従姉の式がガーデンだった。
暑くも寒くもなく、ちょうどよい気候でガーデンウェディング日和だったが…
こともあろうに新郎新婦誓いの言葉の真っ最中、
…ドッカーン…!
軽い振動とともに桜島大噴火。
写真やイラストみたいな見事な噴煙が上がった。
新婦と新婦側列席者は、生まれて初めて見る噴火に大興奮。
凄いねー!雄大だねー!桜島もお祝いしてくれてるんだねー!
とキャッキャッ浮かれていたが、ホテル側と新郎側は騒然。
「では続きは室内でと参りましょう」
新郎のにこやかなアナウンスと同時に、
ホテルスタッフと新郎側男性陣が、テーブルや椅子を運び始める。
前もって訓練でもしてたのかと思うほど鮮やかな連携で、
ものの15分で会場は温室風テラスハウスへ移動完了。
移動完了直後、空が異様な暗さに被われ、サラサラ…と砂が流れ落ちる音。
折からの南風にのり、噴煙がホテルまで到達し、市内を大量の火山灰が覆い尽くした。
ポンペイ最後の日みたいなスペクタクルな光景に、新婦側一同度胆を抜かれた。
その後、すし詰め状態のテラスハウスで式と披露宴はできたのだが、
庭の飾り付けも列席者の車もみんな火山灰まみれでザラザラ。
不幸ではないが不運な結婚式として、親戚一同の記憶に残っている。
天気予報でも「今日の桜島上空の風向きは…」っていつも出てる。
まさに一生の思い出。
それはある意味ラッキーというか、少なくとも大変貴重な体験だったな。
にこやかにアナウンスする新郎も男を上げたような気がする。
夕方の全国ニュースにもなっていた。
最初、新郎側はガーデンウェディングなんて大丈夫かと危ぶんでいたらしいが、
数年間大規模な噴火がなかったので大丈夫じゃないかと思われたのと、
ホテル側もチャペルを新築したばかりでガーデン推奨してたので、
新婦の長年の夢をかなえてあげようとガーデンに踏み切ったらしい。
火山灰って結構細かくて、窓を閉め切っているのにもかかわらず、
机とか床がなんとなくザラザラするんだ。
コンタクトレンズの子達はみんな目を腫らしていた。
大変な土地に従姉は嫁いだんだなと思ったけど、
あのとっさの時に動じない新郎の胆力と、
新郎側列席者の非常時の行動力と連携を目の当たりにしたので、
何があっても従姉は守ってもらえそうだと、親戚一同安心した。
それと九州男児ってそれまでちょっとダサいイメージあったけど、
いざというときは頼もしくていいなと思ったのでした。
噴火したら、せんたくものや干してるお布団、超特急で取り込むんだよ~。
うちの母なんか、息切らして、共稼ぎしてる近所のおうちのまで取り込んであげてたよ。
特に、濡れてるときや、半乾きだと後が大変になるからね。
桜島の見えるガーデンでの挙式自体は、素敵だと思うよ。