大丈夫だ。バファリン飲んだら速攻で良くなったわ。
やっぱすげえなバファリンは!」
さっきとはうってかわって急に元気になった坂倉を見て
安心し、一緒に遊び夜が更けていく・・・・
バッグに隠してきたタバコをすっと取り出す坂倉。
俺「おまえ・・・しっかり持ってきてたんか!やるじゃん!」
坂倉「へへへ・・・まあ一服しようぜ。」
窓を開けると温かい空気が入ってきた。
時期は梅雨だがこの日は空に満月が輝いていた。
満月の遥か下で少年二人が灯をあげ
小さく赤い満月二つを作り、煙をあげる。
タバコが美味いと思っていたわけじゃない。
でもどこか大人に近づきたくて早く大人になりたくて
タバコに手を出していた少年二人が
少し大人の階段をまたのぼる・・・
坂倉「・・・なぁ・・・早く大人になりてえよな・・」
俺「ああ。そうだな〜。堂々とタバコ吸いてえな〜。」
坂倉「そうじゃなくてさ。早く働いてさ。自分で金稼いで
一人で生きていけるようになりたい・・って思うんだ。」
正直俺には何を言っているのかわからなかった。
一人で金稼いで生きていきたいと思ったことはないし
そんなことより夜遅くまで堂々と遊びたい!とか
バイクに乗ってみたい!とかそんな浅い大人像しか頭にはなかった。
俺「俺はそんなこと考えたことねえな。お前大人だな〜。」
坂倉「子供だよ。子供だから・・・悔しいんだよ・・」
いつしか小さく赤く輝いてた満月は
一つだけが呼吸に合わせ時に強い輝きを放ち
もう片方は消えそうな光を必タヒにとどめていた。
坂倉「俺さ・・・俺の親さ・・・
親父の方が血が繋がってないんだよ。」
俺は坂倉の家族の事はほとんど知らなかった。
聞いても何も教えてくれないし
家にも呼んでくれない。
まああんまり言いたくないんだろうな〜くらいにしか
思っていなかった。
坂倉「俺の親父と母ちゃんさ。俺が小さい時に離婚してさ。
んで母ちゃん、2年前に新しい親父を連れてきたんだ。
こいつさ・・・ロクでもねえ奴でさ・・・
母ちゃんばっかに働かせて、自分は働かねえんだ。
普通男が働いて女が料理したり洗濯したりするだろ?
俺からするとそれがおかしくてさ・・・
あるとき言ったんだよ。その親父に「仕事しねえの?」って。」
俺「・・・・・・・・・・・・・」
坂倉「そんとき、俺は胸倉つかまれて「誰に物言ってんだ!クソガキ!」って
おもいっきりぶん殴られた。鼻血が出て、尋常じゃねえ痛さで泣いた。
泣いてるのにまだ殴りかかってくるんだ・・・
あんまり殴られるとさ。目の前が白黒になるんだよ。知ってるか?」
俺はそんな経験はない・・・・
なんて言葉を返したらいいのか戸惑った・・・
戸惑いを隠せない俺を見ながら坂倉はまだ話を続けた
最後意識がなくなったからわかんないけど・・・
で、意識が戻ったら母ちゃんがいたんだ。
俺は泣きたかった。母ちゃんに助けてほしかった。
ちょっと聞いただけでこんな目にあわす親父に怒って欲しかった。
母ちゃんは俺に言った。
「こ の バ カ!あ の 人 に 謝 れ !」
もう俺は坂倉が何を言っていたのかわからなかった。
ただ、あまりにも自分の理解できる範疇を超えた話を聞くと
体が震えて声がでなくなることをこのとき初めて知った。
坂倉「俺はその日、親父に無理やり土下座させられた。
母ちゃんも土下座してた。
親父は「ガキの躾はしっかりするって言ったんだろうが!
んな生意気なバカガキならどっかに捨てて来い!と叫んでた。
母ちゃんは「ごめんなさい。きちんと躾けるから許して」と
泣いて謝っていた。
俺はもう体に力が入らなくて、何が起こってるのかわからない・・
ただただ謝らさせられて、やっと許しが出て
鏡を見たら、俺の右目が完全にふさがるほど腫れて
口から血を流しててびっくりした。
それを見て俺は余計に怖くなった。
暴力を振るわれたことじゃない。
自分の息子がこんなひどいけがをしてるのに
土 下 座 さ せ る 事 を 優 先 さ せ た 事 に !」
あれ地味に鬱ENDだったよな・・・・
結局あの三人は吉田家に戻ったんだっけ?
いく夫が床屋のおじさんに帰るって連絡してたよ
その後の描写がないからわからんけど
お前がイトキンを殴るな!のシーンは痺れたわ
ハッピーエンドではないけどバッドエンドでもないと思う