前記事⇨姉「歩けない…立てない…」俺「ふぁ!?」→姉の靭帯が切れてた!?しかも原因が不明で…【1/2】
59:名も無き被検体774号+ 2012/04/17(火) 15:43:02.38 ID:jyhyi4F50
友達のクリステルとは時間が合わずなかなか遊べない彼氏はいない
職場のスーパーはおばさんばかりで仕事以外関わることはない
退屈した姉は頻繁に俺の部屋を訪れ、綾波レイのフィギュアを勝手に飾ったり、俺のベッドを占領して本を読みふけったりしていた
その頃姉が読んでいた本は普通の小説
もう小学生の頃のような不気味な本は読んでいなかった
俺は姉に言われてパソコンの使い方を教えてやった
すぐに姉は自分用のパソコンを買ってきた
だけどなぜだかネットには繋がず、部屋に閉じこもってひたすらカタカタやってた
それから俺は高校を卒業、親父の仕事を手伝いながらヤンキー崩れの友人達と遊んで、あまり姉に構わなくなった
姉はその間に免許取って点々とパートを変え、パートがない日は家にいた
たまに姉の友人が顔を出すこともあった
中学の同級生で俺も知っている顔だった
森三中の黒沢を細くした感じなので黒沢とする
あ、黒沢は痩せると結構可愛いと思うw
俺はなぜかこの黒沢と後にダブルデートするwww
そんである日、姉が久しぶりに俺の部屋に来た
彼氏が出来たとの報告だった
だけどまだ続くかどうかわからないので親父と母親には内緒だと言う
姉は幸せそうだった
そしてフェレット臭かった
姉はいつの間にか部屋でフェレットを飼うようになり、そいつらが姉の部屋を悪臭で満たすようになっていた
フェレット多頭飼いはほんとやめておいたほうがいいwww
その後は姉も彼氏の所に入り浸るようになり、滅多に顔を合わさなくなった
妹はその頃どうしていたかというと、せっかく入った高校を窃盗が原因で退学になり、近くの焼肉屋でバイトしながらそこの店長と不倫して奥さんにバレて修羅場だった
それから歯科助手を始めてそこの歯医者の歯科衛生士を殴ってバックれてニートしてた
それを自分の武勇伝として俺に披露する最低最悪のクズに成り下がっていた
それもこれも母親が甘やかしたせいだろう
母親はその頃にはすっかり生意気になった妹に手を焼いて、犬と猫に癒しを求めるようになった
あと姉のフェレットを勝手にベランダに出して一緒に踊るようになった
そしてなぜかスイーツデコにはまって家中スイーツデコだらけになった
ばあさんは相変わらず元気に近所の小汚いばあさん連中と陰口叩いたり、カラオケ行ったり、よくわかんないじいさんが車で迎えに来てデートに出掛けたりリア充してた
親父はハゲた
しばらくして、姉が一週間くらい音信不通となり、家に帰って来なくなった
捜索願い?出したと思う
そしたらひょっこり帰って来た
聞けば日本一周旅行に行っていたという
旅行のきっかけは姉の彼氏が仕事を辞めたことだった
姉の彼氏にはその時まだ会ったことなかったが、後で見たら玉木宏似のイケメンだったので玉木とする
玉木はいきなり仕事を辞めて姉に日本一周すると宣言し、ほぼ拉致のような感じで旅行をスタートさせた
旅行といっても各地の名所を巡ったり名物を食べるわけでもなく、ひたすら車であちこち走ってたらしい
寝るのは車の中
飯はコンビニ
風呂は入らない
そんで京都まで行ったところで姉は逃げ帰ってきたらしい
その日姉は母親の手料理をたらふく食って風呂入って寝た
次の日彼氏のアパートまで自分の車と携帯を取りに行き、後はひたすら家で玉木の帰りを待った
ほとんど家から出なかった
二ヶ月くらいして玉木がうちに来た
親父はちょっと玉木に対してイライラしてた
玉木は思ってたよりまともそうで、きちんと親父達に謝罪した
そしてなぜか娘さんと同棲させてくださいと言った
なんでも旅行中に訪れた北海道が気に入り、そこに住むことにしたという
姉と遠距離になってしまうので連れて行きたい
向こうで仕事を探して落ち着いたら結婚も考えているという
親父がキレた
玉木は吹っ飛んだ
見た目よりまともじゃなかった
玉木は色々言ってることがおかしかった
姉は無表情に玉木の話を聞いていた
それから揉めに揉めて、結局北海道には玉木1人で行くことになった
そこで生活が軌道に乗ったら、様子を見て姉との同棲を考えてやってもいいという話
玉木は1人、北海道へと旅立って行った
それからしばらく姉の様子はおかしかった
家にいる時は普通だが、外に出ると何かに怯えたようになり固まってしまう
中学の時のように焦点の合わない視線をするようになった
そんな姉のもとに、黒沢が頻繁に訪れた
クリステルも1回だけ来た
久々に見るクリステルはすっかり夜の女になっていて、美しさに磨きがかかっていた
黒沢とクリステルのおかげか姉は少しずつ元気になり、たまに外へ遊びに行ったり、俺の買い物についてくるようになった
姉が元気を取り戻したと思ったら、今度は母親が元気をなくした
踊らなくなり歌わなくなり、作る食事が以前より手抜きになった
そして母親は入院した
癌だった
手術した
母親は以前のような元気を取り戻す
他に転移は見られず、回復は順調だった
退院の日、久々に家族で外食した
姉は妙にはしゃいでいて、一番よく食った
食いすぎて座ってるのが辛いと言って、帰りは車の中で横になっていた
俺は車内で姉に膝枕してやった
本当にどうしようもない姉だ
玉木に北海道を案内してもらうという旅行だった
旅行から帰ってきた姉はかなりやつれていた
今度は北海道中を車で連れ回され、やはり車中泊で風呂には入れず
せっかく北海道に行ったのにずっとコンビニ食だったという
しかし妹に頼まれていたルタオのチーズケーキと親父に頼まれたホッケだけは配達を注文して帰ってきた
姉が注文したホッケは外国産だった
北海道関係ねえw
北海道から戻っても、姉は相変わらず家にいて玉木からの連絡を待ち、黒沢と遊んでいた
パートに出なくなった姉に、親父と母親は何も言わなかったのが不思議だ
結局玉木と姉は破局し、玉木は北海道から帰らないまま
姉は玉木と別れて何を思ったのか、プロゴルファー猿の髪型になった
猿になった姉は再びパートに出るようになる
休みの日には黒沢と遠出したり、パート先で出来た友人と遊んだり、なんか充実しているようだった
そんである日の明け方、俺が帰宅して二階に上がろうとすると階段に姉が寝転んでいた
正確にはその時姉は、ほふく前進のような不自然な体勢で階段を降りようとしているところだった
俺「何やってんの?」
姉「歩けない…立てない…」
俺「は?」
姉はふざけている風でもなさそうだった
そのまま病院まで連れて行った
靭帯が切れていた
しかしなぜ切れたかは不明だった
姉はまったく身に覚えがないという
姉「でも三日くらい前からなんとなく足が痛かったような…」
俺「何ですぐ病院行かなかったんだよ」
姉「うーんでも脂汗が出るくらいで特に痛みはなかったからほっとけば治るかなーと思って」
姉は痛みに鈍い
子供の頃のいじめで一通りの怪我は経験してるので、痛みに対して感覚が麻痺しているようだ
それから姉はしばらく安静にしているよう言われ、部屋でおとなしくパソコンに向かっていた
たまに俺の部屋に遊びに来た
同じ時期、妹が窃盗で捕まり、親父は妹をボコボコにした
殴られすぎた妹は一時的に難聴みたいになった
しかしそこまで親父にキレられたので、反省はしたみたいだった
前ほどあんまり夜遊びしなくなった
タイミングよく家に兄弟3人が集まったので、夜は俺の部屋でゲームしたりお菓子食べたりしながら話すようになった
だいたいはふざけた話だったが、たまには真面目な話をした
妹は妹なりに将来のことを考えて、定時制高校に入り直したいと言っていた
そして代々木アニメーション学院に行きたいと夢を語った
妹の夢は声優だ
姉の足が完治して、また滅多に3人で集まることはなくなったのでその後のことは聞けなかったが、結局今でも妹は高校に入り直すこともなく、姉同様にニートとアルバイトを繰り返す生活を続けていた
俺も実家を手伝う以外は遊んでいたので人のこと言えないが
まさにクズ兄弟ww
そして俺は姉が足を痛めている間に玉木との破局に至るまでを聞いたのだが、それがちょっと重い話だった
玉木は幼少期に母親から虐待されていたらしい
そのせいで玉木の兄貴は障害者手帳持ってる
玉木自身も服で隠れるところに大きな火傷の痕がある
玉木の母親は精神を病んで暴れたり事故起こしたりするので、その度に玉木は周りに謝ったり事故の始末したりと大変だったらしい
姉曰く、玉木が北海道に行ったのは、母親から逃げたかったからじゃないだろうかと
姉の話を聞く限り、玉木はおそらく姉に救いを求めていたんじゃないだろうかと俺は思う
玉木が北海道に行ってから姉が働きもせずにほとんど家に引き込もっていたのには理由があった
姉は日本一周旅行へと拉致されてる間、家族や友人に連絡することを許されず、走る車の中で毎日延々と玉木にダメ出しされ続けていたらしい
たぶん洗脳されてたんじゃないか
姉は玉木のダメ出しですっかり自信をなくし、一人で外出するのが怖くなっていた
ダメ人間で醜い自分は、外に出ればたちまち好奇の目で見られ、他人から蔑まれると思いこまされていたのだった
たぶんその間黒沢がうちに来てたのもそのせい
黒沢がついて入ればなんとか姉は外出できるから
一人でじゃ無理
姉は玉木によってかなり追い詰められていたのだった
玉木死ねよと思ったら、姉は実際にもう玉木は死んでいるかもしれないと言った
玉木は北海道に行ったもののなかなか仕事が決まらず、そしてプライドの高さが災いして無職の自分が許せなくなり、鬱になってしまったのだという
毎日のように電話で死にたいと姉に相談してくるようになった
始めのうちはそんな玉木を心配していた姉だったが、次第にこれまでの熱がすっと冷めた
なぜ自分は今までこんな弱音や言い訳ばかり吐く男の言葉を信じていたのだろうと思い、苛立ちを募らせていった姉は、自分から玉木に別れを告げたのだという
すると洗脳が解け、今までビクビクしていた自分が馬鹿らしくなり、もうこんな面倒なことになるくらいだったら恋愛なんかしない
どうせなら絶対男受けしない髪型になってやろうと思い立ち、プロゴルファー猿に変身したのだった
姉は自分を支えてくれた黒沢に恩返しがしたかったのか、黒沢へ男を紹介してやってくれないかと俺に相談してきた
姉の友人といえばクリステルと黒沢くらいで男友達はゼロ
紹介してやりたくても自分には無理なのだという
迷ったが、黒沢は姉の恩人なので弟して一肌脱ぐことにした
彼女と別れたばかりの先輩を黒沢に会わせることに
先輩に黒沢のプリクラを見せると結構乗り気だったのでこれはいけるんじゃないかと思った
しかし黒沢は彼氏いない歴年令という人だったので当然デートは初めて
姉との相談の結果、俺と俺の彼女、黒沢と先輩の4人で会うことにした
いつもはもさい格好の黒沢が、その日はちゃんとスカート履いて、女子アナみたいになってた
取り敢えず俺の車で先輩との待ち合わせ場所に向かった
姉の友達とあって黒沢も人見知りというかなんか負のオーラが漂ってる
車内はどんよりとした空気に包まれた
気を利かせた俺の彼女が、黒沢に色々と話しかけた
彼女「黒沢さんわたしの一個上なんですねー和子さんて呼んでもいいですか?」
黒沢「あ、はい…」
彼女「……」
黒沢「……」
彼女「あー…ごはん何食べたいとかありますか?いつもデートの時はどこ行ったりします?」
黒沢「デート…したことないんでよくわからないんです…」
彼女「あー…そうですか…そういうことありますよねー」(乾いた笑い)
黒沢「……」
なんかずっとこんな感じ
彼女には本当に悪いことしたと思う
黒沢はいい奴だが、たぶん同じクラスにいたとしたら絶対に仲良くならないタイプ
俺も黒沢と何話していいかわからず、ずっと彼女に相手させてしまっていた
まだ先輩と合流する前だというのに、彼女はエネルギーをほとんど黒沢に吸い取られてしまい疲れている
こころなしかバックミラーに映る黒沢が俺の彼女のエネルギーを吸って膨らんだかのように見えた
こんなんで先輩と会って大丈夫だろうか
不安がよぎる…
しかしいざ黒沢と対面した先輩は、タイプだったらしくテンションが高かった
ちょっと安心
とりあえず4人で飯食うかってことでファミレスに入った
だがここでも黒沢が喋らないw
緊張してるのか飯にもほとんど手をつけないwwww
おまえどんだけ少食なんだよwwwwww
俺の彼女はそんな黒沢を見て本気で心配してて、具合悪いんですか?とか聞いてた優しい
見た目ははるな愛そっくりだけどw
ちなみに先輩はちょっとダイゴに似てる
先輩は豪快というかあんま細かいとこ見ないで初対面でもタメ口みたいな人なので、がんがん黒沢に話しかける
一方黒沢は引いてた
それでも先輩は気にせず黒沢との会話を試みる
黒沢「あ、あ、綾瀬はるかが好きです…」
先輩「そうじゃなくて男の芸能人。ジャニーズとか」
黒沢「ジャニーズは興味ないんで…」
彼女「あー…でもまぁ…綾瀬はるか可愛いですよね?ね?(俺に同意を求めてくる)わたしも綾瀬はるか好きー」
黒沢「……」
彼女「ダイゴ先輩はどんな人がタイプなんですか?」
先輩「俺?安めぐみ」
彼女「へぇー」
黒沢「……」
俺「あ、安めぐみいいっすね」
先輩「和子は音楽何聞く?」
黒沢「…音楽…あんま聞かないんです…」
先輩「え?なんで?」
黒沢「…あ、でも…」
先輩「?」
黒沢「Coccoは好き」
先輩「あー知ってるー。でもちゃんとは聞いたことないわ、どういう系なの?」
黒沢「……」
先輩「……?」
彼女「あ、あー…たぶん癒し系?ですよね?ね?」
先輩「マジで?癒し系なら俺結構好きだわ。今度聞かせてよ」
黒沢「ん…癒し系じゃないと思う…Coccoの音楽は…聞くと救われるというか…あの生々しさが…」
先輩「……」
どうやら相当好きなようだ
この時先輩は若干引いたようだが、場所をゲーセンに移すとまた積極的に話しかけていた
黒沢もようやく少し先輩に打ち解けたみたいで、ちょっと笑ってた
その日はアドレス交換して解散
黒沢と先輩はその後メールのやりとりをしていたようだったが、付き合うことはなかった
姉は平穏な生活を送っていた
今度の職場ではいじめられなかったようで、長く続いてた
一方妹は再び窃盗をし、親父にボコられた
その前から妹は毎日朝まで遊び歩くようになっていたので、結構繊細なとこがある親父は胃を壊してますますハゲて、ついに倒れた
母親は取り乱すし、ばあさんは仏壇に向かって祈り出すし、姉は大泣きするしでうちの女どもはまったく頼りにならない
俺が救急車を呼んで一緒に病院までついて行った
その時初めて、一般の車が実はなかなか救急車に道を開けてくれないことを知った
親父は意識ないみたいだし、俺は早く病院に到着してくれと焦っている
しかしなかなか進まない救急車
避けない一般ドライバー
本当に人の命がかかってるのに
救急車に道を譲らないドライバーは全員事故って死ねと思った
親父は検査の結果、栄養失調と日射病、胃腸炎が重なり過労で倒れただけだった
その少し前から年甲斐もなくミスドにハマってドーナツばかり食ってた親父馬鹿だ
そしてその時の検査で、親父の心臓に異常が見つかった
親父はしばらく入院することになった
親父と姉はラブラブ父娘なので、姉は毎日親父の病室に入り浸った
俺は親父がいない間、家の仕事を守るため必死に働いた
ばあさんは毎日じいさんの仏壇に祈ってた
母親は親父のために差し入れしたり、何か暇潰しになるものを探してやったり、甲斐甲斐しく世話してた
妹は一度も親父の病室に顔を出さず、毎日遊び歩いていた
しばらくして親父退院
ほとんどの仕事を俺と叔父の2人で回して、親父はちょっとのんびりした生活をするようになった
暇すぎたのかなんなのか、それまで仕事一筋だった親父は時間の使い方がわからず、突然通販でミッキーの腕時計買って母親に怒られたりしていた
腕時計は姉がもらった
本当は母親のために購入したっぽいが、キャラクター物苦手な母親は散々その時計を馬鹿にしていた
それから姉は仕事先で出来た友人に誘われフットサルを始めた
かと思ったら怪我して辞めた
元々まったく運動できない人だからちょっと普段と違うことしただけですぐ足を痛める
姉はこの時すでに将来は杖ついて歩くことになるだろうと医者に言われてた
それくらい骨がすり減ってしまっているらしい
姉はそれから改心して筋肉作りを始めた
医者に教わったフラミンゴ立ちを暇さえあればやってた
我が家には珍しく平和な日々が続いた
親父も母親も体調は悪くなさそうだし、姉は仕事が続いている
妹はもう窃盗はしていないし、遊んでばかりだけどちゃんとバイトは行ってた
ばあさんは友人宅の犬に噛まれて流血した
普段動物をいじめてばかりいるので、バチが当たったんだと思う
そしてそんな平和を脅かす一本の電話
俺が電話番をしていると、何度も無言電話がかかってくるようになった
我が家は自営業で宣伝のため電話帳にでかでかと広告出してる
そのせいか昔からイタ電がかかってくることが結構あった
多少イライラしたが、そのうちおさまるだろうと思った
実際におさまった
その数日後、俺は仕事でやたらと咳ばかりしている客を相手にした
客は具合が悪そうだった
その夜、俺は高熱を出した
インフルだった
間違いなく客からうつされたのだろう
俺は家族にうつさないよう部屋に隔離された
しかしインフルの勢いは凄まじく、あっという間に親父、母親、姉、妹とその毒牙にかかった
もううちで元気なのはばあさんくらいだ
みんな寝込んだので買い物に行けない
飯を作ることができない
しかし薬を飲むためには何か口に入れなければならない
ばあさんは役に立たない
こんな最悪の状況をなんとか乗りきり、いち早く体が楽になり始めた俺は、いけないと思いつつも煙草だけはやめられなかった
まだ喉が痛かったが、深夜一服しようと窓を開けると、家の前に見慣れない車が止まっていた
翌日も翌々日も夜になるとその車は現れた
ちょっと不気味だった
それから何日か過ぎて俺はすっかり車のことを忘れた
家族は全員インフルから復活し、元通りの生活を送っていた
夜7時くらい
いつも姉が帰宅する時刻だ
その日、いつものように姉の車の音が聞こえて、それを合図に母親は夕飯を並べ始めた
しかしいつまで待っても姉が家の中に入って来ない
様子を見に外へ出ると、姉は見知らぬ男に捕まっていた
姉と男は何やらボソボソ言い合ってたので、俺は邪魔しちゃ悪いと思って家の中に引っ込んだ
親父に姉の様子を説明すると、「そうか」と言って何でもない風を装っていたが、明らかに心配そうだった
親父は俺たち三兄弟の中で一番姉を可愛がっているので、姉にだけ妙に厳しい
友達や彼氏の家に外泊禁止
旅行に行くと言っても渋い顔するくらい、姉を手元に置いておきたい親父なのだ
やはりこの時も親父は耐えきれなくなって、姉の様子を見に行ってしまった
そんな親父に母親は呆れ顔だった
しばらくすると、外から親父の怒鳴り声が聞こえてきた
それから姉が泣きながらリビングに入ってきた
その後に親父が肩で息をしながら戻ってきた
俺はまったく状況がわからなかった
ただならぬ雰囲気に質問をするのははばかられ、その時は普通に飯食って部屋に引っ込んだ
寝る間際になって、俺の部屋に姉が顔を出した
姉は申し訳なさそうに、びっくりさせてごめんと言った
それからさっきあったことを説明してくれた
結果から言うと、俺が見た男は姉のストーカーだった
ただ元々気が弱い人なので、親父に警察呼ぶと言われた途端逃げて帰ったという
その後改めて、姉からももう家に来ないでくれとメールしたらしい
てかなんでストーカーとメールしてるんだw
姉がストーカーと出会ったのは黒沢の付き添いで行ったお見合いパーティーだった
そこでストーカーとカップル成立してしまった姉はアドレス交換
しかし彼氏を作る気はない
姉としては趣味の合う友達ができたくらいの感覚だったらしい
だがストーカーはその時点で姉と付き合う気満々
それから毎日のようにメールが来て、返信しないでいると気の滅入るようなことを連続して送ってくるようになった
ストーカーは姉から聞いたわずかな情報で我が家を突き止め、姉に接触する機会を狙っていた
俺が深夜に窓から見た不審な車はストーカーのものだったようだ
もしかしたらイタ電も?
姉はそれから携帯を買い換え、番号とアドレスを変更した
こういう時友達少ないと新しい連絡先教える手間が少なくていいよねwwと姉は笑っていた
たぶん姉のアドレス帳には10件も登録されていないんじゃなかろうか
それからストーカーは我が家に現れず、姉はしばらくびくびくしてたけどまあ平和になった
そして姉はこっそり書いてた小説を新人賞に送り最終選考で落選した
姉曰く傑作ミステリーだったのにw
それからまた我が家に事件が起きた
妹の妊娠が発覚
相手は少し前から付き合ってる彼氏でうちに居候状態のろくでもない大学生
親父は俺が予想したよりはキレず、淡々と妹と妹の彼氏に説教をした
妹はずるいので親父達より先に姉に泣きついていた
親父は姉に弱い
姉の一押しもあってか、親父は最後には2人の結婚を許した
俺に義弟ができた
義弟は嵐の二宮を二三発殴ったような顔をしているので二宮とする
二宮は正式にうちで同居することになり、さぼってた大学もちゃんと卒業するよう約束させられた
元々複雑な家庭環境で育ったらしく、二宮の親は二宮が出ていってくれて清々しているようだった
ここから二宮は頑張った
それまでうちにいても妹の部屋に篭りきりで家族に挨拶すらしない奴だったが、結婚が決まってからは積極的に媚を売りようになった
大学の帰りに親父の好きなミスドを買って来たり、母親に誕生日プレゼントあげたり
ミスドは毎日買って来るのでさすがの親父も飽きて、もう買って来るなと諭したが、そうしたら今度はなぜかメロンパンを買って来るようになった
メロンパンはばあさんが食った
二宮はよくわからないがそんなに悪い奴じゃないような気がしてきた
俺も二宮と言葉を交わすようになり、妹の腹が目立ち始めた頃には家族の一員として二宮は認められるようになった
姉はいつのまにか二宮をちゃん付けで読んでいた
式をあげなかった2人のために、親戚を呼んでささやかな宴会をした
その席で、一族総出のマリカー対決を開催
下は6才から上は72才
俺はそこそこ自信があったが、さすがに現役小学生には勝てなかった
ちなみにいつも俺が使うのはキノピオ
親父はドンキー
母親はヨッシー
姉はルイージ
妹はピーチだった
二宮はその時ワリオを使ってたと思う
連勝していた小学生の従兄弟がばあさんにコントローラーを渡した
ばあさんだからって手加減はしない
ばあさんは最初ゲームなんて出来ないからと言って嫌がっていたが、可愛い孫にせがまれ対戦を決意
従兄弟にレクチャーを受け、いざ対決となった時に姉が余計な一言を言った
姉「ばーちゃんクッパにしなよ。似てんじゃんw」
ばあさんは姉の言葉にちょっと眉をしかめたが、親戚が揃っていたのでバトルにまでは発展しなかった
ただこの出来事が後々2人の間に確執を生むこととなる…
姉は忘れている
ばあさんはかなり執念深いクッパなのだ
その後、家に二宮がいるせいか、ばあさんはいいばあさんぶってそれまで手を出さなかった家事をやるようになった
なぜ今さら出来るばあさんアピールなのかうざい
前にも言ったがばあさんは家事ができない
メシマズだし片付けられない出したら出しっぱなし
ばあさんが洗った皿は油でギトギトだし、洗濯物はしわだらけになった
しかしばあさんは家族に貢献するいいばあさんな自分に酔っているので、俺達家族が迷惑していることに気づかない
いつも母親がこっそり皿を洗い直し、洗濯物のしわをのばし、ばあさんが掃除したと言い張る部屋に掃除機をかけ直した
やり直したことがバレるとばあさんがキレて大暴れするので、かなり気を使う
俺は母親の愚痴を聞き流していたが、姉だけは母親を心配して毎晩遅くまで母親の話し相手をしていた
母親が愚痴る相手は姉だけになった
今思えばそれがいけなかったのかもしれない
姉はばあさんより先回りして家事をこなし、始めのうちはあら悪いわねーなんて笑っていたばあさん
しかし何度も姉に家事を横取りされ、ばあさんも薄々邪魔されていることに気づいたようだ
一方母親はばあさんに家の物を汚されなくなって、機嫌が良さそうだった
やがて妹が出産
家族が1人増えた
俺に姪っ子が出来た
姪は妹にDQNネームをつけられ、すくすくと成長していった
親父と母親は初孫にデレデレだった
ばあさんはあまり姪を抱かせてもらえないでいた
ばあさんが抱こうとすると妹がうまい事言って阻止するのだ
しかし二宮が姪を見ていて妹の目が届かなかった隙にうっかりばあさんが近づいて、そのまま姪を強奪
友達である近所のばあさん連中に姪を見せびらかしに行ってしまった
後からそのことに気づいた妹は怒り狂い、泣きわめき、二宮をボコボコにした
妹の主張は、風呂も入らず歯も磨かない、便所の後に手を洗うこともないばあさんに大事な我が子を触ってほしくないというものだった
そこまで言われたら親父と母親も妹の肩を持つしかない
しかしばあさんに直接風呂入れなんて言ったら近所にどんな悪口を広められるか…
そんなことがあって以降、家族一丸となってばあさんから姪を守ることを決めた
しかし姪はばあさんにとってもかわいいひ孫
近づけないのは可哀想なので家族監視の下なら抱っこは許可することにした
妹は嫌がっていたが
それからもう1つ、ばあさん関連で困ったことがあった
ばあさんが絶対に風呂掃除を譲らないのだ
そのせいで我が家は全員湯船に浸かれない
なぜならばあさんは風呂も満足に掃除出来ないので、浴槽が湯垢でどろどろなのだ
俺達はいつもシャワーで済ませていたが、姪はまだ生まれて間もない
湯船に浸からせなければ
しかしばあさんによって入れられた風呂は垢が浮いていて汚い
こんな風呂に赤ん坊の姪を入れたりしたら病気になってしまう
姪はそろそろベビーバスが窮屈なほどに成長していた
そこで妹はどうしたか
姉に泣きついたのである
姉はこれまで何度もばあさんにたてついてきた強者
可愛い姪のためならばあさんへの配慮なんてどうでもいい
姉はそれから毎日、ばあさんが用意した風呂の栓を抜いて洗い直し、風呂を沸かし直すようになった
一応ばあさんにはそのことがバレないようこっそりと
ばあさんは自分の用意した風呂に姪が入ってくれていると信じこみ、上機嫌だった
しかしこんなことは長く続かない
ほどなくして姉がやっていたことはばあさんに気付かれ、姉対ばあさんのバトルが始まった
ばあ「あたしのやることが気にくわないのか!年寄だからって馬鹿にしやがって!」
姉「馬鹿にしてないよ。ただ出来てないからやり直してあげてるだけ」
ばあ「出来てないわけないでしょ、あたしはねあんたが生まれる前から家事してんの!」
姉「でも出来てないよ。ばーちゃんが洗った皿いつも油落ちてないし卵の黄身がついたままだし、いつも使う時洗い直してるんだよ?風呂も垢だらけだし」
ばあ「そんな嘘ばっかりついてこの子は。年寄をいじめるなんて」
姉「あ、今認めたよね?自分が年寄って認めたよね?だったらもう年寄らしく家事は引退したら?」
ばあ「あたしはまだまだやれるんだからいいの!」
姉「ばーちゃんさー、きっと目が悪くなってきて汚れが落ちたか確認できないんだよ。だからもう諦めなよ」
ばあ「キィーー!!あたしはね…あたしは…あんなイガイガした亀になんて似てない!」
ばあさんは以前姉にクッパに似てると言われたことを根にもっていた
性悪そうな顔つきが激似なのに
本人は認めたくないらしい
ばあさんが姉をどつき回し、親父が止めに入った
姉は母親がこれまでばあさんに苦労させられてきたことにも腹が立っているようだった
そんなことがあって、姉は家に寄り付かなくなった
ばあさんに見つかると殴られるので家にいられなくなったようだ
姉は毎朝早くに家を出て、深夜に帰宅
飯も食わない
姉の姿を見ない日が続いた
姉に言われたからか、ばあさんは前ほど家事をしたがらなくなり、家の中はきれいになった
深夜、廊下で姉に会うと怖いほどやつれていた
姉が外で何して過ごしてんだか全然わからなかった
友達の家に行ってるんだとしても黒沢んちもクリステルんちも遠いし
飯もどこで食ってんだか不思議だった
その謎はこの後すぐに判明するのだが
ある日姉は1人の男をうちに連れて来て、この人と結婚すると宣言した
家族全員呆気に取られた
その日まで姉に彼氏がいるなんて知らなかったし、そんな素振りもなかった
しかし姉は荷物をまとめると親父を説き伏せ、さっさと家を出ていってしまった
それから半年後に姉入籍
急すぎてついていけなかった
姉夫婦は実家から車で1時間半くらいのとこにマイホームを購入して住み始めた
姉が出ていって親父はショックのあまり毛がごっそり抜けた
一時的なものだったので今はやや回復したが、やっぱりハゲw
で、親父の頭が回復に向かいだした頃、俺だけは姉から真相を聞くことができた
姉は今の旦那と出会い系で知り合い、一ヶ月後には結婚宣言
すぐに同棲、半年後入籍というスピード婚だったのだ
で、旦那と知り合うまで姉は何をしていたかというと、仕事以外の時間をひたすら公園の駐車場で過ごしていたのだった
このことは俺が彼女とデート中、ちょっと喋ろうと公園に入った時に姉の車を発見して知った
姉は真冬にエンジンもかけず、毎晩コンビニで買ったパンを食べながらばあさんが寝るまでの時間を潰していたのだ
姉の旦那は豪快な人で、姉から話を聞いてすぐにそれなら俺のアパートにおいでと言ってくれた
さらに同棲だとお父さんも心配するだろうからちゃんと入籍しようとプロポーズ
姉のために家まで買ってくれたいい人
そんな出会いだが、姉は幸せそうだ
子供ができない体なので、保健所から殺処分寸前の犬を引き取り、夫婦で可愛がっている
俺達家族は、姉に謝らなければならないことがたくさんあると思う
親父はばあさんに強く言えないあまり、ばあさんから姉を守ってやれなかった
母親は姉に愚痴ってばかりで、そのせいで姉は母親の代わりにばあさんに対して嫌われ役を買って出たのだろう
妹は都合が悪くなるとすぐに姉を頼り、自分はいつも安全な場所にいた
そして俺は、姉に対して未だに何もやれていない
ばあさんと姉が言い争っている時、俺は姉の味方をしてやれば良かったのだ
いつも面倒に関わるのが嫌で、目を逸らしていた
そんな俺を責めるでもなく、姉はいつも優しかった
姉の人生ってなんなんだろう…
病気して事故っていじめられて、だけど最後は自分をいじめてた相手を許して友達になって、社会に出てもパート先でいびられ、彼氏にもいびられ、怪我したりストーカーに遭ったりして、最後はほとんど追い出されるようにして家を出て…
姉には本当に幸せになってほしい
そしてこんな情けない弟だけど、これからはちゃんと姉の味方になってやろうと思う
長々と読んでいただきありがとうございました
最後に言わせてください
兄弟は大事にしろ
案外一緒に過ごせる時間は少ない
俺みたいに兄弟を大事にしないでいると、いきなり嫁に行かれてすげー寂しい思いすることになる
結局俺は姉のことが大好きなんだな
今度姉が帰って来る時は好物の豆大福用意して迎えようと思います
泣いた…
そんな気がする
深々と頭さげてこい
姉が今後はずっと幸せであるといいな。
>>1も早く結婚出来るといいな。
自分とは違う人間の価値観や人生の追体験できて
姉には超幸せになって欲しいな
>>1も姉も家族も幸せになれ!