その会場には、小6の時に仲良くしていたAがいた。
当時、内向的な自分と活発なAは、何故かウマが合ってよく2人で遊んでいた。
卒業の時に、Aが父親の仕事の都合で引っ越すことになって
その時は二人で大泣きした思い出がある。
「Sちゃん家に遊びに行った時にご馳走してくれたお手製のレモンスカッシュ
(親が出かけていたので、炭酸とガムシロとレモンの輪切りで作った)の味
今でも覚えているよ!」
Aよ・・・やはり覚えていなかったか。実は俺達、高校二年の時にも
クラスメートになってたんだぜ。
お互い背も伸びたし雰囲気も変わったから、最初は気づかなかった。
当時、文科系の部活に入っていた俺に酷いイジメを仕掛けていた内の
一人が、体育会系部活でバリバリのA。
ある日突然、小学校の時のAと自分をイジメる目の前のAが、
頭の中で結びついた時の衝撃と、ある種の喪失感は当時半端じゃなかった。
高校のときは結局、自分が小学校の時に仲良くしていたSだとは言えなかった。
今回の同窓会で、高校の時のことをAに話したが、もうねAの顔色も
「あー」とか「えっと」とか言いつつ、すんごいグルグル変わるし、
俺自身も懐かしさやら、恨み辛みやら、笑い飛ばしたい思いやら
糾弾したい気持ちやらでグッチャグチャになるし。
連絡先を交換したが、今でも結局そのまま。
そういうこともあるのかねえ。
イジメてて幼なじみと気付かないってあり得ないし。名前で普通気付くだろう。
後出しで親が離婚してて、名字が変わったとか言いそうだけども。
お互いの名前は一切変わっていないよ。
名字自体もそんなにありふれてるって訳でもない。
当時、学年で2~3人いるくらい。
変わったのは、自分が眼鏡をかけるようになったのと
スマート系運動少年だったAがガチッとした体型になってた。
自分の中では、高校の時のSは小学校時代の記憶もあって
過去の事を放り投げた上で、自分をイジメてるのか
それとも小学校時代の事は一切忘れているのかの区別がつかなかった。
もしかして、全部自分の思い込みなんじゃないかってのもあったよ。
どんなイジメをうけたの?
過去のイジメを指摘された時の言い訳とか、謝罪とかどんなだったの?
成長期って外見は相当変わるけど、泣いて別れ惜しむような関係なら、普通、気付くとは思う。最初は気付かないけど、お互い、あっ、てなる。片方が思い出すと、何故かもう片方も思い出すもんじゃない?
書き掛けで送信しちまった。
イジメであっても、イジメる側って相手のことを観察して弱点探すもんじゃない?
外見の特徴、名前、持ち物、出身とか。
そんだけ観察している時点で思い出さないっつーのが、逆に不思議なんだよね。
高1のときから、いじられポジションっていうのかな?自虐ネタで周囲の笑いを取る感じだった。
そこから少しづつ、自分が嫌だって言う時でもからかうのを止めなくなっていた。
高2の時に進学別にクラス編成が変わって、男子の人数が極端に少なくなったら
一気にイジメの内容が濃縮されたようになった。
Aと再びクラスメートになったのはこの時。
それまでクラスでは名前で呼ばれていたのが、
ジャンキー・ヤク中・シャブ中といったあだ名に変わり
(目の周りの皮膚が薄く、隈が出来やすかった)
結局卒業までこのあだ名で呼ばれた。
当時付き合い始めた彼女と遊んでいたのを見られたのか
次の日からは、そのことでもからかわれ教科書や机に落書きされた。
体育の時間にはサッカーでわざと足を削られ、柔道では乱取りで
投げた後にわざと体重を乗せて息ができなくなったり。
今なら、もう少しうまく立ち回っておけばとかも考えるけど
当時はもう絶望しかなかった。
「そうだよ!田舎の一本道で周りに何もない高校w」と屈託なく笑うA
あの時イジメられてたのが俺だって話をしたときは
何て話をしたらいいか迷っているように見えた。
途中でボソっとAが「言ってくれたら・・・」と呟いた時に
思わず「言えるかっ!」って声を荒げてしまった。
もしも言っていたら何か変わっていたのかな。
そこからは本当に普通の大人の話だけ。
「仕事何やっての?」とか「カミさんどんな人?」とか
「ダルビッシュもマーくんもメジャーですげえな」とか
当たり障りのない話ばっかりで、お互いに昔の話はしなかった。
違和感は面倒なのでスルーする。
幼なじみにどうして欲しいの?謝罪を受け、水に流して小学校で離れた所からスタートしたいの?
向こうはばつが悪い思いしたけど、その後、普通に会話出来たし、まぁ、時効かな?くらいには思ってるだろうね。