このまえ、まとめサイトで「彼女にプロポーズしたらいつの間にか別人にすり替わっていた
」ってのを読んだら、似たような内容なので、自分も書いてみようと思った。
俺の後輩が市役所に婚約届を提出にいったら、全然知らない奴が自分の妻になっていて、結婚できないことがわかった。
2人とも大学を卒業したてなんだが、妊娠が発覚して、そのまま結婚って流れになった。
先に、婚姻届を役所に提出することになった。
で、婚姻届の証人なんだけど、それに俺がなることになった。
2人がくっつくきっかけを作ったのが俺だったから。
で、俺は印鑑をおして、2人が役所にそれを届けるという話だけきいて、しばらく2人とは連絡はとらなかった。
「2人が結婚できなかったらしいが、事情を知らないか」と。
俺は知らんかったので、新郎の方にすぐに電話してみた。
そうすると、「めんどくさい事になっている」と言ってきた。
「電話だとアレだし、他の誰にも聞かれたくないので、車の中で話しできませんか」
と言ってきた。
俺はその日の夜に新郎に会うことにした。
で、すぐに近くのジャスコの駐車場にとまって、そこで事の成り行きを説明しだした。
役所の人は「離婚しないと、再婚はできない」一点張りで、ラチがあかなかった。
新婦はその場で泣きだした。
しょうがないから、戸籍標本だったかなんだったかを有料でその場で発行してもらったら、全然知らない女が、新郎に妻になっていたらしい。
婚姻届をかいた覚えがないから。
で、市役所では、窓口の人間ではラチがあかないので、係長がでてきてもらい、個室で対応してもらうことになった。
この段階で、新婦は泣き崩れて動けない状態。
戸籍標本に入籍日が書いてあったらしい。
それは半年ほど前のことらしい。
まだ大学を卒業していない時期のことだった。
係長は名刺をくれたらしい。
その日、婚姻届は出せなかった。
新婦の両親は新郎の浮気を疑い、激しく新郎をなじった。
新婦も「仮に提出できたとしても、提出はしばらくは待とう」と言いだした。
新婦も新郎の浮気を疑っているようだった。
で、新郎は弁護士に予約をとって相談にいったらしい。一時間で5,000円かかったって。
見積もりももらったが、結構な額だったことがわかった。
問題は、書類上の新婦の現在の住所が全く分からないことだった。
書類上の新婦が、敵対関係になく、結婚が間違いであることがわかれば、離婚というか、婚姻の無効を届けるのは比較的楽だということを教わった。
弁護士から興信所・探偵を雇うこともおススメされた。
それは弁護士とは別料金で、たいそうな金がかかるということも教わった。
本籍地の証明があって、名前があって、2人の証人とそれぞれのハンコがあれば、結婚する相手に気づかれずに結婚することはできるらしい。
書類上の新婦の名前を聞いたら、それは俺が知っている奴だった。
というか、新郎と新婦も知っている可能性があったんだろうが、全員同じ大学の元学生だった。
俺・新郎・新婦・書類上の新婦は、全員同じ大学だった。
新郎・新婦は同期で同学科。
俺は新郎・新婦の4つ上。
書類上の新婦は新郎・新婦の1つ上の別学科の女だった。
ただ、書類上の新婦には、彼氏がいるはずだった。
俺は新郎に
「明日、大学の教授に事態を説明して、書類上の新婦の事聞いてみる。同姓同名の別人かもしれない。お前ら2人の事も、今回の件も詳細に学校側に報告することになるが、構わないか?」と聞いてみた。
新郎は「構わない、よろしくお願いします」と返事をしてきた。
俺は卒業生だったけど、学生の自殺未遂やらなんやらで、毎年のように学校に関わっていて、卒業して4年も経つが、普通に学校に行ききしていた。
「お前が直接会いにくると、ろくな事にならない」と教授は言っていた。
で、事の仔細を話したが、まず教授という立場上、卒業生や在校生やプライベートな情報は、いかに私でも教えることはできない、との事だった。
もちろん、卒業生同士の結婚・離婚にも、学校側は一切関与しない、との事だった。
学校が学生が起こした問題の為に契約している弁護士ってのはいるらしいが、卒業生には紹介できないという。
その教授のところへ訪問は、ほとんど収穫がなかった。
が、教授が、新郎と新婦が所属していた研究室の教授に会ってみてはどうか、という事を話してくれた。
その場で内線をしてもらったが、まだ研究室にいるらしく、俺の訪問を承諾してくれた。
「あぁ君か」が挨拶だった。
その場で、まずは2人の事情を説明した。
で、ゼミの教授がその場で、新郎に電話をして「こういう用件で、〇〇君が来ているが、彼の話していることは本当か?」と確認した。
「本当です」と新郎は話した。
ゼミの教授は、2人が付き合っていた事は知っていたが、結婚することは知らなかったらしい。
で、俺に
「〇〇くん、君はこれから2~3時間、ヒマか?」と聞かれたので大丈夫と答えた。
再び新郎に電話して「これからこの時間に残っている先生たちで、集まって今回の事を相談するから、君も来なさい」という流れになった。
で、俺、新郎、ゼミの教授、さっきの教授を含めた学生部の先生3人、それからもう一人の准教授1人、合計7人が集まった。
事務員に無理を言って、「絶対に盗聴や盗撮の危険性がない会議室」ってのを開けてもらった。
今度は俺ではなく新郎の方が、6人を前にして事情を説明した。
新婦とはあれ以来、メールのやり取りだけになっていることを告げた。
その場で初めて知ったが、新婦の両親は「危険な時期だが、中絶しろ」と新婦に言っている事がわかった。
「ありません」と新郎は答えた。
その後、この場で見たことや聞いたことを口外しないとの約束をさせられて、書類上の新婦が過去に起こした問題を全て教えてくれた。
高校から大学へはストレートで入学したし、留年もせずに卒業はした。
なんでも小学校3年生まで漢字をかけなかっただの、自分の名前がわからなかっただの、九九を覚えられなかっただの、ローマ字が中学までわからなかっただの、そういうエピソードを語っていたということだった。
教授の言葉を借りるなら「自分に自信がない女の典型」だったらしい。
自分の成績が悪いのを病気のせいにしたがるタイプ、そういう女だったらしい。
大学では文化祭実行委員会に所属していた。俺はそこの先輩だった。
だが、彼女はほとんど委員会の仕事はせず、名前だけ登録してある状態で、前日までの準備期間では全く見たことがなかった。文化祭の当日に、始めた会った。
長い黒髪が特徴的な女だったが、いつも無表情で二コリともしないのが、印象的だった。
で、彼女は大学に入学してすぐに悪い男にひっかかったらしい。
俺も知っている、悪名高い元委員長だった。
自分がヤクザとフィリピン人の子供であることがコンプレックスだったらしい。
高校時代は、三流工業高校で生徒会長をやっていたらしいが、その時期に変に自身をつけてしまったらしい。
教授の言葉を借りるなら「無根拠な自信をもった男の典型」だった。
文化祭の時は、いろいろ非道の限りを尽くした。
予算をごまかして存在しない領収書を偽造して、それがばれると各サークルにクレームが来たペナルティと称して、罰金名目で、全サークルから1~3万ずつ徴収して、補填に当てようとした。
問題になって、罰金はそれぞれのサークルに戻させたが、結局、本人が着服したと思われる予算は戻ってこなかった。
そんな奴でも、うちの大学は退学にできないらしい。
そいつが、一年の時に学長表彰をもらっているから。
そいつを退学させると、学長の顔に泥を塗るからだ。
その、悪名高い委員長の女癖は最悪だった。
母親が風呂屋嬢だからかもしれないが、女を性欲処理の道具としてしか思っていなかった。
顔がイケメンで、学長表彰もされていて、社長で、騙される女が後を絶たなかった。
芸能事務所の役員をしていて、「君も芸能界デビューしないかい」とあちこち学生を口説いてまわっていたらしい。
騙された学生から「デビューまでのレッスン料」と称して高額を請求していた。さらに、自分がはまっている自己啓発セミナーも無理やり受講させていた。
他の女は騙された事がわかると、すぐにその委員長の元から離れたが、書類上の新婦だけは「この人に選んでもらった」と勘違いして、ずっと付き合っていたらしい。
もちろん、委員長は他に女性関係を複数もっていた。
委員長は大学だけでなく、他の学校や高校生にも手を出して問題になっていた。
その委員長が4年の時、ついに雷が落ちて、「学校内で自社のタレントスカウトや速読セミナーへの勧誘を一切行わないこと」を誓約させたらしい。ほとんど効果なかったけど。
その間、委員長がした借金を肩代わりしたり、委員長が役員をしている芸能事務所に所属して、モデルの仕事をしていた。
というと、聞こえはいいが、実際は売や裏ビデオの撮影を強制させられていたが、
本人はそれが「ステップアップの手段」だと勘違いして、とことん尽くした。
借金は300万にもなった。
だが、性格が元々陰気で、愛想もなく、積極性にかける為、就職活動はそうとう苦労し、結局1社も受からなかった。
で、委員長から「就職もできない女を愛人にするわけにいかない。4月までに内定をもらえなかったら、別れてもらう」
と突きつけられた。
それから必死に面接を受けたらしいが、どこにも受からず、70社以上落ちて、内定はもらえず、そのまま卒業した。
そこで彼女は壊れたらしい。
まず、様子がおかしかったのは、GW明け。
彼女が普通に登校して授業に混じっており、そのままゼミにやってきた。
3月で卒業しているのに。
言動がおかしかったので、すぐに帰したが、それが一週間続いた。
彼女は心の病を患い自宅で治療中ということだった。
両親は共働きなので、昼間は家に1人きりらしい。
鍵もかかっていないから、普通に家から出てこれるということだったらしい。
学校側も「治療中ならしかたない」ということで問題にはしなかった。
だが、別のところで、建造物侵入事件を起こして警察に連れて行かれたという噂が流れていた。
この噂に関しては、本当に噂なので、学校側は確認できていないし、警察にも確認をとっていない。
ただし、被害者の学生の身元は割れているので、ほとんど真実なんだろうということだった。
ちなみに被害者の学生は、委員長とは別人。
そこで「とりあえず書類上の新婦に確認をとってみよう」と言う事になった。
書類上の新婦の担任だった准教授は彼女のケータイ番号を知っていた。
夜10時近くになっていたが、彼女は出た。
准教授はよそよそしく、普通に挨拶して、すぐに本題に切り出した。
「ところで、君はまだ独身かね?」
そこでブツリと、電話は切れた。
さらにコールしたが、出ない。
今度は、彼女の両親に電話してみた。
その時は10時を越えていたが、両親は起きていた。
長い前おきのあと、
「お嬢さんは結婚されましたか?」
と聞くと「はい」と答えたらしい。
婚姻届の証人は父親とその父親の弟がなり、印鑑を押したが、新郎には一回も会っていない。
「この前まで付き合っていた人(=委員長)と復縁した」
と語っていたらしい。
その時の新郎の欄は白紙だった。
なんでも書類上の新婦の両親は、もう娘と縁を切りたいらしい。
今は一緒に住んでいないらしく、娘は少し離れたアパートで1人暮らしをしていた。
それは娘が言いだしたことらしく、「自分がダメなのは、あんたたちの教育が悪かったせいだ」と娘が詰め寄ったせいだと言う。
で、その場で、娘が裏ビデオの撮影やら、中絶やら、援や売まがいの接待をしていたことをしり、もう絶望したと。
それが彼女が卒業後半年、新郎と新婦が卒業する半年前の出来事。
つまり新郎と新婦たちが卒業する時期。
婚姻届が受理された日にちとも一致する。
学校の先生たちは、相手が精神病患者なら、裁判では勝利できるだろう、みたいに楽観していた。
先生たちの心配は、新婦の誤解を解く事に集中していた。
明日、昼に、ゼミの教授から、新婦に電話をするということで、合意した。
それで誤解を解くのだという。
まもなく11時になるから、解散しよう、何かあったらすぐにケータイを鳴らしてくれ、ということで、その場にいた全員とケータイの番号を交換している時だった。
新郎のケータイが鳴った。
知らない番号からだった。
「誰?」
「知らない番号です」
「出るな!」
教授の1人が怒鳴った。
新郎は出なかった。
「ナンバーは表示してあるか?」
「はい。080-xxxx-xxxx」
「それは書類上の新婦の番号だ」
准教授が言った。
「どうします?かけなおしますか?」
「変に返事をしても事態が悪化する。よく考えよう」
「すぐにもう1回来るかもしれない。そうしたら、出なさい」
教授の言う通り、すぐに電話が鳴った。
「ハンズフリーにして、全員が聞こえるようにしなさい。他のみんなは何があっても、誰もしゃべっちゃいけません。君は今、1人きりということにしなさい」
「はい」
と返事をして、新郎が電話に出た。
初対面というか、あったこともない女の絶叫が突然響いた。
どうやら、両親に教授が電話したことを知っているらしい。
「僕は君とあったことはない」
「嘘よ!何度もあっているわ!私のことを『愛している!』って言ったじゃない」
「言っていない」
教授と俺が、無言で、落ち着くように言った。
別の教授がスケッチブックとマジックをすぐに取りだした。
筆談と言うか、カンぺが出せるように。
その間にも、書類上の新婦はヒステリックな声をあげていた。
別の教授は「ICレコーダーを取りにいってくる」と小声で言って、会議室から自分の研究室へ戻っていった。
書類上の新婦は、新郎とは何度もあっている、告白されたと言っている。
新郎はそんなことは知らない。と言っている。
そして
「あたしという女がいながら、他の女を妊娠させるなんて許さない!」
「絶対に後悔させてやる」
「殺しはしない。だが、死んだ方がマシだったというぐらいに後悔させてやる!」
みたいなことを何度も何度も言っていた。
同じセリフを何回も繰り返すのが不気味だった。
カンぺで
「一度、会おう」と教授が書いた。
新郎が「一度、会って話をしましょう」と落ち着いてしゃべったが
「会う必要なんてない!私はあなたの奥さんだ!私はあなたの旦那だ!離れていても繋がっている」
みたいなことを叫んだ。
ICレコーダーを持ってきた教授が戻ってきた。
すると
「そこに誰かいるの!」と聞いてきた。
「私1人です」
「だったら、なんでこんなに声が遠いの!」
「運転中だからハンズフリーなんです」
「嘘だ!」
電話は切れた。録音できたのは「そこに誰かいるの」から「嘘だ」までだった。